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月魄供覧

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月魄供覧
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エルベ砂漠


 デュオ・フォーリーがマグニフィセント・アバルトの駐屯地であった場所を調べている頃、中願寺 綾瀬は、ほど遠くない場所にラディア連合王国が未発見であった遺跡を見つけて、それを調査していた。
 エルデ砂漠の岩礁が点在する地域で、岩礁の一つが丸々消滅して大穴が口を開けていた。まるで、岩の蓋を誰かが外したかのようだ。
 穴の縁からは、風で運ばれてきた砂が、滝のようにサラサラと内部に流れ落ちている。このまま放置されていれば、いずれは砂に飲まれて埋まってしまうだろう。
「あたりですね」
 中願寺綾瀬がほくそ笑む。
 シュピール・アバルトがシーカーを発掘した場所が不明であったため、九重 紅がマグニフィセント・アバルトの移動経路を丹念に調べてこの場所を発見したのだ。
 目的は、グラディウス四号機と五号機である。
 シーカーを封印するために使われたようだが、未だに両機は発見されていない。ならば、あるかもしれないと思うのは人の常である。すぐに許可をとって、遺跡探索に乗り出している。
 そして、もくろみ通り、それらしき穴を見つけたわけではあるが……入り口がない。
 いったい、どうやって掘っていったのだろうか。まさか、むこうから出てきたというわけではないだろうに。
 九重紅は穴のギリギリまでMECトレッカーを寄せ、クレーンの先に中願寺綾瀬の乗ったファルカタを吊って下ろしていった。はたして、グラディウスタイプは釣れるのだろうか。万一に備えて、浄化要員の聖女見習い小隊もしっかりと待機させてある。
「本当に、ここにあるのでしょうか」
 何か手がかりになるかと思って、中願寺綾瀬がファントムクライで周囲を探ってみた。だが、さすがに古い遺跡だ、微かに祈りのような声が聞こえただけで、それもすぐに聞こえなくなってしまった。
「でしたら、掘りましょう!」
 中願寺綾瀬は三基のシュナイダーを壁面に突き立てて機体を固定すると、地晶石を投げつけた。ボコリと壁の岩盤に穴が開く。とはいえ、キャヴァルリィの腕をのばせば届くほどの深さだ。
 だが、そこに何かの破片のような物が見つかった。ただ、地晶石の影響を受けてほぼ原形をとどめないほどにぐちゃぐちゃな金属片と化している。これでは、発掘ではなく、ただの破壊だ。
 とりあえず回収して地上に戻り、聖女見習い小隊に浄化してもらう。
「なんだろう、これ?」
「いや、ここまで壊されてると……」
 とりあえずの成果を吟味する中願寺綾瀬に、九重紅が肩をすくめた。
「そこの者、ここで何をしている!」
 中願寺綾瀬たちが集まってわいわいしていると、突然声をかけてくる者がいた。“砂漠の毒蜂(デザート・キラービー)”アンヌだ。
 以前はアディス・カウンターに所属していたが、組織が解体後は編成し直されたラディア連合王国軍に復隊している。
「何を見つけた……ぐちゃぐちゃだな。盗掘か!?」
 いきなり決めつけられかけて、慌てて中願寺綾瀬が、ちゃんと許可をとって調査していると説明した。
「グラディウスタイプの捜索か。確かに、ここからシーカーが運び出されたと思われる。だが、確証が……いや、それはミスリルか!?」
 遺跡に埋まっていた物にしては、腐食もしていない金属片を見てアンヌが目を輝かせた。
「もしかして、キャヴァルリィを壊してしまったとか……」
 やらかしたかと、中願寺綾瀬がちょっとドン引く。
「いや、残骸と聞いているので、バラバラになった二機分の破片が点在している可能性があるな。いずれにしても、ちゃんとした発掘を手配する必要がありそうだ。証拠品として、この破片をナティス殿の所へ運んでくれ」
 アンヌは、そう中願寺綾瀬たちに命じた。

