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月魄供覧

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チキンレーサーズ


「カタパルトに乗った機体から、順次、発艦させよ。ロベーラはどうなっているの?」
「増槽をセットしたGハイドとドッキング状態までシークエンス完了。第二カタパルトに上げます」
「急がせ!」
 ブレンダムの魔法の大筒から急遽打ち上げられたアンフィビアスアサルト級のブリッジでは、“自称“影の女豹”の後継者”リズがオペレーターと慌ただしいやりとりを続けていた。
 すでに戦闘は始まってしまっている。今は、時間との勝負だ。
『いくよ、キリュウ。速すぎて泣き声あげなさんなよ!』
 Gハイドのコックピットから、グリーフィア・アルチュセールが、キリュウ・ヤスハラに言った。
『さっさと出してくれ』
『上等!』
 アンフィビアスアサルト級のカタパルトから、Gハイドとドッキングしたロベーラが勢いよく射出される。直後に、長太い尾羽根のように四本のプロペラントタンクを装備したGハイドが、凄まじいスラスターの咆哮をあげる。
 もともと戦闘機乗りであるグリーフィア・アルチュセールが、嬉々とした声をあげる。このクラスのGは久々である。
 今回、キリュウ・ヤスハラがロベーラを選んだのは、このGハイドの推進力をあてにしたからだ。プギオでは小さすぎて、Gハイドとのドッキングには適さない。
 目の前では、すでに、フレキシブルスラスターを装備したアウグストゥスが、簡易型ストリボクを装備したファルカタと乱戦を繰り広げている。かつてスキアヴォーナが装備していたストリボグの簡易型はGハイドの量産型とも言える。分離はできない固定式だが、ファルカタなどにワラセアでの高機動力を与えていた。
チャック! いるんだったら、引け! こんなことをしても、何も生まれないだろが!』
 増槽を背後から弾き飛ばしてパージし、ロベーラがアウグストゥスとファルカタの間に飛び込んでいった。振り抜き様にキャヴァルリィブレードで背後に回ったアウグストゥスに斬りつけるものの、シュツルムシールドで受け流されて、グレネードランチャーの反撃を受けた。素早くグリーフィア・アルチュセールがGハイドを加速して回避する。
『キリュウに先を越されるなよ』
 あっという間にロベーラに追い抜かれた、チキンレーサーズ隊の“闇に囚われた”柊 恭也が、“プロが持つ破壊の手”白森 涼姫に合図を送った。
『任せなさい。口で分かりあおうとしない奴らには、これよ!』
 白森涼姫が、素早くマケドニア・キングダムのMECだけをオートロックオンしていく。次の瞬間、白森涼姫の乗るクーガーに装備されたヘッジホッグが、カバーをパージして多数の弾頭を顕わにする。一斉に発射されたロケット弾は、乱戦にもかかわらず、確実にマケドニア・キングダムのMECめがけて飛んでいった。
 蜘蛛の子を散らすようにアウグストゥスが回避運動をとる。ヘッジホッグにホーミング性能はないとはいえ、逃げ切れなかったアウグストゥスが爆散する。だが、同時にキュベレー教団のファルカタも、多くの機体がヘッジホッグの攻撃によって吹き飛んでいた。
『そんな、ちゃんと敵味方は識別したはず……』
 白森涼姫が唖然とする。ちゃんと敵味方は識別してロケット弾を発射したはずだ。セオリーとしては間違ってはいない。本来であれば、確実に敵の出鼻を挫ける戦法だ。
 確かに、ロケット弾は敵にむかって発射されたのだが、アウグストゥスの多くは、ファルカタを自機の前に引き寄せて盾としたのだった。味方を素早く迂回して敵にむかうなどという芸当が直進するロケット弾にできるはずもなく、容赦なく盾とされたファルカタを撃破していったのだった。撃ち落とされた対象は、アウグストゥスよりも、ファルカタの方が圧倒的に多い。
 本来であれば、ファルカタも回避行動をとれるため、こんな同士討ちになることはない。
