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【9周年】新世界創造計画2 ~Civilization~

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【9周年】新世界創造計画2 ~Civilization~
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【4】新たな命

 小さくてふわふわした毛並みの猫達が、桜の花びらにじゃれついて遊んでいる。
「……綺麗だろう? ……君たちの体にある模様と、同じ花なんだ」
 そう言っても伝わってはいないだろうが、構わない。遠近 千羽矢は桜吹雪を散らしながら穏やかに微笑んだ。
 千羽矢の傍らに座っている三毛猫の浅緋は桜猫達の様子をじっと眺めている。千羽矢に「浅緋の方が先輩だな」なんて言われたからだろうか。どことなく、いつもよりきりっとした表情をしているように見えた。
 もう一頭、千羽矢が連れてきた白狼は、桜猫達が危ない所へ行かないよう見ていてほしいと頼まれた為、少し離れた場所から監視をしていた。
 が、見慣れない大きな獣に興味を引かれたのだろうか。桜猫の方から白狼に近寄っている。中には元気が有り余っているのか、白狼の身体や頭の上に登る個体もいて、白狼は少々困り顔だ。
 後で労いも込めて撫でてやらないと、なんて考えながら、千羽矢は桜猫の喉をくすぐったり肉球をぷにぷにと弄って一緒に遊んでいた。
 千羽矢は聖麗笛を取り出し、穏やかな曲を奏で始める。心が落ち着く音色に猫達は段々とあくびをし始め、一匹、また一匹と丸くなって寝息を立てだした。浅緋も千羽矢に寄り添うように丸くなっており、その周囲に桜猫達も集まって皆で団子になっている。
 そんな光景を眺めていたら千羽矢も眠くなってきて、猫達を起こさないようにそっと横になる。暖を求めてくっついてきた桜猫達の温もりを感じながら、千羽矢は安らかな気持ちで瞼を閉じた。



 風麗らかの原を訪れた夏輝・リドホルムはブレイブリードックと遭遇していた。
 見慣れぬ生物に警戒しているのだろうか。じっと見つめてくる相手に夏輝もまた敵意がない事を示すようにその場で見つめ返す。
 急な動きはせず、夏輝はゆっくりと境屋お手製アニマルフードを取り出す。
 ブレイブリードックは鼻をぴくぴくと動かすと、暫くその場をうろうろした後に恐る恐るといった様子で近寄ってきた。フードの近くまで辿り着き、警戒しつつも最初に一口齧りつく。すぐにその味を気に入ったようで、二口三口と夢中になって食べ始めた。
 夏がそっとその背を撫でると、最初は威嚇してきたがそのうち慣れてきたのか大人しく撫でられてくれるようになった。
「よしよし……」
 一匹が気を許せば、仲間達も警戒を解くのは早かった。周囲で様子を見ていた個体も次々とフードに飛びつく。夏輝はピンポン弾サイズの光を生み出し、クルクルと手元で操ってブレイブリードック達の興味を引く。光にじゃれついている様子を見て和んだら、今度はバンドマスターグローブでバイオリンの音色を奏でる。
 穏やかな曲を奏でながら、動物たちとゆったりとした時間を過ごしていると。
「ルミ?」
 どこからどうやって飛んできたのか。近くの地面にセイタカルミダチソウが一本だけ顔を出す。数を増やされる前に対処すべきだろう。夏輝はグローブの自動演奏をBGMにふぁんたずま☆サルサを披露する。
 花弁と光の粒子と共に舞い踊る夏輝に、ルミダチソウは勿論、ブレイブリードック達も興味津々と言った様子だ。ルミダチソウが無害化するまで、夏輝はキレのある動きでブレイブリードック達を楽しませ続けた。



「……平和だな」
 飛鷹 シンは特に目的は決めずに、新たな土地を歩いていた。
 道中、様々な植物や動物を見かける。まだ種類が少なく、外敵となる生物や自然に手を加える人間もいない為か、生物たちは皆どこかのほほんとしていた。
 自分から関わりに行くようなことはせず、あくまで遠目に観察するだけ。動物の方から近寄ってきた場合は邪険にはしないが、軽く相手をしたらすぐに離れる。
 生態系を崩すような何かがいれば多少は手出しするつもりで準備していたが、幸い、近くにそういった害のある存在は見当たらない。
 しばらくうろうろした後、シンは踵を返し、風に乗って微かに聞こえてくる歌声の下へ向かう。
 示翠 風は草原の一角で、木陰に座って歌を歌っていた。
 メロディスクラッチャーで伴奏を奏でながら、言葉を紡ぐ。この地に芽吹いた生物たちへ、他の存在を愛し、そして愛される存在になってほしいと想いを込めた歌を、そんな小さな願いを風に乗せて周囲に響かせる。
 その周囲を清き水龍がふわふわと漂っている。特に何かをしている訳でもないが、空を泳ぐ龍はそれだけで神秘的であり、幻想的な光景だ。
 不思議な一人と一頭に興味を引かれたか、それとも歌声に惹かれたのか。風の頭上の枝には青い小鳥たちが集っていた。
 一匹の小鳥が地面に降り立ち、風の傍に寄ってくる。そのまま膝に乗ってきた小鳥を見てくすりと微笑みながら、風は歌い続ける。
「ただいま」
 戻ってきたシンが風の隣に座り、風は歌を止めてシンに向き直った。
「おかえりなさい。どうでしたか?」
「色んな生物がいたよ。意外と人懐っこいのが多かったかな。生まれたばかりで人間と接したことは殆ど無いから、あまり警戒していないんだろう」
 風の膝に乗っている小鳥を見ながらシンは苦笑する。平和であるのは良い事だが、あまりにも警戒心が薄いと不安にもなる。今後、悪意を持った何かがここに現れない保証は無いのだから。
 この平和がいつまでも続くのだと、疑いもなく信じられれば良かったのだが。長く戦い続けてきたシンにそれは難しかった。
 風が再び歌を歌い始める。何かを命じたり、力を与えたりするものではない、純粋な願いを乗せた歌。シンは黙って歌に聞き入っている。
 歌い終わり、風は言った。
「今はこれだけ。これだけを見て、彼らがどう育つのか……楽しみにしましょう、ね」
「……あぁ」
 無理やりに何かを変えることだけは、したくなかった。いつかどうしようもない状況が来たのなら、武器を取る覚悟はある。けれど今だけは、ここが平穏であり続ける事を、ただ信じて見守っていたかった。

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