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3000年前の遺産

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3000年前の遺産
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・動力炉防衛作戦

「アークがベーダシュトロルガルに会いたがっているってこと? 何千年も経っているのに呼び合っているなんてちょっとロマンチック。何があるか分からないけれどまずはバルバロイから守らないとね!」
「そうね……アークとベーダシュトロルガルが引き合っている……って言うのは案外間違いないかも……。確かに気になるわね」
「ベーダシュトロルガル……何だか噛んじゃいそうな名前です。アークに意志があるのならこの地に大事なものがあるのに違いないのです。バルバロイの手に動力源が渡らないようにしないと」
 エルミリア・ライガー壬生 杏樹それに、シルノ・アルフェリエは一路駆け抜けつつ、言葉を交わす。
 彼女らなりの気さくな会話だったが、今は少しでも緊張をほぐすためだ。
「エーデルさんから聞いた話じゃ、かつての……テルスの機動要塞ベーダシュトロルガルに内部構造は近いのは確認できているわ。でも、それが同一かまでは不明……。何気に歯がゆいわね……あの時の……テルスで何もできなかった自分への反芻のようで……。でもだからこそ、今度はそんな悲劇は目の前では起こさせない。構造が似ているってことは、動力源の位置はある程度絞れてくるわ」
 今井 亜莉沙はそう言って一団を先導しつつ、ゲルハルト・ライガーの支援も受けている。
「ふうむ……アークとベーダシュトロルガルは同型艦なのじゃろうか? もしそうなら艦内構造や動力炉の位置などもある程度予測できる。AI・ミレナス、その辺りの情報開示はあるかのう?」
「一応は聞いてみたけれど、やっぱり状況的には不明な要素が多いみたい。それがこの世界でのベーダシュトロルガルなのかもね」
 亜莉沙の返事にスタンドガレオン「ネブカドネザルⅡ世」に騎乗して動力炉を目指す。
「何にせよ、バルバロイの手に落ちたらロクなことにならないのは間違いないわね。何としても、みんなと私のこの手で守り抜くために、最悪の結末を回避するためにも、力を尽くすよ!」
 杏樹の操るスタンドガレオン「空挺“白大鷹”」が飛翔し、同乗員としてリズ・ロビィガーベラ・スカーレットが並び立つ。
「ベーダシュトロルガルをバルバロイの手に渡すわけには絶対に行かないさー! バルバロイが先遣隊まで出して欲しがるなんて絶対にろくなもんじゃないけれど、逆に言えばあたしらの手に渡ったら都合が悪いものだからね! この任務……オーバーチュア騎士団が承ったさー!」
「ベーダシュトロルガル……アークとは別の浮遊大陸ね。詳しいことは分からないけれど、バルバロイの手に渡しちゃダメってことはハッキリと分かるわ。私は歌姫として、旅芸人として、それを為すために力を尽くすわ! リズ団長、お願いするわね!」
「こっちこそよろしくさー!」
 互いの拳をコツンと突き合わせ合い、二人は動力源へと続く回廊を見据える。
 リズの「ウォータープルーフ」の恩恵を受けた火屋守 壱星はゲルハルトのスタンドガレオンに同乗したエルミリアの水の加護を受けたゲルハルトを眺める。
「じいじ、涼しい?」
「おう、涼しいとも。壱星もエルミリアも喉が乾いたら飲んでいいぞ。とっておきのオファレルハーブティーを冷やしてある。この暑さだ、熱中症にならんようにな」
「うん。ねぇ、じいじ。やっぱりアークとベーダシュトロルガルが呼び合っているのかな? 私たちにはわからない、何かの意志で」
「さぁのう……。バルバロイ間の通信のように浮遊大陸同士のコンタクトの方法はまだ解明されとらん。我輩の現有の装備ではどちらも記録、分析は困難だ……。可能であれば今次作戦、全波長帯でバルバロイの通信領域にジャミングでも噛ませようかとは思ったのだが……そもそも難しかろう」