 だが、マケドニア・キングダムのMECの後方では、デルタ型の機体が、次々に円盤状の物を射出していた。アキューザー・イェーガーを装備したヴァルチャーだ。チャクラムのような形をしたアキューザー・イェーガーは、全方位のブースターによって複雑な動きをしながら、確実にキャヴァルリィにとりついていったのだ。回転するエッジで敵に突き刺さったアキューザー・イェーガーは、キャヴァルリィの魔力ドライブ炉のエネルギーをすべて外部へと放出し、出力を0近くにしてしまう。そのため、出力不足に陥ったキャヴァルリィは動くことができず、簡単にアウグストゥスの盾とされたのだった。
『俺たちはキャヴァルリィ乗りとしては後輩だからな。素直に、ラディア連合王国軍の戦い方はしっかりと勉強させてもらった。アウグストゥス隊は、ラディア連合王国軍にあたれ。タルクィニウス隊はヴァルチャーと共に、キャヴァルリィにあたれ。アキューザーで奴らから最後の一滴まで啜りあげろ』
 ラディア連合王国からの援軍に対して、チャックがカリギュラからマケドニア・キングダムのMEC隊に指示を与えた。傭兵たちが、味方がいようが初手の面攻撃を好むことや、容赦なく敵機を盾として使うことなど、戦術はしっかりと研究している。なにしろ、教師はあのカスミ・ヤスハラとケヴィン・ヤスハラなのだ。武装の原理から熟知し、その最も効果的な使い方を叩き込まれている。足りないのは実戦経験だけだが、ワラセア動乱を経て、最低限の練度は身につけていた。
『来るぞ、全機散開しろ!』
 柊恭也が、スティンガーの魔力攪乱式6連スモークディスチャージャーで敵を牽制しつつ、チキンレーサーズ隊に指示を出した。
 さすがに出力低下を招いては、先ほど盾にしたファルカタの二の舞だと、小隊指揮のカリギュラが、アウグストゥス隊に散開を命じる。
 それぞれに散開した敵味方が、相手を定めて突っ込んでくる。
「さすがに、動きが早いか。だが」
 そう自由にさせるものかと、“厄介な毒虫“ライオネル・バンダービルトのプギオが、両腕のストライクハングを展開させてオフサイドトラップZOCを展開する。不規則な軌道を描いて突然のびてくるクローの攻撃に、展開したアウグストゥスが不必要な回避を余儀なくされて隊列が乱れる。
 その機を逃さず、柊恭也がビームショルダーキャノンで敵を押し返した。
 プギオSUのフレキシブルブースターを使って、一気に敵に肉薄する。
 ビームソードで斬りかかるも、アウグストゥスがハイパーHSシールドで防ぐ。柊恭也は攻める手を休めず、敵がショットランスを繰り出す前にワルーンスパイクシールドをライズエッジで二度突き出した。ハイパーHSシールドを弾かれて体勢を崩したアウグストゥスが押し流されたところへ、フィンガーマシンガンの背面撃ちで大破させる。
 すぐさま次のアウグストゥスがやってくるのをアダマンチウムグレネードランチャーで牽制すると、アサルトライフルを撃ちつつ距離をとっていった。
 ショットランスからアダマンチウムの散弾をばらまきつつ、アウグストゥスが追いかけてくる。ワルーンシールドをボロボロにされつつ、柊恭也がさらに後退した。追い立てようとアウグストゥスが加速する所へ、横合いから白森涼姫のクーガーが突っ込んできた。
 プリエンプティヴストライクでタイミングを合わせ、肩から抜き放ったビームソードを一閃させると共に、返す刀でブレイドダンスを舞う。不意を突かれたアウグストゥスが、両腕を切り落とされて吹き飛んだ。
『呑み込むぞ!』
 敵の突進を押し返し、チキンレーサーズ隊が一気に乱戦の中へ飛び込んでいった。
『敵後方から、小型の飛翔体多数。目標は教団キャヴァルリィのもよう。新型のシュナイダーと想定する!』
 チキンレーサーズ隊の後方でバゼラードを援護に据えて索敵を行うツクモ・オウバージーンが、エーデル専用プギオEWACのシンフォニック・タクトによる全方位索敵の結果を部隊各機へと正確に伝える。
 マケドニア・キングダムが、なぜにキュベレー教団をターゲットにしたのかは、ツクモ・オウバージーンの理解の範囲を逸脱していた。スフィア・ワラセア問わず、この世界に大きな影響を及ぼす宗教に喧嘩を売るというのは、どうにも分からない。単に、スフィアに被害を出すのにアクシス・ムンディが都合よかっただけなのかもしれないが、だからといってそれを見逃す道理はない。
 味方への通信はジャミングカットで維持しつつ、敵の通信はディスタブ・バーンで連携を乱す。
