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楽園の覇権争い

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楽園の覇権争い
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・紅殻姫の威容

 視界の中に入るのは圧倒的な戦力を持つアマゾナス・マグナートであった。
 紅の月より出撃した朔日 弥生【使徒AI】駆け出しアシスタントの補助を受けて真っ先に敵影を睨んでいた。
 「戦局把握」によって現在の状況を脳に叩き込み、取り巻きのバルバロイの位置関係と友軍の情報を入れていく。
 「クロスラインシールド」を前面に掲げ、乗り込んだ「コールブランド」を「呼応式加速装置」による推進で最大値に設定する。
 降り注ぐのは敵からのミサイルの弾頭であった。
「多少の被弾は止むを得ません」
 マジックミサイルを掃射し、それに加えてスプレーマジックミサイルを叩き込む。
 爆発の光輪が咲く中で「マギ・シャドウハックバス」による「ニア・バレッド」の至近距離銃撃が撃ち込まれる。
 その勢いを殺さずに「龍爪重撃」で甲殻を引き裂いていた。
「『山川の末に流るる橡穀も身を捨ててこそ浮かぶ背もあれ』とはまさにこのこと。身の危険など百も承知。ですが決して無謀な突撃を行うということではありません。事態を冷静に捉え、物事の推移を見極め、好機を捉え、必ずや敵を打ち取って見せようと言う気概でおります」
 柊 恭也は「カリバーンⅢ」に搭乗し、「接ぎ木【孫の手】」へとドラグーンアーマー用ボウガンを持たせて手数の補いを行う。
「まぁ何にしても連中は入植の邪魔なのは間違いない。入植再開のためにも派手にぶっ殺してやる」
 渚の歌姫には領民への指示として駐屯地近辺の調査を行わせている。
 「ザッパービート」による砲撃姿勢を取り、「Tマギ・トリプルカノン」に「炸裂弾頭」を装填していた。
 二つの銃撃網が咲き、マグナートへと突き刺さる。
「ダメ押しでラピッドシュートも喰らいやがれ。さて、上半身と下半身のどっちが本体なのやら」
 こちらへと【使徒AI】お局様は敵の位置情報を常に報せてくる。
「オーケー、オーケー! 今回の観客はアマゾナス・マグナート様ご一行だね? 我々鶏肉騎士団の演目、堪能して貰おうじゃない!」
 声を張り上げた紫月 幸人は星音を響かせる。
「それじゃあミュージックスッタァーートゥッ! 百花繚乱!」
 「ヒレイクリスタル」で七人の分身を操り、バックダンサーとしてノリノリの踊りを踏ませる。
 「ノクターンフルート」の音色を響かせ、「桜吹雪【星素】3」は取り巻きのバルバロイを弱体化させる。
「前線の負担を減らすのが俺の役割さ。さぁ、バルバロイ連中にはとっておきの耳障りな音楽を奏でましょうかねぇ!」
 アマゾナス・マグナートの視線がこちらへと向く。
 息を詰まらせた幸人は空間を駆け抜ける諏訪部 楓を視野に入れていた。
「上半身と下半身がそれぞれ違う特徴を持っていますし、両方叩き潰さないと行動不能にできない……と予想します、と言うわけで私は下半身側の顔を攻撃しましょう。行きますよ! デュランダルッ! 今の私なら貴方の力を全て引き出せます!」
 搭乗した「デュランダルⅢ」より「星楔」を投擲し、アマゾナス・マグナートの下半身に突き刺す。
 「地裂斬」の効力を得た「グランドスマッシャー【グランドスマッシャー】」を思い切り打ち付け、衝撃波が拡散していく。
 しかし、まるで通じた様子もなし。
 即座に【使徒AI】敏腕サポーターの持つ「戦機同調」を用いて振るわれた鎌のような鉤爪の一撃を掻い潜る。
『今回の敵はちょーつよそうだから有能な私が回避も攻撃も完璧にサポートしてやるッスよ、先輩』
