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≪セレクター編≫新たなる絶望

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≪セレクター編≫新たなる絶望
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・黒田八虎とへし切長谷部 後


「前の戦いの時、官兵衛は俺のチャージフォトンカタストロフを受けながらも耐えた。
 エミリアが言うには跳ね返した……魔力を上書きして分散付与した、とのことだったが」
 アルヤァーガの一撃が防がれ、彼を含むゴダムで官兵衛と戦った――自身を含む者たちに魔力が分散した。
 それを感じたジェノ・サリスは、ゴダムの時とアバターが違ったとしても、既に分散付与となっていることを確信した。
 だが、アバターのオーラを利用した金縛り、拘束はまだ行っている様子がない。
 こちらはアバターが異なると、出力の調整が必要となるのだろう。
 アバターの力の波長を完全に掴まれたら、動きを封じられると考えた方がいい。
 一見するとまだあまり消耗のないように見える官兵衛だが、残る亡霊兵は一体。
 オーラで守っているとはいえ、強力なアンチアバター攻撃を何度も受けている。
 目に見える形で分かっていないだけで、当初よりも能力は低下しているはずだ。
 それを悟らせないようにしているのか、拠点であるがゆえに官兵衛への特異者の影響力が落ちていて、本当に下がっていないのか。
 どちらであったとしても、ジェノのやるべきことは変わらない。
 ――官兵衛の武器の一つを潰す。
 それを狙っているのはジェノだけではなく、有間 時雨も同様だった。
 最後の亡霊兵はもはや消滅寸前という状態だが、狭間の攻撃に耐え抜き、最後の力を振り絞るようにしてまだ存在している。
 その様子から再召喚はできない、あるいは特異者たちと戦いながらでは再召喚するだけの時間を稼ぐことができない、と推測できる。
 そう思わせて黒田八虎を完全な形で呼び出して特異者にけしかけるという可能性もなくはないが、それなら最初のライブ対決中に演奏にかこつけてできたことだろう。
 ジェノは時雨の狙いが同じであることを察した。
 時雨が錬装カラドボルグに組み込んだインビジブルを発動し、姿を消す。
 ここは官兵衛の領域。姿が見えない程度で見失うことはまずないだろう。
 それでも、“何を狙っているか”まで完全に読めはしないはずだ。
 なるべく彼に注意が向かないようにしつつ、“その時”が来たら仕掛けられるよう、先に最後の亡霊兵への対処を行う。
 ディア・アルマが英雄を謳う詩を奏で、官兵衛の放つプレッシャーや計略による精神の揺さぶりで動けなることのないように心を奮わせた。
「まずはあれを消さないとね」
 FFカエトラに搭乗するラフィーナ・セレニティーがアダマンチウムバズーカのオートロックオンで合せ、トリガーを引いた。
 さすがにメタルキャヴァルリィからの攻撃を亡霊兵一体で受け止めようとはしない。
 砲撃を回避すべく動くが、それだけでアダマンチウム弾からは逃げられない。
 アダマンチウム弾は着弾時、大きな爆発を起こし、周囲にも爆風が広がる。
 亡霊兵はそれによって吹き飛ばされた。
「これで邪魔者はいなくなったよ!」
 ディアがジェノにアバターエコーを放ち、アバターの魔力を回復させることで万が一にも魔力切れの不発が起こらないようにする。
 その上でスリーピングフォレストを奏で、ラプソディアで引用する形でマスキングを施した。
 視覚と聴覚が誤魔化されようと、ジェノの力の波長は官兵衛に掴まれている。
 それでも、少しでも反応を遅らせることができるなら、それでいい。
 ジェノはサイコアクチュエータで肉体を強化しており、さらにサイコデュレーションで体感時間を加速させた。
 突撃前に魔力を回復し、精神力を癒した理由もここにある。
 サイコアクチュエーターは身体能力の大幅な強化と共に、精神消耗が激しくなる。
 サイコデュレーションもまた肉体と精神への負担が大きく、万全の状態であったとしても維持できる時間はそう長くない。
 ジェノが駆け出すのに合わせ、ラフィーナが官兵衛との距離を詰め、サイコバインドを放つ。
 可視化された精神力によって具現化した手が官兵衛に掴みかかるが、触れることなくかき消される。
「てめぇの動きはずっと見えてんだよ」
 官兵衛がジェノに向かってオーラを練った雷撃を放った。
 動きを封じるだけでなくダメージを与えることも狙ったものだったが、ジェノは「官兵衛にとって一度戦って覚えた相手」だからこそ、こういう局面で止めに来るだろうと踏んでいた。
 目論見通りの攻撃に対し、ジェノは神格装備の鎧カヴァーチャの力を解放し、黄金のオーラを防御に集約。
 官兵衛の力を無効化した。
 この鎧事態に高い状態異常耐性が備わっており、精神を強く保てるよう蒼銀翼のチャームも身に着けている。 間合いを詰め、神格装備の刀であるソハヤノツルギの力を解放したところで、時雨が動いた。
 
 姿を隠していた時雨はジェノが動き出したのを確認すると、リミットブレイクで能力を強化した上で接近し、さらにアクセル:3rdで加速。
 錬装カラドボルグから高速の刺突を放った。
「どこから来るか分かってりゃ、どんなに速くても効かねぇんだよ!」
 へし切長谷部をかざし、オーラのバリアも重ねることで錬装カラドボルグの刃先が直接触れない形で受け止めた。
(もう少し……!)
 直接触れなければ、目的は達成できない。
 ギアストーン:マグネットの磁力でへし切長谷部をギアに引き寄せる。
 引き離そうとするより、むしろそのまま斬った方がいいと判断したのだろう。
 官兵衛が錬装カラドボルグごと時雨を斬り伏せようとする。
「今、だ!」
 寸でのところで時雨は磁力を反発に切り替え、官兵衛の斬撃の餌食になるのを免れた。
 傷は決して浅くはないが、“賭け”には成功した。
 見れば、ジェノがソハヤノツルギを振り下ろそうとしていた。
 “真正”へし切長谷部は、おそらくかなりの業物。武器破壊を狙ったところで、簡単には折れないだろう。
 それだけの耐久力を持っているのは間違いなく、だからこそ官兵衛も躊躇いなくオーラを纏わせることができている。
 防御を無視してソハヤノツルギの全ダメージを与えたところで、折れない可能性も十分にある。
 だが……今のへし切長谷部は錬成【黄金】により、金に変化している。
 ゆえに、あるべき強度、耐久力も失われた状態だ。
 官兵衛はその変化に気付くよりも早く、ジェノの攻撃を受け止めざるを得なかった。 
「な、にぃ……!?」
 官兵衛の目が見開かれる。
 “真正”へし切長谷部は、真っ二つに折れていた。
 

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