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月魄供覧

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エモーショナー


 マケドニア・キングダムMEC部隊の後方には、タルクィニウスに護衛されたヴァルチャーがアキューザー・イェーガーを放出し続けていた。
 デルタ型の機体の上下には、MEC固定用のフックが見える。ワラセアでの巡航時には、上下にアウグストゥスタイプを乗せて運ぶことができるようだ。ハヴォックタイプの場合は、ワスプのように一機だけのようである。
 左右の翼部には、アキューザー・イェーガーのランチャーがあり、チャクラム状の自立型ドローンを大量に放出していた。
 キュベレー教団のキャヴァルリィのほとんどは、このアキューザー・イェーガーによって動きを封じられてしまっている。その間に、マケドニア・キングダムのMECは、キュベレー教団のチンクエディアやスカジーガンポッドなどを次々に排除してしまっている。
 迅速なラディア連合王国軍の援軍がなければ、今頃は全滅していたことだろう。援軍を確認したマケドニア・キングダム軍は、無力化したキュベレー教団のキャヴァルリィよりも、攻撃力を有するラディア連合王国軍の排除を優先したようだ。
 いずれにしても、マケドニア・キングダム艦隊の最大の障害となるキャヴァルリィは、完全に押さえ込まれている。艦隊が到着すれば、一斉砲撃でアクシス・ムンディが倒壊する危険性は高い。
『邪魔だあ! ガァトリングゥ、ロォックオォン!!
 エモーショナー隊の“防御崩し”他方 優が、邪魔なタルクィニウスに対してガトリング砲を放った。
 タルクィニウスがショルダーシールドで防御するところを、グレートファルシオンのフレキシブルスラスターで一気に接近し、キャヴァルリィブレードで叩き割る。
キャヴァルリィィィィブレェェェードゥ! ブレェドォダァンスゥ
 大型剣を振り回しながら、周囲のタルクィニウスを蹴散らして、味方の道を切り開く。
 同じスクラマサクスを発展させた機体ということになるが、魔改造されたグレートファルシオンが、最新バージョンのタルクィニウスが相手とはいえ、見劣りする部分は一つもない。ないはずである。
 狙うは、トランスポーターでもあるヴァルチャーだ。これをすべて潰してしまえば、アキューザー・イェーガーを止めることもできるし、敵の帰りの足を潰すことにもなる。アクシス・ムンディを占領するのでもなければ、帰還するための方法は必要だろう。そうなれば、進退窮まって投降してくる可能性すらあるはずだ。
 そのためにも、他方優は切り込み隊長として、ヴァルチャーを護衛しているタルクィニウスを蹴散らしていく。
 浴びせかけられるガトリング弾を、キャヴァルリィブレードで防ぐ。その剣の一振りで銃弾を撃ち払いつつ、それに潜ませるようにしてガトリング砲で敵を押し返した。
『前方の敵を排除して。その後方にヴァルチャーの部隊がいるわ。さらに後方には、エアロシップの反応多数……これはマジックチャフ?』
 後方からシンフォニック・タクトで全方位索敵を行った“セーフティピッカー”セシリア・レーゼルが、エモーショナー隊の全員に告げた。ヴァルチャーのかなり後方にエアロシップの反応が多数確認されるが、数が多すぎるし攻撃もしてこない。おそらくは、艦隊が控えていると誤認させるためのダミーだろう。
 その通信を傍受したタルクィニウスが、セシリア・レーゼルの乗るチンクエディア型アイギスにむかってくる。だが、すぐに二機のボムキャットがその前に立ち塞がった。
 メックアサルトライフルの集中攻撃を受けて、タルクィニウスが回避行動をとる。
『突出した敵を排除して、突っ込むよ!』
 ミューレリア・ラングウェイに指示され、ブラックバード丁改を引き連れたリリア・リルバーンのプギオTHが飛び込んでくる。シュツルムアタック陣形で、突出する形となったタルクィニウスに集中攻撃をしかける。
 ミューレリア・ラングウェイのプギオSUも加わり、数の力でタルクィニウスを圧倒して撃破する。
 そのままミューレリア・ラングウェイとリリア・リルバーンたちは派手に立ち回り、ヴァルチャーを護衛するハヴォックmkⅡたちの注意を引きつけた。
『一気に穴を開ける』
