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月魄供覧

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ドレッドノート


やはり出てきましたか。こちらは、現在航路を維持。伏兵がいれば撃破し、ドレッドノートを目指します』
 ライトニング隊がカスミ・ヤスハラとの交戦に入ったのを確認し、“演技派の策士”叉沙羅儀 ユウがアンフィビアスアサルト級メインクーンから周囲の艦船に告げた。
 戦力的には、今作戦上の主力とも言える規模のライトニング艦隊だ。カスミ・ヤスハラをもターゲットにしているだろう。
 安直に援軍に駆けつけても、艦隊の陣形を崩すだけである。ここは、さらなる敵の伏兵を警戒しつつ、敵本隊へとむかうのが得策だ。
 そもそもこちらは遊撃隊だ。敵の遊撃隊を抑えることができれば、敵の予想外の援軍となる予備兵力を叩くこともできる。
 アイアンボトム・サウンドを出航した艦隊は、準備の整った者からアクシス・ムンディへとむかったため、隊列にばらつきが生じてしまっている。
 とにかく時間がなく、急を要したのであるから致し方がない。
 その中で最も艦隊の体をなしていたのがライトニング隊であるが、その他の艦艇は、出航して後に自然と集まり、艦隊の形になったという方が正しかった。おかげで、艦隊によって、アクシス・ムンディへとむかうルートは、いくつかに分かれてしまっていたのだ。
 結果的に、それがよい方向に転がったとも言える。
 カスミ・ヤスハラがライトニング艦隊を脅威とみてくれたため、他の艦隊のマークが甘くなったのだ。
 もちろん、分散した艦船がライトニング艦隊の援軍としてむかい、一丸となってマケドニア・キングダムの本隊へとむかうという手もあるが、やはりネックとなるのは時間である。
 並行して進んでいるティース隊もそうだが、このまま速度を上げて進軍するのが得策だ。ケヴィン・ヤスハラの野望らしきものを防ぐには、時間と戦うしかない。
『シンフォニック・タクトに感あり。前方に敵艦隊。さらにその後方に大型艦。ドレッドノート級であろう』
 全方位索敵を行っていたミラ・アーデットが、叉沙羅儀ユウに告げた。
『MECを発進。敵の護衛艦を叩いて、ドレッドノートへ味方艦が辿り着く道を開きます』
 躊躇なく、叉沙羅儀ユウがツインコンプレッションカノンでの攻撃を開始した。だが、ドレッドノート級にむけた砲撃は、手前にいる護衛艦のシールドクルーザー級改二によって展開されたマジックテルシオによって無力化される。
 それをミラ・アーデットと、甲板から発進したイリヤ・クワトミリスのプギオが指揮する試製プギオ早期警戒機が分析して、陣形を展開している小隊を割り出す。
『敵防衛網を崩して、制空権を確保する』
 叉沙羅儀ユウが、試製YAMATO魔力砲でシールドクルーザー級改二を狙い撃った。前面のシールドをあっけなく撃ち崩されて、シールドクルーザー級改二が艦首から次々に誘爆を起こして轟沈していく。
『左舷、ミサイル群じゃ。その後方、ミゼットサブマリン改!』
 ミラ・アーデットとがムーブメントシールドをメインクーンの左舷に移動させて叫ぶ。さらにラーナ・クロニクルもムーブメントシールドを展開して守りを固めた。
 ハープーンの半数はミラ・アーデットのマジックチャフによってメインクーンを逸れ、半数はムーブメントシールドで弱体化された。この程度であれば、モールティングシップに頼ることもない。すぐに、聖女見習い小隊が破損箇所の応急修理へとむかう。
 側面からは、潜んでいたらしい敵MEC隊が、ビームランチャーによる砲撃を加えてきた。
