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楽園の覇権争い

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楽園の覇権争い
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・赤い軍勢を見据えて

 向かってくる軍勢を目の当たりにした青井 竜一はまずは、と「ユリウスの鎧」に身を包んだ状態で速力を上げていた。
 狙うのはスポッター型バルバロイである。
「新しい機体も手に入ったしな。様々な戦況に応じやすい、俺にとっては良い機体だよ」
 まずは牽制砲撃を行い、スポッター型を炙り出す。
 こちらの戦局を探る眼となっているスポッター型へと「斬騎剣」による「穿孔突き」の衝撃波を巻き起こして数を稼いでいく。
 太刀筋は「ソードアシストユニット」で向上させ、刀身部分を射出し、遠距離での応戦も奏でてみせる。
 自在に操る刀身が閃き、バルバロイの装甲を射抜いていく。
 スピードスター型バルバロイの特攻を「緊急回避」で受け流し、ツインカノン型の砲撃網を「バレルロール」で回避する。
「攻防は一体、なんてな!」
 スポッター型へと狙いを絞り、「啄木鳥払い」の斬り上げがその個体を叩きのめしていく。
 刃を押し上げての再加速による一撃が食い込み、表皮を引き裂く。
「戦場は生き物だから、今の状況でどの敵に当たるかは、戦局を見て判断だ。手札が色々と、な」
 大写しになったツインカノン型の砲身に、「竜の瞼」を粉砕させての急加速で光条を掻い潜って剣閃が打ち込まれる。
「手応えあり! ドラグーン駆っているのは伊達じゃない」
 八重崎 サクラはスポッター型を粉砕した竜一の剣筋を眺めつつ、攻勢してくるバルバロイの軍勢に構えを取っていた。
「ステージに乱入なんて、ちょっとマナーができてないんじゃないかな! 八重崎サクラ……突入するよ!」
 スピードスター型の突入軌道を見据え、ジル・コーネリアスのイダテン「リッケンバッカー」に同乗していた。
「アイドルとして、そこは見過ごしてはおけません!」
 「リンクバングル」を身に着けたジルとサクラは呼吸を合わせ、機動力でスピードスター型を凌駕する。
「わたしたちのステージに付き合ってもらいましょうか! そのくらいの動きなら十二分に対応できます!」
 「ソリッドアーツ」の立体駆動で敵を翻弄し、「ムーンサルトターン」の曲芸飛行で直上を取る。
「生憎だけれどこういう高機動戦は慣れっこなのよっ!」
 サクラは「トーイングステップ【トーイングステップ】」に飛び移り、半径を狭めつつ円弧の軌道で接近していく。
「逃がす……かぁっ!」
 「天逆鉾【Rs】」による格闘戦術が咲き、攻撃加速を上げて連撃を叩き込んでいた。
 敵を翻弄するようにジルも飛び移りながら相手へと肉薄し、「飛来剣」に噴出をかけて投擲――旋回していく刃がスピードスター型の装甲を削る。
 その一方で、サクラは連撃からの魔力の拳を叩きつけていた。
「こいつは、おまけぇっ!」
 追い打ちの一撃が食い込み、浮かび上がった敵へと「閃【星素】5【Rs】」の光を纏い、そのまま突っ切っていく。
「まだまだ……これも、持ってけぇっっ!」
 打ち破られたスピードスター型の個体を叩き上げ、スピードスター型が包囲を抜けようとするのをジルは逃さない。
