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楽園の覇権争い

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楽園の覇権争い
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・ベイグラント騎士団と二振一具1


 ベイグラント騎士団は、イペタムとその周囲にいるバルバロイたちを相手取っていた。
 総合的な全体指揮を取るのは、団長である砂原 秋良だ。
 秋良の指示に従い、星川 潤也は動く。

「イペタムさんは今回も、納屋さんを執拗に狙っているようですね。私たちはバルバロイを蹴散らしながら、隙を見て治癒の星詩で援護しましょう」
『俺たちの仕事は、タヱ子さんの支援ってわけか』

 【使徒AI】敏腕サポーターを搭載した潤也のエスカリボールⅢが、勢いよく飛び出していく。
 その姿を、アーラ・フィオリーニが操縦するシュワルベWRzwieのステージから、アリーチェ・ビブリオテカリオが見送った。
 振り返り、アリーチェは上空にいる秋良へ尋ねる。

「星詩を聞かせるタイミングは合わせた方がいいわよね?」
「ええ。こちらで指示しますので、その時にお願いします」
「分かったわ」

 ディマジオを降下させて答えた秋良に、アリーチェも頷きを返す。
 全ての指示を秋良が出すと、負担が膨大なものになってしまうので、バルバロイたちとの戦いにおける指揮は、ユファラス・ディア・ラナフィーネが引き受けた。

「イペタム以外との戦いではオレが戦闘指揮を執る」
『分かった! 何をすればいい?』
「あの機体の戦闘力と継戦能力を削ぐために、まずは周りのバルバロイを減らす必要がある。宵一さんと組んで向かってくれ」
『了解だ! いくぜ、宵一!』

 十文字 宵一に声をかけ、潤也がバルバロイと交戦を開始した。

『フォローする。先走り過ぎるなよ』

 宵一のエスカリボールⅡが、周囲のバルバロイの位置を確認しながら潤也に加勢する。

『周囲のバルバロイの位置関係には常に注意を払ってくれ。頼むぞ』

 機体に搭載されている【使徒AI】敏腕サポーターに、流動する戦況の把握を頼んでおいた。
 戦いが始まってすぐ、秋良はアリーチェへ星詩を使うよう指示を出した。
 不思議そうに、アリーチェが上空の秋良を見上げる。

「もういいの?」
「ええ。精神耐性を周囲に付与するためにも、早めの使用で構いません」
「それもそうね」

 秋良の意図に納得したアリーチェが、スプリングガーデンを発動した。
 歌いながらステップを踏むアリーチェの周囲で花びらが舞い、幻想的な風景を演出する。
 春風ののような温かい歌声が、肉体と精神の双方に強力な治癒効果をもたらし、戦意を高揚させた。
 影響を受ける味方は、主に潤也と宵一のふたり。
 アリーチェが星詩を発動させたことで、バルバロイたちも能動的に星詩を止めようと動きはじめ、迎撃の必要性が出てきた。

「グラーフさんも一緒にお願いします」
『承知いたしましたわ。スカイガンナー、操縦お願いしますわよ』

 【使徒AD】スカイガンナーの操縦するスタンドガレオンのステージに立ち、グラーフ・シュペーも地母賛歌を発動する。
 大地母神キュベレーへ捧げる讃美歌を唄うグラーフを中心に癒しの力が広がり、治癒力を劇的に促進させて傷の治療と解毒を施していく。
 同時に、距離を詰めていたバルバロイたちを地面から持ち上がった樹根が打ち据え、縛り上げた。
 矢継ぎ早に秋良が指示を出す。

「タヱ子さんたちに加勢し、イペタムを抑える人員が必要です! 伊織さん、向かってください!」
『分かりました。メルセデス、いくですよ!』

 土方 伊織【使徒AI】メルセデスを搭載したデュランダルⅢが、動けないバルバロイたちの間をすり抜けて飛翔する。

「攻めてくるバルバロイの迎撃はオレたちで行う! 各スタンドガレオンの直掩はミーラルさんを中核に、秋良さんとデューンさんも援護に加わって近い個体から順に倒してくれ! ステージにまで到達した個体については、オレたちが始末するから後ろは心配するな!」
『了解ですわ! EXミーラル、出撃いたします!』

 ユファラスの指示を受け、EXミーラルを駆りミーラル・フォータムが動けないバルバロイたちへ向かっていく。

「団長という役職についていても、作戦が動き出せば私も戦力のひとつに過ぎません。さあ、為すべきことを為すとしましょう」
『妖精の皆さんも、お願いしますよ~!』

 ディマジオの親機に乗った秋良と、デューン・ブレーカーの【レリクス】クリュサオルが後に続いた。
 【レリクス】クリュサオルの後を追いかけ、召喚された光の妖精が群れを成し、煌びやかに飛行する。
 ステージの上で、天津 恭司はユファラスと話し合う。

「一応、イペタムとバルバロイの両方を見ておくね。……できれば星詩はイペタムの拘束に使いたいけど、あの速さじゃ当たる前に抜けられるかも」
「そうだな。確かに、その可能性はある。なら、バルバロイも巻き込むタイミングがベストか」
「それなら外しても効果があるね。狙ってみるよ。でも、もしイペタムに当たったら、攻撃を繋げてほしい」
「分かった。秋良さんに進言しておこう」

