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月魄供覧

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ブライト・プリンセス


 蜘蛛の糸に散々邪魔されて遅れたキュベレー教団の捜索隊は、ようやく遺跡中央の大空洞に辿り着いた。落盤や、蜘蛛の糸で塞がれた隧道も多く、かなり大回りさせられたのだ。
 明らかに、誰かが妨害を行っている。
 大空洞に入ると、いきなり魔獣たちが襲いかかってきた。誰かとすでに戦闘状態だったのか、気が高ぶっていて見境がない。
 すぐさま、キュベレーの使徒が、アンタレスやスパイダーリッターに迎撃を指示する。苺炎・クロイツや優・コーデュロイたちも、そのまま戦闘になだれ込んでいった。
 魔獣たちの群れと順調に戦闘を続けていた時だ、遺跡の中から一団が脱出してきた。マイリア・ラディアたちだ。魔獣たちをキュベレー教団の捜索隊に押しつける形で、脱出を図る。
「よし、聖女だけは無事に確保しろ」
 キュベレーの使徒が命令を飛ばす。それは、裏を返せば、マイリア・ラディア以外の生死は問わないという意味だ。
犯人を確保しなければ、事件の全容が分からないよ!
 アデリーヌ・ライアーが、キュベレーの使徒に異を唱えた。
「仲間がいるんじゃ危険だよ。ここは、泳がせて、様子を見るというのも手じゃないかな?」
 苺炎・クロイツも、そうキュベレーの使徒にもちかけた。ここで戦闘が拡大すれば、負傷者が増えるのは必至だ。そして、何よりも、レーヴェ・アバルトやマイリア・ラディアに傷ついてほしくはない。
「いや、最優先されるのは聖女の身柄である。犯人は殲滅してかまわぬ!」
 キュベレーの使徒が言い切った。
 どうやら、キュベレー教団としては、事件の背景を調べて再発を防ぐことよりも、犯人を確実に罰したいらしい。
 だとすれば、やることは一つだ。
「敵は手練れだよ。皆さんは下がっててね」
 苺炎・クロイツが、飛び出そうとするアンタレスとスパイダーの前に立ち塞がった。
敵を混乱させます
目潰しを食らいませ!
 わざとらしく、アデリーヌ・ライアーがマジックチャフを自分の周囲に散布した。同時に、ナンテス・フラワーポットが閃光宝珠を輝かせた。もちろん、不意を突かれたのは、キュベレー教団の調査隊の方だ。
「追いかけるよ!」
 視力が戻ったところを見計らって、苺炎・クロイツがユニコーンリッターと共に駆け出していく。もちろん、レーヴェ・アバルトたちが逃げた方向とは別の支洞の方だ。明らかに囮であろう方向へ、アキラ・セイルーンたちがわざとらしく逃げていく。それを追いかけたのだ。
「魔獣は、私たちが抑えます。追いかけさせません!」
 優・コーデュロイたちは、遺跡を取り巻いている魔獣やゴーレムの方へむかっていった。いかにも殿を守るというふうを装う。
 アイリス・フェリオがフラッシュグレネードを投げ、魔獣たちの目をくらませると共に、隧道に逃げ込むレーヴェ・アバルトたちの姿をキュベレーの使徒たちの目から隠す。
「追わせるわけにはいきませんよ」
 決死の突貫で飛び出したアイリス・フェリオが、キャヴァルリィブレイクの一撃で、レーヴェ・アバルトたちを追いかけようとしていたゴーレムを粉砕した。
「逃がすな!」
 苺炎・クロイツたちにつられて、キュベレーの使徒たちもその後を追いかけていった。混戦によって、まんまと乗せられたのだ。
 だが、途中で隧道が崩れていて進めない。アリス・ドロワーズが掘削の杖で天井を崩していったのだ。
「あーあ、これじゃ進めないなあ。よし、岩をどかそう。絶対にこの先にいるはずなんだ!」
 そう決めつけると、アデリーヌ・ライアーがノロノロと崩れた岩をどかし始めた。もちろん、時間稼ぎの足止めだ。あくまでも諦めないそぶりを示す苺炎・クロイツたちに、ここで諦めると言い出せずに、キュベレーの使徒たちはそれを手伝って時間を浪費するしかなかった。