★    ★    ★

「あっちは、上手くやっているかな。こっちも負けずに頑張るぜ」
「おー!」
 朝霧 垂の声に、ライゼ エンブカークリノ ラースが唱和する。
 グラディウスタイプを探しにいった中願寺綾瀬たちと分かれた朝霧垂たちは、枯れた遺跡へと集合していた。
 以前この場所では、シュピール・アバルトの野望を防ぐために遺跡爆破作戦が行われたが、肝心のアディス・ウィスパーはすでに持ち去られた後であった。残されていたのは、メタルチャリオットの部品らしい物だけだ。それさえも、爆破によって持ち出す暇がなかったわけだが、
 遺跡自体は完全に破壊されてしまったようだが、そこにあった遺物は単純に埋まっただけのことだ。再び掘り出すチャンスはまだある。パーツだって、集めれば一機になるかもしれないではないか。
「さあ、まずは、いらない土砂を吹き飛ばすぜ!」
 カークリノ・ラースの試製バトルクルーザー級で枯れた遺跡に近づくと、ライゼ・エンブは対MEC用16連装Mミサイルの発射を命じた。なんとも荒っぽいやり方だ。
 本来とは違う用途での空爆を行ったわけだが、土砂が舞い上がっては結局地上に降り注いだだけで、掘削機のような穴ができたわけではない。本来、爆破は掘削機が使えない固い岩盤などを破壊するための行為だ。ミサイルで土砂が吹き飛んだのはわずかな表層だけでしかなかった。
 ところが、ミサイルを受けた場所が、ボコンとへこんだ。
「やった、これで遺跡を掘るのが楽に……」
 朝霧垂が喜んだのもつかの間、実際にはまだ少し残っていた遺跡の内部空間が、衝撃で落盤を起こしたのだった。
 さらに、衝撃で弱くなった穴の外縁部が崩落し、せっかくできたばかりの穴を即座に埋めてしまう。
 本来、掘削と坑道の補強は必ずワンセットである。
 つまり、爆撃によってさらに遺跡を埋め立てて、発掘しにくくしてしまったのだった。
 粉砕すれば掘りやすくなったと思いがちだが、トンネルを支えられるだけの強度が土地自体になくなってしまったために、遺跡自体が建造物として機能しなくなってしまった。まあ、以前のグランディレクタ共和国軍も、結局は露天掘りでアディス・ウィスパーを運び出したのだから、あまり変わらないとも言えるわけだが。それにしても、前回の爆破でグランディレクタ共和国軍が掘った空間を埋めてしまった物を、さらに完膚なきまでに埋め立ててしまったわけで、掘り進めたと言うよりは、初期化してしまった感が強かった。止めを刺したとも言える。
「これは、かなり掘れたと言えるけれど、残りはすべて掘らないとダメみたいですね」
 穴の近くにエアロシップを着陸させたカークリノ・ラースが、周囲を全方位索敵してため息をついた。これは、後で怒られるかもしれない。証拠隠滅のためにも、掘って掘って堀りまくらねば……。
「これを全部掘るのぉ!?」
 コンバットリトルメックで爆撃地に近づいたライゼ・エンブが、コンツェシュに乗って地上に降りた朝霧垂を見上げて途方に暮れた。さすがに、コンツェシュの形状では、とても穴を掘るのに適しているとは言い難い。
 だいたいにして、パーツは深い所に埋まっているから、上の方を爆破しても大丈夫という朝霧垂の言葉通り、お宝のある場所は遙か深層なのである。遠い……。
「うー……」
 仕方ないと諦めて、オーラソードをスコップ代わりにして、黙々と崩れやすい地面を掘り続けていくライゼ・エンブであった。


