■プロローグ■
――リュクセール王国、交易都市セロナブル
アイオーンに失踪した父親の捜索を依頼したドワーフの少女は
ミリーと名乗った。
アイオーンは冒険者ギルドの中に入ると、受付嬢に「依頼に行っている間、この子を預かってもらえないか?」と聞いた。
「アイオーン様、そういう時は……」
フィルツェーンがすかさず横から数枚の硬貨を差し出すと、受付嬢は笑顔で「分かりました」と答えた。
こういうところは彼女の方がそつがないようだ。各地を旅しているだけあって冒険慣れしているともいえる。
「でも意外でした」
「何がだ?」
「アイオーン様がセレスティーヌ様以外の女性に興味を持たれることに、です」
「……ミリーは女の子だが、セレスティーヌとは違うだろう」
フィルツェーンの言葉に、アイオーンは肩を竦めた。
彼が愛する女性は千年前からただ一人、神竜の巫女
セレスティーヌだけだ。
「ただ、困っているなら助ける。セレスティーヌもそうしていただろう?」
「そうですね。おそらく手を引いて一緒になってあちこち、方々探されていたと思います」
「そうなったら俺が困る。だから助けたいと思ったんだ」
(なるほど。アイオーン様の行動原理はセレスティーヌ様にありますが、少しずつ外に目を向かれている様ですね。
エスターシャ様の思惑通り、といったところでしょうか)
セレスティーヌの思い出話に話を咲かしてばかりもいられない。
フィルツェーンはこれからカッサへ向かわなければならないのだ。
「こっちはこっちで厄介だが、“譜”は任せたぞ」
「御心のままに」
アイオーンに言葉少なに告げると、フィルツェーンはカッサヘと向かっていた。
■目次■
プロローグ・目次
【1】失踪したドワーフを探す
1.小さな依頼者のために(1)
2.小さな依頼者のために(2)
3.冷酷なる部隊
4.失われた都(1)
5.失われた都(2)
6.失われた都(3)
7.地中の反乱(1)
8.地中の反乱(2)
【2】カッサで暴れる
1.争闘に沸き立つ舞台(1)
2.争闘に沸き立つ舞台(2)
3.争闘に沸き立つ舞台(3)
4.争闘に沸き立つ舞台(4)
5.争闘に沸き立つ舞台(5)
6.争闘に沸き立つ舞台(6)
7.争闘に沸き立つ舞台(7)
8.積み上げたコインの行方
【3】捕らわれた貴族を救出する
1.カッサの光と影(1)
2.カッサの光と影(2)
3.カッサの光と影(3)
4.迷宮の牢獄
5.闇が呼び覚ましたもの
エピローグ