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創世の絆~オーバーチュア~

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創世の絆~オーバーチュア~
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■大気圏突入戦闘訓練(3)

(生身……といっても流石にスーツ着用ですが。
 ですがこの状態でも、船外活動ならまだしも大気圏突入とは。滅茶苦茶ですよ、まったく)
 宇宙服を身に着け、シャトルの外に出たスレイ・スプレイグが周囲を確認し、なんとかシャトルから吹き飛ばされないようにしている陽子を発見する。あの状態では自分の身を守ることすらできないだろう。
(イコンの襲撃からシャトルと要人を守れとは……。頼りにしているパートナーと連携できないのは致命的になりかねません)
 だが、訓練としてはこの上ない。これまでなかなか経験のなかった単独での戦闘が、今後は頻繁に起こるかもしれない。
(この経験を通して、新たな境地を目指しましょう)
 頷き、スレイがまず陽子との接触を図る。
「落ち着いてください、陽子さん。地球に帰還するまで護衛させていただきます」
『あっ――コ、コホン。ま、まあ、あんじょうおきばりやす』
 先程まで喚き散らしていた陽子が、視線に敏感に反応してなんとか自我を取り戻す。態度はともかく、好き勝手に暴れられるよりは大人しくしてもらった方が守りやすい。
(陽子さんも訓練を通じて、見出すものがあるといいですね)
 視線を前方へ戻したスレイは、イコンが接近してくるのを認める。このままシャトルに取り付いていては陽子を巻き込んでしまうと判断したスレイはフライトユニットを起動させ、シャトルから離れる。出力を慎重に調整しつつ、イコンの行動を観察する。
(遠隔操作ゆえ、動作の幅は限られてきます。慎重に見極めれば必ず、癖が見つかるはず)
 イコンが砲口を向け、弾丸を発射する。これを回避したスレイはイコンに隙が生まれたのを認め、魔法弾を発射してイコンの装甲を貫くと同時に煙幕を生み出し自身の行動を隠す。
(宇宙空間でも問題なく炎は出るのですね)
 周囲に炎の帯をまとい、スレイが先端から液体火薬を分泌する槍を構え、イコンとの距離を詰める。そして煙幕が晴れたと同時に一撃を繰り出せば、炎に巻かれるようにしてイコンが小さな爆発を何度か受けながら遠のいていき、そのまま復帰することも叶わず落ちていった。


(僕はもっと、強くなりたい――。
 絆を感じられないのは、不安だ。でも、それは今一時のこと。
 僕が強くならなければ、これからの戦いでその絆は永遠に失われるかもしれない)
 宇宙服を身に着け、繋いでいた魔法の鎖をシャトルに繋いで命綱とした空音 見透が手を広げ、グッ、と握り拳を作る。
(契約している仲間の絆だけではない、学園の友人やこれまで出会ってきた人達、そして何より好きになったあの人――。
 これまで築いてきた全ての絆を失う方が、僕にとっては嫌だ――だから)
 身に着けた仮面の宝石が、赤く光る。精神を研ぎ澄ませ、世界との繋がりを感じながら空間の把握に努める。
(僕はこの特訓で『何か』を手に入れて、
 もっともっと強くなって、
 この手の内にある絆を守らないと!)
 空間に侵入してきたイコンの存在を察知した見透が鎖を伸ばして飛び出し、砲口から発射された弾丸を避ける。隙を晒したイコンの弱点とも言える動力炉に剣を突き刺す。その一撃だけで動力炉を停止させるには十分な威力であり、加えて剣から侵食する細菌が瞬時にイコンの全身に回り、機能を停止させる。剣を抜けば後ろに飛んだイコンが復帰することなく地球へ落ちていった。
(……、やはり、負担が大きい。僕は、まだ弱い……)
 脱力感、そして無力感を抱きつつ、見透は鎖を収納させシャトルへ戻っていった。


(リリアが居ないだけでなく、絆が感じられない……。
 流石に、寂しいな)
 宇宙服を身に着け、繋いでいた魔法の鎖をシャトルに繋いで命綱としたミューレリア・ラングウェイが広げた自分の手を見つめる。手を伸ばせばパートナーの感触を得られたのが、今はさっぱり得られない。
(絆がたとえ消えたとしても、冒険の記憶、リリアとの友情は残ってる。
 絆の繋がりが無くても、私とリリアは唯一無二の相棒で親友なんだ)
 手を戻し、ぐっ、と握って地球を見つめる。
(宇宙から見た地球は、綺麗だな。リリアがきっとこの地球で、待ってくれている。
 帰ろう……そしてまた一緒に、冒険をするのさ)
 頷いたミューレリアの視界に、イコンが徐々に大きくなってくる。
「――さて、気合入れていこう!
 インテグラルを撃退して、私達が地球を守るんだ! ってな」
 鎖を伸ばし、イコンの砲撃を回避する。そのままイコンへ接近を試みるもやはり勝手が違い、満足な速度を出すことができない。
「ま、こんなこともあると思ってちゃんと用意してきたさ。
 そうら行け、私の分身!」
 槍を構えた姿勢の自身を多数出現させ、多方向からの攻撃でイコンの装甲を破壊する。むき出しになった腹部へ巨大化した槍を引き、貫けば動力炉が破壊され、イコンが爆発を起こしながら地球へ落下していった。
「おっと! ……あぁ、加減すりゃよかった。こいつしか手に入らなかったか」
 ミューレリアが槍に取り付いた装甲を手に、苦笑しつつ鎖を納めてシャトルへ戻る。
「この調子なら安全に戻れそうだが、念のためだ。お守り代わりにもらっていくぜ」
 突入コースに入ったシャトルと共にしつつ、ミューレリアはもしかしたら地球の声が聞こえないか、目を瞑り精神を集中させた――。