「こんなやり方も……あるんですよっ!」
 放たれたのは「FPW5‐トールハンマー」による雷撃である。
 逃れようとしたスピードスター型が捉えられ、その横合いへとサクラの打撃が叩き込まれていた。
 小山田 小太郎は迫り来る軍勢相手に、唾を飲み下す。
「……不甲斐ないですが、自分たちはマグナートに有効打を与え続けるだけのレベルが足りません。だからと言って、何もできないわけではないゆえに……己のできる全霊をもって、対象の打倒を皆で果たします。さて、皆さん……踏ん張りどころですね……」
 「リッケンバッカー」に搭乗した小太郎は八代 優たちと視線を合わせる。
「ん……力不足を悔やむ暇は、ない……。……支えると、護ると決めたから。……騎士として、歌姫として成すべきことを成す。行こう、小太郎、蓮花、ホニ。わたしたちの夜が降り、桜散る声楽……超えさせはしない……!」
 彼女の乗る「エイヴォンMV」を操る八葉 蓮花は敵勢を睨み、声にしていた。
「あの学習能力に、あの容姿……確実に人に近づいているわね。本当、厄介な相手だけれど……それを打破するための知識であり、連携よ。生憎と元は悪戯好きな天狗なの。その学習すら超えた連携力で、相手の学習を超えて打倒するわ。……まずは……その取り巻き、排除させて貰いましょう」
 「クールアシスト」によって状況を冷静に把握し、スタンドガレオンの位置取りに注意しながら、蓮花は「轟雷砲【ライトニング・ロア】」の砲塔を突き出し、雷の砲弾による支援砲撃を見舞う。
「ああ、皆の言う通りだ。取りうる手段をもって、最善を成す……騎士として成すべきことに、変わりはない」
 それに、と防人 ホニは言葉を継ぐ。
「護ると決めた。なら、後はそれに至る道を駆け抜ける以外の選択肢はありはしない。教導官が作戦、全力で支援する。先ずはその取り巻き、打倒させて貰うぞ!」
 「エスカリボール」に搭乗したホニは飛翔し、敵勢を見据える。
「学習するのは奴らだけではない……そう動き、捉えたぞ」
 「全知識総動員」で友軍に優位な状況を見極め、「トライアルアーツ」の心得を持った「マギ・ダブルカリヴァ」の二丁拳銃による援護射撃で敵の動きを誘引する。
「全霊をもって皆を護り、そして脅威を打倒する一助となります。こんな者でも“レンスターの鉄扉”たる団長が率いる騎士が一人。我らなりの形で必ずや彼の脅威から皆を護り、支え……バルバロイたちの脅威を、ここで打ち払います」
 「ブルームアンサンブル」を掲げ、花の魔弾が敵の軍勢へと突き刺さる。
 スピードスター型とツインカノン型の注意が向いたのを確認してから「情況予測」で戦局の変動を視野に入れる。
「連携し、力を合わせ……追い込みます。我らが活路を拓きましょう。優さん、頼みますよ」
「……響かせるは、春告げる夜。……桜華鏡の音色をもって帳を降ろし、脅威祓う活路と成す」
 小太郎が「星音:桜華鏡の守護領域【【星音】8】」を展開する。
 空から降り注ぐ桜の花弁が光を屈折、反射させ桜吹雪が空間を満たす。
 華やかな花弁の瞬きは彼らの動きをバルバロイに悟らせない。
 それに加えて紡がれたのは「星詩:闘うアナタに春夜の帳を【【星詩】7】」である。
 それは共に戦う仲間、護るべき人々にとっての春の陽気溢れる夕暮れ。見る者を癒す歌声である。
 バルバロイの視界を閉ざし、宵闇の空間を敵勢に落とし込む。
 「ブルームド・カンタービレ」を通して星詩を響かせ、相手の動きを阻害し、逆に仲間たちにしてみれば背中を後押しする癒しの活路。
