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月魄供覧

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エスパーダ


『僕たちが冥王と戦っていた裏でこんな兵器を作っていたのに、それを冥王じゃなくて、僕たちにむけてくるとはね……』
 鴨 希一は、プギオの中でふうとため息をついた。こうなる前に何かできなかったのかと思い、できなかったのだと知る。
『どんな理由があったとしても、戦争は終わらせないといけません』
 シンシア・スターチスが、静かであるけれども強い言葉で言った。何度同じことを繰り返せばいいのかと思いつつも、心が折れればそこで終わりだと思う。
『そうだ。敵を討つぞ』
 “正義一徹”信道 正義が、エスパーダ隊各員に告げる。
 何があっても戦争を続けようとするのであれば、二度とそんな気が起きないように徹底的に叩くしかないだろう。もしもこの世界が戦いを望むのであれば、戦いを望む者をすべて倒すと誓ったのだ。それを証明してみせる。
 それは、クラン・イノセンテも同じ思いだった。
ええ。手加減はなしです
 鴨 柚子が、FFMEMk-Ⅳの索敵宝珠で、敵の位置を探ってエスパーダ隊の各位に伝える。
 同様に、ギルバート・エリオンも、ホーネット・アサルト改に乗った試製プギオOからシンフォニック・タクトで全方位索敵を行う。以前の戦いで、ヤスハラ夫妻――せめて、カスミ・ヤスハラだけでも倒せていればとギルバート・エリオンは悔やむが、できなかったことは仕方がない。それで今日の苦戦があるのだとしても、それは乗り越えるしかないのだ。
 送られてきた二人のデータによって、シンシア・スターチスが敵アウグストゥスを捉える。ホーネット・アサルト改に乗った試製プギオOから、四連装対空機関砲のアウトレンジアタックで弾幕を張った。
 鴨希一は、空間の障害物と化しているキュベレー教団のキャヴァルリィを巧みなMEC操縦で回避しつつ、同様に高速で戦場を動き回る敵アウグストゥスにむかってミサイルを発射した。
 キュベレー教団のキャヴァルリィを戦闘に巻き込まないように、なるべく遠くへと追いやろうとする。先行したチキンレーサーズ隊の戦闘で、マケドニア・キングダムのMEC隊が、漂流するキャヴァルリィを盾として使っているのを確認しているからだ。
『飛び交っている、アキューザー・イェーガーにも気をつけてください』
 レベレイションアイで敵の位置に常時注意しながら、鴨柚子が注意を促した。だが、言ったそばから、アキューザー・イェーガーのターゲットにされる。キャヴァルリィの魔力ドライブ炉を自動的に狙うアキューザー・イェーガーが、ファルカタベースである鴨柚子のFFMEMk-Ⅳにむかって一斉に進路を変えてきたのだ。
 巻き込まれないように弾道予測をしつつ、シンシア・スターチスがホーネット・アサルト改にカルトロップの散布を命じた。
 アキューザー・イェーガーが獲物を求めて飛び交う空間に、機雷がまき散らされる。鴨柚子を狙っていたアキューザー・イェーガーが、次々に機雷に飛び込んでいった。さらに、シンシア・スターチスが四連装対空機関砲の弾幕で、アキューザー・イェーガーを撃墜していく。
 だが、四方からトリッキーな機動で迫ってくるすべてのアキューザー・イェーガーを防ぐことはできなかった、
 いくつかをオリハルコニウムハンマーで文字通り粉砕するものの、フルアーマーに深々とアキューザー・イェーガーが突き刺さる。機体その物の損傷は軽微だが、一気に出力が下がって鴨柚子が動けなくなった。それどころか、パイロットの魔力がどんどん魔力ドライブに供給され続けるので、急激な疲労感で鴨柚子本人が動けなくなる。多くのキュベレー教団のキャヴァルリィが全く動けなくなっていたのは、このためであろう。
 FFMEMk-Ⅳに突き刺さったアキューザー・イェーガーから、アクシス・ムンディとは逆の方向へと、魔力がビーム状に放出されていく。
 鴨柚子の危機を察して、鴨希一が急いで駆けつけた。
 ラピッドアタックでビームソードを素早く突き出し、FFMEMk-Ⅳに突き刺さっていたアキューザー・イェーガーを破壊する。