 イリヤ・クワトミリスがゾーンディフェンスのZOCを敷き、魔力攪乱式6連スモークディスチャージャーでその攻撃を散らす。側面であれば、魔力攪乱幕を散布しても、味方艦隊の航行に影響はない。
 試製プギオ早期警戒機の索敵結果を元に、魔力攪乱幕の強行突破をしてこようとするハヴォックmkⅡを先読みして、イリヤ・クワトミリスがヘビーアサルトライフルで撃ち落としていった。それすらもサイコフォーキャストで避けてくるハヴォックmkⅡには、ブレイドダンスで弾幕を張る。そこへ、ラーナ・クロニクルの指示でスカイライダー小隊が駆けつけ、ハヴォックmkⅡに攻撃を加えた。
 魔力攪乱幕とゾーンディフェンスによって動きが鈍っていたハヴォックmkⅡが、包囲攻撃を避けることができずに損傷して離脱していく。だが、それを逃がさず、フレイヤ・アーネットのプギオSUがアダマンチウムビームマシンガンでハヴォックmkⅡを撃破した。
『ミゼットサブマリン改は……』
 どこにいると、フレイヤ・アーネットが目をこらす。
 何かが光った。
 イリヤ・クワトミリスの信号弾だ。
 迷うことなく、フレイヤ・アーネットはハイパー・ビームリボルバーのアウトレンジアタックを放った。直撃を受けたミゼットサブマリン改が姿を現す。メインクーンがマドファジェズルをむけ、バーニングブレットでミゼットサブマリン改を炎につつみ込んだ。
 さらに、後方からフィーリアス・ロードアルゼリアの旗艦用シールドクルーザー級改によるパルトナーカノンの砲撃が始まる。挟撃される形となってミゼットサブマリン改の小隊が、次々に撃破されていった。
 ディア・アルマのパルトナーの甲板上からは、ジェノ・サリスのプギオSUも、無反動ビームショルダーキャノンのアウトレンジアタックで、敵護衛艦隊を狙い撃つ。だが、やはり、何重にも張り巡らされた敵の魔防網やマジックテルシオが厄介だ。
 とはいえ、少しずつではあるが、叉沙羅儀ユウたちが前線を押し上げていく。そこへ、戦速増加を駆使してようやくライトニング艦隊が辿り着いた。
 戦況を見たレベッカ・ベーレンドルフが、総攻撃の合図である青い信号弾を上げた。
 それを受けて、ディア・アルマが鏡映艦で、ライトニング艦隊のすべての艦影をパルトナーに擬装した。パルトナーは、テルスではまだ知られていない異世界の艦艇だ。照合するデータがなければ、敵も混乱することだろう。
 土方伊織のリュッツォウが三連装フォースキャノンを、フリッグ・フェンサリルのヘビークルーザー級改とレニア・クラウジウスのローザ・ブリッツが連装フォースキャノンを発射する。
 クローディア・シェーンバーグのアンフィビアスアサルト級は、ハックバスケーンとメガフォースキャノンで間の空かないように攻撃を続けていった。
 ターゲットロックしたシールドクルーザー級改二を確実に撃破していき、敵防衛網を崩すことに貢献していく。
 叉沙羅儀ユウのメインクーンも、それに合わせる形でマドファジェズルと試製YAMATO魔力砲とメガフォースキャノンで総攻撃を加える。
 だが、何重にも張り巡らされた魔防網とマジックテルシオが、ドレッドノート級への直撃をすべて防いでいた。そのすべてを一つずつ打ち破っていかなければ、ドレッドノート級へは届かない。
 最終防衛線では、傷つき戻ってきたシュタイフェ・ブリーゼが、フォートレス陣形で陣取っている。
 マケドニア・キングダム艦隊も必死なのだろう。ドレッドノート級を前にして、ラディア連合王国艦隊は、最後の間を一気に詰めることができずにいた。じりじりと押してはいるものの、一つ防衛戦を突破しては次の防衛戦に阻まれるという状態だ。

