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ワンダーランド

名も無き少女の物語 後編

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名も無き少女の物語 後編
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■エピローグ■


 ――古城内、中庭。
 黎明の世界の核が撃破されたその場で、赤い靴の少女ウシワカは力なく座り込んでいました。

「神様の方も――全て終わったようですわね」
「うん、そうだね……ボクたちの役割も、意味も。全部おしまいってことだよね」

 素敵な世界がようやく始まる気がしたのに、と赤い靴の少女が抜け殻のように呟いた時。
 白の騎士たちに連れられて姿を現したのは、拘束された泉の女神ヘンゼルだった。
 拘束といっても既に彼女たちは抵抗するつもりは無いようで、軽く腕の自由を奪われているだけだ。

「あら、思った以上にシケた面ね。ウジウジしてるヤツは男でも女でもイライラするわ!」
「あはは、ここからは各々もっと自由にヤっていいってことでしょぉ? 違う?」

 一番ケロリとしてるヘンゼルはその反省の無い態度を渋蔵鷹人にギロリと睨まれてもお構いなしだ。
 運命の筋書きから解放された同胞とも言える彼らの思い思いの反応はどこか身に覚えがあるのだろう、
 笛吹き男は一歩進み出て赤い靴の少女とウシワカに少し躊躇いながらも手を差し伸べた。

「神様は僕らの物語については筆を止めちゃったけどさ……
 あの子に貰ったこの新しい人生、自分の手や足で描いていっても別に良いんじゃないですか」

 笛吹き男の言葉に頷く者、自信が無さそうに目を伏せる者と反応は様々だ。
 しかし白の騎士の目には、彼らがもう人を害することは恐らく無いように映ったという――

□ ■ □ ■ □ ■ □


 ――大広間。
 そこへ駆け付けたアデルたちは、目の前で広がる光景に目を見開いた。

「これが、みんなが勝ち取ったハッピーエンドなんだね」

 大広間にはたくさんのごちそうやケーキが並び、世界を壊そうとした少女も彼女と激闘を繰り広げた特異者も笑ってパーティーを楽しんでいた。

「ええ!? みんなだけずるいっ、あたしも混ぜて!」
「……ちょっと理解が追いつかない」

 ルージュは目を輝かせてテーブルのデザートへ駆け寄り、ミチルはまだ訝しげに大広間の入り口から動こうとしない。
 と、彼女たちの到着に気づいた戦戯 嘘が大きく手を振りながら出迎えた。

「ようこそ! 今日は何にも悪いことは起こらなかった何でもない日になったのよっ。
 何でもないけど、とびきりおめでたい日なのよー!」

 嘘が指し示す先では、普通の女の子のように友達に囲まれて無邪気に笑む少女の姿があった。
 その笑顔は何かが決定的に違う――アデルがそう確信出来るほど、その場は先程まで戦闘があったとは思えないほど和やかな空間だった。

「先生、あの方たちにも」
「う、うんっ……」

 アデルたちの元へと時計ウサギが促すと、その少女は少し緊張したように小走りで近付いてきた。
 おずおずとアデルを見上げる瞳には、それまで彼女に存在しなかった“罪悪感”が確かに感じられるようだった。

「すてきな世界の、すてきなひと。……ごめんなさい。
 わたしは、間違っちゃった」

 彼女のために失われた命もある。多くの人々を危険に晒しもした。
 その重さの全てを幼い少女が本当に理解できているのかはまだ分からないが、
 特異者たちによって本来は踏み出せなかったはずの一歩を踏み出した彼女へアデルもゆっくりと視線を合わせ祝福を送る。