 優は纏った「イノセンスブライト」を払い、舞い踊る。
 その挙動は「光臨の舞」となって、バルバロイの精神攻撃から騎士たちを守護する。
「わたしにできる全力の支援を届けて……小太郎たちの集中攻撃や他の仲間たちの攻撃が通るように……歌姫の責務を果たそう……」
 「エスケープスナイプショット」による宙返りでスピードスター型とツインカノン型の攻勢を回避した蓮花は「ライトニングレイン」による光の集約からの一斉掃射でバルバロイを砕いていく。
 回避する個体も居たが、爆発を引き起こした稲光が誘爆の噴煙を上げる。
 ホニは「マークスマンドクトリン」の射撃術で動きながら敵を狙い澄まし、「ラピッドシュート」の二丁拳銃の銃撃網が敵を押し退け、「ショットアシストユニット」の能力の底上げも手伝ってバルバロイを撃ち抜いていく。
「ここで奴らの脅威を打倒する!」
 スポッター型がこちらを捉えたのを目にした小太郎は「ドロップインベント」の曲芸飛行で次々と回避し、「ヒレイクリスタル」の分身も帯びて誘導も引き受ける。
 流れ行くスピードスター型バルバロイへと狙いを据えたのは風間 瑛心である。
 「パラーシュ」に搭乗した瑛心は飛翔し、「呼応式加速装置」でスピードスター型の群体へと飛び込んでいく。
 「殺気関知」と「流刀消力」を利用しての攻撃の回避と受け流しで敵軍勢の只中を「バレルロール」を駆使し、「燕返し」の操縦技術で敵の背後を取っていた。
 駆け抜け様の「ナックルシュート」の一撃が食い込み、射出したワイヤーを利用しての敵勢の巻き込みも得て相手の拘束と無力化を手伝う。
「……これで少しは……敵の動きを鈍らせられるか」
 キャスリーン・エアフルトは動きを止めたスピードスター型を見据え、「シャインライズ」を打ち上げる。
 その輝きと続けて発生させた「銀霧【星素】1」によって行動軌道を偏向させた敵の挙動を見逃さない。
「進路のコントロール……。スピードスター型の動きを一定に制することもできるはずです」
 「ニンブル」の反応加速術を得てキャスリーンは敵の動きを報告する。
「こちらエアフルト……紅の月の散弾砲の射程に追い込み始めました。敵の個体数は多数……砲撃での仕留めにかかれればと」
 イドゥ・ムル・ルード【使徒AI】女教師の「ターゲットロック」のサポートで敵の動きの変遷を認めていた。
「うまくできるかどうか分からないけれど、何とか頑張ってみましょう。元々、何かを観察するのは好きだから」
『イドゥさんのサポートをしますね』
 【使徒AD】スカイガンナーはキャスリーンを乗せたまま、スピードスター型を誘導しようとする。
 「星楔【星楔】」を振り回し、スピードスター型の方向性を画一化させていた。
 敵勢は遠ざかりつつも、先ほどの攻撃で逃げ帰るような愚は犯さない。
「バルバロイ、予測地点へと軌道修正。攻撃位置は最初の地点に固定」
 イドゥは「遮蔽物利用」でバルバロイの視線から逃れつつ、報告を怠らない。
 キャスリーンは「パラメトリック・スカイハイ」を掲げて雲を生み出し、先頭の二体のスピードスター型を絡め取る。
「こちらエアフルト。敵の動きを削ぎました。紅の月へ――!」
 その報告を受け取ったのは邑垣 舞花を含む【アルガス騎工団】であった。
 紅の月の表面にて砲撃ポジションを確保し、搭乗した「アロンダイト」の擁する固定武装ガストラフェテス砲の砲身を突き上げていた。