 「アンラッキーヒット」の効力も期待したが敵はそのような幸運のような要素を排除し切った相手だ。
「応えてください、デュランダル! 貴方は今この戦場で誰よりも強い一撃を出すことができるんです!」
 攻撃を叩き込もうとして開いたのは格納されたミサイルである。
 「呼吸式加速装置」による急速後退と「緊急回避」で空を舞うミサイル群を回避し、楓はその攻勢を見据える。
「私に反撃を集中してくれるのなら好都合です。松永さんの攻撃がより決まりやすくなるでしょうから」
 キョウ・イアハートはその攻防を眺めつつ、「シュワルベWRdrei」に同乗する優・コーデュロイルージュ・コーデュロイを意識する。
「アマゾナスの本丸がついに出てきたかよ? アークの連中を苗床にしてバルバロイを増やすとかまた笑えん話を。こっちもまたあの下剤を飲むのは勘弁で。……なんて冗談はさておき、コマンダーを叩き、後顧の憂いを断つ。なあに、うちらの騎士団もコマンダークラスの相手とやり合うのは初めてじゃない。相手の手札はさておき、デカブツ相手に腹を括れるのは強みだぜ。その強みを存分に活かすために歌姫らの力を届ける翼を翻してみせようさ」
 スタンドガレオンの眼になるのは【使徒AI】メルセデスである。
「この存在がアマゾナスの統括個体。彼女を倒せばバルバロイ・アマゾナスは烏合の衆となるのであれば撃破は必須です。彼女たちも生きるのに必死なだけ。なら私たちも全力でそれに応えるのみ。私たちの慈愛と愛の星詩を届けましょう」
 ルージュも優と視線を合わせて首肯する。
「彼女が統括個体なのね。私たちの全力で応えることが彼女へ渡す最大の愛よ。さぁ、私たちの星楽を楽しんでいって!」
 「歌姫の呼吸法」で高め、「プロジェクターハーモニクス【プロジェクターハーモニクス】」の力で星詩の力を底上げし、「ロイヤルクリムゾンドレス【ロイヤルクリムゾンドレス】」を振るい、「セイレーン・sfz【マーメイド・スフォルツァート】」の宝石を星楽と共鳴させる。
 ルージュの歌い上げる星詩は「ラブミー!【【星詩】8】」――それは愛の歌である。
 愛の意義を力強く歌い上げる星詩が紡ぎ上げられる中で、優も「ネプティネス・サファイア【ネプティネス・サファイア】」によって能力を向上し、「ロイヤル・ウルトラマリンドレス【ロイヤル・ボールガウン】」を振るうことで星詩の力を高める。
「人魚のsfz【マーメイド・スフォルツァート】」のオーラが身を包み、共鳴して放つ星詩の名は「ウェイクアップ【【星詩】8】」――アップテンポのメロディーが奏でられ、折れそうな心や諦めかけた性根を癒す優しいリズムである。
 さらに星詩と併用して「妖精合唱団」を展開し、バックコーラスを相乗させる。
 スレイ・スプレイグは【鶏肉騎士団】の仲間と共に波状攻撃を仕掛けようとしていた。
「アマゾナスの攻勢を止めるためにもマグナートの撃破は必須でしょう。サヴィジのコマンダー同様、強敵でしょうが我々も負けるわけにはいかないのです。全力で打撃を与えて爆弾の起爆するチャンスを作りますよ」
 乗り込んだ「コールブランド・バロン【コールブランド】」の「隠し腕【孫の手】」には「ヒーターシールド」を装備し、スプレーマジックミサイルを発射して取り巻きの勢いを削いでいく。
『スキル支援とバレルロールによる回避。そしてシルフィード・ブレイザーでの攻撃支援を行うわ』
 【使徒AI】学級委員長によって風圧の斬撃が取り巻きのバルバロイを払っていく。
 朝霧 垂も同じく、波状攻撃に参加していた。
「せっかく辿り着いた楽園なんだ。これからを生きていくために負けるわけにはいかねぇよな!」
 戦場を飛び回る「デュパンダルカスタム【デュランダルⅢ】」に「デュアルソード」のスキルを活かして両腕に「斬騎剣」を一組提げた状態となる。
『因子倹約で垂の無駄遣いを抑制し、垂と共に戦局把握を行い味方との距離を十分に確保します』
