模倣の騎士たち・4
(遂にアーマー型が出現ですか。恐らく今まで以上に手強い相手となるでしょう、十分に警戒して挑まなければなりませんね)
【シュメッターリング騎士団】団長の
ルキナ・クレマティスは、
【使徒AD】ダンスマスターが操縦するマルタのステージ上から、戦場に険しい瞳を向けていた。
この戦いに集った仲間たちは、予め3つの部隊に振り分けている。1部隊がツインロングカノン型を相手取り、残りの部隊がドラグーンアーマー型に対処する作戦だ。
各員の準備が整ったのを確認したルキナは、号令をかける。
「総員戦闘配置! シュメッターリング騎士団、出撃です」
団長の合図とともに、セセリ隊と命名された部隊が一歩前進した。そのまとめ役を担う
ローザリア・フォルクングは、
【使徒AI】ブルーメの力を借りながら、慎重に周囲の状況に目を光らせる。
「現時点では、護衛のツインロングカノン型以外のバルバロイの姿はないようです。ですが、敵はこちらの戦術を理解し、確実に成長しつつあります。オードソックスな部隊編成ながら、連携力に気付きつつある事が脅威と言っても過言ではありません」
同じ部隊の仲間にそう伝えると、
ベータリア・フォルクングが通信に応じる。
「増援には私も注意しておきます。まずは敵の対処として、妨害や継戦能力を奪うことを重視する。その方針で戦いましょう」
二人の機体には、
猫帝 招来が事前に整備を施している。装甲にショック吸収効果を持たせ、耐久性を向上させる機構を取り付けたということなので、少しくらいの無茶なら何とかなるだろう。
さらに、自身のシュワルベWRと
マイキー・ウォーリーのグッドリッチBCには、柔軟性と耐久性に優れたアイアン・ボンドを利用した整備もしているようなので、狙われたとしてもすぐに撃墜されることはないはずだ。
今回はツインロングカノン型をセセリ隊に釘付けにしたいという意図があるので、備えておくに越したとはないという思いがそこにあった。
――特に、囮役を買って出た
佐門 伽傳を乗せたガレオンには。
(高い知恵を持つドラグーンアーマー型バルバロイがいるとはな。しかし小隊としての戦術は、ここまで戦ってきた騎士団に一日の長があろう)
マイキーが操るガレオンのステージに一人立ち、伽傳はそう分析する。すると、まるでその心を読んだかのように、招来が無線通信を送った。
「フフフフ、バルバロイもついにドラグーンアーマー型とやらを実戦に投入してきたか。時間の問題かもしれんが、学習したこの戦い方が有効な手段であると早々に理解されるのも癪だ。にわか仕込みと我々との圧倒的連携力の格差を教えてやるのだよ!」
自信にあふれた声でそう言うのが聞こえると、次にマイキーから応答があった。
「ポウッ! みんな、待たせたね! ボクは愛のガレオン乗り、キャプテン・マイキーさ! 今日もバルバロイと一緒にドライブと洒落込むよ! 操縦は荒くなるだろうけど、佐門なら大丈夫さ!」
運命を共にする伽傳に謎の信頼を寄せたマイキーは、その伽傳からの明るく楽しい応答を待っていたのだが、返ってきたのは非常に冷静な発言だった。
「バルバロイにも種類があるようだが、こちらは[幼体を産み付けられた]私自身を囮にできるタイプだろうか? もしそうなら総舵手のマイキー殿には負担をかけるかもしれんが、よろしく頼むぞ」
その声を聞いたマイキーはつられて落ち着くものと思われたが、頼りにされたということでむしろテンションを上げる。
「さぁ、佐門よ! お前がいつの日かボウズ型バルバロイに進化する日の為、ここらで最期の花道を見せてみせよ!」
そして招来の激励に送られるような形で、伽傳の言う作戦が通用するか確かめようと、あえて仲間に先行してガレオンを飛ばしていく。
伽傳の考えが的を射たのか、あるいは突出した動きが注意を引いたのか、詳しい経緯はわからないが、ツインロングカノン型はマイキーのガレオンに砲撃を開始した。
