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月魄供覧

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月――メガレンシア


 やがて、均衡が崩れ始めた。
 ラディア連合王国艦隊の火力が、マケドニア・キングダム艦隊の防御を崩し始める。
 特に、フィーリアス・ロードアルゼリアのパルトナーカノンが、敵の防御を抜いて傷口を広げていく。
 壬生春虎を捉えていたミゼットサブマリン改の一隻が、パルトナーカノンの直撃を受けて吹き飛んだ。コラプストリック陣形が崩れ、爆風を受けたFFツハヤノツルギ改が戦域外へむかって吹き飛ばされていく。
 MECとしては最前線近くで立ち回っていたシレーネ・アーカムハイトがそれに気づいた。オールスマイトで敵味方を識別していた時に、流されていく壬生春虎のFFツハヤノツルギ改を感知したのだ。
『春虎! どこいくき!?』
『すまん、魔力ドライブ炉の火が消えちまった』
 悔しそうに壬生春虎がシレーネ・アーカムハイトに答えた。最低限のエネルギーは供給されているようで、ギリギリシステムは生きているようだが、いかんせんスラスターやアクチュエータはまるで動かすことができない。
『マジッ!?』
 これはまずいと、シレーネ・アーカムハイトが急ぎFFツハヤノツルギ改とエンゲージし、クローディア・シェーンバーグのアンフィビアスアサルト級まで後退していった。