 【使徒AI】お局様のサポートを得つつ、味方の位置を把握――アマゾナス・マグナートの放射するミサイルの攻撃網を記憶させる。
「甲殻の内側からミサイルを全方位に向けての掃射……ったく厄介な装備だぜ。それだけじゃなく近接もやれるって言うんだから、こっちとしちゃあな!」
「呼応式加速装置」で肉薄し、ミサイルの格納部分へと「斬騎剣」の刀身を噴射させる。
 突き刺さったのを関知してから「啄木鳥払い」の斬り上げで甲殻の内側を引き裂いてみせる。
「まず一つ! これは挨拶代わりだ!」
 しかしアマゾナス・マグナートの擁するミサイルの格納箇所はおびただしい。
 甲殻の内側で蠢くミサイルの弾頭が今か今かとその時を待ち望んでいる。
 スレイも「呼応式加速装置」で剣術の速度を引き上げ「九十九斬」を叩き込む。
 甲殻を切り裂いた一閃だが、その程度では有効打にはなりはしない。
 松永 焔子はその威容を見据えて感嘆の息をつく。
「まるでサヴィッジのコマンダーを想起させる威容。アレと同程度の力があるのでしょうが、実にぞっとしない話です。どの道、私たちに奴を討伐しないと言う選択肢はないのです。【鶏肉騎士団】の総力を挙げてこの危機を乗り越えますわ!」
 【使徒AD】シャルロッテには領地の規模の拡大を指示し、最前線での生活基盤を整えさせていた。
 「デュランダルⅢ」に搭乗し、「孫の手」に「バスタードソード」を装備させ、「スピットファルクス」と「スカッカム【アイス・カンプガイスト】」を携行して飛翔する。
 機体のフレキシブル・バーニアで加速し、人型の頭部を狙い澄ます。
 「デュアルソード」によって両腕の武装を閃かせ、「烈火一払」をすれ違いざまに叩き込む。
 人型の上部を焼き切ったつもりであったが、アマゾナス・マグナートは健在――否、それどころか効果的なダメージにも至っていない。
「やはり……一撃程度は防ぐ……!」
 【使徒AI】アベルの「フォーリングザン」が返す刀を生じさせるも、敵から生じたミサイル群の一斉掃射が視界に大写しとなり、「自律防御」で回避と防御を実行する。
 キョウのスタンドガレオンより放たれた「スピーカー・マイン」がミサイルの攻撃軸を引き受け、攻勢を変移させてみせる。
 白森 涼姫は驚異的な大きさと攻撃性能を誇るアマゾナス・マグナートへと睨む眼を向けていた。
「こりゃまたバルバロイ・コマンダーを彷彿とさせるデカさと力を感じますね。あの時は大勢の犠牲者を出して何とか打倒できましたが今回は……。いえ、彼方が此方を学習し強くなっているように此方も彼方との戦闘で学び強くなっているわけですし一度できたことをもう一度やり遂げるだけですね。こちとら、クレイジー野郎こと【鶏肉騎士団】の最前線担当にして厨房を預かる料理長! いつも通り祝杯を上げるために解体してあげますよ!」
 「デュランダルⅢ」に搭乗し、「ムラマサブレード」を「トルネード・シース」に納めて「呼応式加速装置」による加速を得る。
 【使徒AI】駆け出しアシスタントの「戦局把握」を得つつ、自らの「戦場の観察眼」で敵の動きを認識し、アマゾナス・マグナートより放出されるミサイルの砲火は「緊急回避」とフレキシブル・バーニアを駆使して回避運動に入る。
 それでも追いすがってくるミサイルへと風の力を開放した太刀筋による鎌鼬を飛ばして迎撃し、その噴煙を引き裂いて涼姫は接近を果たしていた。
 「燕返し」の効力で背後を取り、上部に位置する躯体へと風圧の刃を見舞っていた。
「ダメージは蓄積するはずです!」
 「コールクラーク」に搭乗したミラ・ヴァンスは「ムーンサルトターン」の曲芸飛行で躍り上がり、「ドロップインベント」の軌跡を描きつつ、「プチメテオ【【炎嵐・星音】5】」による小型隕石を襲来させ、涼姫へと照準されかけたアマゾナス・マグナートの注意を引く。
