――ヴァイシャリー湖沿岸。
指揮官機である翼付きのヤークトヴァラヌスを中心に、
第七龍騎士団のイコンと歩兵がヴァイシャリーの街へ進軍していた。
「エリュシオンにも、インテグラルと戦う備えが必要だ。帝国を守るために。
大局では理解しているつもりだが……ひとりのために大軍で街を襲撃とはな」
ヘクトルはヤークトヴァラヌスの操縦桿を、気の進まない様子で握っていた。
そんな様子に、パートナーのシャヒーナはやや苛立ちを見せていた。
「陛下の命令なんだから、やるだけでしょ。しゃきっとして。
それにシャンバラは地球の連中にいい顔しようとして、F.R.A.Gなんかとも共闘して……。
F.R.A.G.がテロリストと内通してるって知った上でよ?
そんなの実質テロでしょ。倒されて当然」
(それはさすがに見方が偏りすぎでは……)
そう言いかけてヘクトルは言葉を飲み込んだ。
今のシャヒーナは気が立っている。
言葉で諫めるよりも、任務に集中させたほうがいいと考えたのだ。
「目的は高原瀬蓮を確保することだ。
契約者を倒すことではない。それは覚えておけ」