「おめでとう、デミさん。あなたはそれでいいんだ」
「あのねっ。わたしの名前は――」

 少女が何かを訴えようとした瞬間。
 彼女を取り巻くように激しい風が巻き起こった。

『……ああ。どうして。デミ。
 あなたも苦しみを選んでしまうの、私の愛しい希望』

 少女の側に女性の姿に似た幻影が立っていた。顔が見えないほどぼやけて滲んだような幻影は、酷く悲しそうに少女の名を呼ぶ。

『そのあたたかく見える“闇”は――あなたが望み、彼らが望み、故に創られてしまった絶望なのよ』

 嘘やアデルを始め、特異者たちはその幻影が只者ではないことを感じ一斉に身構える。
 しかし、時計ウサギだけは幻影を前に怯まず少女の肩に手を置いた。

「何が希望で何が絶望か、それを決めるのはこの子です。
 これはあなたの言葉でもございます――デミウルゴス様

 少女も幻影をじっと見据え、やがてそっと小さな手を伸ばした。

「デミは、あなたの名前よ。私は、ユニ
 ウサギさんがくれて、みんなが祝福してくれた、わたしだけの名前。わたしだけの世界なの。
 ――あなたも、一緒に楽しい世界をつくろうよ」

 デミの言葉が聞こえているのか聞こえていないのか、幻影は沈黙の後にゆらりと大きく揺らめいてから姿を消した。
 大広間に漂っていた緊張が解け、特異者たちも一旦胸を撫で下ろす。

「デミウルゴス……こんな可愛いようじょをこの世に送り出した罪深い人。
 そのキャラデザ力、別のところで活かして欲しいのよ」

 複雑な表情をする嘘。しかしそれを見たユニは彼女に歩み寄り、浮かぬ表情を咎めるようににっこりと微笑んだ。

「……わたしは、いつかあの人にも楽しいって笑ってほしいの。
 だからすてきなみんな、ユニにもっといっぱい“楽しい”を教えて!」

 ――かくして、この日一人の少女が生み出したおかしなお城では一晩中楽しいパーティーが開かれていたのだとか。

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担当マスターより

▼担当マスター:クリエイティブRPG運営チーム

マスターコメント

クリエイティブRPG運営チームです。
「名も無き少女の物語 後編」のリアクションをお届けいたします。

パブリックシナリオは、アクションを投稿しているか、
アクションを投稿していなくても「・アクション投稿しなくても登場を希望」の項目にチェックを入れた場合、基本的にリアクションに登場しています。
基本的にPCは1シーンに登場していますが、シーン分割の関係で数ページに渡って名前がある場合もございますので、リアクションを読み進めてご確認頂ければと思います。

今回各パートで活躍し、運命が結晶化したアイテムが与えられるのは下記の方々です!

コトミヤ・フォーゼルランド(SAM0000513)様
リーナ・ファウネス(SAL0015750)様
ユファラス・ディア・ラナフィーネ(SAM0066631)様
アレクス・エメロード(SAL3007826)様
アーヴェント・S・エルデノヴァ(SAM0070938)様


アイテムは2月下旬までに付与される予定です。

さらに、今回活躍された方は2月中に公開予定のノスタルジアのシナリオに招待させていただきます!
シリーズはヒロイックソングス!になりますが、本シリーズとの関わりのあるNPCが登場予定です。

コトミヤ・フォーゼルランド(SAM0000513)様
リーナ・ファウネス(SAL0015750)様
ユファラス・ディア・ラナフィーネ(SAM0066631)様
アレクス・エメロード(SAL3007826)様
アーヴェント・S・エルデノヴァ(SAM0070938)様
古井戸 綱七(SAM0034168)様
星川 潤也(SAM0000323)様
ルイーザ・キャロル(SAM0046976)様
京・ハワード(SAM0057290)様
一浜 希(SAM0049000)様


また、称号やマスターからのコメントがある場合、最終ページ下にお知らせが表示されますので、併せてご確認下さい。


最後に今回のリアクションを執筆したマスターからのコメントをお送りします。

担当:卜部イ蔵
 この度は『名も無き少女の物語 後編』にご参加いただき誠にありがとうございました。全パート担当させていただきました卜部イ蔵です。
 なんだかんだと最後までデミや時計うさぎというキャラクターに関わらせていただくことになりまして、なんというか、私も少女と共に成長させていただいたような気分です。この場をお借りいたしまして、少女や時計うさぎに多くの言葉を投げかけてくださったみなさんには足を向けて寝られません。
 この先の二人(や生き残ったエラダムたち)にどのような運命が待ち受けているのか、それが語られることがあるなら私も楽しみにしたく思います。
 重ね重ね恒例ではありますが、この物語に関わっていただきまして誠にありがとうございました。またお会いできる日を楽しみにしております。