■プロローグ■
「本当にここに残るのですか、ヴォルフガング」
「大結界も完成し、霊廟内の術式と守護者もいる。
もはやここに人がいる必要はない。……確かに、その通りかもしれん」
十英雄
ヴォルフガングは“聖鎚”ローレライを封印し、封印の間の扉を閉ざした。
大結界の術式を構築した輝神教の神官長に振り返り、告げる。
「……ワシはもう長くない。
ジェイミーはその命と引き換えにトライアンフを打ち倒し、ルクスはヴェイロンを倒して国を興したが、その身は既に瘴気に毒されているという。
人魔の大戦が終わった今、英雄はもう必要とされていない、ということなのかもしれん。
ワシらが死したのち、魔王を打ち倒した者の名は伝説として語り継がれるのだろう」
「オータス様の導きにより、異界より参られた魂を宿す者。
然らば、彼らは再びあるべき世界に還ることとなるのでしょう。この世界に囚われることなく」
「……ならばワシはかの世界ではなく、再びこの世界に生を受けたいものだ」
扉の前で座るヴォルフガングに、神官長は恭しく頭を下げた。
「百年後か、千年後か。もっと先の未来か。
人界と魔界が分かたれている限り、再び戦いは起こるだろう。
人の時代が始まった時はまだ、世界は一つであった。
人族も魔族共存の道はあれど、魔神が世界に刻んだ呪い――それに縛られる魔王とその理が、それを許さぬ。
英雄は再び現れる。ならばワシはこの身朽ちようと、ここで彼らの到来を待ち続けよう」
「かしこまりました。あなたに輝神オータスの導きと、安らかな眠りのあらんことを」
■目次■
プロローグ・目次
【1】探索開始
【1】六文字隊
【1】美女と雪男
【1】リリシカル
【1】シリウス
【1】蒼銀彗星
【1】ガレオンズハイ
【1】良風旅団
【1】砂花の輝き
【1】霊廟を行く者1
【1】霊廟を行く者2
【1】霊廟を行く者3
【1】霊廟を行く者4
【1】霊廟を行く者5
【1】霊廟を行く者6
【1】霊廟を行く者7
【1】霊廟を行く者8
【1】霊廟を行く者9
【2】“緑将の手”リモーネを撃退する1
【2】“緑将の手”リモーネを撃退する2
【2】“緑将の手”リモーネを撃退する3
【2】“緑将の手”リモーネを撃退する4
【2】“緑将の手”リモーネを撃退する5
【3】英雄たちの終着駅へ
【3】英雄たちの意図を探って
【3】神匠は何を思って
【3】それぞれの想いを胸に
【3】光と闇が合わさる時
【3】聖鎚、ローレライの継承者
エピローグ