マイキーは敵へさらに近づいたかと思えば、オブストアトマイザーの目くらましを用いながら砲撃を回避する。
「機体の性質上、落下は防げるから中の兄弟がシェイクされてミンチになっても遺骸は残るから安心だね! さぁ、ボクたちのガンダーラは直ぐそこだ! 逝こうか兄弟!」
不吉なことばかり言って不安を煽ろうとするが、グッドリッチBCのステージが半透明のカプセル状になっていて、たとえひっくり返っても落ちることはないという点を踏まえている辺りは、さすがに戦い慣れていると言えるだろうか。
伽傳もまた慣れたもので、マイキーが仲間と再び足並みをそろえた時を見定めると、星詩に先駆け炎旋のサルサを奏でる。
ステージに白煙が現れると、それはさらに広がって仲間のドラグーンアーマーを覆い隠していく
。煙で姿を見失ったか、ツインロングカノン型からの砲撃に一時的に止むと、その瞬間を狙って
メビウス・アウラニイスが仲間の支援に出る。
先生と呼び親しんでいる
【使徒AD】ダンスマスターから、アシスタンスヘッドフォンでアドバイスを送られたメビウスは、
「みんな~お待たせ♪ 世界が羨む究極の歌姫メビウスのライブの時間だよ★ 今日もみんなの笑顔の為、キラキラ輝くからね♪」
戦闘による不規則な揺れをものともせず、周囲に愛嬌を振りまいていく。
「狙われる確率が大きい佐門さんの乗るマイキーさんのガレオンは、がんばってね~いつでも全力だよ★」
そしてマイキーと伽傳には特別に一言添えると、ディフィカルティ★ナイトメアを披露する。
増援が来た時の切り札として用意したものだが、現状でその気配がないなら出し惜しみすべきでないだろうと始まった星詩は、周囲に宵闇をもたらして視界を封じ込めにかかった。
「ねんねんころり~こんころり~♪
悪夢がこようと、こんころり~♪
ディフィカルティ★ナイトメア~♪ (呪呪呪)」
マイキー同様に、何とも不吉な気分をもたらす歌声は奇妙にも眠りを誘い、マイクを通すと歪な音に変わって敵の動きを鈍らせる。
白煙越しにでも射撃を狙っていたツインロングカノン型だったが、こうしてメビウスの星詩で再び攻撃の機会を封じられることとなった。
その隙にローザリアとベータリアはツインロングカノン型に接近し、ベータリアは
【使徒AI】ヴァレットからオートボアサイトによる照準修正を受けながら、マギ・ダブルカリヴァを敵の翅や節目に当たる部位を狙うように撃ち放った。
弾丸は因子の力で速度を上げると、その威力で節を砕こうとする。しかし、さすがに1発では成し得なかったか、その砲塔がベータリアへと旋回して反撃に出る。
ベータリアは使徒AIに緊急回避をサポートしてもらいながら一時離脱すると、先ほどより離れた場所から牽制攻撃を仕掛けていった。
逆にローザリアはさらなる接近をしようと、オートクレールを構えながら一気に飛び込んでいく。それを援護すべく、招来がターゲットロックした状態からスパイダーランチャーを撃ち、放射した粘着性のワイヤーで敵の自由を奪おうとした。
ワイヤーに絡まれた敵は砲塔を旋回させて振りほどこうとするが、それより早くローザリアが斬りつけ、その体躯に重力負荷をかける。
その攻撃に敵はよろめくも、ワイヤーを引きちぎりながら砲弾をばら撒いていく。招来はそれを蛇が這う時のようなうねりで回避すると、仲間が星詩の効果を受けられる範囲を見極めながら後退する。
ローザリアも一旦は回避行動に出たが、ベータリアの牽制攻撃と、伽傳が強風を巻き起こしながら放つ火球に紛れるようにして再び近づいていく。
そして伽傳が炎の竜巻に敵を取り囲んでいる間に長剣を頭上高く振り上げると、大地に向けるように振り下ろした。ローザリアの一撃は今度こそ節と節のつなぎ目を断ち切り、ツインロングカノン型はその場から動けなくなる。
