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月魄供覧

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ドーヌム・マイリアの遺跡


 ドーヌム・マイリアのある島の一角に、その遺跡はあった。
 かつて、この遺跡からはGハイドが発見されている。
 この遺跡は、ワラセア海賊から鹵獲したマクアフティルにあったデータからその存在が判明したものであるが、その情報自体はネオ・グランディレクタ共和国軍総帥であったキャサリン・ベンクマンの仕組んだものであった。
 Gハイドの存在をキャサリン・ベンクマンが最初から知っていたのかは分からないが、地上に降りたシュピール・アバルトが冥王関係の遺跡の位置を複数知っていたことから、シュピール・アバルトから教えてもらった可能性が高い。あるいは、ウルフバルトにデータがあったか、グランディレクタ共和国にあったもう一機のGハイドに記録されていたかだ。
 そもそも、グランディレクタ共和国にGハイドが存在していたこと自体が謎である。キャサリン・ベンクマンがワラセアへ逃げる際に、ウルフバルトと共に持っていったのであろうか、あるいは、最初からグランディレクタ共和国、正確にはシュピール・アバルトが所持していたのだろうか。
 聖堂を脱出した“要塞獅子”レーヴェ・アバルトとマイリア・ラディアであったが、キュベレー教団の動きも早く、そう簡単にどこかへ逃げおおせることはできなかった。そして、逃げ込んだのが、先の遺跡であった。
 遺跡の内部は複雑な洞窟となっており、中央には神殿とそれを守るゴーレムが存在し、なぜか冥王大戦時代からの魔獣の生息地ともなっている。
 そのため、キュベレー教団としても、捜索は困難を極めていた。とはいえ、レーヴェ・アバルトたちが逃げおおせたという確認もとれてはいない。
 このもたつきのおかげで、ラディア連合王国からの捜索隊は、キュベレー教団の捜索隊と合流、あるいは、独自に捜索を開始することができた。
 キュベレー教団の方は、アンタレスに乗ったキュベレーの使徒が、スパイダーに乗った神官たちを率いる形で捜索隊を組織している。
 “ネゴシエーター”苺炎・クロイツは、キュベレー教団の捜索隊に合流して遺跡へとむかっていた。オペレーターであるナンテス・フラワーポットの紹介での参加だ。戦力の増加になると、同行は二つ返事で了承された。
 同様に、アデリーヌ・ライアーも、キュベレー教団の捜索隊に挨拶すると共に大地母神への祈りを捧げ、同門の徒であることを証明して同行を申し出る。
 ひとまずの現状を、苺炎・クロイツはキュベレー教団の神官に訊ねてみた。ネゴシエーターの異名を持つ苺炎・クロイツに、神官も知りうる情報を隠すことなく伝えてくれた。もっとも、神官たちの知る範囲の情報ではあるが。
 その情報には、アデリーヌ・ライアーもとても興味がある。なにしろ、情報が少なくて、状況がよく分からないからだ。確かなのは、マイリア・ラディアの封印が解け、その後にさらわれたということだけだ。
 キュベレー教団では、マイリア・ラディアをさらった犯人は、レーヴェ・アバルトだということまでは把握しているらしい。なんらか意図をもって、レーヴェ・アバルトはキュベレー教団に潜入していたらしい。今から思えば、今回の事件を起こすために、ずっとキュベレー教団に潜伏していたと考えられる。
 もともとは、瀕死のある神官をアクシス・ムンディへと連れてきたのが、レーヴェ・アバルトがキュベレーの使徒となるきっかけだったそうだ。その神官は、ワラセアにいる神官を通じてケヴィン・ヤスハラに渡されて一命を取り留めたようだが。その時の敬虔な態度を見て、司祭がキュベレーの使徒としてレーヴェ・アバルトを取り立てたのだそうだ。もちろん、その結果が今回のようなことになるとは、誰も予想しなかったらしい。
 その後は、当然のように頭角を現し、キュベレー様からティソーナを賜り、スフィアに降臨した時はその護衛まで務めている。
「だったら、まずは話し合って、その真意を聞かないといけないよね」
 そう言って、苺炎・クロイツは神官たちに同意を求めた。目的は捕縛のはずで、そのためにレーヴェ・アバルトが傷ついたりするのは、彼を知る苺炎・クロイツとしては容認しにくい。そのためには、なるべく戦闘を避けて穏便にすませたいものだ。
