・オーバーチュア騎士団1
オーバーチュア騎士団は、オワリ武芸団と連携して、アマゾナス・インターセプター撃破のため動いていた。
団長の
リズ・ロビィには、密かな目的があった。
それは、アマゾナス・インターセプター本人と一度でいいので語ってみたいというものだ。
「本人の言動を考えると、美意識を持っているとしか思えないのさー。芸術家志望の身としては、美意識を持つバルバロイは興味が尽きないのさ」
独り言を聞きつけたのは、カオルコ・オワリと話を終えた
今井 亜莉沙だ。
『その感覚はちょっとよく分からないわね……』
「美意識じゃなくても、亜莉沙と共通の趣味とかならどうさー」
『う。それは、ちょっと、興味がある……かも?』
分かるような、でもそんな自分にもちょっと納得がいかないような。
亜莉沙はそんな、何ともいえない表情をして首を捻っている。
ちなみに、ふたりはそれぞれ
【使徒AI】バロックと
【使徒AI】バロックを別行動に出しており、リズのバロックの方は栽培された茶葉で炊かれたブランド米『大和の地』の贈答用おにぎりを特産品とするべく、亜莉沙のバロックは駐屯地近くの森の奥の調査のため、この場にいない。
「戦況を再確認するさー。あたしたちが対応するのはアマゾナス・インターセプターさ。現状キルデア騎士団やリーシュ騎士団の味方、無所属の味方、カオルコさん率いるオワリ武芸団らが相手をしているけれど、あと一手足りないさー。その一手を、あたしたちオーバーチュア騎士団が受け持つさ」
「あ、カオルコさんからは共闘の了承は取れたわよ。向こうとしても、助太刀は願ったり叶ったりですって。で、作戦はもちろん考えているのよね?」
カオルコの話題をさっそくリズが出したので、つい先ほどまでそのカオルコと挨拶ついでに交渉していた亜莉沙が、その結果をリズに報告しつつ、話の先を促す。
「それは僥倖さー。むっふん、もちろんさ。フォワードはアリサ、茜、カオルコ団長のスリートップで、超攻撃的布陣を敷くさー。ミッドフィルダーは杏樹と火屋守に任せるさー。ふたりには、攻撃と守備のチーム全体のペースを調整してもらうさ! マンツーマンよりゾーンディフェンス、攻撃と守備の間に生まれる空白を、上手く埋めて欲しいのさー」
『ふむふむ』
サッカーに例えるリズの話を、亜莉沙は相槌を打ちながら聴いている。
「チームの守備は川上のとっつぁんとあたしで固めるさー! 特に精神攻撃の対策はとっつぁんにかかっていると言っても過言じゃないから、頑張って欲しいさー! あたしはとっつぁんをフォローしつつ、司令塔として指示を出していくさー」
『つまり、前のめりな戦術なのね』
「そうともいうさー」
リズと亜莉沙の話は、オーバーチュア騎士団の全員が聞いていた。
むしろふたりとも、最初からそのつもりでこれ見よがしに会話している素振りがあった。
自然に、作戦への理解と意思統一が深まる。
『わー! カオルコ団長と一緒の戦闘だー!』
竜装騎“暁参式”に乗る
水瀬 茜がはしゃぎ、その様子を機体に搭載された
【使徒AI】敏腕サポーターが微笑ましいものを見る目で和やかに見つめている。
『義によって助太刀いたす……か。嫌いじゃないよ、そういう考えは』
空艇“蒼鷹竜”を操縦しながら、
【使徒AI】女教師の助言を受けつつ
壬生 杏樹が作戦に応じて位置取りを微調整している。
「友好関係を抜きにしても、大事な隣人を助けるのに大仰な理由は必要ないぜ」
コールクラークに乗る
火屋守 壱星も、準備万端のようだ。
【使徒AI】お局様と一緒に、作戦の始まりを待っている。
「ねーねー、私はー?」
『ステージから私の援護を頼むよ』
「分かったわ」
改めて杏樹から指示を受け、
ガーベラ・スカーレットが配置につく。
「私が作戦の柱……。胃が痛くなってきました」
『大丈夫ですよ。わたくしが支えますから』
ステージ上で、弱気な表情で腹を押さえる
川上 一夫へ、センペリットURの操縦席から
川上 実麗がほほえみかけた。
最後にリズが、全員の準備が整ったことを確認する。
「それじゃあ、作戦開始さー!」
号令を合図に、一斉に全員が動き出した。