バルカン山脈


 バルカン山脈東方に広がる森林。“要の守人”鷹野 英輝は、バリアクルーザー級【守人】から試製索敵メガリスを放って、捜査を行っていた。
 この地域は、以前にも遺跡が眠っているのではないかとあたりをつけており、すでに一度は捜査を行った場所だ。その時は、何も成果は得られなかったが、以前よりも装備の整った今であれば、何か発見できるのではないかと考えての再調査だ。
 主センサーは、試作索敵メガリスに搭載されている探信宝珠である。さらに、エリジア・センファがシンフォニック・タクトで全方位索敵を行っている。
 ただ、鷹野英輝は、探信宝珠であれば地中にある遺跡も発見できると考えていたが、実際には地表で電磁波も超音波も反射するため、地中の遺跡の検知には全く役に立たなかった。もともと探信宝珠にはミゼットサブマリン探索用のパッシブソナーが付加されているだけで、地中探査能力はない。
 イライアス・ベルツのストアーシップも試製索敵メガリスを飛ばして同様の調査を行い、野乃 月美も試製シンフォニック・タクトによる全方位索敵を行ったが、やはり何も手がかりはなかった。
「これって、マジ、外してない?」
 舞阪 小梅が、全くあたりを感じないので、さすがに鷹野英輝に進言した。何か兆しのようなものでもあれば、見逃すつもりはないのだが、いかんせんとっかかりがない。
「うーん、この辺には何かありそうなんですけれどねえ」
 イライアス・ベルツが、土地勘からそう意見する。もちろん、大雑把な地名が分かる程度の土地勘で、詳細な地形分布まで分かるはずもないのだが。ただし、現在発見されている遺跡の分布を鑑みるに、バルカン山脈の東側はいかにもな空白地帯なのだ。
 その点に関しては、鷹野英輝もイライアス・ベルツと同意見だ。だからこそ、必ず遺跡があるはずと睨んでいる。特に、水による浸食で遺跡などが地表に顔を出しているような場所、川の近くや、湧き水の出ている場所、あるいは不自然に小山風の盛り上がりがある場所などが怪しいと考えている。
「今度こそ、絶対に見つけるんだ!」
 鷹野英輝が全員を鼓舞して調査を続けたが、やはり、なんの手がかりも得られなかった。
 ひとまず、イライアス・ベルツが作ってくれた昼食を食べ、午後から仕切り直しである。
 守人とストアーシップを着陸させると、連絡要員としてエリジア・センファと野乃月美をエアロシップに残し、舞阪小梅のプギオを中心とした工兵隊三個小隊と共に足で森林の探査を開始した。やはり、最後に頼れるのは、人間の感覚だ。
 とはいえ、やはり何も見つからず、さすがに心が挫けかけてきた時であった。見知らぬエアロシップが接近してきた。
 索敵によってすぐにそれに気づいたエリジア・センファが、鷹野英輝たちに知らせる。野乃月美は、試製索敵メガリスを未確認エアロシップに寄せて警戒した。
 戦闘用エアロシップである守人と舞阪小梅のプギオを認めて、エアロシップが高度を下げて近づいてくる。
『こちらは、キュベレー教団の調査団です。あなた方は、ラディア連合王国軍の方々でしょうか』
 エアロシップからは、そう防人に通信が入った。
 ひとまず、鷹野英輝たちとキュベレー教団の神官たちがランデブーする。教団側が、鷹野英輝たちから情報を欲しがったからだ。
 キュベレー教団視察団の目的は、シーカーの確認らしい。冥王製のキャヴァルリィが関与していると知って、急いで確認にやってきたようだ。だが、ラディア連合王国軍はマケドニア・キングダムの対応で手が回らないため、正確な場所を教えてもらえなかったらしい。
 状況的には、アクシス・ムンディを攻められているキュベレー教団の方が、そんなことをしていてもいいのかと思えるのだが、アクシス・ムンディ以外の場所にいる非戦闘員には、むしろ戦場から退避することの方が貢献することになる。もっともなことだ。
 その上で、自分たちにできることをしているのだと言う。
「ナイトホークの残骸がある場所なら、ここだよ」
 ファストオペレーションで素早く情報を引き出すと、野乃月美が位置情報を神官に渡した。
「助かります。それで、あなた方は、ここで何をなさっておられたのですか? いえ、機密に触れるようなことでしたら、お教えにならなくても結構ですが」
 好奇心のようなものをうかがわせながら、神官が鷹野英輝たちに訊ねた。
 別に隠す必要もないと、鷹野英輝が遺跡調査だと明かす。
「遺跡ですか?」
 神官は少し悩むと、側仕えの娘に、何かの写しを持ってこさせた。
「キュベレー教団には、先の冥王大戦からの貴重な文献が数多くあります。その中には、大きな戦場や、拠点があった場所が記されている物もあるのです」
 神官の話によると、この辺りに冥王大戦時代の遺物が眠っているという話は、聞いたことがないと言う。
 逆に、西にいったバルカン山脈の東斜面には、キャヴァルリィが戦った跡があると記されていた。しかも、選定暦直前の時代に発掘が行われかけたが、終戦後の移民政策により放置されたらしいとある。
「こちらであれば、遺跡の入り口がまだ残っているやもしれません」
その情報はありがたい。ですが、自分たちが勝手に調査してもいいものでしょうか?」
 新たな情報に喜んだ鷹野英輝であったが、権利的な物が心配となって神官に訊ねた。後々問題になっても困る。
「それは、御心配なく。遺跡とは、目覚める物なのです。キュベレー教団は、新たな遺跡が、皆様方の力となり得ることをお祈りいたしております」
 いとも簡単に、神官は鷹野英輝たちにお墨付きを与えた。別段、上に許可をとるそぶりも見せない。もともと調査団らしいので、権限の内なのかは分からないが、藪蛇な質問で条件でもつけられてはたまらないと、鷹野英輝はお礼を述べるにとどめておいた。
 そして、それぞれは、新たな目的地にむかって、その場から分かれていったのだった。


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