◆『天地創造の書』の奥付を見るために(3)
八重崎 サクラと
ジル・コーネリアスは、TVアニメ「オーバースカイ」“可能性の大地”ホワイト・アウト編主題歌『∞(インフィニット)カラーズ』を歌う。
この曲は、サクラとジルのユニットによる冒険活劇アニメのシーズン主題歌で、まだ見ぬ新天地を新世界の創造に当てはめることができると考えて、このポップなアニメソングを選曲したのだった。
二人は連携しやすいよう、お互いに【リンクバングル】をつけてライブに臨んだ。
サクラが【大注目!】で周囲の注目を一気に集めると同時に、【ディーヴァ】スタイルのジルが【アドプトバラエティ【G】H.D】を弾き、【U.ハーモナイズクエイク】で強力なハルモニアをぶつけてステージを変化させた。
ステージには真っ白で未整地の地面と、背景として雪山の幻影が現れて、このアニメ作品の舞台である常冬の大地を思わせる。
最初はサクラが【DF.ジルコンボウギター】を弾きながら、演奏しているジルの前に出てジルに身体を預けるようにして歌う。
そうさ
誰にだって止められない
何も見えないこの大地には
無限の可能性が詰まってる
次はジルがサクラの前に出て、サクラに身体を預けるような姿勢で歌う。
そうさ
君の歩く道先は
君だけにしか決められない
徐々にテンションが上がってきたところでサビに突入。
二人は並んで互いに支え合うような恰好で身体を預け、声を合わせた。
さあ
白銀のキャンバスに
足を踏み出せ!
ここで一旦間奏に入る。
サクラが【高速テクニカルソロ】で超絶技巧の演奏を披露すると、ジルが数テンポ遅れて【トリッキーフェイク】で追奏。
二人は競い合うみたいに徐々にテンポアップし、周囲の期待感を高めていった。
突然ジルが【U.トレイルウォーター】で水の柱を湧き上がらせた。そしてその傍に【≪風柱≫】で風の柱を生み出し、水柱が散らす水滴を広範囲に撒き散らして氷結させた。
辺りにはたくさんの氷の粒が舞い漂う。
そこへサクラが【キラキラオーラ】を反射させて【スターダストフィル】で小さな光をばら撒いたので、ダイヤモンドダストをイメージさせる氷の輝きがステージを美しく彩った。
幻想的な雰囲気の中、再び歌が始まる。
間奏の前と同様に二人が交代で歌うのだが、今度はジルからスタート。
ノリの良い状態で再び同じサビに突入かと思わせて、二人はサビの一部を落としたトーンで歌い、一度そのトーンのままフェードアウトしていくように見せかけた。
さあ
白銀のキャンバスに
足を……
しかしここから一気に最後のサビになだれ込み、全力のハイトーンでデュエットが始まる。
力で押しまくるのではなく緩急をつけ、印象に残るよう演出するサクラとジル。
そうさ
誰にだって止められない
果ての見えないこの大空(そら)には
無限の可能性が広がってる
そうさ
君の生きるその先は
君のその手が握ってる
輝きのカーテンに
未来(あした)を刻め!
盛り上がりが最高潮に達し、サクラとジルは歌の合いの手に掛け声を挟んで、サビをリピートした。
「3・2・1・ハイ!」
そうさ
君の歩く道先は
君だけにしか決められない
さあ
白銀のキャンバスに
足を踏み出せ!
「せーの! もう一回!」
そうさ
君の生きるその先は
君のその手が握ってる
輝きのカーテンに
未来(あした)を刻め!
サビは何度も何度もリピートされ、烏扇が「もうやめたまえ」と静止するまで続いた。
***
これまでの熱いライブの連続に少しは感じるものがあったのだろうか、『天地創造の書』にグルグル巻きにされている光の鎖が明らかに緩んでいた。
外側の鎖は、だらりと隙間を開けて垂れている。
だが完全に解けるには程遠く、本を開くにはまだ想いが足りないようだ。