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月魄供覧

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月魄供覧
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ワールドホライゾン・神々のお茶会


 テルスが風雲急を告げる中、ここワールドホライゾンのマーケットでは、境屋前のカフェテラスでのんびりとした女子お茶会が開かれていた。
「あら、珍しいメンバーよねえ」
 別のテーブルでまったりとお茶を飲んでいたマリン・アルセラスが、すぐ側のテーブルに着いた少女たちを眺め渡した。
 テーブルに座っているのは、ナデシコ(戦艦“大和”)神野羽生東郷きららという面子だ。超弩級戦艦大和でもある武姫のナデシコ、ユニークアバター・スーリヤを所持しているきらら、ユニークアバター・ティアマトを所持――封印されているハウ。どう考えても、うかつには中に入っていけない――誰も入っていきたくないテーブルだった。
「ヤッホー、きららちゃーん、お茶混ぜてー♪」
 だった……はずであった。
 いとも軽いノリで、“煉獄からの救いの手”紫月 幸人はそのテーブルの輪に入り込んでいった。正に、恐れをも知らぬ所業である。
 六つの瞳が、なんでという痛い視線を紫月幸人へとむける。
「いや、エーデルさんの名前が聞こえたもので。テルスのお話ですか?」
 ずずいと、紫月幸人が身を乗り出した。今のテルスには不可解なところが多すぎる。エーデル・アバルトの護衛を務めていたナデシコであれば、何かを知っているのではないのかと思いもする。
「さあ。現在のテルスの状況は、私も知りたいところなのですが」
 逆に、ナデシコの方が、紫月幸人に聞いてきた。
「いいでしょう。存分に語りましょうではないですか」
 全員分の新たなケーキセットを注文すると、紫月幸人はテルスの現状について説明していった。それを聞く内に、ナデシコが何回か席を立ちかけてそわそわする。
「おもしろそうですけれど、今は本気が出せないのでちょっと……」
 チラチラとスーリヤやナデシコの方を見やりながら、ハウが言う。
「バーンと燃やし尽くしていいんなら、あーしが……」
 そう言いかけたスーリヤの首根っこが押さえつけられる。
「ピャ!?」
「こんな所にいたか。いい加減、サボりは終わりだ」
 そう言って現れたのは、スーリヤの上司であるマンフレッド・マクファーレンだ。
「おお、いいところへ。ちょうど、マンフレッド君のテルスでの活躍も話そうと思っていたんですよ」
 馴れ馴れしく、紫月幸人がマンフレッド・マクファーレンに言った。
 かつてテルスでは、山本大國が冥王の指輪から作り出したマシンアバターが暴れたことがある。その頃、ヴィシュヌを保護しにマンフレッド・マクファーレンもテルスに来ていたのである。
「そういえば、まだマクファーレン特務隊はテルスにいるのかなあ?」
 マンフレッド・マクファーレンがテルスで結成した特殊傭兵部隊マクファーレン隊のことを思い出して、紫月幸人が訊ねた。
「ああ、奴らなら元気に仕事しているぞ。どこかのサボり娘とは違ってな」
 猫のように身を縮込ませているスーリヤをぶんぶんと振り回しながら、マンフレッド・マクファーレンが答えた。
「そうなんですか。あんまり姿を見ないものなので。それにしても、あの時、テルスで何をしていたんです?」
「特務の仕事の一つに、散逸した神話級アバターの回収というのがあるからな。こいつみたいに」
 マンフレッド・マクファーレンが、さりげなくハウの方に目線を遣る。
「まあ、テルスでは無事にヴィシュヌだけは保護できたわけだが。部下たちは、引き続き傭兵として雇い続けている。おっと、それ以上は企業秘密だ」
「えー、また手伝いますから、教えてくださいよお」
 紫月幸人が、科を作ってお願いをする。
「と、とにかく。俺は、サボり魔を連行しに来ただけだ。じゃあな」
 うっと言う顔をすると、マンフレッド・マクファーレンは、スーリヤを引きずってその場から退散していった。
「うえーん、ハクぅー。助けろよぉー。ハクの薄情者ー……」
 スーリヤの叫びもむなしく、華麗にスルーしてお茶を嗜むハクなのであった。


国都グローリア・ラディア


「結構、荒れていますね」
 久々に国都グローリア・ラディアへとやってきた“救世の仏顔”小山田 小太郎は、王都を巡る城壁周辺の土地を眺めて言った。
 先日スフィアに降下してきたグランディレクタ共和国軍が各都市を攻撃した時に、ノルトマルクは壊滅し、ヴィッカーズも半壊している。サクスンも最前線となり、大量に発生した避難民は、復興間もないブレンダムと、ここ国都グローリア・ラディアへと集まってきたのだった。
 それにしても、シュピール・アバルトは、執拗にラディア連合王国とラディア王家を滅ぼそうとしていたように小山田小太郎には思えたのだが、それはなぜなのだろうか。
 国都グローリアラディアを破壊するだけであれば、回りくどいことなどせずにユピテル砲を使えばいいだけだったはずだ。事実、かつてファルケ・アバウトは、プロメテウス砲でそれを実行している。ただ、エクセリア・ラディアが助かったために、ラディア王家は滅びずにすんだわけだが。
 ラディア王家を滅ぼさなければならない理由……。
 だが、ガートルード・ラディアは復活を果たし、結果的により盤石となった気もするのだが。この復活は奇跡だと言えるが、偶然だとは言い難い。きっと理由があるのだろうとは思うのだが……。
 ひとまずは、目の前の問題だ。
 傭兵たちの尽力で、迅速に避難が実行されたまではよかった。だが、当然、建物が足りるはずもなく、避難民たちは国都の周囲に仮設されたテントなどで暮らすしかなかった。そのため、生活面や衛生面などで、文官の仕事は膨大な物となっていった。
 それも現在では落ち着き始め、壊滅したノルトマルクを除いて、各都市、特に受け入れ枠の大きいブレンダムに人々は移動している。だからといって、緊急避難的に踏み荒らされた国都周辺の土地がリセットされるわけもなく、周辺環境の整備は大きな課題ともなっていた。
 予想していた以上の問題の山積に、小山田小太郎は劇団員の仲間たちと共に勢力的に力を貸していった。幸いなことに、国都に残った人々が、荒らされた土地を整備し、都市の拡張に携わっている。小山田小太郎はそれに協力して、植林や建物の建築などを手伝っていったのだった。