 なまじ自立型なのが災いして、アキューザー・イェーガーは、ラディア連合王国のMEC隊とは関係なく、あくまでもキュベレー教団のキャヴァルリィに襲いかかっていった。
 ツクモ・オウバージーンから送られてきたデータを元に、“黄昏の護衛”松永 焔子のプギオが、キュベレー教団のキャヴァルリィを狙うアキューザー・イェーガー群にむかった。
 その行く手にタルクィニウスが立ち塞がるが、後方の別部隊からの狙撃で、その動きが一瞬止まる。松永焔子はスペクトルでレッドライダーの軌跡をいくつも輝かせながら、立ち塞がるタルクィニウスのフレキシブルスラスターを、すれ違い様に無線シュナイダーで破壊して行動不能にしてすり抜ける。後方で、狙撃されたタルクィニウスが爆散した。
 目視圏内まで近づくと、ウェポンライドでアキューザー・イェーガーの一基を乗っ取り、別のアキューザー・イェーガーにぶつけて双方を破壊した。これを繰り返して数を減らすのだ。
 立ち塞がるカリギュラのショットランスを、高振動するストライクハングのクローで掴んで砕いたライオネル・バンダービルトのプギオも、アキューザー・イェーガーの一つをウェポンライドで乗っ取り、敵にむかわせた。カリギュラが肩のレイキャノンで迎撃しようとするのを、サンダーバッシュ陣形で巧みに避けさせ、見事にアキューザー・イェーガーを敵胴部へと命中させる。MECの魔力ドライブ炉に対しては自動追尾能力を持たないアキューザー・イェーガーだが、普通にコントロールしてやれば問題はない。
 チャクラムのように機体に突き刺さったアキューザー・イェーガーは、無数のワイヤーをのばしてカリギュラを捕らえると、魔力ドライブ炉のエネルギーを外部へと放出する。放出されたエネルギーは、彼方へのワラセア空間の一点を目指してスーッとのびていった。
 動きの止まったカリギュラを、ライオネル・バンダービルトがマルチバースト陣形のストライクハングで容赦なく貫いた。
「なんだよ、こいつら」
 フェザーシューターでアキューザー・イェーガーを迎撃しながら、グリーフィア・アルチュセールが悪態をつく。ロベーラはキャヴァルリィの魔力ドライブ炉を搭載しているため、アキューザー・イェーガーのターゲットになっていたのだ。
 アキューザー・イェーガーは小型のせいか、数が多い。キャヴァルリィにとっては、実に厄介な兵器だ。
 しかし、マケドニア・キングダムは対冥王用と銘打っていたわけであるが、冥王が大量のキャヴァルリィで攻めてくるとでも予想していたのだろうか。実際には、その主力はオークたちであったわけだが。もっとも、スピリット・キャヴァルリィとしての冥王に、これだけのアキューザー・イェーガーで攻撃をしかけるのであれば、確かに効果はあったかもしれない。
 そんな中、ライオネル・バンダービルトと松永焔子が、少しずつではあるが、ウェポンライドで確実にアキューザー・イェーガーを落としていく。
「そうか、やってみる!」
 キリュウ・ヤスハラが、アキューザー・イェーガーにむかってウェポンライドを試みる。一気に、十数基のアキューザー・イェーガーが反転した。かつてのキャサリン・ベンクマンには及ばないが、一度に一基が限界である他の者たちと比べれば破格だ。アキューザー・イェーガーでアキューザー・イェーガーを牽制し、ロベーラが進む。
「チャック! どこにいる!」
 アキューザー・イェーガーの脅威を退けると、キリュウ・ヤスハラは突き進んでいった。


フェロシアス・マウント


「敵は、アクシス・ムンディの破壊が目的なのかな……。いや、集中、集中」
 フェロシアス・マウント隊は、一歩距離をおくことによって、後方からの支援攻撃に徹していた。
 試製プギオ早期警戒機を乗せたアデル・今井の試製ワスプ・ハインケルヴェスペを基点として、“戦場の故郷”今井 亜莉沙X・クレイモア改が前面に位置し、アイン・ハートビーツのプギオTHとクラウス・和賀のプギオSUがエレメントを組んで左右に動きながら攻撃をし、夏色 恋の試製プギオSUと無人の試製プギオTHがエシュロン陣形で遊撃という配置をとっている。
 とはいえ、乱戦では敵だけを確実にロックオンすることは難しい。いつイレギュラーで味方機が射線に入ってくるか分からないからだ。
 それでも、アイン・ハートビーツは、的確なエイムショットで、敵にダメージを与えていった。クラウス・和賀も、オートロックオンで捉えた敵に対して、ダブルバレルライフルの実弾で攻撃をしていく。