★    ★    ★

『時は来た。突っ込むぞ!』
 それまで後方でじっと戦況を見守っていた弥久ウォークスたちのティース艦隊が動き始めた。
 単に漁夫の利をかっさらおうとしていたわけではない、艦隊の各艦船が対艦アダマンチウムミサイルを満載しているのである。その一斉射でドレッドノート級を沈めようというのであるが、文字通りの火薬庫状態なので、うかつに前線に出て被弾することが許されなかったのだ。最悪、味方のど真ん中で、周囲を巻き込んでの自爆ということにもなりかねない。もし、そんなことになったら戦犯ものだ。
 そのため、総攻撃の機会をうかがっていたのだが、弥久ウォークスはそれが今だと判断した。
 弥久ウォークスのアンフィビアスアサルト級ロシオレンクを先頭に、一重艦影で一列となって突撃を開始する。
 弥久 佳宵のコルベット級がそれに続き、エリア・スミスのコンバットアビエーション級オライオンが中程に位置する。その後ろに、日長 終日のコルベット級、そして、蓬・マーグヌムの試製アサルトハンター級が続いた。殿は、雨月 碧玉斎の試製アサルトハンター級だ。
 ティース艦隊の突撃に気づいたカスミ・ヤスハラが、即座に防御陣を中央に寄せて厚くし、迎撃にデストロイヤー級改二をむかわせてきた。
『全く、話せば分かることかもしれないのに。何度こんなことを繰り返しても無駄だということを分からせるためにも、敵の主力をすべて叩くぞ』
 弥久ウォークスが、全員に伝えた。
『資源面では、ワラセアの方が劣っているはずですから、消耗すれば継戦能力は落ちるはずですよね』
『できれば、話し合いの糸口がつかめればいいのですが』
 蓬・マーグヌムの言葉に、弥久佳宵が続ける。
 敵の準備は万全で、急編成のこちらの艦隊とは大違いだ。せめて、対等の戦力まで削る必要はある。
『いい加減、戦う理由を明らかにしてほしいものじゃな』
『うん、理由も分からずに戦うのはもうたくさんだよ』
 日長終日が、雨月碧玉斎の言葉にうなずいた。
 メガフォースキャノンと中口径連装魔力砲でデストロイヤー級改二を撃破しつつ、弥久ウォークスは巧みなトラストコマンダーで全速回避を行ってみせた。ティース艦隊の他の艦船も、見事な艦隊機動で一重艦影を維持したままそれに続いて移動する。いや、蓬・マーグヌムの試製アサルトハンター級とエリア・スミスのオライオンだけが少し遅れたようだ。それを利用してか、艦影のずれたオライオンが、そのタイミングを利用して大口径連装魔力砲で敵デストロイヤー級改二を攻撃した。
 側面から攻撃してこようとするハヴォックmkⅡには、弥久佳宵、日長終日、蓬・マーグヌム、雨月碧玉斎が四方へ飛ばしたプラズマウェイヴで対抗する。隙のない攻撃だ。落とす必要はない、攻撃を受けなければよいのだ。
 だが、シュタイフェ・ブリーゼを中心とした敵の防御網は思いのほか厚く、容易にティース艦隊の前進を許さない。
『やはり、立ち塞がってくるか、ベンセレムの魔術師!!』
 弥久ウォークスが、歯がみする。
 その時、フィーリアス・ロードアルゼリアの放ったパルトナーカノンの一撃が、敵の防衛網を物ともせずに貫いた。直撃を受けたシュタイフェ・ブリーゼが隊列を乱す。
『今だ! ドレッドノート級に辿り着けなければ、ミサイルも宝の持ち腐れだ。全艦、出し惜しみせず、全弾前方の敵にむかってぶち込め!』
 弥久ウォークスが、ティース艦隊に対艦アダマンチウムミサイルの発射を命じた。各艦のカバーが開き、頭を覗かせた弾頭が、緩急をつけて次々と発射される。纏めて迎撃されないための微妙な時間差だ。
 迎撃を行おうとする敵艦には、エリア・スミスがメガフォースキャノンと大口径連装魔力砲で攻撃を加えて牽制する。
 そして、総勢45発もの対艦アダマンチウムミサイルが、シュタイフェ・ブリーゼを中心とする護衛艦隊に襲いかかっていった。広範囲をカバーするようにそれぞれが担当する範囲へとミサイルを発射している。運良く敵の防衛網を抜ければ、直接ドレッドノート級に命中する可能性もあるのだ。
 魔防網を突破し、ミサイル群が次々とマケドニア・キングダム艦隊に炸裂する。それは、シュタイフェ・ブリーゼも例外ではなかった。
「ここで退場とは……。結末が見られなくて残念だけど、代わりにあの子が見てくれるわね。私たちの……」
 ついにシュタイフェ・ブリーゼも耐えきれず、艦内で無数の爆発を誘発しながら轟沈する。
 フィーリアス・ロードアルゼリアとの挟撃の位置についたライトニング艦隊が、ここぞとばかりに敵艦隊に攻撃を集中する。
 ついに、敵の最終防衛ラインが崩れた。
 ドレッドノート級は目の前だ。
「シュタイフェ・ブリーゼ、信号途絶しました」
「カウントダウン続行! 発射まで持たせるぞ!!」
 ドレッドノート級のオペレーターの報告に、ケヴィン・ヤスハラが怒鳴り返す。
 できれば、サクセサーたちが見たという世界を二人で見たかったものだが、やはり、未来は語るものではなく、語られるものなのだろうか……。
 ラフィーナ・セレニティーがメガライナーで追撃にかかる。だが、直撃を受けたかに思えたドレッドノート級が、モールティングシップを廃棄してその一撃を無効化した。