★    ★    ★

『今の内に発進してください』
 自身も砲撃に参加しつつ、ディア・アルマが、パルトナーに搭載されていた各機に告げた。本来であればもっと接近してから発進させたいところであったが、もはやアクシス・ムンディはムルキベル砲の発射圏内である。戦力を温存している余裕はなかった。
 パルトナーに装備したマジックカタパルトで待機していた“猛虎の襲来”壬生 春虎のFFツハヤノツルギ改が発進していく。
 続いてリーゼ・アインのFFツハヤノツルギ、さらにジェノ・サリスのプギオSUが射出されていく。
 各機は、味方から発せられる幾筋もの光条と敵からの攻撃の間を舞うようにして回避運動をとりながらドレッドノート級を目指していった。
 クローディア・シェーンバーグのアンフィビアスアサルト級のカタパルトから発進したシレーネ・アーカムハイトの試製プギオは、ミンチメーカーのアダマンチウムフラッシュバズーカでアウトレンジアタックを放ち、クローディア・シェーンバーグが捉えきれない敵MECを撃ち落としていった。
 もちろん、敵からアダマンチウムビームマシンガンで狙われるが、レッドライダーの機動力を生かしたMEC操縦で回避していく。
 接近してきたMECに対してはガトリングガンだと、ミンチメーカーで弾幕を張って敵を退けていった。
 そこへ、壬生春虎、リーゼ・アインとジェノ・サリスが、猛スピードで接近してくる。
 シレーネ・アーカムハイトはオールスマイトで敵MECだけをオートロックオンすると、アダマンチウムフラッシュバズーカで目潰しを行いつつ、ガトリングガンで攻撃して味方の突撃を支援していった。
 先行する壬生春虎が、アシストユニット2.0とレッドライダーを駆使して、最大限FFツハヤノツルギ改の速度を上げる。目指すは、ドレッドノート級の上方だ。
 だが、スピードが速いからと言って、簡単に接近できるとは限らない。
 本来であれば、一気に強襲して、艦橋か機関部を破壊するMECの運用法は、エアロシップキラーでもある。それを知るからこそ、艦隊はMECの接近を全力をあげて阻止しようとするのだ。
 そのため、ディア・アルマたちが考えるほどに、ドレッドノート級に近づけさせてはくれなかったのだ。ラディア連合王国軍が旗艦であるドレッドノート級を狙ってくるのは明白であったために、何重にも防衛網を張り、絶え間ないミサイル攻撃と高速仕様バトルシップやデストロイヤー級改二によるヒットアンドアウエイ戦法でこちらを攪乱してくる。
 だが、ディア・アルマのおかげで簡単には艦影が判別できず、マケドニア・キングダム艦隊はライトニング艦隊の旗艦であるジュアン・エクレールを判別することができない。そのため、攻撃は平均的となり、全体に分散していた。
 MECに対しては、護衛のビームスプレー級とデストロイヤー級改二から、魔力高角砲と魔力速射砲の攻撃が雨霰と浴びせかけられる。エアロシップは、甲板上に砲塔を設置している場合が多いため、上方から近づく敵には対空砲火を集中しやすい。ヘビークルーザー級改二からも、絶え間なく砲撃が浴びせかけられる。並のパイロットでは、あっという間に蜂の巣だ。
 スペクトルで敵を幻惑し、チャンプムーブで驚くべき回避力を発揮した壬生春虎であったが、敵も高速機対策で対抗してくる。
 旗艦防衛でほとんど動かないシールドクルーザー級改二やヘビークルーザー級改二に代わって、縦横にめまぐるしく飛び回るデストロイヤー級改二が、壬生春虎の進路上に無数の機雷を放出した。
 トラップである機雷は目眩ましがきかず厄介だが、壬生春虎ほどの空間認識能力があれば躱わすことは難しくない。わずかに進路を変えたFFツハヤノツルギ改が機雷群を避けてドレッドノート級に迫ろうとする。だが、そこで待ち構えていたのは、コラプストリック陣形で待ち構えていたミゼットサブマリン改であった。正に網を張っていたのである。
 魔方陣の作り出すフィールドに捕まり、FFツハヤノツルギ改が文字通り動けなくなった。そこを狙いすまして、アキューザー・イェーガーが迫り来る。そのまま、魔力速射砲で蜂の巣にしてしまえばFFツハヤノツルギ改は一巻の終わりであったはずなのに、敵はなぜか機能停止の方を選択してきた。
 FFツハヤノツルギ改にとりついたアキューザー・イェーガーが、魔力ドライブ炉から魔力を搾り取り、ドレッドノート級にむかって転送していった。

