■プロローグ■
「ねぇゾフィーちゃん」
「なんだ?」
アイリーンは殺意に満ちた“傷顔”ゾフィーの顔を覗き込んだ。
「“四本腕”だっけ? キミが探してるのって」
「……お前、何か知ってんのか?」
「いや、知らないけど。ねぇ、キミの記憶に刻まれたその機械族って……本当に存在してるのかな?」
「何……」
かつてはぐれの機械族に仲間と片腕を奪われ、顔を焼かれた。
以来ゾフィーは機械族を憎み、機械帝国がヴュステンラント連合国に宣戦布告する以前から暴走機体を狩っている。
「奴は確かにいる。そうじゃねぇと」
「あーごめんごめん。ちょっと意地悪な言い方だったね。
キミが機械族がきっかけで仲間を失ったのは、きっと本当なんだと思う」
その上で、とアイリーンは言った。
「あくまでこれは仮定の話だけど。
もしその“四本腕”がその時の事を悔いて、今は姿を変えて人族のために生きているとして。
それでもゾフィーちゃんは、破壊できる?」
「今の奴がどうだろうと関係ねぇよ。奴は仇だ。ぶっ壊すだけだ」
そう吐き捨て、ゾフィーは機導剣で工場を破壊していく。
そんな様子をアイリーンは憐れむように見つめていた。
「理解していても、止められないのが人って生き物なのよねぇ。
でも自分がそうあるべきものと決め、それに固執するのも同じこと、かな」
自分の知る機械族の顔を思い浮かべる。
頑なに感情を認めようとしない、つまらない存在であり続けようとしている者を。
「機械族と人族。どうなっていくか楽しみね。ふふふ」
■目次■
プロローグ・目次
【1】正面対決
【1】強化型機械兵
【1】戦場の観測者
【1】蒼の槍を掲げし者
【1】陽動戦線
【1】ブロッケンの竪琴弾き
【1】慌しい帰路
【1】スタンピード
【2】施設破壊
【2】強敵の出現
【2】蒼天との再戦
【2】異常体救出 その一
【2】異常体救出 その二
【2】異常体救出 その三
【2】異常体救出その四
【3】エルンスト市長の憂鬱1
【3】エルンスト市長の憂鬱2
【3】エルンスト市長の憂鬱3
【3】日常を守るために1
【3】日常を守るために2
【3】日常を守るために3
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