しかし、とどめを刺す寸前で使徒AIの警告がなされる。どうやら、ついにドラグーンアーマー型が増援を呼び寄せたらしい。
招来はすぐにそれをルキナたちに知らせると、メビウスにも注意を促す。
ベータリアも戦場を見渡してバルバロイを捕捉するとマギ・グレネードで応戦し、伽傳もロッドアタッチ・マクスウェルで前方に強風を巻き起こして牽制を加えた。
接近するバルバロイの数はさほど多くないようだが、ドラグーンアーマー型と戦う者にとっては邪魔な存在。
セセリ隊は、それらを仲間の元に向かわせないように引き付けるのだった。
その間に指揮官たるドラグーンアーマー型に、モンシロ隊が接近を目論む。
鳳 翔子のコンチネンタル2Mが、鬱蒼とまでは言わないまでも、周囲を囲む枝葉をかき分け飛んでいく。
「バルバロイは寄生したものを戦闘用の身体に作り替えると聞きますわ。そうだとしたらドラグナー型バルバロイの元の身体はどこから来たのでしょうか」
その途中で、
エスメラルダ・エステバンがふとした疑問を口にするので、翔子は束の間の沈黙を挟んでから自分なりの見解を示す。
「いつかの戦いで捕まった人達のアーマーやガレオンは確か回収できてなかったよねぇ。だとしたら」
しかし、翔子の言葉はそこで不自然に途切れた。それらが模倣され、敵として立ちはだかる未来を想像してしまったからだ。これを口にしたら、現実になってしまうのではないか。そんな危惧もあり、翔子は口を閉ざしてしまう。
それをエスメラルダは何となく察したのだろう。無理に続きを聞き出そうとはせず、会話を終わらせる。その代わりに、モンシロ隊の仲間に声をかけると、周囲に白煙を発生させて目くらましに役立てようとする。また、ロッドアタッチ・マクスウェル改を取り出すと、ステージ上空に小型の隕石を発生させ、いつでも攻撃に使えるようにしておいた。
エスメラルダが準備を終えると、
リリア・リルバーンもスタンバイしており、軽やかな足さばきでステップを踏み始める。
そのまま歌い始めるのは春風のキャロル、春の訪れを感じさせる、穏やかで優しい歌だ。
「この歌で、皆を包み込むですよ」
そう言って空に手を伸ばすと、不意の風が周囲の全てを包むように巻き起こる。その風は仲間に加護を与えるように吹き抜けると同時に、ドラグーンアーマー型へはその温もりによって微睡をもたらした。
その風に乗るように飛び出したのは、
ミューレリア・ラングウェイのデュランダル。
ウルズラ・バルシュミーデが事前に強化整備を行っているので、装甲にはショックを和らげる性能がもたらされている。
先制に翔子が前方の敵に向けてジェットアンカーを放つと、ミューレリアは後に続くべく、その身に叩きこんだレンスター流剣術を思い出し、アイス・カンプガイストを構えた。
「行くぜ! スプラッシュハーレー!」
これから振るう技の名前を大きく叫んで、本来は軌道を異にするはずの3つの斬撃を同じ方向から浴びせようとするが、その声に警戒されたこともあって、全ての攻撃が命中することはなかった。しかし、ミューレリアはそれに構わず、同じ技を連発しようと剣を振るい出す。
「私も続くわね!」
ウルズラもそれを援護しようとマギ・ショットガンを向け、装甲の脆い部分を探しながら射撃を行う。
ドラグーンアーマー型はその二人をまとめて狙うように剣を振るうが、最も近くにいたミューレリアは
【使徒AI】ブルーメの判断に従って回避をし、ウルズラも不規則な旋回でそれを逃れていく。
「私たちもいるわよぉ」
モンシロ隊の隙を埋めるべく、翔子はレーザービーム上の攻撃をして一人に狙いを絞らせないようにすると、エスメラルダがステージのリリアを守るように銀の霧を撒いてかく乱を行った。
「リリア様、まだ戦えますわね?」
エスメラルダの問いかけにリリアは頷くと、先ほどよりも素早い動きでステップを踏み始める。それに伴い歌もアップテンポになると、
