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無人の浮遊大陸

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無人の浮遊大陸
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空の大陸とエルフの宝玉3―ウィックロー騎士団2―


 八重崎らとは別れ、団長のルイーズ・ウィックローが率いる一団も内部の捜索を開始していた。

 こちらの一団に同行するキャスリーン・エアフルトは、初めにカレンへ接触して宝玉のだいたいのありかを尋ねてみた。
 しかしカレンも巨大な木の内部を隅々まで把握しているわけではなく、三つの鍵が最短ルートを行ける、という情報しかないようだった。
 宝玉は大陸や自身らの存続のため、命の保証がなくとも施した秘術を解除する重要なものだ。易々と外敵に見つかっては困る。その為今は木と同化しているエルフの長も、全てをカレンたちエルフに伝えはしていないのだろう。

 キャスリーンはそれも一理あると、カレンに礼を言う。
 迷路も謎解きはも苦手だが、道中手掛かりになることはあるだろうし、それを忘れず見つけようと、キャスリーンはルイーズ団長に同行した。

 周りを警戒して進むのはキャスリーンだけではない。
 迷路のような内部を進む中、袋小路に突き当たったり、同じ道に戻ってきてしまったりと、いくつか道を間違える場面もあったが、シルヴェリア・ネルソンはそれらを情報として記憶し、また音の反響などを頼りにして位置把握により内部構造を解明していく。

「ルイーズ団長。そろそろ鍵の必要な道に出てもおかしくありません」

 しばらく捜索を続けた後、シルヴェリアはルイーズに報告する。今まで辿った道や時間経過からして鍵の道が出現する可能性があった。
 シルヴェリアの報告通り、少しいった先で三又に分かれる道があり、そのうち一つは複雑に絡まった蔦が行く手を阻んでいた。
 同行していたドラグナーが切り払えないかと攻撃してみるが、剣は弾かれて傷一つ付けられなかった。
 どうやらここが第一の鍵らしい。

「『青き円環に従え』だったわね。どう推理するかしら?」
「青い輪っかだから、これ多分水輪じゃん」

 一歩前へ出たシレーネ・アーカムハイトが進言する。
 ルイーズは頷くと、シレーネが水輪を発動した。

「……正解のようね」

 水の輪が行く手を阻んでいた蔦に触れると、それは解かれていき道が開いた。
 ルイーズはシレーネに礼を言うと、自らが先頭に立って先へ進んで行く――。

***


 第一の鍵を解いた後、シルヴェリアの位置情報を元に捜索を進めていく一行。
 もちろんバルバロイやゴーレムへの警戒は怠らず慎重に、しかしながら躊躇はせずに団長は進んで行く。

「ここが、第二の鍵のようね」
「『騎士の魂を捧げよ』……ね。ドラグナーさんの出番かしら」

 再び行く手を阻む蔦の前に出たルイーズに、エリカ・クラウンハートがふむと唸る。

「魂か……俺はドラグナーガッツを提示してみよう」
「ブリジーお願い」

 ドラグナーである青井 竜一と、シレーネに促されたブリジット・シャッテンが蔦の前へ出、集中力を高め蔦に触れてみる。しかし蔦は開かなかった。

「ごめんなさい。違うみたい」

 ブリジットが頭を下げる。ルイーズは首を振りブリジットと青井を労わりつつ、鍵の答えを思案する。

「魂を捧げよ……。
 精神的なものではなくて、物理的なものってことか?」
「師匠、それ採用」

 エーリッヒ・アーカムハイトの呟きに、シレーネがびしっと指を指す。
 二人のやり取りに、ルイーズがなるほどねと頷いた。

「騎士はドラグナーで正解でしょう。では魂はドラグナーの剣、でしょうか」
「可能性はあると思うわ」
「だったらこれを」

 キャスリーンが一歩前へ出てルイーズに尋ねる。彼女の言葉に同意したルイーズに、青井が再び蔦の前へ出て、ンパクトソードを掲げた。
 すると強固に絡まっていた蔦がほどけていく。

「ありがとう。皆さんのお陰で最短距離を行けそうよ」

 剣を仕舞った青井がルイーズに敬礼する。ルイーズは微笑みを湛えたまま先へ進んで行った。

***


 第二の鍵を開いてからしばらく道なりに進んで行く。
 一団はいつバルバロイやゴーレムの襲来があってもいいよう警戒しながら進んでいたが、今のところそれらしい気配はなかった。恐らくバルバロイの群れのせん滅に向かっている騎士団たちの尽力が影響しているのだろう。
 それでも油断は禁物だ。特に宝玉に近づけは近づくほどゴーレムと会敵する可能性は高まる。

「あれは第三の鍵かしら」

 アリサ・ホープライトが進行先に見えた茂みを指差す。第一、第二同様蔦が絡みついて道が塞がれていた。
 最後の鍵を見つけにわかに沸き立つ一団だったが、桃城 優希が進行を制した。