「ドラグーンレーダーで敵の動きを感知。敵の勢力図はどうなっていますか?」
 応じたのは【使徒AI】駆け出しアシスタントで、「ドラグーンレーダー」と「戦局把握」を駆使する。
『敵性バルバロイ、スピードスター型を多数確認。友軍による抑えが効いているようです』
 ノーン・スカイフラワー成神月 鈴奈の駆るスタンドガレオン「シュワルベWRzwie」の上で敵を見据える。
 スタンドガレオンの操縦をサポートするのは【使徒AI】メルセデスだ。
 「自律操縦」を駆使しつつ、「レーザーアセンブル」で接近する敵を制する。
 鈴奈は「フレアデコイ・プロトコル」を召喚してのステージの彩りに尽力する。
 「ライトニングレイン」で敵の接近を牽制しつつ、応戦の火線が咲く中でノーンは戦場を真っ直ぐ捉えていた。
「……ものすごい乱戦っぽい戦いの中だけれど、しっかりと立って気合を込めて星詩を歌うよ。歌うのはお馴染みの星詩っ!」
 紡ぎ上げたのは「スプリング・ウィンド【【星詩】6】」である。
「花の歩み【星素】4」の花弁を散らせつつ、「念流の歩法」でしっかりと佇み、「颯【星素】2」による風が吹き上げる。
 風の加護は味方へと勇猛に吹き抜け、同じくスタンドガレオン上に立つ高天原 壱与は星音を奏でていた。
 その名は「ブリーズ・プランタニエール【【星音】5】」である。
 それは乱れた心を癒し、戦うための力を鼓舞する音色。
「ドラマティック・アイリス」の虹色の光が繋ぎ、「エルフの智慧」で「花園【星素】2」による小規模庭園を展開し、花びらを散らせる。
 携えた「ノクターンフルート」の音色を響かせ、バルバロイの視野を奪って攻勢を削ぐ。
 虹色の光の先に居たのは西村 由梨であった。
「バルバロイ知識・甲」を活かし、「アクアオーラマント【カーネリアンマント】」を翻す。
 それは甲虫型に属するバルバロイからのステルス効果も期待できる。
 搭乗する「カリバーンⅡ」の「ドラグーンソナー」に映し出された敵影を睨んで、【使徒AI】学級委員長の補助を得ていた。
『遠距離攻撃を開始します』
 「シルフィード・ブレイザー」のカマイタチが払われ、スピードスター型の初手の動きを制する。
 向かってきた敵勢に対し、「クロスラインシールド」で受け流しつつ、「流刀消力」で最低限度のダメージに留め、「【朱華】アムド・フレクスランス【アムド・フレクスランス】」を現出させる。
「そこなのだわ。前回の経験を活かせないとでも思った? 包囲のタイミングや攻撃時の優先順位、近距離攻撃と遠距離攻撃のバランス。私ほど、浮遊大陸でバルバロイの集団攻撃を経験することができたものは居ない。この経験を武器として使わせてもらうのだわ」
 「九十九斬」の斬撃軌道が劈き、スピードスター型を引き裂いていく。
「ヒルデさん、愛須さん。お互いに死角や隙をケアしていきましょう」
「任せて。……油断はしない。行くわよ、デュランダル。アルガス騎工団一番槍! 我が身は槍の穂先!」
 ヒルデガルド・ガードナーは「戦局把握」で周囲を関知し、春告げる歌姫の支援も得つつ軍勢の察知に努める。
 領地経営として保存がきく作物の開墾を指示してから、戦場を見据えていた。
「スピードスター型、それもまぁまぁの数。先頭に居た敵は前を行ってくれている方たちが押さえてくれているわ。今ならば砲撃で仕留められる敵も多い」
