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月魄供覧

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ナイトホーク


『手伝いに来たぞ♪』
 アロガンツにスコップを担がせた“計略の砲撃手”桐ケ谷 彩斗が、マリィに声をかけた。
「こき使わせてもらうよ。ああ、それが、例の新機体かあ。興味あるねえ」
 マリィが、目を輝かせてアロガンツを見上げた。
 アロガンツは、異世界のロボット兵器だ。遭遇は偶発的なものであったが、しっかりとデータを取っていたのはエーデル・アバルトらしい。
 おかげで、保守部品の多くはテルスのメタルキャヴァルリィ製のもので賄えるが、肝心の動力源はブラックボックスだらけで、テルスの技術では量産のきかない機体となっている。
なあ、これなんに見える?
「ごつい新型メタルキャヴァルリィ♪」
 おずおずと桐ケ谷彩斗が訊ねると、マリィは即答した。テルスの人々にはIFやドラグーンアーマーなどと同じように、MECのカスタム機と見えているのだろう。同様に異世界からもたらされたパルトナーも、大口径連装魔力砲と、連装魔力速射砲を装備したバトルクルーザー級に近い高性能エアロシップとして認識されている。こちらもエアロシップとしては重装甲高火力高機動を誇り、十分に高性能の部類に入る。
 技術の無駄遣いを最大限発揮しつつ、桐ケ谷彩斗は、爆発で埋もれたナイトホークの残骸を、アロガンツスコップで掘り起こしていった。
『この機体を有効に役立てますね』
 FAマクアフティルに乗ったエリス・Z・コルネリアが、マリィに声をかける。FA計画におけるマリィの貢献は絶大だ。おかげで、マクアフティルのFAタイプも無事に制式採用となっている。
 アロガンツと協力しつつ、FAマクアフティルは残骸を回収していった。
 桐ケ谷彩斗が一番気にかけているのは、融合していたと思われるシーカーの存在だ。おそらくは頭部にあったと思われるコックピットの位置にシーカーがあったと考えられるのだが。
「頭部は、完全に破壊されているのか」
 落胆したように桐ケ谷彩斗が言った。これでは、シーカーも一緒に破壊されてしまっただろう。背部の魔力ドライブ炉も破壊され、残っているのは胴体部の残骸だけだ。だが、不思議なことに、予想よりも破損が少ない気がする。
『少し、調べてみましょうか?』
 エリス・Z・コルネリアがファントムクライを使用してみる。ナイトシーカー戦では、ファントムクライの効率が通常よりも高かったという“退路潰し”ジェノ・サリスの報告があったからだ。上手くいけば、シュピール・アバルトの残留思念を拾えるかもしれない。
 だが、エリス・Z・コルネリアの期待とは裏腹に、ファントムクライによるキャヴァルリィのパワーアップは微々たる物にとどまった。報告とは真逆の結果だ。当然、シュピール・アバルトの声なども聞こえようもない。いや、微かに、未熟な者を見守る視線を感じたような気もしたが、それもすぐに消えてしまった。
 だいたい、ナイトホーク戦では、多くの者がファントムクライを濫用したのだ。消費されすぎたというのが正解のところであろう。
 死者の魂の残滓を力に変えるということだが、永遠にそれが可能だとすれば、ほとんど無限エネルギーに近い。さすがにそんな便利な物があれば、もっと効率のよい使い方が発明されていそうだ。
 とはいえ、魂を魔力に変えるというのも、考えてみれば恐ろしい話でもある。いったい、どのような摂理によってそれが可能となっているのか。いずれにしても、原理が分からない以上、結果論しかない。
「少し、内部を調べてみようじゃない」
 リトルメックで胴体部に侵入するマリィに、海塚 鳥のCリトルメックが続いた。外で待機する聖戦士見習いのプギオOによる浄化の支援を受けつつ、破壊された部品を押しのけて進んでいく。
『修理は可能でしょうか?』
 海塚鳥が、マリィに訊ねた。
『無理。無理! とてもじゃないけど、専門外だし。それに、この辺は――壊れていないもの』
 マリィの言葉に、海塚鳥が改めて周囲を見回した。外装は、亀裂から内部へ侵入できるほどに破壊が酷かったが、内部の中心部は損傷を受けなかったということなのだろうか。いや、違う、眼下に広がる金属は、通常とは違う輝きを放っていた。
『これは……』
『エンシェントスティール……たぶん、ユピテル砲だよ』
 マグニフィセント・アバルトに搭載され、船体下部に半収納状態で装備されていた超大型砲。正式名称はユピテル砲であり、その存在が不確定であった頃は、ムルキベル砲型とラディア連合王国軍で呼称されていた物だ。
 スフィアの降下時や、国都襲撃時に使用されるかもと懸念していた兵器が、そこに無傷の姿で存在していた。さすがは、エンシェントスチール製と言わざるを得ない。
 他にも、内部には不自然に広い場所があった。“エクセリアの騎士”キリュウ・ヤスハラたちが偵察に忍び込んだ時に目撃した艦内工場のなれの果てだろう。ユピテル砲とは違って、こちらは攻撃を受けた際に内部がぐちゃぐちゃになって破壊されている。
 瓦礫の中には、魔獣起門に似た設備も見受けられる。おそらくは、第七式魔閃砲と同じシステムだ。それによってどこからかエネルギーを供給していたのかもしれない。これであれば、ある程度の資材があれば、エアロシップですら建造できた理由も分かる。また、ユピテル砲を撃つだけのエネルギーが確保できるということも。とはいえ、降下時にはユピテル砲を発射してはいない。必要がなかったのか、ジェネレーターとなる魔極起門にあたる存在との距離があったのか。そのあたりは謎だ。
 さらに、その奥で二人はとんでもない物を発見した。
 ウルフバルトに酷似したキャヴァルリィ。
『シーカー!』
 キャヴァルリィオタクのリリィは、目を輝かせながら叫んでいた。
 海塚鳥が、大地母神の浄化で、シーカーとその周囲を浄化する。
 完全に停止はしているようだが、驚くことにシーカーはほとんど無傷であった。
 シュピール・アバルトは、マグニフィセント・アバルトをシーカーに食わせてナイトホークを作り出したと言ったが、実際にはシーカーとマグニフィセント・アバルトのコントロールシステムを融合接続させたらしい。それによって、シーカー内のプログラムによって、マグニフィセント・アバルトがナイトホークへと変化を果たしたと思われる。さすがに、他のドレッドノート級で同じことをしたとしても、このようにはならなかっただろう。ひとえに、マグニフィセント・アバルトが、最古のドレッドノート級であったから可能だったことだ。あるいは、シュピール・アバルトが、最初からマグニフィセント・アバルトがスピリットキャヴァルリィ形態へと変形できることを知っていた可能性もある。つまりは、最初からそう作られていたのかもしれない。
 とはいえ、シュピール・アバルト亡き今は、真相は闇の中だ。冥王の指輪によってスピリットキャヴァルリィが形作られたように、シーカーの能力であると考えた方が分かりやすくはある。
『これは……。どちらも、船体からは切り離して、それぞれをメンテする必要はあるかな。さあ、人手を集めるよ』
 マリィは、そう海塚鳥に告げた。

