2.ハイウェイ・バトル(2)
「シルエット戦を制してクラン『ハーヴェスト』の名前を轟かせたいさー!」
という野望を胸にベルベットこと
リズ・ロビィは気合いを入れて参加していた。
だがその思いとは「あたしらは強いんだ!」と周りに響かせることではなかった。
一緒に居てくれる仲間に『ハーヴェスト』という存在を強く感じてもらいたいというものだった。
「さてさて! 喧嘩祭りをする前に景気づけの円陣組むさー!」
ベルベットは【スキン】マッシュルームを装備して【同盟】盟主である!を使用しつつ檄とくしゃみを飛ばす。
「リズ、それはいいんだけどあなたのその姿……それにさっきから何だか……へっくしゅ!」
アリサこと
今井 亜莉沙がメガメをずらしてしきりに鼻をかんでいた。
「悪い悪い、みんな鼻がむずむずするけど付き合ってなのさ!」
ベルベット装備している【スキン】エリンギちゃんで常に体から胞子を出して相手のくしゃみを引き起こし手元を狂わせるというものだった。本来はマッシュルームっぽくなるはずだが、ベルベットは名前通りエリンギの姿となっていた。
「怪しい茸のリズを風下に立たすっすぁ!」
そういうスアマこと
天津 恭司も体内から「冷凍シャーク」をにょきっと角のように生やした十分怪しいスライム姿で皆を風上に誘導する。
「今回は明確にチーム対チームの勝負だね! 個々の実力はもちろん、それ以上に連携が問われる。
それを高める一環といえば円陣、だよね?
よーし、頑張っていこ……っくしゅん!」
「まずは恒例の円陣を組んで気合を入れていきましょ♪……っくしゅん」
リコリスこと
壬生 杏樹、ミシェルこと
ミシェル・キサラギも鼻を赤くしながら円陣に加わる。
「私たちと大和塾の四天王では、そこに大きな差があるのは間違いない。
相手の力を認めた上でその差を埋めるために何を成すか個人戦ではないチーム戦の戦い方と楽しみ方で勝ちをいただくのだわ」
ユリこと
西村 由梨は鼻水が垂れるのにも構わずすでに作戦に意識を集中させていた。
「今回のハーヴェストはー!あたし達の存在を描く為に天辺獲りに行くさ!敵は強いけどあたしらは…もっと強い! 行くさハーヴェストー!
う〜……ぶぇっくしっ!」
リズが掛け声と共に一層派手に胞子を撒き散らした。
「ハーヴェスト、ファイ……くしゅん!
ちょっとそこのエリンギ! 肝心な時に胞子撒かないでよ!」
アリサのツッコミの声と共に『ハーヴェスト』は行動を開始した。
『ハーヴェスト』が大掛かりな罠を仕掛けるチーム戦で食い込む計画だった。
基本的な作戦としてはバイクに乗り機動力がある敵に対し迷路を作成してそこに誘き寄せることで機動力を削ぎ、トガシとその取り巻きを分断させ撃破するというものだった。
「『ハーヴェスト』をトガシを仕留める【一本釣り組】と取り巻き対応の【底引き漁組】に分けて対応するさー!!」
ガードでクラフターのベルベットは迷路の入り口でトガシ達を挑発して攻め込んでくるように誘導する。
アサルトでレプリカントのミシェルは【底引き漁組】としてトガシの周りの親衛隊を倒す。
「フラメンコシューズ」をローラースケートにして速度を上げる。
「フラメンコ」の攻撃加速の踊りを踊れるよう、「コドクギア」で操作しステータスをアップし敵を迷路に誘い込む。
砦に乗り込んだらユリに迷路作成を指示してリズは迷路の入り口でトガシ達を挑発して攻め込んでくるように誘導するというものだ。
「自分の砦でしかバイクでブンブン言わせられないナメコ野朗! エ……エ……エリンギぃぃゃぁぁ!」
大和塾の親衛隊は最初はあまりに異様な風体と言動のエリンギに目を合わせないよう通過していた。
「無視するんじゃないさー!」
ゴーストマインを各所に設置することで強引に迷路に引き込む。
ダメージやデバフ目的であり敵の位置をみんなに知らせる役割でもあった。
実は設置してる時に歌を歌って取り巻きに存在をアピールしてあった。本命の【一本釣り組】の存在を隠すためだった。
「エ♪ エ♪ エリンギぃ……♪」
熱意が通じた(?)のか興味を持った者もいた。
「なんか面白そうな奴がいるな。ポイント稼ぎに相手になってやるか」
「かかったわね」
ミシェルがフラッグレイダーの効果で味方の火力をアップさせ手榴弾で親衛隊を牽制をする。
武器の重さを遠心力として利用した「フラメンコ」の動きで魅せながら「H&Mスナッチ」の乗った銃弾で親衛隊を攻撃して相手のHPとMPを乗っ取る。
「ご馳走様っと。これでまだまだ踊れるわね♪」
ミシェルの攻撃に合わせて敵をミシェルに近づけさせないようにリズが接近戦で仕掛ける。
「いぃぃひっひっひぃぃ!!」
ゲラゲラ笑いながらその場に急行する。気分はホラーゲームのクリーチャーだった。
アリゲーターに噛み付かせ移動阻害し、盾で攻撃を防ぎつつスキンの胞子で敵の命中率を下げたりペイバックシャドーでとことん邪魔をする。
ある意味大和塾や他サバイバーを動揺させて混乱させる効果があった。