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ヒロイックソングス!

忘れじの夢、彼方のアゴン 前編

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忘れじの夢、彼方のアゴン 前編
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 舞花や凛菜たちの後を引き継いだのは優たちだった。
ルージュの【ブルームミュージック】により、花びらと香りが舞う。

 優とルージュは【ヒロインズ・アフェクション】で能力を高めると、優は【#うちで歌おう】を使ってファンの力も借りてアンラに想いをより伝えようとする。
ルージュは【U.ハルモニアデリュージ】から【U.オーバーシンクロナイズ】を放ち

(自分を否定しないで! 向き合えているありのままの貴女でもその想いは大切な人に届くわ)

 と伝わる。
それと同時に二人はアンラへと接近を試みる。

「……っ!!!」

 反射的にアンラはノイズを刃として二人目掛けて放つ。数は先程と同じで多くはないが距離はすぐそこだ。

――キン!

 ヤドリギの枝が転じたという漆黒の魔剣、【ミスティルテイン】。
優はそれを使って襲ってきたノイズの刃を弾き落とす。

 少しでも二人の力になろうと、そしてアンラを助けようとアイリスは【ライムシャワー】を放ちながら【Lucky Bell】を鳴らしてアンラの不安を取り除き、心に花が咲くようにと【春嵐の酔扇子】を扇ぐ。
柔らかい春風と共に爽やかな柑橘系の香りと上品で美しい鈴の音がアンラの元にも届く。

 優とルージュはアンラへと近付くことに成功した。
だがアンラを取り巻くノイズはその色を深く濃くし、醜く歪んで拒否を伝えている。

 ノイズ越しではあるものの、二人はアンラへと伝えたいことを言葉にする。

「その思いは恥ではありません。お目覚めの時間ですよ。ほら、貴女の為に皆で駆けつけたんです」

 優が笑顔でそう伝える。
優の隣でルージュは【導きのゼラニウム】を使いながら

「一人で立てなくても皆で支えるわ。秋太郎が苦しんでいる貴女を助けて欲しいと助けを呼んだのよ」

 とも伝えた。
本来なら手を取り伝え、【導きのゼラニウム】の効果でマイナス感情を忘れさせたかったがそこまでは出来なかった。

「…………っ」

 アンラが秋太郎という単語にぴくりと反応を示す。
そんなアンラに連動するようにノイズは薄くなったり濃くなったりを繰り返している。

「我らもライブを行うのだ!」

 アウロラの声にアーヴェントも藤も頷く。
ここからは【ゆうにゃ!】の三人がライブを行う番だ。

「防御はアウロラ、任せたよ……。ノイズは強力だから……アウロラも、どうか気を付けて。怪我しないでね」

 藤がアウロラを心配するような眼差しを送るが、アウロラは任せとけ!と言わんがばかりに胸を張る。

 三人が歌い奏でるのは【曲:ヒロイックソングス!~Remix~】。
悪しきイドラとアンラへかつて歌ったこの曲を改めて自分達なりにアレンジして歌い上げるアーヴェント。

 藤は【信念の光刃】を展開し、『アンラを助けたい』という強い意思で眩く輝かせる。

(どんな暗闇の中でもその目に光が届くように)

 そんな願いを藤は込めて。
そしてアーヴェントの後に合わせて一緒に【曲:ヒロイックソングス!~Remix~】を歌う。

 【ホープレス】を展開し、切なく心に響く音色を奏でるアウロラ。

「我が眷属よ! 【ピッコロフェニックス】にて真の姿となりウタえ」

 アウロラの声に【≪星獣≫フルートバード】が姿を現し、ウタを奏でる。
アウロラは少しでもアンラの心を癒し、錯乱状態を落ち着かせようとしていた。

 藤が【カスタネットドレス】でシンセサイザーを出して弾けば音の数も増えて。
それに呼応するように光の紙吹雪が舞う。

(あの日の音をもう一度。今度はもっともっと成長した私たちで!)

 アーヴェントは【マイクプラス【風】】の温かな風と【【八感学】専攻「愛情(信頼)」】の美しく輝く風で場を彩る。
優しい花の香りをアンラへと送り、心が落ち着くようにと願って。

 こうして視覚、触覚、嗅覚、聴覚、全てを使って演出を行い、悪夢から、ノイズからアンラを切り離そうと試みる。

「この気持ちは……ううん、ダメ……!」

 大きく何度も何度も頭を振るアンラ。
そしてノイズはやはり刃へと形を変え、三人へと差し向けられる。

 アウロラはノイズの刃がこちらへ届く前に【スイッチ:バルドルの慈愛】で薄い光のバリアを作り出し、それで防いだ。

「いや……ダメよ、ダメ……!」

 ノイズの刃は何度も何度も三人を襲う。
アンラの抵抗よりもアウロラの奏でる旋律が魂の深くまで染み渡り、アンラの心を癒していく。

 藤の【ウェイクフレーズ】が伝えるのはアンラのノイズも声も痛みも全て、自分たちの音で寄り添いくるんで抱きしめさせて欲しい、という気持ちだ。

(大丈夫だって、伝えたいんだ)

 アンラを見つめて藤は尚も思う。

(誰かを想う心が苦しいのも、憤る心が辛いのも、当たり前だ。
それがあなたの……かけがえのないアンラの心だから。
だからどうか大切な想いを捨てないで。
それでも悩むなら、何度捨てようとしたってそれと同じだけ私たちが掬い上げてみせる)