「何か来るぞ!」

 その言葉に青井が一団の最前に飛び出、ルイーズたちを守るように紫陽花の盾を構えた。
 桃城の言葉のすぐ後に、蔦の道を塞ぐようゴーレムが二体現れた。同時に一同に向けて鞭のように蔦を飛ばす。

 不屈の炎で身体能力を高めた青井は盾でその蔦を弾くと、インパクトソードを引き抜き蔦を振り払う。
 青井がゴーレムの初手を無効化した隙に、キャスリーンがゴーレムの眼前に銀霧を飛ばし、その視界を奪う。
 後ろからはシルヴェリアが星詩:蒼刃よ舞え、春告げる風あれ を歌姫の呼吸法を用いて歌い、青井を後押しした。

 スプリングディフェンスの要領でゴーレムからの攻撃を躱しながら接敵する。やや強引な立ち回りもするが、防御を高めた装備と、シルヴェリアの星詩の加護で多少の負傷は気にしない。

 もう片方のゴーレムには、桃城がアイアンバックラーで護りを固め、エーリッヒがアーマーリベットガンでゴーレムを射撃する。
 アーマーブレイカーでゴーレムの関節部分を狙い、それを牽制として【使徒AI】アルテのフォローを受けるブリジットがゴーレムに接敵すると、合言葉と共に切れ味の増したダブルスライサーでスプラッシュハーレーを叩き込む。
 ブリジットらをフォローする辻風 風巻は、星音:騎士の話をするとしよう と展開すると、風に乗って花びらが舞う。そこにシレーネの星詩・疾き水輪 が重なって、ブリジットらの速度が増した。

 ゴーレムはブリジットの速度に翻弄され、スプラッシュハーレーからのバックスクラッチャーに押されて一二歩後退する。
 そこを挟撃するようにエーリッヒがレンスター流護身術で間合いをはかり、レーザーカッティングで足関節を斬り溶かした。
 機動力を失ったゴーレムに、再びブリジットの三連斬撃が襲うと、ゴーレムはバラバラに切り刻まれて沈黙した。

 同じくして、青井の相手取っていたゴーレムも彼の刃に沈んだ。
 キャスリーンがゴーレムの視界を奪って行動を鈍らせたお陰で、ゴーレムは防御態勢を取ることが出来ずにいた。
 そこへ、ドラグナーガッツで目の前の敵を切り伏せることだけに集中した青井のスプラッシュハーレーが直撃し、ゴーレムがその身をガラガラと崩したのだった。

 二体の守護者を倒した一行は、最後の鍵の前へ出る。
 宝玉を阻む蔦の前で、エリカが一団に向かって提案した。

「『星を紡ぐ者の前に扉は現れん』よね。
 星はこの世界アークにおける、星詩や星音。
 紡ぐとは様々なものを寄せ集め、1つのものを作り出すこと。
 この場にいる皆で星空のライブステージを披露しましょう」

 エリカの言葉にルイーズは同意を示す。しかし彼女には一つ疑問があった。

「私も星詩が鍵だと思うわ。
 たださっきの戦闘でも星詩が紡がれたけど、変化はなかったのよね」
「確かに……。でもとにかくやってみましょう!
 飛び入り参加も大歓迎よ!」

 ルイーズの疑問にアリサは大注目! で明るく答える。シレーネやシルヴェリアの星詩では開かなかった鍵だが、自分たちのライブステージで他の可能性を思いつくきっかけになるかも知れないと、アリサたちはライブの準備を始めた。

「では聞いてください。Starry☆Night」

 エリカがハイスタンダードマイクを握って息を吸う。一拍おいてエリカが歌い始めると、たちまち周りが宵闇に満たされ、一番星のように雷球がひとつ輝く。
 そこへ桃城のマジックトーチが灯る。ちらちらと揺れる火は、夜空に浮かぶ星のようにも見えた。
 それに合わせて、アリサが星音:煌めきの流星群 を展開すると、宵闇に銀の霧が浮かび、そこからキラキラと流星群のように隕石が散った。
 アリサからほのかに香るカームフレグランスが、リラックスできる空気を醸し出す。

「素敵な星詩ね……。私も参加したくなるわ」

 ルイーズがエリカの歌声に合わせて手をかざす。この偉大なエルフの樹に経緯を込めて、木扉が展開された。
 すると、絡まっていた蔦が静かに解かれていき、宝玉までの道が開かれた。

 桃城の火がちかちかと点滅し、消えかける。
 それを横へ動かし流れ星のように演出すると、トーチの火が消えて再び宵闇だけがその場を包んだ。
 そうしてゆっくりと宵闇が晴れていくと、エリカの詩もしっとりと終わりを迎えた。

「鍵は木扉だったんですね」
「貴方たちの詩が私をそうさせたのよ。ありがとう」
「こちらこそ、皆さんありがとう!」

 エリカがルイーズに頭を下げると、ルイーズがその手を取る。
 アリサは団員に一礼すると、団長率いるウィックロー騎士団も宝玉を入手したのだった。




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