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月魄供覧

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シュタイフェ・ブリーゼ


 ライトニング艦隊は防戦一方であったが、一気に先行したために後続艦と距離が空いたのが幸いした。
 先行するライトニング艦隊を追いかけて戦速増加をしようとしていた“月下の指揮者”高橋 凛音のアンフィビアスアサルト級飛空艦・鎮波号改がカスミ・ヤスハラの艦隊を捉える。
『カスミ艦はこの際、他にお任せじゃ。ネーベル、妾たちは妾のやれることをするぞ。砲撃開始じゃ』
 ライトニング艦隊の外縁に沿って高速移動しながら、高橋凛音が宙域砲撃を行った。艦隊下方にのみ、鎮波号改の標準搭載メガフォースキャノンを換装した三連装フォースキャノンを発射する。チャージ中のタイムラグは、アヤメ・アルモシュタラが指示を出している僚艦のデストロイヤー級銀狼号が砲撃で埋める。高橋凛音はセカンドブリッツでチャージ間隔を狭めると、弾幕を展開していった。
 狙いを定めずに弾幕を張るため、回避を売りにする者にとっては逆に避けにくい。もらい事故的に被弾する確率が跳ね上がるのだ。偶然とは言え、至近弾を受けた敵高速仕様バトルシップがスラスターを損傷して、クルクルときりもみを始めた。推力が高い分、バランスを崩すと戻すことが難しい。
 鎮波号改の射界から外れていった敵艦を、“破砕の兵刃”ネーベル・ゼルトナーのコルベット級飛空艦・荒波号が浮遊型中型砲と共にコンダクトマーク陣形で捉え、TCカノンで攻撃を加えて大破させる。
 ライトニング艦隊の八門金鎖陣によって混乱をきたしていたこともあり、鎮波号改と荒波号の挟撃はカスミ・ヤスハラの艦隊に大きなダメージを与えていった。
 当然のごとく高橋凛音たちにも、ハヴォックmkⅡの小隊が攻撃をしかけてくる。
『敵MEC、接近!』
 鎮波号改からコンダクタータクトで全方位索敵を行っていたアヤメ・アルモシュタラが、鎮波号改に急接近してくるハヴォックmkⅡを捉えて警告を発した。すぐに情報を銀狼号や荒波号と共有する。
 アヤメ・アルモシュタラは、大地母神の守護を口ずさみつつ稼働させたムーブメントシールドで防御を固め、敵ハヴォックmkⅡからのキャルンシールドの攻撃を防いだ。
『この艦を、落とさせるわけにはいかないのですぅ!!』
 戦場把握で逸早くそれを察知した“空駆ける番人”忌ノ宮 刀華のプギオTHが、鎮波号改のカタパルトから飛び出した。試製無人プギオ:Cと共に、巧みなMEC操縦で鎮波号改の船体をなめるようにして進んでいく。
 接近してくるハヴォックmkⅡに対してスパミング陣形をとる。プギオTHの姿を一瞬つつみ隠すほどのヘッジホッグのロケット弾が周囲を飲み込む暴風と化し、その隙間をメックアサルトライフルの銃弾が飛び交う。分厚い弾幕に、接近してきていたハヴォックmkⅡが避けきれずに全機吹き飛ばされる。
『次、艦尾方向!』
 サイココネクトで自分の手足のようにプギオTHを操りながら、忌ノ宮刀華が反転急加速する。ワンテンポ遅れて、無人機がそれに追従していった。
 今度は、荒波号の援護にむかう。
 すでにそちらではワルーンシールドを構えた御陵 長恭の試製プギオSUが、試製プギオ早期警戒機と共に、オフェンスシフトでハヴォックmkⅡと交戦を繰り広げていた。インフェリアミスリルガンのアウトレンジアタックでハヴォックmkⅡを撃ち落としつつ、それを抜けてきた敵は試製プギオ早期警戒機がビームアサルトライフルで対応する。
 ディレイアヴォイドで敵イェーガーのビームを避ける。荒波号の船体に避けたビームが直撃するが、ネーベル・ゼルトナーがトラストコマンダーで船体をロールさせ、試製船底防護幕を攻撃方向へとむけていたために軽微の損傷ですむ。
 そこへ、救援に駆けつけた忌ノ宮刀華の無線シュナイダーがハヴォックmkⅡにビームを浴びせかけた。サイコバリアでそれを防ぎつつ、ハヴォックmkⅡが急速後退してアダマンチウムライフルの狙いを定める。
『これ以上好きにさせるか!』
 御陵長恭はインフェリアミスリルガンを素早くハヴォックmkⅡにむけると、オートロックオンして確実に撃ち抜いた。