「大丈夫だよって、何度だって言わせてほしい」

「……っ」

 藤の言葉にアンラは目を見開いて藤を見つめる。
いつしかノイズの刃による攻撃は止まっていた。

 【【八感学】専攻「愛情(信頼)」】は観客の心をまるで初恋のようにときめかせる。
アーヴェントがその技を使ったことにも伝えたい意味や想いがあったからだ。

 アンラの恋心の肯定、もちろんそれ以外の気持ちも否定する気はない。

(全てを捨てたりはしなくていいんだアンラ、捨てる事が苦しいのなら持ち続けていいんだ)

 アーヴェントはそんな想いを歌詞に乗せながら【バックトゥバック】でアンラに寄り添うような温もりを届ける。

「もし迷うのなら自分達が居る、だから安心して欲しい、アンラ」

 アーヴェントも力強い眼差しでアンラを見つめる。

 ヒロイックソングスに優しさを込めて歌う。
舞い散る紙吹雪は触れた味方を癒す恵みの歌となる。
それをアーヴェントは【宵の明星】を用いた歌唱法で歌い上げ、周囲に宵闇を呼び寄せる。
同じ闇であるにも関わらず、アンラの夢の世界に広がる闇とは違うような、そんな宵闇が広がる。
広がった宵闇に眩しく浮かび上がるのはアーヴェント達の姿だ。
不思議な一体感と共に感じるのは強い安心感。

(ここにいるみんなと一緒なら大丈夫)

 そんな安心感をアンラに伝えたくて。

 藤は【フワリ・ハート】でアンラのことが大好きな気持ちを乗せて歌っていた。
そうして生まれた大きなハートの風船をアンラの元へとそっと押し出して。

(あのね、誰かを好きな気持ちってあったかいんだ。あったかくて素敵なものなんだよ。
だから、大丈夫。アンラの不安も苦しさも全部、『大好き』のハートで溶かしてしまいたい)

 押し出されたハートの風船がアンラの元へ。
ふわふわと浮遊するそれをアンラは一瞬手を伸ばして、何かを躊躇うように手を握りしめて引っ込めた。
それでも藤の想いを伝えるかのようにハートの風船はアンラの傍を浮遊し続けている。

 藤は【スカイカンターレ】でラストを歌いながらアンラに手を伸ばした。

(ね、アンラ。私たちの手をとって。一緒に歌おう。あなたが望んでくれるなら、私たちは繋がれる。
どんなに離れてたって、隣まで走っていってその手を握り返すから)

「一緒に考えよう。そばにいるから。あなたがあなたの心と向き合えるように」

 手は差しのべたまま、伝える。

「友達、だからね」

「とも、だち……」

 藤の言葉をアンラが繰り返す。

(少しずつ手の届く範囲を広げていこうよ。私たちと一緒に。
どうかこの手が届きますように。願わくば……アンラが優しい夢と手の温もりで目覚めますように)

 そう願って藤は手を差し伸べ続ける。

 アーヴェントも【ミラージュ・ロア】でアンラの近くに自分が居るように見せ、手を差し伸べ、【テイクアハンド】を使う。

「自分達が傍に居る。一緒に落ち着いて向き合おう。君の夢に」

「ゆ、め……?」

「とことんだって付き合うぞ。だって、自分達は友達じゃないか」

「友達……そう、そうだったわね……」

 先程、藤にも言われた言葉。
自分の口から零れる度に胸にあたたかいものが広がっていく気がする。

「さあ、ゆーしゃ達の手を取るのだ」

 アウロラが【【スタイル】プルート】でアンラにまだ微かに残っていた不安を肩代わりし、後押しをする。

(アンラ、どうか手を伸ばしてくれ、そうしたらどれだけ離れていたってその手を握り返すから)

 アーヴェントが強く強く願う。

 アウロラの後押しに、アーヴェントの力強さに、藤の優しさに。

「みんな……」

 やっと瞳に芯のある光を取り戻したアンラが差し伸べられた手を取る。

 強引でも無理矢理でもなく、ただ手を差し伸べて待ってくれていた人の手を。
そして、懸命に声を、歌を、曲を届け続けてくれた仲間たちそれぞれの顔を見て、アンラは微笑んだのと同時に意識を手放すかのようにぱたりと倒れ込んだ。
幸い、抱きとめられたこともあり、大事には至らなかったが……。

 恐らくは限界だったのだろう。
倒れ込んだアンラは安らかな寝息を立て、安堵の表情を浮かべている。きっと悪夢ではなく、楽しくて優しい夢を見ていることだろう。

 こうして無事にアンラを助け出した仲間たち。
自分達の目覚めも近いと全員が悟る。

「お疲れさまです、凛菜さん。本当に良かったですね」

 目覚めを間近に感じながら舞花はそう凛菜をねぎらった。

「今回も舞花お姉様にご支援いただけて本当に助かりました。ありがとうございます」

 凛菜もほっとした表情で舞花に心からの感謝を伝える。

 口々に良かった、お疲れさま、と称え合う特異者たち。
あれだけ真っ暗だった空は徐々に光が射し、明るくなるのと同時に特異者たちは夢の世界から現実世界へと意識を戻していったのだった。

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