【創り育て進む1】
液体状のミルクチョコレートが流れる小川。そして、大地は黒いチョコレートで出来ているメルヘンな土地――ミルキーウェイには
星川 潤也と
アリーチェ・ビブリオテカリオが家を作ろうとしていた。
「お菓子の土地に建物を作るとしたら……やっぱり、お菓子の家だよな」
「そうねぇ……どういう感じにするの?」
潤也は考えながら閃いたように顔を上げる。
「壁はクッキーが良いな。それにチョコレートの屋根、キャンディーの窓――」
「何だかすごくかわいい家ね。潤也が暮らすには、ちょっとかわいすぎるんじゃないかしら」
そんな会話をしながらお菓子の家を創っていく。
「うん、いいな。ますますメルヘンな感じになったぞ!」
「でも、邪魔するのが来たわね。仕方ないわね、手伝ってあげるからささっと倒しましょう」
こちらへと向かってくる影は界霊の姿だ。もちろん、その敵はこのお菓子の家を壊しにやってきたのだろう。
「せっかく建てたんだ。この家は絶対に壊させるもんか!」
潤也は2刀のソルエスパーダを構えて距離を詰めていく。そして、アリーチェはスーパーアダプトワンドでそれに追従する。
界霊の攻撃をお互いチャンプムーブで回避をしながら翻弄していく。
「1体だけだっていうのに強いわね……!」
「この土地を発展させたい、その想いは本気なんだ!」
潤也はブロックライガーの速度を生かして界霊の横へと移動する。敵もそれに釣られて彼の方を向くと、後ろががら空きになり、そこにアリーチェが入った。
「潤也!」
「分かってる!」
2人はコンセクティブブラストを同時に界霊へと向けて放つ。挟まれている状況であれば回避する事は難しくない。しかし、1度潤也に注意を向けてしまった為に隙が出来てしまった。
潤也とアリーチェの光線は同時に着弾。そして、激しい複合爆発の威力を持って界霊を撃破するのだった。
「強かったね」
「そうね。ほら、終わったんだから続きよ」
こうして家づくりの続きをして出来上がった家は潤也が思っていたよりも良いものが出来上がったようだ。
「うんうん、良い感じだ!」
「ねえ、潤也」
一緒に見ていたアリーチェがお菓子の家を眺めながら言う。
「何?」
「――こんなに大きな家なんだから、ちょっとくらい味見してもいいわよね」
「……代わりに何か作ってあげるから、勘弁してください」
今度はアリーチェからお菓子の家を守らなければいけなくなりそうな潤也であった。
複数の霊脈にある火山――クルーイック火山。
クロウ・クルーナッハは周囲を見ながら、建物を立てる場所や形を思い浮かべる。
「溜まった霊気噴出調整用の魔術搭の建設――」
カルデラには霊気が溜まっており、クロウはそれを上手く使える施設を考えていた。しかし、建てるためにはしなくてはいけないことがある。
「――来たな」
彼女が空を見上げるとやってきたのが、それを邪魔しに来る存在の界霊。これを倒さなければ建設をしても破壊されてしまう。
クロウは距離があるうちに門の解放で邪神群を召喚させて攻撃をしかける。しかし、それを潜り抜けてクロウへと攻撃を仕掛ける。
空虚の門を開き界霊の攻撃を無力化ができたが、建設途中の搭への被害が及ぶ。
「対処しておかないと更に被害が出る。こっちが先だ……!」
再び門の解放を行い、隙をついて界霊を攻撃。多数の邪神に次は対処が出来ずに、直撃を与えることが出来た。
上手く界霊の攻撃は受け流せており、界霊にダメージを与えることが出来ている。そして決めにきたのか、真正面から全力でぶつかろうとしているところを、空虚の門再度防ぎクロウも止めを刺した。
「流石に消耗が激しいが……どうにかなったな」
搭には被害が及んだが界霊は退けることが出来た。
こうして界霊が襲ってくるということは、この世界に意志があるのか――。
「……いいや、今は建物をどうにかしよう」
いつか出来るのであれば調べてみたいと思い、クロウは破壊された箇所の修復を始めた。
濃い霧が発生している竹林。知らない者がここを訪れたならば、出ることが非常に難しい地形さえしている。
「こんな所でしょうか」
ここで
土方 伊織は和洋折衷の洋館を建設していた。いつかここから発展して“隠れ里”のような場所が出来ることを考えながら。
そこにガサガサという音が聞こえて伊織は後ろを振り向く。
「来ましたね」
いたのは界霊。彼が作った建築物を破壊せしめんとやってきた存在だ。
「オネストさん、行きましょう」
界霊獣オネストにそう言うとピーシュチャラを界霊へと放つ。
距離を取っているが、正確に狙い撃つ技術を持っている伊織からすれば当てることは難しくはないが、流石の界霊も強い。
直接攻撃してくる際には直撃する寸前に避け、攻撃を食らわせる。そして、オネストに抱えてもらいながら空中からの狙撃していった。
弱点を探してダメージの通りやすい所を狙うが、界霊もまた簡単には直撃させてはくれない。
伊織はオネストに離してもらい、地面へと着地。それを狙って界霊が襲い掛かろうとした時――オネストによる咆哮が放たれる。そして、それによって出来た一瞬の隙をついて伊織は弱点を狙い撃った。
「ふぅ……どうにかなりました」