 アデリーヌ・ライアーとしても、今の段階ではキュベレー教団の捜索隊と共にマイリア・ラディアを確保する形で協力している。だが、レーヴェ・アバルトの本心が分からない以上、理由によってはマイリア・ラディアの意思を尊重したいところだ。
 途中で出くわした野良スパイダーなどを倒しつつ進んでいくと、後方から追いついてくる一団があった。
 “ドレイク・ハンター”優・コーデュロイたちだ。
 ラスティア・フェリオの戦術集音装置で移動する者たちの音を頼りに追いかけてきたのだった。通ってきた道はラスティア・フェリオがストレートナビゲーターでマッピングしているので、帰り道に迷うことはない。
「そうですか、マイリア様を連れ出したのは、レーヴェさんでしたか。でも、彼は私たちの味方であった時もあったはず。信じられる人だと思っていましたが
「しかし、以前は敵であったとも聞きますが。状況によって、立場も、陣営も変えてきた男です。また心変わりしなかったとは、誰が保証できましょうか」
 合流した優・コーデュロイの言葉にも、キュベレー教団の神官は猜疑心を隠せないようであった。
犯人は、単純に不慣れな王女をエスコートしただけじゃないのぉ?
 エラルウェン・アモンスールが、軽口で横やりを入れる。
 キュベレーの使徒は、レーヴェ・アバルトを擁護するような発言は、あからさまに無視してみせた。
止まってくださいませ
 39グラスをかけて暗闇を見渡していたナンテス・フラワーポットが、危険を察知してみんなを止めた。
 極力出力を下げた閃光宝珠で、一瞬洞窟内を照らす。そこに、行く手に立ち塞がるグランドラゴンの姿が浮かび上がった。
「いくよ!」
 クラックスピナーを構えると、アーマードペガサスに乗った苺炎・クロイツは、後ろ盾の号令をかけたユニコーンリッターを従えて突進していった。
 相手が魔獣であれば、容赦はなしである。
 洞窟の通路を立ち塞ぐように現れたグランドラゴンが、苺炎・クロイツのキャヴァルリィブレイクで吹き飛ばされる。
 直近の脅威がなくなったことを確認すると、アデリーヌ・ライアーが、展開していたバリアオーブを解除する。狭い通路では、バリアが完全な壁となるので使い勝手はよい。
 徘徊する魔獣たちを相手にしながら、一行は慎重に中央の遺跡にむかって隧道を進んでいった。
「あまりに魔獣のいるルートは、避けた方がよろしいでしょう。逃亡者が通った後は、魔獣も少ないはずですし」
 優・コーデュロイが、いったん引き返して別のルートを辿ることを提案する。
「せっかくここまで来たのに?」
「逃亡者が辿ってもいない道を追いかけても徒労に終わってしまいます。思い切りも必要でしょう」
 怪訝な顔になる神官たちを、優・コーデュロイが説き伏せた。もちろん、苺炎・クロイツやアデリーヌ・ライアーの同意もあってのことだ。
 ホーリースパイダーに乗ったエラルウェン・アモンスールが、ライトオブノウレッジで隧道を照らしてゆっくりと先導する。ラスティア・フェリオの作ったマップに従い、わざと迷走する。
 こうやって、いったりきたりの無駄な動きを強いることができれば、レーヴェ・アバルトたちにとっての時間を稼ぐことができるだろうと優・コーデュロイは考えていた。かつてのプリテンダーの代表としてのレーヴェ・アバルトは、一緒に戦った経験から信用に足るはずだ。今回の行動には、きっと意味があるのだろう。ならば、なんとか手助けをしたいものだ。
 何度か戦闘を行っているため、物音に引かれて魔獣が集まってくる。
 現れたグリフォンを、ラスティア・フェリオがプラズマウェイヴで即座に麻痺させる。そこを、エラルウェン・アモンスールが素早くホーリースパイダーの糸で絡め取って動けなくした。飛び出したアイリス・フェリオが、ラディア式戦闘技で繰り出したミスリルレイピアの一撃で止めを刺す。
「糸にくっつかないように、気をつけて進んでくださいねぇ」
 隧道のど真ん中に転がった繭をさして、エラルウェン・アモンスールが言った。もちろん、通り抜けるには邪魔で、ほとんど嫌がらせレベルの妨害である。
 むっとしたような顔をしたキュベレーの使徒が、スパイダーリッターたちに死体をどかすように命じた。神官の指示でスパイダーたちが糸をかけ、隧道の端へと邪魔な繭を移動させる。