『動けるか?』
 語りかけるが返事がないため、 鴨希一がディバインエーテルで鴨柚子へ魔力を供給した。
『動けるか?』
『な、なんとか……』
 再び訊ねられて、サカイヤチョコレートを齧りながら鴨柚子が答えた。
 すぐに、ギルバート・エリオンが駆けつけてくる。本来は、損傷機を鴨柚子の許に送り届けて修理してもらう手はずだったのだが、今はその鴨柚子を安全な後方へと運ぶことの方が急務だ。
 鴨希一が、ビームガンでアウグストゥスを牽制して援護する。その間に、ギルバート・エリオンは、FFMEMk-Ⅳを自機の替わりにホーネット・アサルト改に乗せると、後方にいるリズのアンフィビアスアサルト級へとむかわせた。
 一方の鴨希一は、敵ミサイルの攻撃に晒されていた。巧みなMEC操縦で大半のミサイルを回避するものの、同時にアウグストゥスに急接近され、レイジャベリンに突き刺されかけた。だが、チョバムアーマーを吹き飛ばすことによって、なんとかダメージを相殺する。
 間髪入れず、鴨希一が、ハイパービームリボルバーで反撃した。極近距離からの直撃を受けて、アウグストゥスが粉々になって吹き飛んだ。
『ロベーラを確認。カリギュラと戦闘中』
 ギルバート・エリオンが、報告した。
『いくぞ!』
 信道正義のプギオTHが、そちらへとむかう。目標は、もちろん指揮官であるチャックのカリギュラだ。その後を、クラン・イノセンテの試製プギオSUとミラ・ビィエーラの試製プギオが追う。
『退け、チャック。こんなことをして何になるんだ。親父に何を吹き込まれた!』
『意味はあるんだ。なぜ、気づかない!』
 キリュウ・ヤスハラのロベーラと、チャックのカリギュラが、オープンチャンネルで怒鳴りあいながら、激しい戦いを続けていた。
 とはいえ、アキューザー・イェーガーに狙われているロベーラは、幾分追い込まれて不利な状況だ。ついにアキューザー・イェーガーの一基がロベーラにとりつき、その出力が大幅に下がる。
『下がれ、キリュウ。こいつは俺たちがやる!』
 後ろ盾の号令で、クラン・イノセンテとミラ・ビィエーラにロベーラを援護させながら信道正義が叫んだ。
 敵とはいえ、顔を見知った者と殺し合いをするのがよいことのはずはないとクラン・イノセンテも考える。
 ならば、一緒に戦う自分たちが、キリュウ・ヤスハラの前に立つことがあったとしても、それは自然なことのはずだ。
 信道正義とクラン・イノセンテが加速してロベーラの前に出る。後方からは、追従するミラ・ビィエーラが、戦場を把握して低反動ビームショルダーキャノンで露払いをした。
 複数の小型機が接近してくるのを見て、当然のようにチャック指揮下のアウグストゥスの小隊もあがってきた。
 前進してくる信道正義たちに対して、アウグストゥスがミラ・ビィエーラの砲撃をかいくぐり、ゾーンディフェンスのZOCを展開する。
 その支援を受けて、チャックのカリギュラが、肩のレイキャノンで砲撃を加えてきた。直撃を食らえば、プギオなど一撃だ。
 以前の戦いでは、従来機はアウグストゥスの性能に追いつけずに後れをとったが、プギオであれば同等の戦いができる。後は、機体の動きとそれを動かす人間の差が、結果に直結するのだ。トランスユニットVを装備した信道正義のプギオTHは、生身の人間が見えない足場でステップを踏むかのような動きで、巧みにチャックの攻撃を避けていった。
 そして、逆にダブルバレルライフルでアウグストゥスを追い込み、胴部への直撃を与える。武器や推進器を狙うのではなく、コックピットと魔力ドライブ炉のある胴部を、確実に一撃で破壊するのだ。迷いは、予想もしない反撃を許す危険性がある。
 たちまち、敵のZOCが崩れた。
 戦場把握でチャックのカリギュラを捉えた信道正義が、トランスユニットのリミッターを解除した。
 すぐにアウグストゥスが阻止しようと動くが、クラン・イノセンテがABマシンガンのエイムショットで撃破する。
 さらに、ミラ・ビィエーラが、グレネードを発射して援護した。
