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忘れじの夢、彼方のアゴン 前編

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忘れじの夢、彼方のアゴン 前編
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 眠りへの誘い 後編



 観客となった特異者がうとうとと微睡み出す。
入眠するのが得意な者や早い者は既に寝息を立て始めている者もいる。

「アイドルこうほせいで、ユニット『ニューメロウズ』のまゆら です。よろしく おねがいしますね」

 既に眠りに着いたものを起こさないように挨拶をする数多彩 茉由良

「アイドル候補生で、ユニット『ニューメロウズ』のアシュトリィですわ。よろしくお願いしますわ」

「アイドル候補生で、ユニット『ニューメロウズ』のカラビンカでございますわ。皆様、よろしくお願いしますわね」

「アイドル候補生で、ユニット『ニューメロウズ』のベネディクティオだよ、よろしくね」

 茉由良の後に続いてアシュトリィ・エィラスシードカラビンカ・ギーターベネディクティオ・アートマが自己紹介を済ませる。

 ゆっくりと四人が一礼した後、一呼吸置いて茉由良が【ヒロインズ・アフェクション】で自分たちのいる中心部分から広がるように幻想的な光の花畑の幻影を出現させた。
 カラビンカがそれに合わせて【清澄の唄声】の涼やかな唄声に乗せて【安らぎの唄】を穏やかに歌い上げていく。
ベネディクティオが【U.ヒートウェーブ】を使って光の波紋と共にハルモニアを広げていき、アシュトリィが場に広がったハルモニアを【ハルモニア変換】でオルガノレウムを確保する。
オルガノレウムを確保したことでアシュトリィは【マイクプラス【風】】を通じて穏やかな温かい風を吹かせた。
その風はまるで観客を春の陽だまりのような穏やかさで包み込んだ。

(皆が、信じあえる世界が来ると……良いですよね)

 そう願う茉由良が【我が王国】で作り出すのはまるで天国のような、極楽浄土のような安心出来る場所だ。
茉由良たちが今回伝えたいイメージは平和で人同士が信頼し合い、尊重し合い、支え合う様な……そんな世界の訪れを夢見るようなイメージだ。
欲の全てを否定するわけではない。それにより切磋琢磨し、進歩してきた部分も確かにある。
ただ、四人が伝えたいのはこれから夢の世界へと飛び立つ人達が安心して眠れるように……。
その雰囲気として、空気感として伝えたいのが茉由良が作り上げた言葉通り楽園のような場所なのだ。

 茉由良の想いに答えるようにアシュトリィが【フルフィル】でオルガノレウムを活性化させ、地面から美しい花々が咲き乱れる。
【スターレインボー】によって空に放たれたオルガノレウムが星となって降り注ぎ、その間を【フラワーアロー】によって矢の形になったオルガノレウムが真っ直ぐに花びらを散らしながら飛んでいく。
 幻想的になった空間をベネディクティオは【グロリアスマイウェイ】を使って輝く足場の軌跡を残しながら空を楽しそうに駆け回る。
 星明かりの綺麗な夜に幻想的な彩りが加わる。そこに茉由良が【パレードマーチフラッグ】で呼び出したアンサンブルに合わせて【神風のララバイ】を用いた優しく囁くような歌唱方法を使い、【スリープウィスパー】で語りかける。
 カラビンカは【ブルームミュージック】で自分の周りに花びらと香りを舞わせながら【子守唄】を歌っていく。その歌声は茉由良が表現した楽園に相応しく心を落ち着かせ、穏やかで安らげる気持ちにさせてくれるような歌声だった。



 最後にパフォーマンスを行うのは『紫桃睡晶』だ。

(ずっと安眠アイドルをしてる二人なら、この場はまさに大切な舞台。
「TRIAL復興ライブ」での一言きりだけれど、アンラさんにも縁があった。
普通の夢は起床直前の分しか記憶に残らないと聞くけど、それだけでも悪夢は辛いもの。
ずっと続けば、眠る事すら怖くなる)

 自らの経験から他人事に思えず、今回参加した天草 在迦
だが理由はそれだけではなかった。尊敬する二人の使徒と共に戦い、力になりたいという夢も出来たのだ。

 在迦は事前に風華・S・エルデノヴァの【グランド・クロス】にユニゾンする。

(二人の演目を引き立てられるよう、学んできた成果を託そう。大丈夫、二人なら、きっと)

 そう心の中で呟く在迦。

 既に寝ている観客もいるだろう。だが全員ではない。
まだ起きている人に向けて、手を振りながら【マドンナ・ゴンドラ】の光の鳥が運ぶ一人用ゴンドラに乗って現れたノーラ・レツェル

(ぼくにとって眠りは原初。
悲しい日であろうと楽しい日であろうと全てに等しく訪れる眠りが幸せであるようにと願ってアイドル活動を始めた)

 今回は眠らせる事がキーワードであるためかノーラはふと、そんなアイドル活動の始まりを思い出していた。

(そして今、夜を見守る月のようになりたいと夢を追い続けている。
強く輝かなくていい。
優しい光で包み込むように眠りへ誘いたい)

 その為にも全力のパフォーマンスを行おうと心に違うノーラ。
そんなノーラへと歩み寄るのは【羽搏き出す少女の夢現】を纏った風華だ。それは叶えた夢の証でもある。
そしてその夢の支えと先を紡ぐ【スタイル・クローステール】の所作を持って丁寧にカーテシーで挨拶を。