★    ★    ★

 壬生春虎を追うようにしてドレッドノート級に突撃していったプギオSUとFFツハヤノツルギは、ドレッドノート級の下方へとむかいつつ、後方へと魔力攪乱幕を散布した。ともすれば、強力なユニバーサルブースターなどを装備するFFツハヤノツルギの方が推進力が大きいのであるが、リーゼ・アインは上手くジェノ・サリスのプギオSUとタイミングを合わせていた。
 味方のビーム攻撃の邪魔になりそうな魔力攪乱幕であるが、煙幕によってジェノ・サリスたち二機の姿がシレーネ・アーカムハイトや味方の視界から隠される。その瞬間を待って、ジェノ・サリスとリーゼ・アインはディメンションカーヴァーを使用した。二機の周囲の空間がゆがみ、近くでジェノ・サリスたちをターゲットしていた敵MECの動きが明らかに乱れた。これは、索敵を行っていた敵艦隊のオペレーターたちも同じである。干渉を受けて、気分が悪くなる。だが、煙幕自体は索敵宝珠を完全に使用不能にする物ではないので、味方艦のオペレーターの索敵能力も一時的にダウンするという弊害を引き起こしていた。
 ワラセア空間では、大気の対流がないため粒子拡散は放出スピードのまま行われる。煙幕としての魔力攪乱幕はあっという間に消えてしまったが、影響を受けたパイロットやオペレーターたちはすぐには復帰できなかった。そのため、双方の艦船の砲撃が微妙に狂い、わずかな時間ではあるが戦闘が膠着する。
 だが、オペレーター以外は、ジェノ・サリスを目視してもいなかったので全く影響を受けてはいない。
 あてずっぱうではあるが、魔力高角砲からの激しい弾幕が二機に浴びせかけられた。リーゼ・アインがソハヤノツルギでそれを斬り払う。それに守られて、ジェノ・サリスがヘビーアサルトライフルで敵MECを攻撃していった。チャンピオンムーブであたるを幸いに敵機を撃墜していく。
 交代するかのようにジェノ・サリスの援護を受けて、リーゼ・アインがドレッドノート級の艦底に回り込み、ソハヤノツルギで船体を斬り裂こうとする。
 だが、そのFFツハヤノツルギに群がるように飛来してきた物があった。アキューザー・イェーガーだ。
 自動で追尾してくる無人兵器を、リーゼ・アインがソハヤノツルギで斬り払う。だが、ドレッドノート級から大量に放出されたすべてのアキューザー・イェーガーを防ぐことはできず、とりつかれたFFツハヤノツルギの魔力ドライブ炉が停止する。アキューザー・イェーガーからのびた魔力転送の光が、ドレッドノート級の方へとのびていった。
『まずい』
 このまま漂流してはただの的だ。ジェノ・サリスは最優先でFFツハヤノツルギを掴むと、パルトナーへと後退しようとする。だが、機体の大きさの差もあり、敵の攻撃を回避しながらの後退は至難の業だ。
 ディメンションカーヴァーの影響から立ち直ってきた敵の攻撃がどんどん正確になってくる。
 プリエンティブストライクで先回りしたハヴォックmkⅡが、ジェノ・サリスたちの前に立ちはだかった。臨界に達しているサイコビームカノンがむけられる。
 気休めでもかまわないとジェノ・サリスが魔力攪乱幕を散布しようとした時であった。上空から飛来したフェザーシューターの攻撃を受けて、ハヴォックmkⅡが爆発した。その爆煙を斬り裂くように、キリュウ・ヤスハラの乗ったGハイドがジェノ・サリスたちの前を横切る。
『フルアーマーをバージしてください!』
 反転してくると、キリュウ・ヤスハラがリーゼ・アインに言った。魔力ドライブ炉は復活していないが、追加装甲のパージには魔力は使用していない。
 FFツハヤノツルギが身軽になると、Gハイドが合体した。FFツハヤノツルギはベースがファルカタであるため、Gハイドとの合体が可能だ。
 出力を上げると、キリュウ・ヤスハラはジェノ・サリスと共に“ゾンビ13”ラトーナのコンバットアビエーション級へとむかった。

★    ★    ★

「ムルキベル砲へのエネルギー充填完了」
「アバルト博士の――いや、シュピール・アバルト元首相の置き土産は、十全に機能しているようだな」
 ドレッドノート級の戦闘艦橋で、ケヴィン・ヤスハラはムルキベル砲の最終調整に入っていた。先ほどのこの宙域での索敵の空白時間が、ムルキベル砲のチャージのための時間を作り出してくれた。ラディア連合王国艦隊の猛攻に密かに焦りを感じていたが、これであれば初撃は間にあいそうだ。
 巨大なムルキベル砲は、外部砲塔としてドレッドノート級の艦艇にドッキングされている。その後方には、ナイトホークの背部にあったのと同じ魔力ドライブ炉、いや、魔力コンデンサーが一つ設置されていた。
 チャックたちがアキューザー・イェーガーを使って、キュベレー教団のキャヴァルリィから吸収した魔力は、すべてこの魔力コンデンサーに蓄えられている。セイクリッドシステムを使って聖女の命すべてを吸い上げた時の出力に比べれば低いが、最初の目的を達成するのには十分だろう。問題は、その後のことだが……。
「キリュウたちが目覚めてくれればいいのだがな……」
「カウントダウン入ります」
 オペレーターの声に、ケヴィン・ヤスハラはアクシス・ムンディの先の空間を見据えた。
 後背はカスミ・ヤスハラが守ってくれている。もはや、ムルキベル砲の発射はラディア連合王国軍でも止めることはできないだろう。


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