クリエイティブRPG

無人の浮遊大陸

リアクション公開中!

 124

無人の浮遊大陸
リアクション
First Prev  3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13  Next Last


・リーシュ騎士団、出撃


 樹上に位置する枝葉が風圧に煽られ、振動する足場をファニス・リーシュは踏み締める。
「……敵の数はざっと百体弱。だが、倒さなくてはならない」
「群れと言うことはバルバロイの寄生に期待ができるかもしれませんわ」
 そう言いやったマリン・アルセラスにファニスは気色ばむ。
「……その巨大なドラグーンアーマーで無理ができるとは思えない。後方に下がれ。私と共にリーシュ騎士団が前に出る」
「いいえ、ハイサイフォスなら!」
 巨大な威容を醸し出したマリンに、ファニスは苦言を申し立てる。
「……忠告はしたぞ。それに、守ってばかりで生き残れるとも思えんのでな。――共に行こう。バルバロイを狩ったその後の世界の地平へ!」
 襲い来るのは視界を埋め尽くすおびただしいバルバロイの群れ。
 その総数相手に、マリンは恐れが宿ったのを感じていた。
「これが……バルバロイ。これ全部が……?」
 ツインカノン型の砲撃が迫る中で、朔日 弥生は「ツヴァイハンダー」に搭乗し、その光条を受け止めていた。
「ドラグナーガッツは騎士の精神。目の前の一瞬、一瞬に集中します。そして――一番槍の栄誉は譲りません」
「ドラグーンヒーター」を携えてツインカノン型の砲門を一手に引き受けつつ、片腕に携えたサブマシンガンをゼロ距離で放つ。
「……しかし、バルバロイが寄生生物であったとは……。色の違いは寄生された者とその後増えた者の違いということなのでしょうか? それはそれとして、私個人としては気になること、或いは懸念……不安を感じさせる違和感とでも言うべきか……。団長から焦燥のようなものを感じます。事の重大さを考えれば当然であると言われればそれまでのことなのですが……。駆け出しアシスタント、サポートは頼みますよ。団長の助けとなるために……」
『お任せを』
 駆け出しアシスタントの「戦局把握」を用いて弥生は現在の状況を察知する。
「……多勢に無勢……だがだからと言って、退けないのが我々です。特定の敵は狙いません。返り討ちにしてあげましょう」
 弥生へとバルバロイが一斉に牙を剥くが、それをすり抜けようとするバルバロイも居る。
 そちらへと、弥生は「マギ・グレネード」を放って牽制し、手招いてさえ見せた。
 【使徒AI】駆け出しアシスタントが弥生をサポートし、戦局の分析をもたらす。
『バルバロイはこちらへと注目。来ます』
「――よろしい。この戦場、ただ闇雲に、考えなしに吶喊するだけでは匹夫の勇と言うべきものになり下がります。来るのならば来なさい。我々とあなた方との格の違いを見せつけてあげます」
「総員、陣形を維持しつつ、敵の各個撃破を目指せ!」
 ファニスの号令にこちらへと真っ直ぐに向かうツインカノン型のバルバロイへとタツノオトシゴの形状を模したスタンドガレオン「エイヴォンMV」が前に出る。
「ファニスさんも、私たちの団長も身体を張っているんだもの。……私たちも全力を出さないとね? 小太郎君、優、ホニ君。気負わず……されど全力で。エルフたちの脅威、ここで打倒しましょう」
 そう答えた八葉 蓮花と共に搭乗した小山田 小太郎が声にする。
「はい。全力です。全霊をもって、エルフの皆さんを襲うバルバロイを打倒しましょう。我が星音は花と木の守護なれば……。『木』の浮遊大陸に迫る脅威、止めなければ嘘でしょう」
 小太郎の言葉振りに、同乗していた八代 優も頷く。
「……エルフたちを苦しめるバルバロイを、止めたい。心から、そう思うんだ。小太郎、蓮花。ホニ、皆でバルバロイたちを倒そう。……そしてエルフの皆を助けよう……! ――……春夜の帳は下りた。木と花の守護と共に春告げる詩をもって、皆を支えよう」
 小太郎の奏でる星音の助けを借りつつ、星詩を奏でた優によってバルバロイの領域が中和されていく。
 その歌を紡ぎ上げつつ、曲目は「闘うアナタに春夜の帳を」を変調させていた。