★    ★    ★

「さて、ドーヌム・マイリアから逃げ出すとなると、はたしてどちら方面か……」
 隧道の途中で“火葬の白姫”焔生 セナリアが考え込む。
 ここまでの道のりをリィーツェ・アドラスティのシンフォニック・タクトによる索敵に頼ったのであるが、ほとんど情報を収集することができなかったので位置把握も戦況分析もすることができない。ほとんど迷子状態だ。
 まあ、遺跡探索とは元来そういうものだ。キュベレー教団の捜索隊も、索敵能力に関しては似たようなものだろう。
 こういう時は、人海戦術の斥候や、理不尽なニューロエイジの感覚が頼りとなる。
 斥候として先行させたリィーツェ・アドラスティのスパイダーリッター小隊の情報を元に、戦況分析を再構築する。スパイダーリッターたちの位置はヘッドセットによって逐次報告されるので、それによってマッピングをしていくのだ。
 程なくして、焔生セナリアたちは、大空洞に辿り着くことができた。急いで集合すると、今度はこの場所の先にある隧道を調べ始める。
 焔生セナリアの考えでは、いつまでもマイリア・ラディアをさらった犯人がこの遺跡に隠れているとは思えなかった。追っ手がかかっていると分かっているのであれば、逃亡を急ぐはずである。
 リィーツェ・アドラスティも、犯人はマイリア・ラディアを誘拐したのではないと考えている。同じ封印状態であったガートルード・ラディアが復活しているのだ。だとすれば、マイリア・ラディアも封印が解け、その身を大聖堂の悲劇の黒幕から保護するために連れ出されたのではないかと考える。
 これまで何度か行われた遺跡調査で、遺跡のある大空洞からは、ドーヌム・マイリアの神殿へ続く隧道の他に、大陸や他の島、海へと繋がる隧道があることが確認されているらしい。
 焔生セナリアとしては、追っ手を撒くには海に逃げるのがいいと思うが、確証はない。それに、どの隧道が海へと続いているか分からないため、メガリスを護衛につけたスパイダーリッターを、別々の隧道に斥候としてむかわせる。自身は、リィーツェ・アドラスティと共に、別の隧道を調べていった。
 はたして、上手くマイリア・ラディアたちと合流できるかと報告を待っていると、前方から近づいてくる一団がある。
 敵か、味方か。双方に緊張が走った。

★    ★    ★

「中央遺跡の中……」
 感応石を握りしめて、“戦場の工作部隊”砂原 秋良がつぶやいた。
 見覚えのあるレーヴェ・アバルトとマイリア・ラディアの姿が、感応石によって砂原秋良の脳裏に浮かぶ。どうやら、誰かを待っているかのようだ。
 そういえば、女騎士の亡霊とマイリア・ラディアは同一人物であったはずだ。ラディア連合王国軍の中では公然の秘密のようなものであったが。見つけたとして、どう呼べばいいのだろうかとふと思う。
 サウンドコレクトコートで音を拾ってはみるが、聞こえるのは近くで誰かが戦っているような音だけだ。どうも、そちらへ近づくとまずいことになるような予感しかない。
 戦場に響く声でマイリア・ラディアに呼びかけてみたが、隧道内で響く声に応えたのは魔獣だけであった。
 現れたアンタレスの尾の一撃を、砂原秋良がディレイアヴォイドでギリギリで躱わす。多少かすめたかもしれないが、“清浄なる寄る辺”天音 雷華の大地母神の守護で難なきを得ている。
 グルー・レアスが、素早くビームウィップでアンタレスの尾を絡め取り、それ以上の動きを封じる。
 すかさず前に飛び出したレヴィーア・ファルトナーが、神罰の鎚矛の一撃でアンタレスの弱点とみられる頭を叩き潰した。止めとばかりに、カモフラージュコートで姿を隠していたヤクモ・ミシバが、ミスリルレイピアでアンタレスの尾を斬り落とし、セカンドサドンデスで銅を貫いた。鮮やかな連続攻撃を受けて、アンタレスが動かなくなる。
「シンフォニック・タクトが役に立たないんです。うかつにこちらの存在をばらさない方がいい」
 目が届く範囲以外の全方位索敵ができない状況を踏まえて、天音雷華が砂原秋良を諫めた。うんうんと、周囲にいる聖女見習い小隊の少女たちもうなずく。なにしろ、とばっちりでアンタレスの毒液が飛んできたのだ。この先もこんな状態では、生きた心地もしない。
「分かった。気をつけます」
 砂原秋良が謝る。ここには、キュベレー教団の捜索隊をはじめとする、ラディア連合王国の捜索隊も入ってきているはずだ。味方として連携できるのであればいいが、一方的にこちらの存在を知らせてしまっては、肝心のマイリア・ラディアたちにも警戒される恐れがある。
 そこからは慎重に魔獣を倒しながら砂原秋良たちは進んでいった。やがて、隧道の先に、広い空間が現れる。
 その中央には、常設型の閃光宝珠を明かりとした遺跡があった。かつて、Gハイドが眠っていて、傭兵たちが初めて女騎士の亡霊と出会った場所だ。
「ここにマイリアさんたちがいるのね」
 砂原秋良たちは、中央大空洞へと飛び込んでいった。


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