 スピードスター型のうち、抑え切れない軍勢がこちらへと流れてくるのを、ヒルデガルドは「【濡羽】アムド・フレクスランス【アムド・フレクスランス】」による黒金色の槍を具現化し、敵へと投擲していた。
「甘いっ! 来い! 我が身は守るべき刃の盾!」
「戦局把握」を駆使しつつ、「戦場の観察眼」を切らさずに接近する敵影を「トルネード・シース」に納めた「アイス・カンプガイスト」を閃かせ、風と冷気を放出していた。
 「迅雷一閃」の風圧がスピードスター型を捉え、そのまま斬り伏せていく。
 水野 愛須は「ノーマ・クラリッサ【パラーシュ】」に搭乗し、ふんふんと鼻歌を漏らす。
「今日も今日とて虫退治ー。さて、久々に騎工団としてのミッション、腕が鳴ります。さて、ぶっ飛ばしていきます。一番槍はヒルデさんに取られてしまいましたが、こっちだって囮くらいはできるんですからね」
 「戦局把握」を張り巡らせ、「戦場の観察眼」による敵影の補足、行動の予見を行う。
 「九十九斬」の動きで敵の注意を引きつつ、機動力で相手を翻弄し一撃を回避し様に「【青藍】アムド・フレクスランス【アムド・フレクスランス】」を現出させ、敵を引き裂く。
 向かってきたスピードスター型の攻勢には「セイレーン・イージス【ローレライ・シールド】」による受け流しを行いつつ、「龍の翼膜【D】【龍の瞼〈D〉】」によって強化された装甲で防御は万全である。
 ヒルデガルドが冷気の刃を叩き上げて先陣のスピードスター型を浮かび上がらせ、それを由梨が「牙竜突き」による貫通力で突き抜けさせる。
 それは平常時よりも壱与の収束モードで強化された一撃であった。
 堅牢な装甲を射抜き、敵勢がうろたえた隙を逃さず、愛須の「烈火一払」の火炎一閃が舞い上がる。
 スピードスター型が砕け落ちていく中で、舞花の声が響き渡っていた。
「敵軍勢の動きが鈍りました。これよりガストラフェテス砲と小口径艦砲の一斉掃射に移ります。予定射線は滞りなく」
 固定アンカーを打ち込み、照射に向けて舞花は敵影を捕捉する。
 直後、放たれた極太の光軸がスピードスター型の軍勢を引き裂き、爆発と光の螺旋の彼方へと葬り去っていった。
 既に味方は射線から逃れ、その攻勢を見極めている。
「レイグランドワーク」によって麗羅から許可を得たゲルハルト・ライガーが「ネブカドネザルV世改【シュワルベWRzwie】」を出撃させる。
 彼が提案していたのは大きく二つ――まず哨戒の分担実施、二つ目は超大型ステージに異動ステージを設置させ、後者はガレオンを移動ステージとし、有事の際における緊急回避場所に充てるという策である。
 【使徒AI】お局様が「バルバロイ知識・甲人」を駆使して声を飛ばす。
『敵性スピードスター型、及びツインカノン型、今しがたの砲撃で多数沈黙。しかし、未だ健在……!』
 同乗したエルミリア・ライガーが敵勢を見据え、「マーメイド・スフォルツァート」を装着して星素のスキル威力を底上げする。
 「念流の歩法」で激しい振動を物ともせずに踏み出し、決意を胸にする。
「……今度こそ! 今度こそ絶対! 敵を食い止めます!」
 両手を広げて紡ぎ上げた星詩は「波濤のごとく【【星詩】8】」――その旋律が押し広がっていく。

やるせない涙が 海となって
とめどない想いが溢れ うねりになる

嗚呼! この時が来るのを どれだけ待ったんだろう?
(今度こそ! 今度こそ!)

猛る紫瀾が 海原を駆け
ぜんぶ ぜんぶ 飲み込んでいく!
涙も! 想いも! 悲しみも……!