 二人が行う演出は『安眠と未来を想う夢』。
『夢を叶えた視点、陽の下の眠り』と『夢を追う視点、月の下の眠り』の二つがテーマとなっており、前者は風華がメイン、後者はノーラがメインで行われる。

 夢への誠意と安眠への慈しみを優しさに【スイッチ:愛憎の檻】の光の帳を降ろし、麗らかな陽射しのように光を放つ【グランド・クロス】の切っ先を下げて持つ。
まるで祈りを届けるかのような姿勢の風華は【グランド・クロス】の光を纏い、【優し国の夢物語】の知識と技術で各々の見る景色の中に『SilkySeason』として夢を叶えた身としての思いを歌い上げる。

 【揺月の音】の効果で風華の歌声に癒しの音色を混ぜて届けられた歌詞から伝わるのは叶えた先に広がっていた未知。叶えただけで終わりではなく、叶えたからこそ出会った未知に志新たに襟を正して参りたいと思う、と。
そして、この先をゆく為には、この先へゆくからこそ、誰かに託したい。そう思うものもまた出来たのだ、と。

 風華の歌はなおも伝える。
夢とは命のあり方にも思えること。
躓きや回り道あっても選択を繰り返し、向かい、叶え続け、時に託すものでもあると。

 きっと観客の中には夢を叶えた人、追い続ける人、みつけたばかりの人、探す最中の人と様々いるだろう。それらを広く意識し、続きはお昼寝でと祝福するように纏う光をエフェクトに放つ。

(この場にいる皆なら、きっと夢への道を踏破し続けられる)

 そんな在迦の気持ちが込められたエフェクトがきらきらと煌き、その中で衣装の力を解放し、陽の光と幻の翼三対を背に軽く舞う風華。
最後に【神風のララバイ】を語るように歌い上げ、観客を深いリラックス状態へと導いていく。

 陽の下でのお昼寝のような心地良さに包まれた風華のパフォーマンスが終わる。
風華とノーラがタッチすると瞬時に場面転換し、【夢が叶う場所】が月満ちる幻想的な空間がレッスンルームに広がる。
風華が衣装の力で翼の幻一対をノーラへ付与する。それをエールに【月色クロス】に声を通してノーラはディバインドリーマーとしてこれから見る夢に負けないようにと願いを込める。

『焦がれるような美しき月
満ちる光に包まれて
夢のよすがで逢いましょう』

 ノーラは【≪星獣≫ベルラビット】の玉兎と一緒に【≪星獣≫やさしい子守唄】を歌い奏でる。
風華からの【#うちで歌おう】によりファンの姿や声も力となり、ノーラの背を押していく。

(ノーラさんの夢、眠りを護る『月』のもとに咲くように)

 そう思いながら在迦は【U.チェイスブルーミング】で月見草の幻を生み出し、コーラスを。

(まだ起きている方に眠り、眠った方により深い眠りを)

 風華もまたそう願って在迦と同じように【U.チェイスブルーミング】で月見草の幻を生み出し、花たちがコーラスを奏でる。
そして風華はノーラの衣装の力を更に増幅させようと【【スタイル】クローステール】の力で装飾を行う。

 肩と袖口へフリルや羽飾りを施し、竪琴の音色と共に襟元と裾の全円へ月齢の銀刺繍を。そして中央に満月が来る時計回り、鍵盤の音色と共に飾る。

『手が届きそうで届かぬ月
静かの海を渡るため
希望の橋を架けましょう』

 ノーラが纏っている【月魄の睡装】は見ている人を穏やかな気持ちにさせ、なぜか眠くなってしまうというものだ。
その衣装に風華のクローステールのアレンジが加われば気持ちの上でも千人力のように感じる。

 ノーラは月見草溢れる中を天高く飛び立つ。緩やかな水面の揺れのようにひらひらと舞う衣装は銀刺繍によって元のものより幻想的に見え、そしてそれを纏うノーラを本当の女神のようにすら見せる。

「どうかいい夢が見られますように」

 緊張からか未だ寝付けずにいる人の元の近くでノーラは【スリープウィスパー】でダメ押しをする。
最初は悪夢だとしてもいい夢に変わるように、と。

『月はいつでも見守っている』

 ノーラの締めくくりの歌声と微かに聞こえてくる寝息、周囲の音と全ての音を風華は【U.ハルモニアデリュージ】で統一させ静寂へと繋げる。
 二人が静かにパフォーマンス終わりの挨拶をしたが、返ってきたのは静寂と寝息。
普段のライブでは困惑してしまいそうだが、今回はこの反応こそが二人を安堵させた。





 パフォーマンスを終えた風華は白陽 秋太郎の元を訪れていた。
やはりと言うべきか、秋太郎は寝ていなかった。
そんな秋太郎へ風華が声をかける。

「この場で皆とは眠れずとも、どうか次の眠りがよいものになりますように……」

 きっと次に眠れる時は全てが無事に解決した後だから、と想い願う気持ちも込めて。
【よしよし】もしようかと風華はそっと手を伸ばしたが

「……気持ちだけいただこう」

 と、丁重に断られてしまった。
だが、いつもなら冷たく「要らん」となるであろうことを考えると実際にはその風華の気遣いをありがたく思っていることは明白だった。

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