「何だかテンションが上がってきたです!」
再び風を起こして仲間に加護を授けた。その風を背に受けながら、ウルズラと翔子は互いに射撃を繰り返し、手数でドラグーンアーマー型に回避以外の行動を取らせないように立ち回る。
敵が上手く翻弄されていると感じたエスメラルダは、
「いきますよ!」
仲間に声をかけると、グロリオソ ニエブラを使用した。リリアの背後から立ち込めるように銀色に輝く粒子の混ざったスモークを噴出させたエスメラルダは、それを広範囲に拡大することで仲間の姿を覆い隠していく。そして自らもそれに紛れて小型の隕石を降らせると、仲間の攻撃を促した。
「こっちもいくよ~」
続く声は翔子から。先ほどの声掛けで周囲に仲間がいないか把握すると、ジェットアンカーを敵に向かって突き刺そうとする。それを気配で察したか、ドラグーンアーマー型はシールドを構えたが、ウルズラが射撃で盾の位置をずらしたことで脇腹をわずかに抉った。
そしてミューレリアが白煙の中から姿を現すと、無言でスプラッシュハーレーを放つ。今度の攻撃は、今までと違って本来の性能を発揮したもの。異なる軌道から3連の斬撃を振るうことで、ドラグーンアーマー型を倒そうとする。
しかし、その攻撃自体が何度も見慣れたものだったからか、構えたシールドが斬撃を阻んでしまった。
すかさず行わるのは、まさにその連続の斬撃。即席の模倣にしては鋭い攻撃に使徒AIが回避を支援するが、立て続けの攻撃にダメージを受けることは免れなかった。エスメラルダは瞬時の判断で祥子にガレオンを向かわせると、増援を呼ばれた時のために待機させていた隕石をぶつけて牽制する。
その隙に敵の間合いから離れたミューレリアは、マギ・グレネードを投げつけさらに距離を取ると、モンシロ隊の面々とともに一時離脱した。
ドラグーンアーマー型はその攻撃で追撃に向かうことができず、その隙にアゲハ隊が後を引き継ごうと接近していた。
(全く……こっちの技術を真似するたぁ……)
そういった手合いと関わるのは腹一杯だと思いながら、
ネーベル・ゼルトナーはコンチネンタル2Mを前へと進ませる。
その時に、ふと仲間に伝えそびれていたことがあると思い出し、無線機を取った。
「二人共、コーティングは時間制限在るから気を付けろや〜」
事前に
モリガン・M・ヘリオトープと
御陵 長恭のドラグーンアーマーに対し、より耐久性を持たせるように施した改造への伝達事項だったのだろう。二人からは、心得ているとばかりに簡潔な返事があった。
ツインロングカノン型と増援に狙われないためのルートを取って標的に迫ろうとしたためか、モンシロ隊からは少し遅れての接近とはなったが、ネーベルは兵法に学んだ動き方をなぞらえるように仲間の誘導を図ったため、いくつか迂回を挟んだ割に早めの接近となっていた。
そうしてやらねばならない段取りや課題を、一つずつ着実に潰すことを意識しながら接敵を果たすと、ルキナが乗るガレオンも追い付き並走状態となった。
別々のガレオンに乗りながらも隣り合わせとなったルキナに視線を送った
高橋 凛音は、返ってきた視線に頷きながら征地杖グランを掲げる。
「虫型、人型と来て、滔々……騎士鎧まで模倣して来たかの……」
凛音は目前の敵に、何となく感慨深い気持ちを抱く。しかし、それはほんの一瞬のこと。
「とは言え、スペックとして近付いて来たとしても、妾達の連携と戦術の模倣は一朝一夕には真似出来ぬ……そこを取っ掛かりに
騎士団総掛かりでアーマー型を落とすとしましょうかの……」
杖に力を込めると、凛音は【戦楽】天津甕星を展開する。
それは理不尽にすら抗う煌々とした北極星の輝きにより、道を指し示すことで添え星を導こうとしながら、荒々しくもその輝きで天空より理不尽すらも撃ち砕くもの。凛音の星音は、そのイメージを現実のものに作り上げようとする。