春夜の帳は闘う仲間たちにとっての安らぎの帳……。
進む背中を後押しし……
陽気溢れる夕暮れとなって皆を包む……

 三つの詩はそれぞれ仲間たちのサポートとバルバロイの行動阻害に繋がる。
 戦場を春の陽気溢れる夕暮れが満たす中で、「エイヴォンMV」が進軍し優はサクラの袖を振るって乱舞を奏でて戦域を補強する。
 霞む夜の朧に沈んだ世界で視界を遮られたバルバロイが首を巡らせるのを、見逃さなかったのは防人 ホニだ。
「……寄生生物、か。宿主を犠牲に進化し生きる。……中々どうして――業が深いな。だがエルフも、アークに居る人々も……叶うのならば助けたい。それが騎士としての俺の願いだ」
「フレッシェット」に搭乗したホニは銃撃の嵐をツインカノン型へと叩き込む。
「マギ・マッチロックライフル」が敵影を睨み、その弾丸が確実にバルバロイを叩きのめす。
 本来連射できない性能でありながら「ザッパービート」の能力を引き出し、矢継ぎ早に引き金を絞っていく。
 まさしく弾丸の豪雨。
「……教導官と優さんの星楽でバルバロイが此方を捕捉できぬうちに、可能な限り撃墜させてもらう……。教導官、優さん、蓮花さん。貴方たちは今まで通り前を向いて、皆を支える星楽を届けてくれ。それを遮る敵は……必ず撃ち貫こう」
 こちらを捕捉できぬまま、ツインカノン型は自らの本懐であるはずの砲撃で撃墜されていた。
「砲撃の後に穿ち刈り取る……貴方たちがエルフたちにしてきた手法、そのままお返しするわ」
「ジェットアンカー」が空間を奔り、バルバロイの表皮を射抜く。冷静沈着に物事を見据える蓮花は、一体ずつ着実に迎撃網を咲かせる。
 別のツインカノン型が砲撃を見舞うも、それは小太郎の構築した木の門扉によって防がれていた。
「些か狭いが……当てるのは十分だ」
 反転し様に銃撃を浴びせ込み、二体、三体と爆発の光輪が広がっていく。
 スライサー型の猛攻を、小太郎は花びらを散らせ、相手をかく乱させる。
 その隙を逃さず、ホニの銃撃網が続いていた。
「リーシュ団長。囮役に打って出る。王様と一緒に。……リーシュ騎士団としては初仕事になるかな。元はと言えば同じ幼体持ちからの理解が得られる可能性が高いから、と言う志願の理由だったが……今は無茶する団長の補佐を実行する」
 そう告げて「ミジンコ号」で出陣したコトミヤ・フォーゼルランドはツインカノン型を引き寄せる。
 格好の獲物の出現を、バルバロイたちが見逃すはずももない。
 囮役に打って出たコトミヤへと、数体のバルバロイがその道筋を辿っていく。
 ツインカノン型の砲撃が一射されるも、それを回避して閉所へと敵を誘導した。
 誘導先でバルバロイたちの視野に大写しになったのは枝であろう。
 先ほどまでよりもさらに狭い戦域を、コトミヤは上手く掻い潜る。
 それを手助けするのは【使徒AI】女教師ソッソルト・モードックだ。
『ターゲットロック機能を付与。敵性バルバロイ、照準に入りました』
「捕まって幼体を産み付けられた挙句、狙われるなんて踏んだり蹴ったりな役回りよね。私もだけれどさ。こんな落ち目のまま死ぬなんて笑えないし、せいぜい有効活用して生き延びましょ。団長も私も、皆」
 ソッソルトは詩を奏でてコトミヤに加護を与えつつ、バルバロイの領域中和に努める。
「そこだ。スパイダーランチャーで狙い撃つ」
 放たれた粘着性のワイヤー武装がツインカノン型に絡みつき、その動きを妨害する。
 星詩を奏でるソッソルトはサクラの花びらの舞う装束の袖を振るい、バルバロイの動きを一つずつ鈍くしていく。
「ある程度の敵は射止めた。攻撃班に迎撃を要請する。……私たちは、このまま敵の引き付けとできる限りの足止めを。」
 駆け抜けるファニスを援護すべくその軌道に入ったのはナハイベル・パーディションとスタンドガレオンを駆る【使徒AD】マーチングバンドだ。
「バルバロイを引き寄せちゃうらしいし、団長や他の幼体を持っている人たちをしっかり癒さないと……エルフも皆も無事にアークへ帰るんだから! 団長! サポートするね! マーチングバンドちゃん、ガレオンの操縦しっかりお願いね? って言うか運転荒くない? 演出? いやいやそういう演出要らないからね? ああ、もう! みんな頑張って~!」
