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【9周年】新世界創造計画2 ~Civilization~

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【9周年】新世界創造計画2 ~Civilization~
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【4】ルミダチソウとライブ その2

「ニューメロウズの、まゆら、です。とっぱつのライブとなりましたけれど、たのしんでいってくださいね」
 群生するセイタカルミダチソウを前に、数多彩 茉由良はライブ前の挨拶を行う。
「アシュトリィですわ。よろしくお願いするわ」
「カラビンカでございますわ。よろしくお願いしますわね」
「ベネディクティオだよ、よろしくね」
 ユニットの他のメンバー達も挨拶を終え、準備は万端。
 彼女達は本当はライブをする為にここへ来た訳では無い。新たな土地で芽吹いた霊妙のヤマザクラの成長具合を確認しに来ていたのだが、よりにもよってヤマザクラの近辺にセイタカルミダチソウが群生しているのを目撃してしまった。とは言え、対処法は聞いている。歌って踊って、楽しませてあげればその存在を転化させる事が可能だ。
 負の存在であるかれらを変質させ、生育者側として引き込む為に。茉由良達はライブを開始する。
「行きますわよ」
 演奏の前に、アシュトリィ・エィラスシードはオルガノレウム・イミテーションを使い、オルガノレウムの下位互換となるエネルギーを周囲に満たす。続けてアライブクリエイトEX、ハッキング・ビューワーで大型のフレームに背景映像を映し出す。流す映像はここがヤマザクラの近くであることを考え、桜が咲き誇る春の景色にしていた。ついでに、スプリングラップでステージそのものも春の装いに変化させる。
 舞台が整うと、茉由良はパレードマーチフラッグを振るう。途端、小さなマーチングバンドのアンサンブルが現れて演奏を開始した。さらにカラビンカ・ギーターが魔弦樂團を召喚し、音楽は壮大さを増していく。
「~♪」
 カラビンカは清澄の唄声で静かに歌い始める。歌うのは春らしく、期待に胸を膨らませるような旅立ちの唄。歌声には1/fのゆらぎを乗せ、耳を傾けているルミダチソウ達の心を落ち着かせる。
「綺麗な声ルミ~」
「なんだか楽しくなってきたルミ~♪」
 ルミダチソウ達がしっかりと歌に聞き入っている事を確認し、リアライズアンビエントを使用。曲調に合わせて周囲に桜吹雪の映像を投影する。
 いつかヤマザクラが咲き誇り、やがて花びらを散らせていくその時を幻視するかのようなその空間を、ベネディクティオ・アートマが駆ける。背後に虹の道を作りながら春の躍動感を表現する様に元気に跳ね、駆け回る。
「やっ、とっ!」
 アクロバティックな動きで観客の間に着地。周囲に虹色の光が放たれ、小さなステージが完成する。その手に光の剣が具現化され、曲に合わせて振るわれる。
「それっ!」
 ネオンカラーの衝撃波が刃から放たれ、近くのルミダチソウに命中した。
「ルミ?」
 衝撃波は弾けてポップな星のエフェクトを散らす。当たったルミダチソウは目を瞑ってしまい不思議そうに首を傾げていたが、周りのルミダチソウ達は綺麗な星に喜んだようで、小さな手で拍手を送っていた。
 再び宙を駆けだすベネディクティオは今度はメインステージへ着地。U.ヒートウェーブで光の波紋を放射しつつ、激震ビートフュージョンで会場を盛り上げる。
「ルミ~!」
 すっかりライブに夢中なルミダチソウ達をチェーン・ヨグは少し離れて観察している。その背には芽を出したばかりの霊妙のヤマザクラを隠していた。
 花粉やそれに伴う負のエネルギーからヤマザクラを守る為、方違えで悪影響を遮断している。この桜は周囲の澱んだ魔力や穢れ等を取り込み、清浄な霊力や整調された魔力等を吐き出すという少し変わった性質を持っている。ルミダチソウの花粉に含まれる負のエネルギーも浄化しているようだが、それも無限に行えるわけではない。このまま負のエネルギーを吸収し続ければ、いずれ限界が来る。そうなれば生命力を吸われ、最悪枯れてしまう可能性もあった。
 決して枯れさせはしないと、チェーンはライブが始まってから今までヤマザクラを護り続けている。風に乗って回り込んでくる花粉のせいか体に少し不調を感じていたが、ライブが盛り上がりを見せてからはそれもかなり軽減されていた。
「このまま続ければ、大丈夫そうね」
 方違えは解かずに、チェーンはルミダチソウ達と同じくライブを楽しむ。
 賑やかな曲が終わり、次は穏やかで心地よいバラード調の曲が流れ始める。アシュトリィが曲に合わせて背景を目に優しい、心安らぐ風景へ変更する。
 茉由良が優しく囁くような歌唱を始める。小さいけれど心を落ち着かせるその声は、柔らかな風に乗ってすべての観客の耳に心地よく届いていた。
 歌の盛り上がりに合わせてアンサンブルを飛び立たせ、観客席でコーラスを行わせる。関心を示したルミダチソウも一緒にコーラスへ加わらせながら、一番盛り上がるパートではヒロインズ・アフェクションを使用。慈愛の心とカリスマにより、幻想的な光の花畑の幻影がステージから観客席へと広がっていった。花畑の中でルミダチソウ達が楽しそうに歓声を上げている。
 光り輝く花畑の中で、同じく光り輝いているルミダチソウ達。楽しげに揺れるその身体からは、花粉とは違う別の何かが放出されていた。
 離れて見ていたチェーンだけは気づく。元気をなくしていた周囲の植物達がぴんと背を伸ばし、瑞々しさを取り戻している事に。
「転化はうまくいったみたいね。良かった……」
 この様子なら、警戒はもう必要なさそうだ。方違えを解き、チェーンはヤマザクラの傍らに座ってライブを眺める。よく見れば、ルミダチソウの一部は眠っているようだった。茉由良の神風のララバイの効果によるものだろう。身体を揺らしながら幸せそうな顔で眠りこけているので、起こさずそのままにしておいても問題ないだろう。

 ふと、ヤマザクラへ視線を向ける。
 霊妙のヤマザクラは、前回の開花から取り込んだ穢れや澱んだ魔力等が多い程、血の様に紅い花を咲かせ、逆に少ない程雪の様な白い花を咲かせる。
 もしも今が開花のタイミングだったなら、負のエネルギーを多量に取り込んだヤマザクラは真っ赤な花を咲かせたことだろう。
 幸か不幸か、ヤマザクラはまだ芽を出したばかりで、開花の時期もずっと先だ。
 初めての開花でどのような花を咲かせるのか。それは、これから自分たちが、そして他の特異者達がこの土地でどのような事を成していくのか、その結果によって決まるのだろう。

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