【種子からの試練1】
RWOの世界。この世界には様々な場所があるが、水辺の中を探しているのは
葵 司――マサヨシだった。
マーメイドとなる事で水中で自由に動けるようになり、ここで生命の種子を探そうと考えた。こういった場所であればRWOの世界の力が及んでも生命が生まれる水という場所が出来るとの想いだった。
「何かあっても引かないようにしないと」
水中に入ることが出来ないRWO内ではイテと名乗っている
七種 薺はアイアンドラゴンに乗りながら空から種子を探している。
マサヨシよりもイテの方がまだ弱いので、敵が現れた場合は引かずに戦おうと考えたいた。
「見付けた」
その時マサヨシが水の中で生命の種子を見付けることが出来、近づいていく。しかし――生命の種子は簡単についてきてはくれない。
「そうなるよな……!」
マサヨシは敵からの初撃を水中での速度を生かして回避する。生命の種子に自分自身の力を認めてもらわなければ、と武器を構えた。
相手は水中生物のような姿をしていることを考えると、相手も水中戦が可能だろう。
「変わる事が怖いのは分かるがな!」
すれ違うようにして泳ぐと、ストライダーの風が水中の中で弱い水流となり少しだけ動きが阻害されたようだ。
「よし――」
攻撃開始といった時だった。突然上から何かが落ちてきて、すごい音が水中でも聞こえた。
マサヨシが確認すると、それはイテの姿だった。
(つ、強い)
イテもまた空に生命の種子を見付けることが出来たのだが、同じく試練を受けていたのだ。しかし、相手が強いため押されていた。
「でも、諦めるわけにはいかないのよ!」
イテは再度アイアンドラゴンに乗ると生命の種子に向けて距離を詰めていく。ここまで戦う事が出来たのはブリングマインドによるもので、致命傷を避けることが出来ているからだ。
しかし、イテもまた守っているだけではない。敵からの攻撃をしっかりと受け止め、ダメージを出来る限り最小限に留めるようにする。
イテは生命の種子の攻撃に引かず懸命に食らいついていく。
(これが吉と出るか凶と出るか)
マサヨシはこのイテの姿を見せる事で生命の種子も感じることがあるのではないか、とも考えていた。
「お前の相手は俺だぜ。それにな――」
生命の種子の攻撃を避けた後にポリアノドンの顎槍を投げる。敵に直撃するとこちらへと引き寄せた。
「俺が勝ったから、言われたから行くんじゃなくて自分で変わったってな。それに他の世界から来た仲間もいる。みんなと協力する方が良いだろ?」
マサヨシの言葉に生命の種子は大人しくなる。そして、水から出るとそこには肩で息をしているイテが笑顔を見せた。彼女もまた認めてもらったようであった。
RWOの世界に来ているのは
天津 恭司であるスアマもであった。
「どういう種族が出来るんだろうな」
この世界には多くの種族が存在している。そのため、生命の種子で生まれる生命は新しい種族が誕生するのではないかと予想をしていたスアマ。
そして、しばらく歩くとそこには生命の種子があった。
「ぼんやりと光ってて……すごいなぁ」
そのまま持っていこうと思ったが、試練があるという話から1度距離を取る。そして、その通り生命の種子は姿を変えて襲ってきた。
スアマのジョブであるアフターブレイブは武器を極めし者。天閃連刃を羅刹鬼眼王の腕の数を生かして攻撃をしていく。
「新しい世界に行けばきっと楽しいよ!」
彼は生命の種子に声を掛けながら敵の攻撃を避けていく。そして、チャンプムーブの回避能力を生かして、一気に距離を詰めた。
懐に入ったスアマはルクスブレイドを放つ。多数の腕を持つ種族である彼の技は更に威力が上がり、その一撃で生命の種子は動きを止めた。
「認めてくれたんだね、ありがとう。それじゃ一緒に行こう!」
こうしてスアマは生命の種子を手に入れると次の種を探しに行く。
アーキタイプの世界。様々な文明が存在するこの場所で生命の種子を探しているのは
信道 正義だ。そして、彼はすでに生命の種子を見付けている。
「どうだろうか。すでに土地や受け入れる為の基盤は揃い、他の生命の種子も来てくれている」
可能であれば戦わずに来てもらえるのが一番だ。しかし――生命の種子はその姿を変える。
「確かに簡単に信じることは出来ない――なら、しっかり力は示す」
どんな攻撃が来るかは分からないので精神耐性や身体能力が上がるドレッシングジャスティスを纏う。そこにダークグリフを体に刻むことで更に肉体の強化を行った。
生命の種子の攻撃を受ける。その力の反動を使って距離を空けるとインテュイションで観察する。
ソードアシストユニットがある正義の剣撃は威力が増しており、徐々に生命の種子を押し始める。
「アクリャのような人に近いパートナーが必要だと考えている。世界や命を補佐する存在が」
バックステップをして正面から語り掛ける。
「俺と一緒に行ってくれないか。きっと他の仲間も喜んでくれる」
その言葉を聞いて敵意がなくなるのを感じる。正義の言葉が届いたのだろうか。
「――ありがとう」
こうして正義は生命の種子を手に入れる。そして、“仲間”を見付けるためにこの世界を回ったのだった。
神多品学園都市から離れた神多品山にいるのは
乙町 空。彼女は人が出来る限り人がいない場所を選んで生命の種子を再度探していた。
「今回もすぐ見つかりましたね」
目の前にあるのは生命の種子だ。しかし、素直に別世界へと行ってくれるわけではないことは知っている。空は武器を構えるが自分から仕掛ける気はない。
生命の種子からの攻撃は双召現で生み出した槍を使いつつ、黒涙号を操り攻撃を避ける。
傷つけることをせずに認めてもらえることが一番だと空は考えていた。そのため、攻撃は可能な限り回避や防御を行い、カウンターを主体に相手の消耗を目的として戦うスタイルを取っている。
「他の仲間達もそこにはいます。独りではありません」
この生命の種子は喋らない為、不安がどういったものか分からない。しかし、孤独が辛いのはどんな生物だってそうだ。
現在新しい世界に行った生命の種子もいる。だから孤独を感じることはないと訴えた。
「――ありがとうございます」
空の力を認めたのか、孤独ではないことが分かったのか、それともどちらなのか。
生命の種子は姿を戻すと空の手へと入る。そして、仲間を集めるために空は先へ進む。