アンラの夢の世界へと到着した
優・コーデュロイ、
アイリス・フェリオ、
レジェヴァロニーエ・レクラム、
ルージュ・コーデュロイの四人。
四人はすぐに悪夢の中をアンラの姿を探し求めた。
(私達は彼女がどういった経緯を辿ったのかを断片的にしか知りません。
ですが、それでも良くあろうと努力され続けてる事は知っています)
(彼女とアイドル達が出会った時は世界を滅ぼす災厄だったと聞きます。
ですが、今はそんな己を恥じ、自分に素直になって良いと思う方向に向かおうとしているのです)
(悪夢に囚われ己を傷つけているのか。
であれば自力だけで乗り越えろとは言うべきものではない)
(過去の自分の衝動に襲われて大切な人を想うがあまり自分自身を傷つけているなんて)
あちこちを走りながら、全員でアンラの名前を呼び続ける。
「う……るさ、い……、うる……さい、うる……さい、うるさいうるさいうるさいうるさぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!!!」
突如として夢の世界に響き渡ったアンラの叫び。
その声の元へと特異者たちはそれぞれいる場所から駆け出していく。
優たち四人が見たアンラはあてどもなく、ふらふらと歩いていた。
時折、頭を抱えて蹲ったり、立ち上がってもふらついてる為かよろけて転んでいたりとアンラが疲弊している様子は目にも明らかだった。
「アンラ……?」
声をかけ、近づこうとした優をルージュが片手で制した。
よく見るとアンラから放たれたノイズがぐねぐねと蠢き、大きな怪物のような形へと変化していく。
まるでアンラが近付くことを拒否しているかのような、そんな雰囲気を持って。
「私達で彼女を悪夢から解放しましょう」
優の言葉に他の三人が頷く。
「良い方向に向かおうとしていた彼女を邪魔するものを皆の力を合わせて祓いましょう」
アイリスがそう言うと
「その偽りで与えられた苦しみを跳ねのけられるよう皆と共に力を貸そう」
「私達の愛と慈愛で救いましょう」
レジェヴァロニーエとルージュもそれに続いた。
仲間たちの言葉に優はアンラを見据える。
(何度でも付き合います!)
そう、たとえ何度だってアンラが苦しんだり、悲しんでいるのならその度に手を伸ばそうと心に決めて。
「しっかりしろ! アンラ!
感情の渦に飲まれてはダメだ!
アンタはそんなに弱いヤツじゃないはずだ!」
優たちと同じようにアンラの元へ辿り着いた
黒瀬 心美が叫ぶ。
それはいつもの前口上であり、悪夢と戦う友への激励だった。
アンラが囚われているイドラ……。
嘗て『ヒロイックソングス・レジェンド』で生まれたばかりの“最悪のイドラ”を斬ったことがある心美にも覚えはある。
だからこそ、心美は自分にも責任があるのかもしれない、とそう感じていた。だからこそ
(やって見せるさ。アイドルの底力を見せてやる……!)
アイドルの底力を見せるために心美は夢の中へまでやってきたのだ。
「アンラさん、自分で自分を縛り付けてはダメです! 貴女の感情は間違っていない……!
貴女の心を……、許してあげて下さい……!!」
そうアンラに声をかけた
黒瀬 心愛。
アンラと向き合うのは初めてだが、フェスタ出身の者であれば『ヒロイックソングス・レジェンド』での出来事は誰でも知っている。
(最悪のイドラが絶たれた今、貴女が自分の感情を抑え込んで苦しむ必要は無い筈です。
解き放って下さい。感情も夢も、貴女を形作る原動力なのですから)
苦しむアンラを見つめ、心の中で強く思う。
ノイズはまた新たに怪物を生み出し、アンラの傍で集まってきた特異者たちに襲いかかるタイミングを見計らっているかのようだ。
(呼び戻して見せる! 絶対に……!)
怪物たちの隙間から見えるアンラの姿に心美と心愛は心を繋ぎ、共にいつもの決めゼリフを叫ぶ。
「「身も心も燃え尽きる覚悟はあるかい?
さぁアンラ……、ついておいで!」」
その叫びと共にアンラと特異者たちの戦いが始まった。