★    ★    ★

 “視えぬ砲艦”夏輝・リドホルムは、シールドクルーザー級光壁重巡洋艦:ミリオンスターを補給基地として待機させながら、周囲の警戒を行っていた。
 ナイトホークの残骸の回収には、夢見のブックライターのリトルメックが、マリィの指示の下、作業にあたっている。
 あれだけの激戦だったため、ナイトホークの右腕部と左脚部は完全なオーバーキルによって原形をとどめないほどに破壊され、瓦礫の山と化していた。だが、左腕部と右脚部は比較的要所に攻撃が集中したらしく、エアロシップとしての外形をとどめている。
 恐ろしいことに、機関がまだ生きているらしく、自己修復まで行っているらしい。とはいえ、その巨大さから、量産型キャヴァルリィ程度のゆっくりとした修復スピードのようだが。いずれにしても、放置したままでは、動けるようになるまでには相当の時間がかかるだろう。
 正に、既存のドレッドノート級とも一線を画したエアロシップであるわけだ。
 これを欲しがらない者はいないだろう。
 だとすれば、ラディア連合王国軍以外の組織や人物からの干渉は十分に考えられる。最悪は、戦闘になるだろう。
 それを懸念して、夏輝・リドホルムは、法具:カルテットで全方位索敵を怠らなかった。偵察型プギオも、同様に警戒にあたっている。
 その警戒網に、突如、所属不明のエアロシップが引っかかった。
『そこのエアロシップ、所属と目的を告げよ』
 すぐさま、夏輝・リドホルムが、侵入者に対して誰何(すいか)する。
『こちらは、キュベレー教団所属の視察団でございます。冥王製のキャヴァルリィの確認にまいりました。停船許可をお願いいたします』
「キュベレー教団だと!?」
 主にグランディレクタ共和国軍残党の過激派か、バルティカ公国がらみで大陸調査管局あたりがやってくると考えていた夏輝・リドホルムが、予想外の状況に考え込む。もっとも、冥王がらみでもあることから、キュベレー教団の目的も自然ではあるのだが。
 キュベレー教団が動いているのであれば、アディス・ウィスパーの方へも視察団が赴いているのだろうか。さすがにここだけではあるまい。
 それはそれとして、ここにある技術は、率先してラディア連合王国軍で掌握したいところだ。
着陸を許可します。MECを誘導に回しますので指示に従ってください
 なるべく離れた位置にキュベレー教団のエアロシップを誘導し、稼いだ時間で夏輝・リドホルムは聖女見習い小隊を伝令としてマリィの許へとむかわせた。
「キュベレー教団!? 冗談じゃないわよ、あたしのキャヴァルリィは誰にもいじらせないわよ!」
 聖女見習い小隊から連絡を受けたプギオOが海塚鳥に連絡を入れ、内容を聞いたマリィが、なんだってという顔で叫んだ。マリィにとって、キャヴァルリィ・シーカーは、すでに私の物である。
『すぐにシーカーを隠すわよ。横やりが入って調べられなくなったら、許さないわよ!』
 誰を許さないのか分からないが、マリィに指示された桐ケ谷彩斗たちが駆り出され、ユピテル砲内部へとシーカーを移動していった。


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