★    ★    ★

『敵の急襲か。前方の味方艦を援護する』
 索敵宝珠の全方位索敵で前衛艦隊の状況を感知した四条 明夜が、シールドクルーザー級からハックバスケーンによる支援砲火を開始した。
 とはいえ、すでに敵MEC隊をも交えた乱戦の様相をていしている。誤射を防ぐために、味方艦近くには攻撃しにくい。
 甲板にいる黒崎 大地のコキーユもキャノンシールドでアウトレンジアタックの攻撃を続けている。
回避しろ!
 突然、黒崎大地が叫んだ。
 腐れ縁である黒崎大地の言葉に、反射的に四条明夜が全速回避を行う。
 未確認の敵艦から発射されたハープーンが、直前までシールドクルーザー級のいた空間をすり抜け、後方で爆発する。
 再度索敵を行った四条明夜の索敵宝珠に、ミゼットサブマリン改の艦影が浮かび上がる。黒崎大地のフューチャーヴィジョンに救われた形だ。
『敵を撃破するぞ!』
 逆に黒崎大地を鼓舞すると、四条明夜が二基の浮遊型中口径連装魔力砲をミゼットサブマリンへとむけた。即座にミゼットサブマリン改が姿を隠そうとするが、そこを黒崎大地の無線シュナイダーが逃がさず、エイムショットでダメージを与える。隠れ損ねたミゼットサブマリン改を、四条明夜がハックバスケーンで直撃を与えて撃破した。
『ミゼットサブマリンが潜んでいるぞ』
 味方に注意を促すと、四条明夜は索敵能力を最大限に発揮して、ミゼットサブマリン改を炙り出しにかかっていった。

