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3000年前の遺産

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3000年前の遺産
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竜人たちの美学2


 八重崎らの演武終了後、同じくウィックロー魔法師団所属の団員であるエリカ・クラウンハートアリサ・ホープライトが合流した。
 二人は団員から状況を聞き、まだこちらへの興味が無いもしくは警戒しているタラスクスたちがいることを知る。
 であれば、八重崎たちとは違うアプローチで話を聞いてもらおうと、準備に取りかった。
 
「皆様初めまして。
 アーケディア王国、ウィックロー魔法師団所属のエリカ・クラウンハートと申します」
 
 エリカは八重崎らから譲られたステージに歩を進めると、引き続きパフォーマンスを観覧するタラスクスたちに一礼する。
 
「タラスクスの皆様は高い教養や卓越した美学をお持ちと聞いております。
 そんな皆様への新たな興味の入り口として、アーケディア王国の食文化をご紹介したいと思います」
 
 エリカは貴族の作法で失礼のない言動を心掛けながら、これから行うステージの説明をし、また机やそれに準拠したものがあるかを聞く。
 何人かのタラスクスが付近の家から石製の机を借りてくると、そこの家主らもステージ前へ集まり観客席は活気づいた。
 
「ご協力感謝いたします。
 では手始めにこちらのお茶をどうぞ。アーケディア王国で愛飲されるハーブティーです」
「ふむ……口当たりはまろやかで香り高い紅茶だな」
 
 エリカからハーブティーを受け取ったタラスクスが一口飲み、唸るように頷いた。
 エリカは顔面国宝で微笑みながら、全ての観客にハーブティーを提供する。
 その後ろで、アリサがメインパフォーマンスの準備を進め、完了したタイミングでエリカが観客に声をかける。
 
「それでは、クッキングショータイムです」
「本日の調理を務めさせていただきますのはこの私! アリサ・ホープライトでーすっ♪」

 エリカの言葉に、アリサがホライゾンナイフを回すパフォーマンスで一礼する。
 タラスクスはそれを拍手で迎え入れ、彼女に注目した。
 
「まずはこちら!」

 じゃじゃーん! と高く掲げたのは、エリカが食料調達で手に入れた大きな魚。
 マールスに向かう前、王都のパブのシェフから指導を受け、釣り道具一式でエリカ自ら調達した自慢の魚だ。
 
 魚を豪快に机へ置き、アリサはホライゾンナイフ一つで華麗に捌いていく。
 活け造りの極意によって正確に捌かれていく様子は、生物を解体しているのにグロテスクさはなく、むしろその身が美しく輝くようで食欲さえそそる。
 
「こちらはアーケディア王国のあるアークの湖で捕れた淡水魚です」

 アリサの流れるような調理技術の横で、エリカは魚の説明をする。
 もちろん知識として湖や淡水魚などのことを知ってはいるが、マールスに馴染みのないそれらにタラスクスも興味を持っているようだった。
 
「ではお召し上がりください。お刺身、といいます♪」

 てきぱきと盛り付けまで終えたアリサが刺身状態となった魚を振舞う。
 
「美しいな。薄く切られているのにみずみずしさを保っていて、輝いているようだ」
「うん、美味しい! 淡水魚は淡白だって文献で見たけれど、濃厚な味がするのね」

 眺めてみたり食べてみたりと、それぞれの反応を見せるタラスクスたちだが、一様に好評のようだった。
 その様子を確認しながら、アリサは次の調理へ移る。
 
 ここへ至るまでの道中に確保した石を、同行する団員に運んでもらうと、それを包む様に炎嵐を展開する。
 元々表面温度の高いマールスにの石は見る見るうちに高温となり、炎を鎮めれば石の表面は赤くなっていた。
 アリサは刺身にした魚とは別の、小ぶりないくつかの魚を駆使に刺し、石をホットプレートの要領で使用するように、串刺しの魚をその上へ置いた。
 その瞬間、ジュワーッという魚が焼ける香ばしい匂いが広がる。
 
「こちらも湖で捕れた魚です。
 先ほどのより小さいですが、その分味が凝縮され濃厚なんですよ」

 調理知識:洋で最適な温度、焼き時間を見極めたアリサがベストタイミングで魚をひっくり返し、もう片面も焼いていく。
 皮目がパリッと裂け、その奥からふっくらした白身が見え、タラスクスたちは喉を鳴らした。
 
「はい! いい感じに焼けましたー♪」

 グリルド★フィッシュとなった焼き魚を刺身同様手際よく提供し、エリカとアリサは反応を伺った。
 
「身は柔らかいのに、こんなにもジューシーなんだな」
「お話の通り、小さいのに味がしっかりしているのね」

 タラスクスたちは手を止めずに感想を述べあい、あっという間に魚は骨だけになってしまった。
 
「刺身もグリルド・フィッシュもお代わりはないのかい?
 味は確かに格別だが、我々タラスクスにとってやや少ないかもしれない」
「すみません。メインディッシュはこちらで終了ですが、食後のデザートがございます。
 ハーブティーのお代わりはありますので、こちらでお口直しを」
 
 アリサが頭を下げながらハーブティーを注いでいき、一緒にレンスターマフィンを配る。
 メインディッシュの追加を希望していたタラスクスも大人しくそれを受け取ると、一口齧った後目を輝かせた。
 
「しっとりした優しいくちどけに、メインの後に食べる最適な甘さだな。
 ドライフルーツの食感も楽しい」
「それは作る地方によって味付けも変わるんです。
 そしてこれは私オリジナルのマフィン。アーケディアチョコマフィンです!」
 
 レンスターマフィンに感動する男性の前に、チョコレート制作キットを利用してメイクスイーツしたチョコ味のマフィンをアリサが差し出す。
 一礼してそれを受け取った男性は、一口ハーブティーを飲んだ後、チョコマフィンを齧った。
 
「おお……! こちらは甘さの強いものだが、中のドライフルーツのフルーティさが際立つな……!」

 男性の言葉に周りのタラスクスもアリサからマフィンを受け取って、その美味しさに頬を熔かした。
 その様子をエリカとアリスは見つめ、二人で手を取り合う。
 
「お口に合ったようでなによりです♪」
「我々の食文化に興味を持っていただけたでしょうか。
 アーケディア王国、ひいてはアークには様々な文化あります。次はそこで、皆様に料理を振舞えたら幸せです」
 
 エリカとアリサは語り掛ける様にそう言うと、集まったタラクラスたちは頷いた。
 そしてこの様子を窺っていたり、匂いにつられて他のタラスクスたちもやってきて、エリカとアリスは急いで追加の準備に取り掛かったのだった。




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