★    ★    ★


「うーん、大した情報はないわね」
 ラディア連合王国軍の総務部に赴いて資料をあたっていた八葉 蓮花は、考え込んでしまった。
 八葉蓮花が調べているのは、カティア・ラッセについてだ。
 彼女は、マケドニア・キングダムの女王を名乗っている。だが、なぜカティア・ラッセが女王となったのか。それが全く分からない。
 ならば調べようと、八葉蓮花は王宮に調べに来ていたのだった。
「カティア? 誰だ、その者は?」
 ところが、王宮の方ではカティアを知る者がいなかった。異名持ちでもない兵士のことが、一般に知られているはずもない。それ以前に、軍は王宮の管理下にはなく、全く見当違いであったのだ。
 嘘を言われているわけでもなく、誰もカティアを知らないことを確認すると、八葉蓮花は衛兵にアドバイスされた軍の監理部へとむかった。どのみち、王宮は警備が厳しく、重要な場所での聞き込みは不可能だ。
 軍では、閲覧できる限りの軍籍データを調べてみたが、たいしたことは分からなかった。
 一度プロメテウス砲によって、国都グローリア・ラディアはほとんど崩壊している。兵士たちの軍籍データも失われた物が多いのだ。
 もちろん、すぐに再構築されはしたが、戦乱のどさくさでかなりいい加減な物となってしまっていた。
 なにしろ、コキュートスを名乗っていたキャサリン・ベンクマンが、ドライ・ブリッツェンとして密かに軍籍を取得していたぐらいだ。誰が、どんなふうに登録していたとしても不思議ではない。
 肝心のカティア・ラッセについてであるが、八葉蓮花が気になっていたのは、神官の適正が低かったというのに、本来聖女がなるべき女王になっているということだった。もちろん、それは正規の手順を踏めばということであり、傀儡であれば全く関係はない。それに、ケヴィン・ヤスハラとシュピール・アバルトが認めた人間を、ベンセルムの人々が否定することもないだろう。人々がカティア・ラッセという人物をよく知っていれば反対意見も出ただろうが、ほとんど知られていないのだから反対する要因すらない。ほとんど白紙だったのだ。そのため、いくらでも来歴は盛れただろう。
 結局、神官としてやっていく自信をなくして自らカティア・ハングと名乗ったようなのだが、それ以前の名前は記録がなかった。かろうじて、ベンセルムの出身らしいということだけは分かったが、不確定情報だ。やがて、神官から軍属に転進したわけなのだが、やはり、目立つことなく平凡な一兵卒でしかなかったらしい。
 転機は、“母艦壊しの疫病神”ウルスラ・ラッセの艦に配属された時のことだ。異名の通りに、乗艦を撃破されたウルスラ・ラッセは、“赤い旋風”ロワイエ・サー・ベッケナーに助け出されている。その時に、カティア・ハングも救出されていた。
 その後、ウルスラ・ラッセがカティア・ハングを養女に迎えている。
 撃墜されたとはいえ、轟沈しないですんだのは、オペレーターとしてのカティア・ハングの功績だったのだろうか。ウルスラ・ラッセがカティア・ハングを気に入って養女にしたのは、案外そんな理由かもしれない。
 だが、結局は国都奪還戦において、第二天の攻撃を受けてウルスラ・ラッセの乗艦は撃墜され、彼女も帰らぬ人となっている。その時カティア・ラッセもMIAとなったのだが、その辺がはっきりとはしない。
 初期の重傷者の中に、カティア・ラッセの名があった形跡があるのだ。再起不能に分類される重傷であり、死亡者に分類されてもおかしくなかったのだが、その後MIA扱いとなり、行方が分からなくなっている。同様に、戦闘後の混乱でMIAとなった者も多く、情報としてはそのまま放置されたようだ。
 だが、自分で動けないほどの重傷であったカティア・ラッセが、自力でワラセアへ上がったとは考えにくい。誰かの手引きがあったと考えるのが普通だ。はたして、誰かがカティア・ラッセを利用しようとしたのか、あるいは、彼女の背後にそれをできる者がいたというのか。
 問題は、どうやってワラセアへ上がったのかということである。
 当時は魔極起門は利用できず、ブレンダムかドーヌム・マイリアの魔法の大筒を使用するしかないはずであるが、その後ブレンダムが隕石落としで消滅しているため記録も消失してしまっている。確認は難しいだろう。
 情報を整理しつつも、カティア・ラッセが女王になった理由までは分からなかった八葉蓮花であった。


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