「じいじ、でももし、浮遊大陸同士が意思をもって、それでランデブーに入っているのなら、それってさっきも言ったけれどとってもロマンチック。火の大陸もとてもすごいね、こんなのがあるんだ……!」
「エルミリアは元気だな」
 軽く茶化した壱星にゲルハルトは応える。
「なに、まだまだ可愛い孫娘よ」
「何や難しい話してるけれど、つまり上手くやればアークが広くなるんやろ? それに……ドッキング、即ち合体! 未知の技術! これは見逃せん!」
 そう興奮気味に語る八代 拓哉にゲルハルトは手を振る。
「別方向の索敵は任せるぞ。情報は先に渡した通りだ。動力炉のいち早い発見が求められる」
「了解や! 動力炉一番乗りはオレがもらうもんな!」
「拓哉君。暑さで喉をやられないようにホライゾンウォーターで対策を忘れないようにしてくださいね。物陰に敵が潜んでいるかもしれません。周辺警戒は怠らないようにしておきます」
「なに、まずは動力炉探しやろ? 火の大陸を探検ってのはワクワクするな!」
「あっちぃな、ここ……。皆、熱中症とかでぶっ倒れないようにな。ファイアプルーフをしっかり起動させて焼きドラグーンアーマーだけは避けねぇと……。しかしベーダシュトロルガル……テルスの機動要塞らしいけれど何でこの世界に……」
 そう呟いた本道寺 健は道中の熱波に若干参っている様子だ。
「ベーダシュトロルガルもバルバロイから逃れようとした人たちの箱舟だったのかな? もし志半ばで旅を終えてしまったのだとしたら……バルバロイは人々の無念をさらに踏み躙ろうとしている。そんな真似はさせないよ。“守護刀”の意地にかけてもね!」
 杏樹の機体の傍について護衛する水瀬 茜の言葉に、杏樹も首肯する。
「そうだね。意思が宿っているとすれば、もしかするとそういう人たちの……とりあえず今は動力炉を目指そう」
 その時、杏樹がハッと視界を振り仰ぐ。
 刹那には彼女は叫んでいた。
「リズ団長! 掴まっていて!」
 横滑りしたスタンドガレオンのすぐ脇をギロチン型の刃が奔る。
「……既にここは戦場。分かっていたけれどもう仕掛けて来るか……、バルバロイ。杏樹ちゃん、二人を乗せて全速前進、道中の戦闘は避ける方針だから……」
「了解! 二人とも振り落されないで!」
 加速したスタンドガレオンを嚆矢として亜莉沙は後方に位置し、特殊な歩法で一ところに留まらずして射撃の位置取りに入って構える。
「ロングカノン型もどうやら追いついてきたみたいね……。こっちは射撃して敵を引き剥がしていくわ。総員、動力炉へと進む足を止めないで!」
 杏樹の「空挺“白大鷹”」へと追撃しようとするギロチン型の斬撃網を、【使徒AI】女教師が迎撃していく。
『ターゲットを照準に。自動迎撃を開始します。敵は一撃を狙って隠れる習性を持ちますがある程度までは追尾可能。こちらで補正値を振ります』
「任せた! バルバロイも本格的に動力炉を狙ってくるはず……。オーラを纏っての対抗を……!」
「レイヤーオブアバターズ」を身に纏って万全な状態にしつつ、「空挺用加農砲」がレンズを収束させ、スタンドガレオンの速度を落とさずしてギロチン型を迎撃していく。
「ロビィ団長! その先に違和感がある! 俺を前に出させてくれ!」
 壱星の声にゲルハルトのスタンドガレオンが加速してから「異辰の黒霊杖」を発動させて映像を投射させる。
「……やっぱり、ギロチン型が大量に隠れてやがる! 別の通路を行こう! 拓哉が探索しているほうだ!」
 前に出過ぎたのか、壱星の乗るスタンドガレオンを狙ってギロチン型が一斉に飛び出すのを、彼は緋色のオーラを発現して動きを鈍らせる。
「動力炉発見までは戦闘は回避する。行くぞ」
「皆さん、私の持ち歌で敵の動きをけん制します。その間に動力炉に一人でも早く辿り着ければ、私たちの勝因となります」
 そう言って川上 一夫川上 実麗の操るスタンドガレオン「センペリットUR」の上で【星詩】「泡海旅情」を紡ぎ出す。

