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忘れじの夢、彼方のアゴン 前編

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忘れじの夢、彼方のアゴン 前編
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 ◆『天地創造の書』の奥付を見るために(8)

「うーん、ボクにも世界つくれたら楽しそうだなぁ……でも実際に作るのは無理でも、その夢をライブで表現することはできるよね」
 深山 詩月は新しいライブの想像をするだけで、だんだんワクワクしてきた。
「よし、じゃあボクもその奥付を読むためのライブに挑戦してみよう!」

 野次馬気質の有間 時雨は、
「なかなか興味深い世界が存在するんだな。ふむ、どんな世界なのか是非知りたいところ」
 やる気になっている詩月をサポートすることでライブに参加することにした。

 *

 【神格のカリスマ】をまとって気合を入れた詩月は、登場した瞬間から人目を引いていた。
 時雨は詩月の歌を演出するために、【ゼロプラス】で性能をアップさせた指揮器【パレードマーチフラッグ】を持って登場した。

 大きな旗型の指揮器を時雨が振ると、五線譜と音符のエフェクトが零れだし、小さなマーチングバンドのアンサンブルが現れて、賑やかに演奏を開始した。

 詩月は魅力的な笑顔を振りまき、【ライブ・ライティング】で巨大な白紙の本を出現させてから歌い始めた。
 曲は【曲:描く世界は水族館】。
 詩月の口元に浮遊する小型マイクの【スターオービットspec-2】が、キラキラとハルモニアの光の粒を撒き散らし、詩月の可愛らしい顔を華やかに彩っている。

 本が一冊ありました 描いたコトが世界になる不思議な本
 さぁどんな世界を描こうかな 素敵な世界を描きたいな
 まずは海が描きたいな キレイな魚も描きたいな
 でも海の中だと暮らせない? 大丈夫ここは自由な世界
 泳いだって疲れないし 息をするのも大丈夫

 詩月は歌いながら、歌詞に合わせた海と魚を白紙の本に描き出した。
 美しい海の絵が完成した段階で【航海士のうたたね】を発動し、会場内を海の中のような光景に変えた。そこで詩月は腕を大きく動かして、海中を泳ぐようなパフォーマンスをして見せる。

 時雨も同時に【航海士のうたたね】を使い、アンサンブルを魚や海の生物の姿に変えて詩月の周りに泳がせたので、まるで詩月は海の中の住人みたいに見えた。

 詩月は本の中だけでは飽き足らず、【超・背景描写】で本からはみ出してステージの空間に、カラフルな魚や可愛いイルカ、美しい珊瑚などを次々と描いては歌った。

 さぁどんどん描いてこう 魚の群れと戯れて
 イルカに乗って走り出し クジラの背中で一休み

 時雨は歌詞の『クジラ』に合わせて【レッドフッド・モノポリィ】で巨大なクジラを出した。
 クジラが会場丸ごと飲み込む演出で空間を取り込み、魚のモチーフをあちこちに追加して、会場内を無重力空間に仕立てる。
 神様も烏扇も、ここにいる皆がふわふわ浮いて、海の中にいるような楽しい感覚にさせた。

 詩月の歌は続く。

 キラキラ光りで飾り付け そうして世界が出来上がり
 世界丸ごと一つの水槽 ボクだけの素敵な水族館

 詩月が『飾り付け』と歌うのに合わせて時雨が【シューティングスター】で7つの光球を出現させて『飾り付け』を表現した。
 7つの光球はキラキラと降ってきて、何かに触れると弾けて小さな光の粒になっていく。四方へ飛び散った光の粒はそのまま浮遊していた。

 おっとページが尽きちゃった それじゃあ今日はここまでさ!

 クライマックスでは大ぶりの光の粒が降り注いで【シューティングスター】の弾けた光の粒と混じり合ってキラキラ輝く。
 会場中が美しい光の粒で満たされて、詩月と時雨の『世界まるごと水族館』の創作世界ライブは終了した。


 ***


(天地創造、創世というと、私には大それた事みたいで緊張です……)
 ステージに立った結笹 紗菜は胸の前で手を組んで、じっと目を閉じた。
(莉緒……見守っていて)
 瞼の裏に映るのは、愛する人の笑顔……。

 いまだに舞台に出る時は緊張するけれど、紗菜はその緊張を振り払うように【スイッチ:イカロス・ソア】で背中に光る翼を出現させた。
 神々しく輝く翼をゆっくり動かすと、身体がふわりと浮かび上がった。

 少し目線が高くなった所から『天地創造の書』やその場にいる人々を見回して、勇気を奮って歌い出す。

 もっとあなたを知りたい 分かり合いたい 仲良くなりたい
 そう思っても 言い出せない 聞けない 誘えない
 そういう事 ありがちだよね

 でも 想像してみて
 素直に お互いの気持ちを伝えられる世界
 そして それが力になる世界があったとしたら

 気持ちを込めて1曲歌い終わったら、気持ちがずいぶん落ち着いた。

 紗菜はゆっくりとステージに下りてから【ベストエンディング】で紙吹雪を舞わせた。
 次は自信を持って歌える歌、紗菜の定番【ある意味ラブストーリーかも】。

 ある意味ラブストーリーかも
 もっと輝くステージへ

 いつだって信じてる
 私が夢見る明日ならきっときらめいて
 どこまでも続いてる
 心が探してる世界ずっと待ってた


 明るくて元気になれる大好きな歌を笑顔で歌いながら、紗菜は思っていた。
(この曲、歌詞の解釈次第で色々な広がりを見せてくれる……今の私の気持ちを表すようにも……すごいなあ)

 紗菜が望んでいる世界は、多くの人が仲良くなって幸せに暮らし、人間愛が力を生むような優しい世界。

 無限の可能性 抱えて
 もっと 輝くステージへ

(莉緒に出会って、今まで気付けなかった事に気付けるようになってきた気がします)

 愛する人が出来たことに感謝しつつ、紗菜はライブを終えた。

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