 スタンドガレオンが激しく動く中でもナハイベルは癒しの詩を絶やさない。
 常に味方の守りと回復に徹することのできるように位置している。
 その詩は精神と肉体、両面でのサポートが確約され、すれ違いざまにナハイベルはファニスと視線を交わす。
 一つ頷くだけで彼女の覚悟が窺い知れて、静かに呟いていた。
「……ファニス団長、あまり無理しないといいんだけれど……。って、うわっ……! こっちにもバルバロイが来た? マーチングバンドちゃん! 暗幕張って視界を遮りつつ後退しよう! できるだけ安全運転でね?」
 後退機動に入ったナハイベルを追撃したバルバロイは既に平時の機動力を失っている。
 動きを鈍らせたバルバロイへと「フレシェット」に搭乗した乙町 空がランスを奔らせていた。
 光弾が放射され、スライサー型のバルバロイが頭部を砕けさせていた。
「……ゼピュロス団長の今回の動きを現金なものだと見る向きもあるかもしれませんが、バルバロイの寄生と、それへの対処法となる秘薬を望むことにおいては外法の者、と言うより特異者よりはずっと切実なはずです。ともあれエルフを護ることが共通認識としてありますので、今回はそういう意味では安心ですしマンスター騎士団所属の騎士として、任を全うしたいと思います。皆さんが策を用いて動きを鈍らせてくれたバルバロイ、一匹たりとも逃がしません」
【使徒AI】ヴァレットの告げる回避予測に、空は攻撃を回避し様に照準補正を行っていた。
 瞬時に「刺突の構え」に入り、面攻撃の「ショットガントラスト」がバルバロイの横腹を射抜く。
 行動を妨害されていたバルバロイを一体、また一体とその槍が穿っていく。
「誘導班はある程度まで引き付けられたら下がってください。敵の数が多いので、単騎戦力に頼るのは愚の骨頂でしょう」
 スライサー型バルバロイに果敢に仕掛けるのは綾瀬 智也だ。
「さて、虫下しが手に入らないのは致命的ですので、このバルバロイの群れをしっかりと追い払い、連れていかれそうなエルフの皆さんを助け出すことで交渉を優位に運びましょうか。こっちとしても戦果をしっかりと挙げて団長に認めてもらいたいですしね」
「ツヴァイハンダー【A】」に搭乗し、【使徒AI】駆け出しアシスタントの戦局把握能力を借りてバルバロイの次なる位置を捕捉する。「マンスター・マント」で軽い身のこなしを携え、ツインカノン型の砲撃網を潜り抜けて、目前に捉えたスライサー型へとオーラの渦を引き起こし、空間干渉を行う。
 敵を引き寄せ、次の瞬間には「アイス・カンプガイスト」の剣術が冴え渡っていた。紺色の太刀が奔り、エルフを確保していたその腕を根元より切断する。
『こちらより離脱する個体あり。恐らくはエルフの確保を優先してのことでしょう』
「させませんよ。一人だって、エルフを連れて行かせはしません」
 離れていくバルバロイへと、加速した智也は近接戦を挑もうとする。
 その足並みを封じようとツインカノン型の砲撃が浴びせかけられるが、恐れに速度を落とすことはなく、むしろさらに加速をかけさせて「緊急回避」で潜り抜ける。
 スライサー型のバルバロイへと至近まで迫り、オーラの渦を巻き起こしてスライサー型の動きを乱す。
 直後には「ストライキングスラッシュ」の剣術が炸裂し、スライサー型の腕を叩き落としていた。
 両断されたバルバロイには目もくれず、エルフを保護し、そのまま疾走する。
 エルフを保護したスタンドガレオンと入れ替わりに現れたのは星詩の加護を授ける苺炎・クロイツであった。
「マンスター騎士団は、何時だったかバルバロイの巣も一掃したほどの騎士団よ。これまでは力を蓄えていたけれど、今回は積極的に動くなんて心強いよね。外法の人たち、怪しまないで? 士気あげていきましょー♪」
「バーニングマイク」を用いて曲目はラブ電波ソング「ルナーリアに捧ぐ星詩」へと移り変わっていく。