 “紫電一閃”ユファラス・ディア・ラナフィーネが、クーガー型ストラトスの傍らに試製シルトシュナイダー・シュバリエを展開し、サイコバード陣形で一気に加速する。拡張パーツ・サタンユニットとサイコアクチュエータで機体を自身の身体のように操るMEC操縦で、回避しようとするタルクィニウスを一切逃がさず、その突進で粉砕していく。
 それに合わせて、リリア・リルバーンのプギオTHが無線シュナイダーを展開し、ブラックバード丁改と共にサイコバード陣形で突っ込んでいく。
 ミューレリア・ラングウェイは、その後を追っていった。
 その突進で、一気に敵防衛網に穴が開く。
『私たちは、ヴァルチャーを排除します』
『了解。もとよりそのつもりです』
 “晴嵐の白薔薇”ルーニャ・プラズランの言葉に、“ルーニャの百人隊長”天津 恭司はそう答えた。
『以前の戦いでは、後方に下げてしまってすみません。セルバンテスには会わせたくなかったもので……』
『今、それを言います!?』
 ナイトホーク戦において天津恭司は、敵MEC隊を自分たちで撃破するので、ルーニャ・プラズランには旗艦の守りをするように言ったのだ。実に個人的な思いからのお願いだったので、その弁明だったのだが、“ひとりの少女を救った”ルーナ・スプレイグの答えは素っ気なかった。
『私だって、ストーカーの相手は嫌ですよ。それに、本当に大切なのはナイトホークを撃破することの方でしたから。わざとらしく謝るような人は嫌いです』
 クスクス笑いを隠しながら、ルーニャ・プラズランが悪戯っぽく答えた。
『さあ、いきますよ。ついてきなさい。それとも、ちゃんと私の前に立てる?』
『もちろんですとも』
 軽く煽られて、天津恭司が即答する。
 加速する巡航形態のルーニャ・プラズランのラプタープラスを追って、天津恭司のラプタープラスAもスラスターを全開にした。
 機体下部をむかいあわせとして、二機のラプタープラスが、まるでミサイルのように加速した。
 ロールしながらのブレイドダンスでビームガトリングを全周にばらまきながら、天津恭司のラプタープラスAとルーニャ・プラズランのラプタープラスが突き進んでいく。
 防衛にハヴォックmkⅡが出てくると、素早く二機が分かれた。天津恭司のラプタープラスAが変形し、C.ツインランスを繰り出す。オプチカルフェイクでキャヴァルリィブレードを空振りしたハヴォックmkⅡが、胴体を貫かれて動かなくなった。
 その間に、ヴァルチャーに肉薄したルーニャ・プラズランのラプタープラスが、変形と共にパイルブレードを突き出して敵の機体を貫いた。
「おっと、狙われてるぜ!」
 ヴァルチャーに狙いを定めたルイン・パダーオは、サイコフォーキャストによって逆に自分が狙われていることに気づいて回避運動をとった。ワラセアでの巧みなMEC操縦を駆使して、敵の攻撃を避けつつ低反動ビームショルダーキャノンを発射する。
 他方優とユファラス・ディア・ラナフィーネが切り開いた空間を突き抜けて、ビームがヴァルチャーを貫いた。爆発と共に、搭載されていたアキューザー・イェーガーが粉々の破片となって飛び散る。
「次だ!」
 すぐさま、次のヴァルチャーに狙いを定め、ヘビーアサルトライフルで直撃を与える。
 だが、さすがに、敵も対応してくる。サイコバリアを展開して、一機のハヴォックmkⅡが突っ込んできた。グレネードランチャーで迎撃するものの、素早く回避される。すかさず、無線シュナイダーによる死角からのビームを浴びせたが、サイコバリアで防がれてしまった。
 サイコフォーキャストで逃げようとするが、プリエンプティヴストライクで先回りされた。ツインビームソードで斬りかかられる直前、ルイン・パダーオがサイコプレッシャーを放った。ハヴォックmkⅡの動きが一瞬止まったわずかな隙に、スパイクシールドを繰り出して機体を強打する。
 破損部からスパークをあげて吹き飛んでいくハヴォックmkⅡに対して、ルイン・パダーオが無線シュナイダーで止めを刺した。
 エモーショナー隊の攻撃は的確だが、マケドニア・キングダムとて、すぐに対応はしてくる。
 防御網に開いた穴は、すぐに戦場把握した別の機体が埋めに移動してきていた。
 突進が終了したユファラス・ディア・ラナフィーネのストラトスとリリア・リルバーンたちは、反動による損傷をかかえたまま敵のただ中に取り残されている。
 ハヴォックmkⅡが、防衛網を再構築して、ヴァルチャーに攻撃をしかけてきたユファラス・ディア・ラナフィーネたちを孤立させようとする。
『敵の陣形を整えさせないで』