★    ★    ★

 レーヴェ・アバルトたちが逃げ込んだ隧道には、優・コーデュロイたちが進んでいった。手分けするというお題目で、本命の後を追ったのだ。キュベレー教団の捜索隊は、上手く苺炎・クロイツたちが誘導したらしい。
「レーヴェさん、マイリア様も、御無事ですか?」
 追いついた優・コーデュロイが、レーヴェ・アバルトに声をかけた。
「いったい、何があったのですか?」
「さすがに、今は説明している暇はないな」
 足を止めずに、レーヴェ・アバルトが答えた。どうやら、傭兵たちは味方であると認識してくれているらしい。
「とにかく、義姉上をキュベレー教団の手の内に残すわけにはいかなかったのだ。奴らにとって、義姉上は、義妹のスペアという認識だからな」
兄弟?
 すぐにはレーヴェ・アバルトの言うことが分からなくて、優・コーデュロイがちょっときょとんとする。その時、優・コーデュロイのエイジオブアクエリアスの予知能力が警告を発した。じきに、この隧道へキュベレー教団の神官たちがやってくる。もれなく、敵意に満ちあふれた者たちだ。
「先にいってください。ここは、私たちがなんとかしましょう」
 そう言うと、優・コーデュロイたちは、レーヴェ・アバルトたちを先に進ませた。
 リィーツェ・アドラスティのキュベレー・レイとラスティア・フェリオのハックバスケーンで前後から隧道を崩して、キュベレー教団の神官たちがレーヴェ・アバルトたちを追えないようにする。次々に崩落してくる瓦礫をレヴィーア・ファルトナーがバリアオーブで防ぎながら、砂原秋良たちは引き返していった。
「危険です、引き返してください!」
 操風のペンダントで追風を纏いながら、アイリス・フェリオが、現れたキュベレーの神官たちの方に駆け寄っていった。
「トラップです。行き止まりにゴーレムがいて、暴れてこちらを生き埋めにしようとしています。早く戻って!」
 アイリス・フェリオが叫んだ。もちろん、そんな事実はないが、崩れてしまえばすぐには判別もつくまい。
「この先には誰もいません。別の道を探しましょう
 痕跡を擬装した優・コーデュロイたちは、神官たちを押し返すようにして隧道から戻っていった。

★    ★    ★

「無事に、追っ手を撒くことができたようだな」
 レーヴェ・アバルトが、誰一人欠けていないことを確認する。結局、砂原秋良たちと焔生セナリアたちが確実に脱出するまではと、同行してきている。
 翠の双星が案内した所にあった物は、土に半ば埋まった巨大なグランシップだった。ライトグランシップがMECを収納できない車両とすれば、グランシップは文字通り地上近くをホバー移動する飛べない艦船である。
「マイリティアの旗艦、ブライト・プリンセス・マイリアとでも名づけたいところですが。義姉上?」
 どうですかと、レーヴェ・アバルトがマイリア・ラディアを振り返る。シュピール・アバルトが残したデータ通りの場所にあった、おそらくは冥王大戦時代の遺物であるこのグランシップを、マイリティア、すなわち、マイリアの私兵の旗艦とするということだ。
「ネーミングセンスが……。私の名前はなしで――などということを話し合っている時間はないわね。出せるのであれば、すぐに、発進させなさい」
 マイリア・ラディアが、指揮官としてレーヴェ・アバルトに命じる。
「主機関始動」
「リクェファクション展開」
「艦首回転衝角、回転開始」
 操艦のサポートについた天音雷華とレヴィーア・ファルトナーと焔生セナリアとリィーツェ・アドラスティが、慣れぬグランシップを動かすために奔走する。
 レーヴェ・アバルトが、マイリア・ラディアの方を見て確認する。マイリア・ラディアは、しっかりとうなずいた。
「発進!」
 レーヴェ・アバルトが力強く言うと、グランシップの周囲をつつむフィールドによって液状化した地中を、艦首のドリルが斬り裂いて巨体が前進していった。
 ドーヌム・マイリアのある島の海岸に、突如として地中からグランシップが飛び出してくる。大量の土砂を周囲に吹き飛ばすと、ホバーにより低空を浮上したグランシップは、海上を進んでサフル大陸へとその姿を消した。


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