「ムルキベル砲発射! メガレンシアを撃て!!」
 臨界に達したムルキベル砲がついに発射される。
 だが、その強大なエネルギー流はアクシス・ムンディを逸れて、何もないはずのワラセア空間へとのびていく。
 射角がおかしいとラディア連合王国艦隊のオペレーターの誰もが感じ、味方の攻撃により敵の作戦が失敗したのかと喜びかけた瞬間であった。
 突如、何もないはずのワラセア空間で、新星もかくやというほどの大爆発が起こった。ムルキベル砲の一撃が、何かに命中したのである。
 その反動とも言える衝撃波の到来に、マケドニア・キングダム艦隊もラディア連合王国艦隊も、一斉にバリアを張って防御態勢にならざるを得なくなる。
 閃光が消え去らぬままに、空間がゆがみ、背後で輝いていたはずの星々の姿が消えていった。
 やがて光が消え、漆黒が姿を現す。背後の星々が見えないはずだ、そこには、巨大な何かが姿を現していた。
 それは、ベンセルムに匹敵する小惑星サイズの巨大な立方体であった。周囲の光を吸収するかのような漆黒、それでいて、液体であるかのようなわずかに波打つかのような表面をしている。
 それこそ、テルスの隠されしキュベレーの月――メガレンシアであった。
「メガレンシアの遮蔽バリアの消失を確認。今なら、攻撃が可能と思われます」
 ドレッドノート級のオペレーターが、ケヴィン・ヤスハラに告げた。
『この宙域にいるすべての艦艇に告げる。今更所属は問わない。あの敵を撃て!!』
 ケヴィン・ヤスハラが、敵味方かまわず、オープンチャンネルで呼びかけた。
 ラディア連合王国艦隊と撃ち合っていたマケドニア・キングダム艦隊が一斉に回頭し、漆黒の月にむけて攻撃を開始する。もはや、ラディア連合王国艦隊への攻撃はせず、全砲門をメガレンシアへとむけていた。
 無数のビームやミサイルが殺到するが、あまりに巨大なメガレンシアにどれほどダメージを与えているのかは、はっきりとはしない。
 状況はラディア連合王国艦隊にとって、マケドニア・キングダム艦隊を殲滅する好機ではあった。だが、ラディア連合王国艦隊への一切の攻撃を中止したマケドニア・キングダム艦隊を見て、ライトニング艦隊のレベッカ・ベーレンドルフは、攻撃を中断するように指示を出した。もともと対話を期待していたティース艦隊の弥久ウォークスたちも、事の推移を見守る。
『親父、これはいったい何なんだ』
 再出撃してきたキリュウ・ヤスハラが、ケヴィン・ヤスハラに訊ねた。すべてのディスターブ・バーンが解除された今なら、直接通信が繋がる。
『データを送る。今はこちらに同調しろ!』
 ケヴィン・ヤスハラが、高圧的に答えた。同時に、Gハイドに何かのデータが送られてくる。圧縮されたメッセージかなにかのようだ。
 突然、マケドニア・キングダム艦隊の攻撃の一部が、メガレンシアの直前で消滅した。何かに弾かれたようにも、突然消し去られたかのようにも見える。そこに小さな影があった。あまりにも小さい、人の影……。
 それが、突然大きく膨れ上がった。背後のメガレンシアにも匹敵するほどの、巨人の姿となる。
「セリア!?」
 その姿を見たキリュウ・ヤスハラが驚きの声をあげる。ワラセア空間に生身で漂うようにして現れたその巨大な姿は、エクセリア・ラディアに酷似していたからだ。
『全員、うろたえるな。あれこそは、キュベレーだ! サイコビジュアルと同等の虚像でしかない!』
 ケヴィン・ヤスハラが、全軍を叱咤した。
 艦隊の攻撃がキュベレーに集中するが、大地母神の加護によりすべてが消し去られた。
 次の瞬間、アクシス・ムンディからメガレンシアへ一筋の光が流れた。
 キュベレーが、スーッと腕を動かして前方へと持っていった。
『早く! ドレッドノートから離れて! みんな!!』
 突然、ラフィーナ・セレニティーが悲鳴ともとれる叫び声をあげた。
『退避!!』
 同じくフューチャーヴィジョンで危機を感じた弥久ウォークスが、ティース艦隊を急いで下がらせる。
 いったい、フューチャーヴィジョンで何を見たのか。考える間もなく、ドレッドノート級付近にいた傭兵たちが、本能的に全力で距離をとる。
 キュベレーが、ドレッドノート級を指し示した。その指先からキュベレー・レイが放たれる。
 キャノンスウィープのようにマケドニア・キングダム艦隊を薙ぎ払うように移動していったキュベレー・レイによって、艦隊の大半が消滅する。
 ドレッドノート級も例外ではない。むしろ、メインターゲットとされていたため、跡形もなく消滅させられていた。あろうことか、エンシェントスチールでできていたムルキベル砲でさえ、その空間には破片しか残ってはいない。ただの一撃で完全に破壊されていた。
『親父……』
 母親に続いて父親まで失ったキリュウ・ヤスハラが、呆然とその様を見つめた。
「戦いをおやめください。わたくしキュベレーは、人々の平穏を望んでおります」
 ふわふわとその衣の裾を虚空のワラセア空間になびかせながら、キュベレーは美しく澄んだ声でそう人々に呼びかけた。


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