「今回はジオマンサーではなくビルドチューナーとして、妨害に徹するだわさ」
 ライオネル・バンダービルトは敵勢を睨んで「マランゴーニDM」を操る。
「デカブツは二度と御免こうむりたいところだったが、間を置かず土地ごと来るとはな。往々にしてやべぇ展開しかなかったが、ここを凌げばあの土地、奪えるんじゃあないかね。さて、頑張りますか」
 甲殻の内側で今も蠢動するミサイル射出口へと「ライトニングロア」を砲撃し、「ネイバースフィア」を浮かび上がらせ、次々と攻撃を引き絞っていく。
 「エスケープスナイプショット」によるスタンドガレオンの曲芸で相手の攻撃は回避し、火線を切らさない。
 ミサイルの追撃には「フレアデコイ・プロトコル【フレアデコイ・プロトコル】」による防衛でかわしつつ、「ハナビ・ディスターブ」の火球による撹乱も実行していく。
「ドロップインベント」の飛翔能力でミサイルを潜り抜けるスタンドガレオンを【使徒AI】お局様が「因子倹約」でサポートする。
『因子残量を監視、抑えるところは押さえて長期戦に対応できるようにします』
「アマゾナスとの戦いも正念場です。【鶏肉騎士団】の意地を見せてやりましょう!」
 スレイは「烈火一払」の一閃を叩き込むが、それは既に相手に記憶されている。
 だがそれだけでは終わらない。
 追撃のスプレーマジックミサイルが甲殻に突き刺ささり、爆風が拡散する。
 風圧の刃を見舞って応戦しつつ、ミサイル群の一斉掃射を機動力で掻い潜る。
 垂は「獣王【星素】4」を使用し、パンダ型のオーラを身に纏う。
 それは身体と視覚を強化し、刃の突き立ったミサイル射出口へと手首を高速回転させることでその肉体を抉っていく。
 アマゾナス・マグナートが甲高い悲鳴にも似た声を発し、ミサイルを掃射するが、垂はその新たなるミサイル噴射口へと刀身を射出、回転軸を伴わせて抉り込む。
 幾何学の軌道を描いて垂へと迫るミサイル網をもう一方の剣のレンジを伸ばした状態で高速回転させて刃による疑似シールドを編み出していた。
「そういえばサヴィッジの奴ら、一応自分たちの拠点であるこの大陸が襲われているって言うのに抵抗勢力の一つも出しやがらないのな? 共倒れを喜んでいるかもしれないけれど、もし俺たちが負けたら俺たちを吸収して強化されたアマゾナスと戦うことになるだろうになぁ。……まぁ、共闘したいってわけでもないけれどな」
 キョウのスタンドガレオンより「エスケープスナイプショット」の銃撃網が迸る。
 ミサイルの包囲陣を恭也は「バレルロール」で回避し火線を途切れさせない。
 楓の「星楔」が甲殻に打ち込まれたのを嚆矢として焔子は勝負をかけていた。
 それは全力の「穿孔突き」――両手の剣とサブアームの有する剣筋の三点が今、一点に集約され敵を葬らんとする。
 ミサイル群が阻もうと一斉掃射されるが、それでも留まるところを知らない。
「貴女には色々言いたいこともありましたが、今言いたいのは一つだけ。――くたばれ、バケモノ!」
「ダメージの蓄積に期待しつつ、このままの距離を保って――」
 その時、アマゾナス・マグナートの甲虫部位より粘液を伴わせて出現し、鎌首をもたげたのは巨大なる砲身であった。
 総員が息を呑み、回避行動に移る中で焔子は頭蓋を見据える。
 ――ここで下手に退けば、好機を見失う。
 しかし、と歯噛みしたその時、涼姫が躍り上がっていた。
 荷電粒子砲――呼称「ギガボルター」の部位に向け、フレキシブル・バーニアを連続使用しての「呼吸式加速装置」で臨界加速を行い、砲身に向けて「烈火一払」の纏った炎を風圧の刃の勢いを借りて業火を超えた「業炎」と成す。
「――直撃は、させない――ッ!」
 払った刃の一撃に呼吸を詰めて。
 一閃は、しかし彼方の砲撃を前に上塗りされていた。

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