砕け散る波濤が 水泡と舞って
そして海へと 還っていく
新たな はじまりのために

 星詩の波が「人魚の発声法」で拡散され、波を呼び起こし敵を呑み込んでいく。
 無数の泡が構築され、歌と踊りに呼応し破裂した衝撃波がバルバロイの攻勢を削いでいく。
 「ピレリWS」を操るモーブ・マクドールはその歌声を聞き届けつつ、声にしていた。
「俺はあんたたち、歌姫が思い切り歌い続けるのを助けたい。ただ、それだけだ」
 「メンテナンス・サップ」を施された機体たちは防炎と機動性の向上がもたらされている。
「ミハエルの爺さんがゴールキーパー、教授とエルミリアちゃんがスイーパーとしたら、俺は……ゴールポストみたいなもんさ」
 高度を落とさないように心がけつつ、放たれるツインカノン型の砲撃は「ジェットホバリング」で回避する。
「おいおい! あぶねぇだろ!」
 「星楔」を有しているが、バルバロイ除けの御守り程度なものだ。
 ゲルハルトは「ミラージュ・コーティング」のステルス性を活かし、有利な相対位置を確保している。
 「セイントオーダー」の虹色の光芒がツインカノン型に突き刺さっていた。
「ステージへは砲撃させんぞ!」
 向かってくるスピードスター型には「フレアデコイ・プロトコル」の囮を用いて攻撃を逸らし、「エスケープスナイプショット」の曲芸飛行で好位置に陣取ってから「ネイバースフィア」を浮遊させていた。
 それぞれが敵目標を捉え、攻勢に打って出る。
「これならどうじゃ!」
 弾頭がスピードスター型に突き刺さり、爆発の光を煌めかせていく中で斬り込んでいくのはミハエル・ゴッドバルドの「エスカリボール」である。
「ミハエル・ゴッドバルド、参る!」
 「ビートルバスター」の太刀筋が閃き、声を吹き込む。
「斬る!」
 スピードスター型を両断し、そのままツインカノン型の砲撃網を潜り抜けていく。
 ステージで展開する味方に被害が及ばぬように、「護国方陣」を展開して弾いていた。
「やらせん!」
 バルバロイが突っ込んでくるのを「クロスラインシールド」のマジックミサイルを掃射し、勢いが削がれたところを刺突する。
「とらえた! ここだ!」
 スピードスター型の攻勢を「流刀消力」で受け流しつつ、「アークライト流流水斬」の斬撃網が向かってくる敵を斬りさばき、一対多に長けた刃が跳ね上がる。
 流れるような刃の応酬で装甲を引き裂き、ツインカノン型を見据えて「セイクリッドマント」を翻し、「穿空斬」の剣閃が突き刺さっていた。
「むうん!」
 ツインカノン型が頭部を爆ぜさせ、砲撃網へと切り込みが入る。
 エルミリアの展開する「舞踏水泡【星素】4」が空域に浮かび上がり、「水鞭【星素】3」で動きを止めた刹那には弾け飛んでいた。
「絶対に、食い止めてみせるんだから……!」
 苺炎・クロイツはスポッター型を視野に入れ、レナ・ポーレのイダテンである「リッケンバッカー」に同乗していた。
 レナが奏でるのは「悠遠【星素】0」である。
 「オーロラディスプレイ【星素】3」を展開させてここまでの旅路を思わせ、奮戦の心意気を保たせる。
「バルバロイにとっては全てが恐ろしいのではなくて? ……人の抱いた執念が。さぁ、立ち向かいましょう」
 苺炎は「舞えない泡沫【【雨・星詩】5】」を紡いでいた。
 それはしとしとと降りしきる雨音、眠気を誘い銀の泡沫が舞い上がる。
 「ネプティネス・サファイア」で強化し、「舞踊水泡【星素】4」を出現させて眠気と目隠しを拡大させていた。
「【レリクス】アメノオハバリ」を纏い、「歌唱戦闘」を執り行う。
 眠気で鈍った敵を優先的に「豊穣神の大鎌【Rs】【デス・サイス【Rs】】」をボードにして自らごと空中を滑走――すれ違いざまの敵影を刈っていく。
 【使徒AI】お局様の「因子倹約」と「バルバロイ知識・甲人」で的確に標的を切り裂いていく。
 「念流の歩法」でバランスを保ちつつ、アイサインを送っておいたレナが敵を斬り込んだ先で「ウィズダム・クロック」によって足場を間に合わせていた。
 「ドロップインベント」の光の撹乱が着地時の隙を生じさせない。
 そのまま敵の一群を抜け、苺炎が舞い戻っていた。
 【使徒AI】鬼教官がイダテンの操作を補助し、ツインカノン型からの砲撃を回避させる。
「戦いはここからのはず……バルバロイ、アマゾナス・マグナート……」

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