独り宇宙(おおぞら) 旅するからには
寒さ辛さに 耐えながら
流れ流れて たどり着く
氷の泡海 ヒシヒシと
春の景色が 見えるまで

 尖った氷柱が歌声に合わせて構築され、水の泡を弾幕のように展開して、ギロチン型の攻撃を防ぎ敵の攻撃射程をけん制する。
 一夫の【星詩】で垣間見えた隙を逃さず、騎士団全体が別ルートを取っていた。
「狙撃で一体でも多く、道を阻む敵を迎撃する。頼むぞ、女教師」
『はい。ターゲットロックにて、自機を狙う敵の迎撃を開始。オペレーションAIとしての務めを果たします』
 【使徒AI】女教師の導きによって砲撃網がギロチン型を的確に迎撃していく。その機体を守るのはエルミリアの構築した樹根の盾も同様だ。
 マニピュレーターに盾を備えた「ネブカドネザルⅡ世」が疾駆して動力炉を目指す。
 先んじてルートを模索していた拓哉はシルノと共に攻防を演じていた。
 空中に数多の氷柱を構築し、敵の動きをけん制するシルノの攻撃網を上塗りするように、期待を反転させ様に拓哉は「エンチャント・ボマー」を付与した工具を降らせる爆撃を放つことでバルバロイの動く隙を作らせない。
 加えて敵の目を引くことで他の騎士団員の行動を迅速化させている。
 騎乗するスタンドガレオン「オーバーゲイナー【W】」が【使徒AI】バロックの補助を得て緊急回避して戦場を見守る「第三の眼」としての役割を果たす。
『現状、ギロチン型バルバロイの攻撃網は単純動作ながらに素早い。ロングカノン型に追い込まれてしまえばそもそもの問題でもある。ここは一路、動力炉への道を急ぐべきだろう』
「鬼さんこっちらー! わー! にっげろー!」
 ギロチン型が次々と斬撃を降り注がせる戦場の中で、シルノは【星詩】「舞白」を奏でる。