 敵の動きを素早く観察し続けていたセシリア・レーゼルが指示を出す。
『そう簡単にはいきません』
 “ブルーコメット”藤原 経衡コメットマスターが、そのスピードを生かして防御網をかいくぐって飛び込んでいった。敵をかき乱しながら、オートロックオンしたアキューザー・イェーガーを次々と冥飛剣で粉砕していく。
 さらに、立ち塞がるタルクィニウスを冥飛剣で斬りつけた。損傷部から浸食が広がっていき、タルクィニウスがコントロール不能に陥る。
 その混乱に乗じて、ユファラス・ディア・ラナフィーネが反撃に出た。正面のヴァルチャーをグレネードで吹き飛ばすに続いて、背面撃ちで背後に迫ったタルクィニウスを有線式アダマンチウムランチャーで撃破する。
 オプション兵器同士を戦わせる中、藤原経衡はガトリング砲でヴァルチャーを攻撃した。
『ブルーコメットか、なぜキュベレーに味方する!』
 特徴的なコメットマスターの機影から、藤原経衡がブルーコメットの異名持ちであると察した敵パイロットが、ベンセルム同盟の専用チャンネルで藤原経衡に通信を入れてきた。かつてワラセア動乱時に、藤原経衡はベンセルム同盟に味方してグランディレクタ共和国と戦った経緯があるのだ。
『味方でありたければ、その証しを見せなければ、青い彗星の名を身をもって思い出してもらうまでだ』
 藤原経衡が問い返す。
『それは……』
 敵が言い淀んだ直後、発信主だったらしいハヴォックmkⅡがロケット弾の直撃を受けて通信が途絶えた。
 ヘッジホッグを発射したのは、“新エーデル親衛隊”スレイ・スプレイグのストリークMk-Ⅲだ。オートロックオンした敵に確実にダメージを与えて、先行している部隊との合流を阻む。
 スレイ・スプレイグは固有チャンネルでの通信など知るよしもなく、着実に攻撃を進めていっただけだ。
 いずれにしても、アキューザー・イェーガーをなんとかしなければ、この戦場でキャヴァルリィは役に立たない。
 ビームガトリングで敵の混乱を広げつつ、スレイ・スプレイグはハヴォックmkⅡを抑えにかかっていった。
『しかし、そんなにキュベレー神は、邪魔なのですかねえ』
 ふと、スレイ・スプレイグが思う。
 ネオ・グランディレクタ共和国軍を率いたキャサリン・ベンクマンもそうだが、冥王やラディア連合王国への攻撃に、上手くキュベレー教団を巻き込んでいる。正確には、キュベレーがいるとされるアクシス・ムンディをだ。
 実際、キュベレーはテルスを支配する神と言える。とはいえ、支配と言っても具体性に欠け、スレイ・スプレイグにはピンとこなかった。ただ、実体を持ったキュベレー神という個人が存在するのは事実だ。それを忌避する者もいるだろう。だが、キャサリン・ベンクマンやケヴィン・ヤスハラほどの者たちが、単純に神様による支配が気に入らないからといって攻撃をしかけるだろうか。
 客観的に見れば、ジェノ・サリスとしては、キュベレー神は冥王との戦いで助力をしてくれた存在だ。感謝こそすれ、今のところ不利益を被った記憶もなく、排除する必要も思いつかない。
 いずれにしても、理由のはっきりとしない戦いをしかけてくるマケドニア・キングダムは不自然だ。
『所詮は、人間だっていうことだよね』
 セレナ・スプレイグが、スレイ・スプレイグに言う。作戦としては、グランディレクタ共和国軍とマケドニア・キングダム軍で同時攻撃をしかけられたら、ラディア連合王国軍としても防ぎきれなかっただろう。逆に、なぜそうしなかったのかという疑問も浮かぶ。やっぱり、協力関係を謳ってはいたが、シュピール・アバルトとケヴィン・ヤスハラは仲が悪かったんじゃないかとセレナ・スプレイグは思う。
 いずれにしても、最悪の連携をとられなかったことは、こちらにとっては好都合だった。所詮は、非効率な人間のすることだ。すべてにおいて、最高効率で実行できるはずもないだろう。
 護衛機はスレイ・スプレイグたちに任せて、ユエ・スプレイグはヴァルチャーをサイコIミスリルライフルで狙い撃っていった。
 不規則な動きで捉えにくいアキューザー・イェーガーの動きも、よく観察すれば規則性はある。その動きを先読みすると、敵味方のMECが戦いを繰り広げる中を縫うようにして、アキューザー・イェーガーだけをエイムしていく。
 セレナ・スプレイグのプギオTHも、ヘビーアサルトライフルとショルダービームキャノンを交互に撃ちながら、アキューザー・イェーガーを撃ち落としていった。