 ユファラスが連絡し、伝えた結果、その時は秋良がイペタムへ一斉攻撃の指示を出すことになった。
 話し合いの間も、戦いは進んでいる。

『お誂え向きですわね!』

 EXミーラルがインファントキラー<D>を一閃し、無数のかまいたちを飛ばした。
 飛翔する見えない斬撃の嵐が狙うのは、グラーフによって縛り上げられているバルバロイたち。
 一斉に血飛沫が舞い、あちこちを斬り裂かれたバルバロイたちが苦悶の絶叫を上げる。
 動きが鈍くなったバルバロイたちだったが、戒めを振り解き、反撃に出る個体が出てきた。
 動けるようになったバルバロイたちが狙ったのは、ミーラルではなく、その後ろにいた秋良とデューンだ。

『へっ? そっちですの!?』

 狙われると思っていて回避機動を取っていたミーラルがスルーされたことに気付き、慌てて反転し後を追う。

「回避は任せてください! その代わり、攻撃をお願いします!」
『任されました!』

 急降下と急上昇を巧みに行い、秋良が振るわれる爪を避け、閉じられる顎を避けてディマジオの親機と子機が翔け抜けていく。
 すれ違い様に閃いた【レリクス】クリュサオルのエンオウ【Rs】が、バルバロイたちの爪を支える手を斬りつけ、牙が生えた顎を刺して着実に傷をつけていく。

『背後がお留守ですわよ!』

 突っこんできたミーラルのEXミーラルが、一体に狙い定めインファントキラーを斬り上げる。
 受け止める姿勢を取ったバルバロイの防御を強引にこじ開け、即座にD因子の力でインファントキラーを押し上げて斬撃に再加速をかける。
 無防備になった胴体に、横薙ぎの一撃を叩き込んだ。
 真っ二つになるバルバロイだったが、まだ残りが控えている。
 それらに対しては、恭司が動いた。

「足を止めて、その間に倒す。基本だよね」

 水樹風刃を発動し、イペタムを巻き込む形で妨害を兼ねた攻撃をバルバロイたちへ仕掛ける。
 凄まじい速さのイペタムにこそ避けられたものの、バルバロイたちにはきっちり命中した。
 水の鞭と木の根が左右から次々にバルバロイたちへ殴打を浴びせて滅多打ちにし、怯んだところで隙を突き縛り上げる。
 タイミングよく飛来してくるのは、風の刃。
 星詩によって、水の鞭や木の根と同時に出されたものだ。
 避けようともがくバルバロイたちだったが、拘束から抜け出すことは叶わず。
 風の刃は一体のバルバロイに命中し、斬首した。
 残りも動けないうちに倒してしまおうと、ミーラルと秋良、デューンが三人がかりで波状攻撃をかけ、着実に撃破していった。
 バルバロイ側が好機を見出すならば、状態異常による搦め手だが、タイミングをずらして展開したアリーチェと恭司が、イノセンスブライトの加護を周囲の味方に付与することにより、影響を遮断している。
 さらに恭司の星詩を、ユファラスが拡張する。
 発動するのは、フィアンマ・ディ・パッショーネ。
 肌を炙る熱にいち早く危険を察知したイペタムのドラグーンアーマーが、瞬間移動したかのような速度で、その場から離脱し影響範囲から逃れる。
 だが、バルバロイたちはそうもいかない。
 それらの姿が、悉く炎に飲み込まれ、黒い影となって形を崩していく。
 巻き込まれたバルバロイたちを燃やし尽くし、屹立する六本の火柱と炎の竜巻を背景の演出に、ユファラスはリズミカルで躍動的な音色を奏でた。
 旋律を効いた味方の体力を回復させていく。
 アリーチェとグラーフが発動させた星詩と、ユファラスの星音は、イペタムの耳にも届いているようだ。

『あの耳障りな歌と音楽を止めろよおおおおお!』

 イペタムの声が聞こえ、生き残りのバルバロイたちの動きが活発化する。
 バルバロイたちは、グラーフが乗る秋良のディマジオ子機と、ユファラスや恭司、アリーチェを乗せたシュワルベWRzwieをそれぞれ分かれて狙っていた。

「引き離しますよ!」
『お願いいたしますわ!』

 高速でバルバロイを振り切り、ディマジオが親機と子機同時に後退していく。
 シュワルベWRzwieの操縦席で、【使徒AI】お局様の助言をもらいつつアーラは回避行動を取った。

『衝撃に備えて!』

 鋭い声に、ユファラスがセーフティチェーンを、恭司とアリーチェが自分のチェーンサークルをそれぞれ掴むのを横目に見つつ、アーラは機体の胴体を蛇ののようにくねらせ加速し、飛来する弾丸を回避する。
 それでも直撃の軌道にあるものは、機体をすっぽり覆う球状の電気バリアで防いだ。

『間髪入れずに反撃よ!』

 ステージの味方を振り落とす心配のないアーラは、豪快に機体を宙返りさせて反転し、虚を突いて攻撃を行う。
 機体を水平に滑らせながら、ゼッフィーロ<G>を連続発射した。
 四連続の砲撃が、次々バルバロイを撃破していった。


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