大好きなあの人が背中を押すの♪
姿がなくてもきっとそう♪
いってこよう♪

 その星詩を拡張させたのはレナ・ポーレである。
「目立ってはいけませんわ。みえないみえない、っと」
 彼女は石の柱を構築し、自分と苺炎の姿をバルバロイから巧みに隠していた。さらに花弁を舞わせ、中空のバルバロイのかく乱を行う。
 苺炎の手を引き、その歩みを止めることはない。
「……ゼピュロス団長はどこで戦ってるのかなぁ。騎士団外の外法の者に恨みを買いがちで、余計なちょっかいを受けてないといいよねぇ」
 バルバロイの舞う空を仰ぐ。
「覚醒」で敵の位置を予見し、「火」への祈りを捧げる詩を紡いで小さな火の鳥を形成し、横合いからバルバロイにぶつけていた。
 バルバロイが首を巡らせるが、既にそこには自分たちは居ない。
「……そっちを見ても私は居ないよー? あ、でも、もっと怖いのが居るかも?」
 ――既に先手は打ってあったのだ。
 アキラ・セイルーンは狙撃用に適した場所からバルバロイを見下ろし、まず展開したのは「サンダルフォンの洗礼」である。
 見上げるほどの巨大な光のパイプオルガンのパイプ一つ一つが砲口となり、後方に位置するツインカノン型を睨んでいた。
「団長より許可は得た。これより、一斉砲撃に入る。まずはこの一撃だ」
 暗闇に沈んだ戦場を天から差す眩い光線が縦横無尽に走り、後方で展開するツインカノン型を焼き払っていく。
 敵がこちらに勘付く前に巨大な弓を引き、そのまま一射する。
 三本に分散した矢がバルバロイの頭部を打ち抜き、くらりと傾いて撃墜されていく。
 スライサー型が迫るのを、アキラは声にしていた。
「ルシャメイア殿。頼むぞ」
「了解なのじゃ! セレスティアの加護も受けたしのう。アキラの護衛には仕方がないのじゃ」
 スパイダーリッターを引き連れたセレスティア・レインルシェイメア・フローズンに声を届ける。
「どうか無事に。一人も傷つくことなく戦いを終えられますよう」
 セレスティアの操るスパイダーの糸がスライサー型に絡みつき、その動きを阻害する。
 ルシャメイアは童子酒を飲み干し、霊力を高めた躯体で跳ね上がる。
「烈吸斧」がバルバロイの頭部に突き刺さり、勢いを殺さずに頭蓋を叩き割る。
 そのまま「空走下駄」を用いて空を走り、空中からこちらへと鎌首をもたげるスライサー型とすれ違いざまに一閃、薙ぎ払った斧の威力が頭部を引き裂いていた。
 セレスティアは「全方位索敵」を用いて敵の位置を探り、ホーリースパイダーを操ってバルバロイを糸でぐるぐる巻きにしてしまう。
 拘束されたバルバロイがもがくのを、頭上から降り立ったルシャメイアが一撃をくわえていた。
「呆気ないのう!」
「油断は禁物、ですよ」
 スライサー型が牙を軋らせ、真っ直ぐにルシャメイアたちへと向かってくる。
 それをルシャメイアは裂吸斧の奪った霊力を活性化させ、刃を肥大化し様にその一閃を薙ぎ払っていた。
 愚直にも前進していたスライサー型数体がその威力に巻き込まれて寸断されていく。
「確かに油断は禁物じゃ。バルバロイのほうが、じゃがな」

First Prev  3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13  Next Last