★    ★    ★

『やっぱり、こちらを攪乱にきましたね』
 カスミ・ヤスハラの艦隊の動きを見て、予想通りだと川上 一夫が思う。
 シュタイフェ・ブリーゼを撃破するために、コルベット級しらなみをライトニング艦隊に寄せ、メガフォースキャノンを中心とした広範囲弾幕を張る。だが、単艦ではその密度もたかがしれている。コンダクトマークしたシュタイフェ・ブリーゼに無人スカイライダーⅡでの攻撃もしかけるが、敵は全速回避で難なく川上一夫の攻撃を躱わして飛び去っていく。
 艦隊運動としてはレベッカ・ベーレンドルフによる八門金鎖陣によってかなり不安定な物となっているが、影響を受ける範囲は無限ではない。しかも、一撃離脱攻撃を繰り返す高速仕様バトルシップの速度を考えれば、レベッカ・ベーレンドルフの支配領域を通過するのはわずかな時間でしかない。突破してしまえば、影響はなくなるのである。
 だからこそ、八門金鎖陣の影響下にあるわずかな時間だけが、唯一のチャンスだと言えた。
 実際、シュタイフェ・ブリーゼは突撃時の状態を維持して、的確な攻撃と回避を行っているが、随伴するマケドニア・キングダムの艦艇すべてが同じというわけにはいかなかった。シュタイフェ・ブリーゼにぴったりとついて、全く同じ動きをすることで最速の艦隊の名をほしいままにしてきたのが、いったんそれが崩れてしまうともろさを露呈してしまう。
 また、至近距離でMECを発進させることによって、接近前に撃墜されることを防ぐ戦法をうったわけであるが、予想以上にラディア連合王国の傭兵たちが手練れだったのが誤算だった。直近でMECに艦橋を破壊されれば、一瞬にして艦隊は壊滅するはずであったのだ。事実、かつてのワラセアパイレーツは、カスミ・ヤスハラの艦隊によってあっけなく殲滅されている。
 ここでの戦いのキモは、シュタイフェ・ブリーゼだと踏んでいる川上一夫は執拗にカスミ・ヤスハラを誘い出そうと攻撃を続けていった。指揮艦を艦隊から分断してしまえば、勝機が見えるはずだ。
 だが、カスミ・ヤスハラは、決してその誘いに乗ってこようとはしなかった。彼女の目的は、ケヴィン・ヤスハラのドレッドノート級がその目的を果たすための時間稼ぎだ。無理をして、ラディア連合王国の艦隊を殲滅する必要などない。足止めができれば勝ちなのだ。
『それでも、こちらを無視できないようにするしかありませんな』
 シュタイフェ・ブリーゼを自身の八門金鎖陣に呼び込もうと画策していた川上一夫であったが、引き込めないのであれば、こちらから出むくしかない。
 八門金鎖陣を張り続けてカスミ・ヤスハラの艦隊を牽制しているレベッカ・ベーレンドルフのジュアン・エクレールに、川上一夫はしらなみを寄せていった。
 何度目かの突撃を受けて、ジュアン・エクレールも損傷が激しい。致命的な大口径連装魔力砲の直撃は全速回避しているものの、魔力速射砲の攻撃は避け切れてはいない。すでにメガフュージョンの制限時間は切れてはいるが、その間にレベッカ・ベーレンドルフが受けたダメージも看過できないものとなっていた。
 それを見極めて、カスミ・ヤスハラがたたみかける。レベッカ・ベーレンドルフの八門金鎖陣を破ってしまえば、各個撃破でライトニング艦隊を壊滅させることも可能だ。その欲が、初めてカスミ・ヤスハラの判断を狂わせた。
 レベッカ・ベーレンドルフの八門金鎖陣を抜けたと思った途端、その前方に白波が飛び込んできた。川上一夫の八門金鎖陣により、予想外の不安定領域が継続する。バリアを展開したしらなみとの衝突を避けるべく、シュタイフェ・ブリーゼが全速回避を行おうとした。だが、完全には回避することができず、双方が接触する。
 その装甲の厚さからかろうじて大破は免れたものの、船体の大きさの差からしらなみが弾き飛ばされる。シュタイフェ・ブリーゼの方はバリアオーブを展開して被害を抑えたものの、一時的に完全にバランスを崩してしまった。
『今だ、攻撃を集中させろ!』
 レベッカ・ベーレンドルフが命令するが、距離が近すぎでフォースキャノンでは捉えきれない。各艦の主砲が回頭するよりも早く、小回りの利くMECが動いた。馬謖幼常のクーガーが、ボムキャットと共に対艦ミサイルを発射する。
 避けきれなかったシュタイフェ・ブリーゼが損傷を受けた。
『ここまでね。時間は稼げたと思いたいけれど……。全艦、現宙域から撤退。MEC隊は、ミゼットサブマリン改のサルベージポイントまで各自移動せよ』
 引き際と心得て、カスミ・ヤスハラが煙幕を張りつつ、機雷を散布して逃げていく。
 追撃しかけたライトニング艦隊を、レベッカ・ベーレンドルフが止めた。艦隊の目的は、カスミ・ヤスハラの撃破ではない。本命はドレッドノート級だ。ここでシュタイフェ・ブリーゼを追って進路を変えれば、それこそ敵の思うつぼである。
 さらに、敵が散布した煙幕が魔力攪乱幕の恐れもある。機雷もあり、うかつに突破することはできなかった。


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