 回避したものの、アウグストゥスの一機が爆発のあおりを食らって姿勢を崩す。即座に立て直して加速した所へ、プリエンプティヴストライクで先回りしたクラン・イノセンテが、F・ユニットの光を曳きながら突っ込んできた。キャヴァルリィブレードのラピッドアタックで、アウグストゥスが機体を斬り裂かれる。
 その後に続いたミラ・ビィエーラが、ビームソードのラピッドアタックで確実に止めを刺した。
 アウグストゥスを排除してもらった信道正義が、後顧の憂いなくカリギュラに突っ込んでいく。
 無線シュナイダーを前方に進ませ、ビームでカリギュラを攻撃する。
 シールドでビームを散らしたカリギュラが、レイジャベリンから放ったアダマンチウムの散弾で無線シュナイダーを撃ち砕いた。
 だが、破壊された無線シュナイダーの陰から、信道正義が必殺のビームソードを構えたまま突っ込んでくる。
 見事に胴部を貫いたと思ったが、わずかにかすめただけで躱わされてしまった。ディレイアヴォイドでタイミングを狂わされたらしい。
 サイコプレッシャーで信道正義の追撃を瞬間抑えると、カリギュラがその俊敏な動きを駆使して大きく後退した。呼吸する間よりも短い時間の内に、立て直した信道正義が加速するが、その前にアキューザー・イェーガーが立ち塞がった。ホーミングはなくとも、コントロールしているパイロットにロックオンされ、敵機として認識されてしまえばまっすぐにむかってくる。その辺は、通常のイェーガーと同等だ。
 サイコフォーキャストで殺意を察知できない無人機は厄介だ。トランスユニットVの反応速度で次々にアキューザー・イェーガーを斬り払う信道正義であったが、時間をとられた。大量のアキューザー・イェーガーを投入した分、手数だけはマケドニア・キングダムの方が圧倒的に多い。
 すでにチャックのカリギュラは十分な距離に離れている。
『アキューザー・イェーガーは、十分に目的を達成した。全機、帰投しろ』
 チャックが、マケドニア・キングダムのMECに命令する。すると、今まで姿を隠していたミゼットサブマリン改が次々に姿を現した。ダミーのマジックチャフの中に少数が潜んでいたのだ。
『俺たちは未来へむかう! ついてくるのか見送るのか、それは、キリュウ、お前自身が決めろ!』
『待て、チャック!』
 脱出用のミゼットサブマリン改とエンゲージするカリギュラを、キリュウ・ヤスハラのロベーラが追いかけようとした。だが、アキューザー・イェーガーのせいでほとんど出力が上がらない。
 ミゼットサブマリン改が、一斉にハープーンで弾幕を張り、追撃してくるラディア連合王国軍のMECを牽制する。その間に、ミゼットサブマリン改の牽引フックを掴んだアウグストゥスは、そのまま牽引されて戦域を離脱していった。
『撤退しただと!?』
 信道正義が、解せぬと声をあげる。
 鮮やかな引き際だが、なぜこのタイミングなのだろうか。
 いくらラディア連合王国軍が援軍に現れたからといって、アクシス・ムンディはもう目の前である。とりついて内部に侵入すれば、十分に破壊工作が行えるだろう。それとも、文字通りの露払いなだけで、本命は艦隊による攻撃なのだろうか。それであれば、キュベレー教団のキャヴァルリィをほぼ全機動けなくしたのであるから、エアロシップにとっての最大の脅威は取り除かれたと言える。
 それとも、他に何か目的があったのであろうか……。
『いって、キリュウ!』
 グリーフィア・アルチュセールが、Gハイドのコックピットをオープンにして叫んだ。すぐに意図を理解したキリュウ・ヤスハラも、ロベーラのコックピットから飛び出してくる。
 素早く乗機を交換すると、キリュウ・ヤスハラはドッキングを解除し、Gハイドでチャックを追っていった。
『キャヴァルリィの救助を始める。援護を頼む』
 ギルバート・エリオンが、エスパーダ隊各員に告げた。戻ってきたホーネット・アサルト改と共に、ロベーラをはじめとする漂流しているキャヴァルリィをアクシス・ムンディやアンフィビアスアサルト級へと運んでいく。
 未だ、マケドニア・キングダム艦隊から、アクシス・ムンディへの直接砲撃はない。アイアンボトム・サウンドからのバナント・ベル艦隊は、どのように戦っているのだろうか……。


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