 サイコフォーキャストで避けられたり、サイコバリアやビームコーティングされたシールドで防がれて致命傷は与えられないものの、狙撃に対応する分、白兵戦に対する対応が遅れる。手慣れたラディア連合王国軍の傭兵たちにとっては、それで十分だ。
 クラウス・和賀がプリエンプティヴストライクで先読みし、ダブルバレルライフルを放つ。被弾して動きを止めたタルクィニウスが、味方のプギオにスラスターを破壊される。こうなれば完全な的だ。アイン・ハートビーツは、チャージの終わったインフェリアミスリルガンのエイムショットで、確実に止めを刺した。
 すぐさま、次のターゲットへの攻撃準備に入る。プギオTHに搭載されているトランスユニットは良好だ。機体を、まるで己の手足のように操ることができる。
 フェロシアス・マウント隊の攻撃に気づいたハヴォックmkⅡが、転進してむかってくる。アイン・ハートビーツとクラウス・和賀が左右から攻撃するのを、巧みなスラスター捌きで回避してみせる。
 反撃とばかりに、ハヴォックmkⅡがホーミングミサイルを撃ってきた。オプティカルフェイクで直撃を避けた今井亜莉沙が、サイコバリアとX・クレイモア改の重装甲を生かしたブロックスタンスでミサイルをいなしつつ後退する。
 それに合わせてアイン・ハートビーツとクラウス・和賀も、クロスするように左右に動いて敵に備えつつ後退していった。
 誘い込まれたハヴォックmkⅡが、ビームバズーカを撃ちつつ、今井亜莉沙を追撃してきた。反撃するそぶりを見せつつ、X・レッドライダーを発動させた今井亜莉沙が、一気に後退する。左右からは、挟み込むようにアイン・ハートビーツとクラウス・和賀が迫り、それに合わせて、立体的な死角となる上方から夏色恋がビームバスターショットを放つ。いずれの機がターゲットとなっても、敵の背後を誰かがとれる配置のはずだった。
 そこへ、ハヴォックmkⅡの背後にシャドウストライクで隠れていたヴェンジェンスが割って入ってきた。サイコバリアで散弾化したビームを弾き飛ばしつつ、一気に上昇する。そのまま、ツインビームサーベルの長いリーチで、無人の試製プギオTHを一刀両断にした。
 アイン・ハートビーツとクラウス・和賀の攻撃は、ヴェンジェンスが放った二基の無線イェーガーによって防がれる。その間に、ハヴォックmkⅡは急加速で今井亜莉沙を捉え、胸部ミサイルを発射してきた。回避しきれなかったX・クレイモア改が、チョパムアーマーを駆使して直撃に耐える。
 爆煙が消え切らぬまま、モニタ全面にビームソードを大きく振りかぶったハヴォックmkⅡの姿が映し出された。
 避けきれないと思った時、アデル・今井の操るシェル・メガリスが二機の間に飛び込んできた。
 ビームソードの輝きが、メガリスを弾き飛ばし、X・クレイモア改をかすめるにとどまる。
 今井亜莉沙が、ライス・オブ・キャヴァルリィで狙い定めたハイパー・ビームリボルバーで、至近距離からハヴォックmkⅡを吹き飛ばした。
『さすがに、一筋縄ではいかなかったわね。アデル、補給をお願い!』
 グレネードで敵を牽制しつつ、今井亜莉沙がアデル・今井に伝えた。バリアオーブを展開したハインケルヴェスペがすぐにX・クレイモア改を回収に現れた。
 一方、僚機を破壊された夏色恋は、即座にリアルブランチで分身を作り出し、エシュロン陣形でヴェンジェンスに反撃をかける。
 敵も同様に分身を作り出すと、双方が真正面からぶつかりあった。互いの分身がぶつかり合い、相打ちとなって吹き飛んだ。フィードバックを受けた本体で爆発が起こり、双方が敵を捉えることができずに姿勢を崩したまますれ違う。
『手練れです。御注意を!』
 クラウス・和賀が叫んだ。異名持ちに心当たりはないが、高性能機を与えられたパイロットだ、警戒する必要は十分にある。
 反転してくるヴェンジェンスを、アイン・ハートビーツがマインレイヤーで機雷を散布して牽制した。
 さすがに潮時と考えたのか、ヴェンジェンスはフラッシュバズーカによる目眩ましを放った後に素早く後退していった。


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