 やられた分を補充するかのように、ヴァルチャーがアキューザー・イェーガーを放出しながらむかってきた。さすがに、ただのトランスポーターではない。やはり大本を叩かなければ埒があかない。それにしても、一機のヴァルチャーで、いったいどれだけのアキューザー・イェーガーを搭載しているのか。それだけ、アキューザー・イェーガーの機能が、一極特化型の小型機だということなのだろう。
「そう簡単には、好きにさせないわよ」
 “散光の銀閃”レジーナ・ヘルムートのプギオが、二機の試製プギオ早期警戒機と共にオフサイドトラップのZOCを展開した。
 ビームアサルトライフルとガトリング砲で張られた弾幕に、ヴァルチャーが頭を押さえられて回避運動をとる。
 一度他方優に崩された防御網を再構築しようとするマケドニア・キングダムのMEC隊であるが、レジーナ・ヘルムートに牽制されたところを藤原経衡とスレイ・スプレイグによってさらに防御網の穴を広げられていく。
 ミューレリア・ラングウェイのプギオSUが、敵の防衛網を突破してヴァルチャーに肉薄していった。ヘビーアサルトライフルのブレイドダンスで、ロックオンした周囲のヴァルチャーに対してアダマンチウム弾をばらまいた。
 ヴァルチャーが爆散する中、アキューザー・イェーガーが襲いかかってくる。MECに対する自動追尾はないはずであるから、いずれかのヴァルチャーのパイロットがコントロールしているのだろう。それでも、アキューザー・イェーガー自体に敵意がないため、認識しにくいのは厄介だ。
 さらに、アキューザー・イェーガーの中に隠れていた無線イェーガーがビームを放ってきた。
 ミューレリア・ラングウェイはシールドで防ぐものの、盾を破壊されてバランスを崩す。
 アダマンチウムガトリングで攻撃してきたヴァルチャーに対して、ミューレリア・ラングウェイの前に出たユエ・スプレイグが、プギオTHの無線シュナイダーを盾として使い潰した。そのままウルフパック陣形で横へと回り込み、フィンガーマシンガンを浴びせかけた。素早い機動で回避しようとするヴァルチャーを、巧みなMEC操縦で追従して攻撃を命中させる。スラスターに直撃を受けたヴァルチャーが爆散していった。
 前進したレジーナ・ヘルムートが、ZOCをバイパーメナスに切り替えて敵パイロットを蝕み、ハヴォックmkⅡとヴァルチャーの動きを鈍らせる。
 ハヴォックmkⅡはスレイ・スプレイグたちに任せて、ルーナ・スプレイグが、ヴァルチャーにむけて、ブラックバード丁改に装着したFAアーマーのミサイルを乱舞させた。動きの鈍ったヴァルチャーに、次々とミサイルが襲いかかる。
 光芒と共に数機のヴァルチャーがワラセアの闇に消える中、サイコバリアを展開したハヴォックmkⅡを乗せたヴァルチャーの行動を先読みしたルーナ・スプレイグが、ハイパー・ビームリボルバーを発射した。直進したビームが、サイコバリアを貫通してハヴォックmkⅡごとヴァルチャーを貫く。
 直上方向からルーナ・スプレイグのブラックバード丁改を捉えたハヴォックmkⅡが、無線イェーガーを飛ばして攻撃してくる。サイコフォーキャストでそれを察知したルーナ・スプレイグであったが、分かったからといって確実に回避できるわけではない。そこは、機体の機動力がものを言う。
 だが、巧みなMEC操縦で機体をロールさせたルーナ・スプレイグは、FAユニットで無線イェーガーのビームに耐えてみせた。続くハヴォックmkⅡのビームマシンガンに晒されつつも、致命傷は回避し、フィンガーマシンガンで反撃する。
 シールドでルーナ・スプレイグの攻撃を防ぎつつ、ハヴォックmkⅡがすれ違う。さすがに、ビームソードを抜く暇はなかったようだ。
 だが、ルーナ・スプレイグの近くに並ぶようにしていたセレナ・スプレイグが、シャドウストライク陣形で隠していた無線シュナイダーを使い、背面撃ちで旋回しようとするハヴォックmkⅡの背部スラスターを破壊する。
 待ち構えていたミューレリア・ラングウェイのプギオSUが、ビームソードを一閃させてハヴォックmkⅡを撃破した。
 そこへ、バリアオーブを展開したサワーラ・イコギアフの試製ワスプとホーネット・アサルト改が駆けつけた。素早く、損傷したミューレリア・ラングウェイのプギオSUとリリア・リルバーンのプギオTHを回収していった。


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