ふわりふわりと舞う雪 想い積もりゆく
清く何にも染まらずいられたなら
あなたの幸となれるのか
されど届かぬ両翼 明日を背負う

 紡ぎ出された【星詩】に導かれて大量の氷柱がギロチン型との激しい攻防を繰り広げる。広範囲の斬撃をカバーした【星詩】に、一団の先頭を務めていた杏樹のスタンドガレオンがようやく、動力炉へと辿り着いていた。
「よし! 動力炉にはまだバルバロイは到達していないさね! さぁ、ここからがあたしらオーバーチュア騎士団の本領発揮さねー!」
 スタンドガレオンのステージを増設し、リズは【星音】を発動させてドラムを叩く。
「最後にモノを言うのは人の心……心を響かせるためにあたしはドラムを叩くさ! 剣を! 砲を! 歌を! 全ての音色を響かせて敵にオーバーチュアの名を刻みつけるのさー!」
「ステージ開幕ね! 舞い踊るわ!」
 紡がれた【星詩】は「慈雨の舞」、それは前線で戦う者たちの無事と安全を願う舞と組み合わさって動力炉に響き渡る。
「降り注げ恵みの雨よ、心に響け生還の願いよ、これが私たちの作り上げる芸術だー!」
 リズの【星音】「絢爛華美」が【星詩】の開演を告げ、ガーベラの【星詩】を強固なものとする。
 亜莉沙が「防衛戦術」に入り、バルバロイへの迎撃態勢を整えていた。
「みんな、ここからが正念場よ! 一匹たりとも、バルバロイを通さない!」
 【使徒AI】バロックが戦局を把握し、敵の軍勢を分析する。
『敵は無理やりにでも動力炉の確保に移る様子。先んじて動力炉を抑えられたのならば、一体の抜けも許してはいけません』
 杏樹は回避と防御を意識しつつ、スタンドガレオンを曲芸さながらに稼働させ、無数の敵を狙い澄ます。
「私一人で戦っているわけじゃない。だから撃破は無理には狙わないわ」
「――そう、だからここからが、守護刀の本領発揮」
 言葉の穂を引き継いだ茜が雷撃の居合斬りを発現させ、ギロチン型を斬りさばいていく。
 無論、残心は怠らない。
 エルミリアと壱星は静止状態に入ったスタンドガレオンの上でアイコンタクトを取って【星詩】を奏でる。
「みんなー、頑張るよー!」
 【星詩】「グレープバインド」により、水泡が無数に生み出されそれらを振るって潜んでいるギロチン型を炙り出し、その上で壱星の【星音】「寂桜降舞」がオーロラのカーテンと桜吹雪を降らせ、幻想的な景色を構成する。
 炙り出されたギロチン型の動きが鈍ったところを、健は携えた剣――「クリアライザー」の力を使い、瞼を閉じる。
 【使徒AI】敏腕サポーターが「戦機同調」を発動させていた。
 視界を閉ざしてこそ、真価を発揮する刃が研ぎ澄まされ、緩慢なギロチン型へと斬撃が浴びせ込まれる。
「見えたぜ……。そこだな、ギロチン野郎!」
 叩き込まれた稲光の勢いの一閃がギロチン型を次々と断ち割っていく。
『ガンバレ! エクスファイター☆』
 敏腕アシスタントの補助を受けながら健は積極的に前に出て、バルバロイを打ち砕いていく。回転斬りがギロチン型の刃を押し返していく。

グレープバイン! 言葉が心縛り付ける
グレープバイン! もう動かなくなるくらい
どうすればいいの?
わたし張り裂けそう

 エルミリアの【星詩】の水の泡と樹根が蔦のように絡まって動きを阻害されたバルバロイの隙を見逃さずに健は叩き、そして粉砕する。
「サンキュー、エルミリアちゃんッ! 行くぜ、必殺剣……ドラグーンVハーレー!」
 剣術が咲いた直後に水泡が炸裂し、健の決め技を彩る。
「何人でも来やがれ……不足はないぜ!」
 ロングカノン型が砲撃網を仕掛けるのを、拓哉は笑っていた。
「準備は整ったみたいやな。ほな、玩具箱に沸いた虫の大掃除! どんな玩具があるかはお楽しみ! ところで……リズお姉ちゃんのお部屋は大丈夫やんな? その、虫さんとか……なぁ?」
 呟きつつ、拓哉は銃撃を応戦させる。シルノはリズの回復を承っていた。
「防衛戦……長期戦になることが予想されます。リズ団長、回復をします」
「助かるさー! さぁーて! まだまだやるさねー!」
 亜莉沙は黒い弾丸をバルバロイへと浴びせつつ、後方支援に徹している。
「油断は禁物よ。ここからが長い可能性だってあるんだからね」
「その通りッ!」
 壱星がガーディアン・シールドを展開し、ロングカノン型の砲撃を受け流す。
「動力炉を傷つけるわけにはいかねぇ」
「【星詩】の援護を重ねます。どうかご無理をなさらぬよう」
 一夫が代わるべくして援護の【星詩】を紡いで、彼を搭乗させる実麗は最奥に位置し、他のスタンドガレオンなどの補修を担当していた。
「少しでも長引くことが予想されます。わたくしにお任せを」
 敵の戦火が舞う中で、リズは奥歯を噛み締める。
「絶対に……! 通させないさー……!」

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