■プロローグ■
――西トリス
伝承の英雄の生誕を祝うカーニバルが盛大に行われており、西トリスの大通りは飲めや歌えや大騒ぎである。
路上にはキッチンカーが軒を連ね、テーブルセットが置かれているが、それを使用している人はあまりおらず、皆知らない人と肩を組んだりして飲み合っている。
「べっぴんさんも仮装かい?」
「ええ、そんなところです」
「なら、突っ立ってないで飲んだ飲んだ!」
“チーム:ムスタング・スリー”の3人と婦人警官
ペルシークと共にカーニバルの様子を見ていた
ブリュンヒルデは、突然酔っ払いに絡まれ、紙コップを渡されると、なみなみとエールを注がれてしまう。
ペルシークが警戒するも、そこに邪な思いは一切なく、「しらふでいるから酒を勧められた」以外のことはなかった。
「……どうしたらいいのでしょうか?」
「ヒルダはイケる口か?」
途方に暮れるブリュンヒルデに、モヒカンの
スチリリが飲むジェスチャーで聞き返す。
ヒルダとは、ブリュンヒルデの愛称だ。
「アルコールの分解は問題なく行えますし、酔うことはないので任務に支障はありません」
「ならせっかく勧めてくれたんだし、飲んだ方がいいと思うよ!」
「先程の殿方が
『躍進党』のエージェントとは思いませんしね」
サイボーグの
チャフチャフが飲むことを勧め、お嬢様然とした
グラザが問題ないだろうと判断する。
ブリュンヒルデは濁った琥珀色の液体を一気に口に流し込んだ。
「おおっ、良い飲みっぷりだねぇねーちゃん、これはオレの奢りだ!」
その飲み方が良かったのだろう、周りにいた男性から今度はジョッキに次がれたエールを渡される。
「……これがカーニバルなのですね」
「いやいや、飲むだけじゃないけど、この能天気なバカ騒ぎは東ではないわね。これが“自由”なのよね。だからこそ、この自由を壊してあたしらの所為にしようとしている
“S”と子飼いのエージェントの企てを阻止しなければならないわ」
ここでカーニバルを楽しんでいる人々が、エージェントの企みに巻き込まれていい理由はない。
ペルシークの言葉に、ブリュンヒルデをはじめ、“チーム:ムスタング・スリー”の3人は頷いたのだった。
■目次■
プロローグ・目次
【1】【表】カーニバルを盛り上げる
『カーニバルを盛り上げろ!』1
『カーニバルを盛り上げろ!』2
『カーニバルを盛り上げろ!』3
『カーニバルを盛り上げろ!』4
【2】【表裏】カーニバルのテロを未然に防ぐ
・爆弾はどこに1
・爆弾はどこに2
・チーム:八咫烏
・チーム:アルゴナウタイとチーム:ローズハニー
・チーム:星月夜
・チーム:パンドラ
・チーム:月夜の影
【3】【裏】レオパルドを破壊する
・レオパルドを破壊せよ
・チーム:ウォードッグとチーム:サクラメント
・レギンレイヴを奪取せよ
・チーム:ノーネーム
エピローグ