多少被害は出たものの、建物が崩れるような被害は出ずに済んだ。伊織が建てた洋館はここへ立ち続けるであろう。
自然が多く霊力が安定している無垢霊山。この土地の霊力は安定していることから、どんな生物も上手く生きていけることが出来るだろうと予想できる。
土地を歩き回り、自分が作ろうと考えている場所に当てはまった場所にたどりついたのは
桐ヶ谷 遥と翡翠鷹揚に憑依しているSAL0025198#神楽 鏡花}だった。
「ここなら自然を壊さず、それでいて神社を建てることができるわね」
「これだけ開けた場所なら大丈夫だね」
彼女達が選んだのは山の中でも木々がなく、開けた場所。ここで作ろうとしているのは霊力を安定させるための神社であった。
遥自身は神様というものは好きではないのだが――今後発展するにあたって、人と動物とが共存していく場所となるのであれば神社が適していると考えた。
しかし、やらなくてはいけないことは神社を建てるだけではなく――。
「来たわね」
「準備はいつでも出来てるよ」
鏡花の浅黄小袖によって大地の霊力を受けており、持久戦でも戦えるようにしている。そして、現れたのは界霊だ。
「守りは任せたわよ」
「分かってる、大丈夫だよ」
現れた界霊は2体。数を考えれば2対2の戦いになる。
敵はお互いにそれぞれ距離を空けているわけではなく、遥を狙うためにいつでも飛び掛かれるようにしているようだ。それならば、これが使える。
「絶空!」
広範囲の刃は通常の絶空よりも強力であることが見るだけで分かる。その理由は鏡花の黒漆鞘に溜められた霊力だ。
その刃を完全に避けることは出来ず、ある程度の傷を与えることに成功。奇襲の役割も果たし、それでいて遥の佇まいに慎重になっていることも分かった。
「来ないのならこっちから行くわよ」
真空波を放ち距離を詰め、接近をした瞬間に浄化の力が乗せられた神速の抜刀術を放つ。間合いの取りずらさから、避けることが難しいが界霊もまた攻撃を狙ってくる。
この間に鏡花は準備を進め、神霊化を発動させ雷水仙を取り込む。これによって遥は雷を纏い、彼女の攻撃力がさらに上昇する。
「終わりよ」
遥は吟風弄月を再度放ち1体撃破。そして、続けて来る界霊も一閃。ここまでのダメージ、強力な一撃によって敵を屠った。
「ふぅ……」
「終わったね。あ、ふと思ったんだけど」
「何?」
一安心した時に鏡花がそう言う。
「これって、結婚前に新居を建てるってことになるの?」
「ちちちち、違うわよ。そそそそそいうわけじゃないんだからっ」
純粋にこの土地の発展のために――というのもあるのだろうが、説得力が欠ける返事が返ってきたことで鏡花は笑ってしまうのだった。
アルテラの力を受けた広い草原。ここは幻想平原アルテリア。
心美・フラウィアは目の前に広がる風景を見て頷く。
「うんうん、良い感じ!」
彼女がこの土地に作ったのはケントルムやステイティオのような商業が発展して栄える街だ。
人が集まればそれだけそこは発展していくことになり、自然と発展していくと考えた。
レンガ造りの家。石畳の大通りに船が乗り入れられるような運河。全部が重要な場所になる。それほど複雑なものではないが、ここからはきっと――。
「やっぱり邪魔しに来たね」
やってきたのは多くの界霊。街という大きなものを破壊するためにやってきた事は分かる。
数が多いならもたもたはしてられない。ウィース・インカントで自身の魔力を活性化させると、まずは足止めに向かう。
「アゲンスト頼んだよ!」
心美つ追従してアゲンストが出てくると、界霊たちの攻撃を代わりに防いでくれる。
叫騒の鋸刀の力を解放させると、燃え上がるその炎で敵を焼き尽くさんとしていた。そして、イグニス・インカントも使うことで、燃え上がった界霊たちへ爆破ダメージもプラスさせる。
しかし、数ではこちらが不利なことを考えると一気にやる必要があるだろう。スカーレット・ザ・エソテリックを発動させ、紅焔で多数の敵を薙ぎ払う。
こうして心美は街を守り切り、街の更なる発展を願うのだった。
大森林の奥深く。この幻林邦アンチェイナの最深部にいたのは
キョウ・イアハートだった。
「こういった心の拠り所ってのは重要だからな」
彼が作ったのは、この幻林邦アンチェイナの最深部にある祭壇だ。1つの何かではなく、その人が願い、祈り、囚われない全てに繋がるものが作りたかった。
ある程度の大きさであり、それで強固な土台。
そこに突然衝撃波のようなものが放たれた。
「いきなり攻撃してくるとはな。だが、そのくらいお見通しだぜ」
イーリスの力を重ねて風祝の祭刃を深化。それによって発動された囚われざるAello。
界霊が来ることは分かっていたキョウはいつでも戦えるようにしていた。
キョウは元素の色を目を凝らしつつも、ソニックエアでの攻撃で防御されてもダメージを与えるその衝撃波を狙っていく。アエローは自由に、自分の敵へと攻撃。
キョウとアエローによるそれぞれ自由で、不規則な攻撃は界霊を追い詰めていく。そして――その力を界霊へと示すのだった。
彼は祭壇を見ながら、ここが自由に何物にも囚われずに進んでいってくれるよう願う。