「ねーねーリザ校長ちゃん、息苦しいの嫌だから魔法で助けて~><」
『とっくにやってるですぅ~。実際今苦しく無いはずですよぅ~』
「……あっ、ホントだ! リザ校長ちゃん大好き!」
『――――、バカなこと言ってないで訓練に集中するですぅ!』

 顔を真っ赤にしているエリザベート・ワルプルギスを想像して笑みを浮かべたシャーロット・フルールが宇宙服を身に着け、シャトルの外に出る。先に外に出て必死にシャトルに取り付いている陽子を見て、がんばれっ、とエールを送って――ついでに、重力制御の対象にできるようにして――自身に重力制御をかけてシャトルの壁面を進む。
「ミミちゃんがんばってるかな~、おんなじタイミングだったらいいね!」
 心に抱く一抹の寂しさを、あえて言葉を口にすることでごまかすシャーロットの視界に、シャトルに接近するイコンの機影が映った。
「おっ、敵発見! こっちには妹ちゃんもいるし、できたら近づかれる前に退けたいな~」
 シャトルの壁面に立つ格好で、シャーロットが籠手をはめた拳を突き出す。飛び出す獅子のオーラの前後左右を十数機の小型砲からなるビーム兵器のビームが追いつき追い越し、砲口を向けようとしたイコンの装甲を貫いて剥がした。
「わわ、予想以上の威力! そういえばこの子には謎の素粒子が使われてるって話だっけ。
 訓練を終えたら、この子のことももっとよく分かるようになるのかな」
 そうなら楽しみ、とシャーロットが微笑む。前方では獅子のオーラに押し出されたイコンが復帰すること叶わず、地球の重力に引かれて落ちていった。

(……インテグラル……シャンバラを滅ぼす本当の敵……。
 それに打ち勝つ手掛かりがニルヴァーナにあるなら……)
 同じ頃、ミーミル・リィも宇宙服を身に着け、シャトルの外に出る。
(ミミは、シャンバラの未来のために創られた剣の花嫁で神子だから……。
 今は、シャロもお兄ちゃんも居る。でも、いつかはミミ一人で頑張っていかないといけないの)
 契約者とパートナーの関係はそれぞれながら、それこそ寿命が二人を分かつまで共に行動する関係ばかりでもない。お互いのやりたい事、やるべき事を尊重した結果離れ離れになる道を進む時に、きっと大丈夫、また会える、そう思い合える関係になれるなら。
(足場を作る……飛ばされないように)
 シャトルの壁面を、特殊な足場を作ることで自分の狙った方向に移動したミーミルは、シャトルの進路を阻むように進んできたイコンを視界に捉えるとすぐさま、黒い光の刃を備えた鎌を自身から取り出し構える。宇宙空間であっても確かに光る黒の刃は、不安もあったミーミルの心を落ち着かせてくれた。
(光の棘、敵を絡め取って……!)
 その鎌を振るい、イコンの周囲に光の棘を出す。絡みつかれたようにイコンが全身を震わせ、その場に拘束される形になった。
(ミミは一人でも……戦える!)
 鎌に力を込め、一振りの大きな光の刃と化す。一人分の力でも今のイコンを倒すには十分な威力であり、装甲と四肢を叩き切られたイコンは復帰も叶わず地球に落ちていった。

 宇宙服を身に着け、シャトルの外に出た剣堂 愛菜を、冷たく静かで広大な宇宙が出迎える。
(静か……まるで、全てが死んでしまったかのよう……。
 こんな中でちゃんと動けるのかな……ううん)
 首を振って、不安が自分を動けなくしてしまうのを阻止する。
(この宇宙のような険しい環境にも踏み入れる力を、ここで手に入れたい。
 あたしの限界は、まだまだ先の筈だから)
 手足に取り付けた鉤爪がしっかりシャトルの壁面を捉えるよう、力を入れる。ここまで来たらもう、後には引けない。
(……来た)
 イコンの稼働を感じ取り、そちらへ意識を向ける。イコンが即座に攻撃姿勢を取らないのを見て、愛菜は十分に狙いを定めた後イコンを射すくめる鋭い視線と共に、魔力のこもったビームを放つ。
『!!』
 狙いが定まったことでイコンの弱い部分にビームが炸裂し、行動を停止したイコンはそのまま地球へ落ちていく。
(……後は、地球に帰還するだけ……)
 戦闘の負荷は最小限に抑えたが、それでも極限状態での行動と戦闘は肉体と精神に大きな負担となる。
「だけど……あたしは死なない……。
 あたしはまだ、声の病気を治せてない……から」
 あえて声に出すことで自分を鼓舞し、愛菜は地球への帰還を目指す。
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