ルキナを囲むように白い花弁が瞬間的に舞うと、足元から生まれた石柱が歌姫を一段高みへと押し上げた。
「天津甕星は北極星へと導き……勝利と進むべき道を照らす星……妾はルキナ団長を支え、騎士団の皆と共にステージを創り出す者じゃ!」
堂々たる口上とともに、花弁は炎纏う流星に昇華する。煌々と照らしつける輝きを背に受け、ルキナもSマイクに息を吹き込もうとする。
使徒AIがアシスタンスヘッドフォンで伴奏を流してくれるのに耳を傾けながら、ルキナは輝ける装飾曲を歌い出す。
その歌はアークを訪れる前に、ルキナがホライゾンで聞いたとある曲をベースに編曲し、星詩として成立させた楽曲らしい。アラビア風の異国情緒溢れる楽曲で、非常に明るく情熱的な旋律に合わせ、チハヤ・モンタントの白衣が揺らめく。
そしてルキナの星詩は歌の雰囲気を反映し、太陽のような輝きをステージから放ってドラグーンアーマー型の目を眩ませる。さらにはマイクを通した歌声は、敵にとってだけ歪な音を聞かせるため、その体が不意の硬直を見せた。
「さあ、今のうちに!」
ルキナが鋭く叫ぶと、凛音が杖を指揮棒のように振り下ろす。
声に合わせて綺羅星が敵の体を打ちのめそうとするが、隕石が纏う炎はさらには竜巻となって内側に敵を閉じ込めようとする。ドラグーンアーマー型はその攻撃で我に返ったように剣を構えるが、ルキナに向かった反撃は、ラピッドクロークに力を得た凛音が、すかさず石の柱を使って受け止めようとする。斬撃と石柱はしばしの拮抗を見せていたが、征地杖グランが石柱の強度を上げる働きをしたからか、最後にはドラグーンアーマー型が押し負けることとなった。
その結果を受けた凛音は、すぐにネーベルに追撃を指示する。ネーベルはルキナと凛音が作った勢いを利用しようとガレオンの翼を広げ、その羽ばたきで風圧を起こすと、再び踏み込もうとするのを遮ってみせた。
さらにマギ・バズーカを向けると、
【使徒AI】女教師が照準を合わせたのを見計らって牽制射撃に出る。ドラグーンアーマー型はネーベルの攻撃をシールドで受け流すと、そのまま突き進んで攻撃に移ろうとする。ネーベルはそれに勘付くと、マギ・ファイアークラッカーを起動した回避を行った。
しかし、緊急時で仕方なかったとは言え、急加速による負荷がステージ上の凛音を襲い、その影響で凛音は足元をすくわれてしまう。辛うじて落下は免れたが、一時的に星音は途切れてしまった。
「お嬢!」
「長恭、構うな。行け!」
長恭が身を案じて近寄ろうとするのを制し、凛音は叫ぶ。
「ブルーメ嬢、今回も頼むぞ……さて、アーマー型に集中するとしよう……」
その声に冷静さを取り戻した長恭は、ここまでの戦闘で破損しつつあるシールドを砕こうと、マギ・ダブルカリヴァの射撃支援を行う。
ドラグーンアーマー型はそれを防ぎながら長恭に迫ろうとするが、
【使徒AI】ブルーメがそれに反応して回避行動を取らせたことで、斬撃は空を切った。
「モリガン。さあ、あなたも」
ステージから詩を届けながらルキナが言うと、モリガンも長恭の攻撃を背に突き進む。
「モリガン・M・ヘリオトープ。参ります!」
搭乗するオルコス・Aは、ルキナから授かった新たな力。それに乗って初めて戦うのに、目前の敵はまさに好敵手とも思えた。
「我が剣の錆びとしてくれましょう」
機体の性能を最大限に活用してドラグーンアーマー型に接近したモリガンは、Sソードから大地を揺るがすほどの強い一撃を振り下ろす。ドラグーンアーマー型もそれに対抗するように大きく構えて剣を振り下ろすが、モリガンはなおも食らいついた。
「攻撃は最大の防御でございます!」
【使徒AI】ブルーメもその意気込みに応じようと、仲間の援護攻撃をモリガンに伝え、それを利用した立ち回りへと誘導していく。
やがて、度重なる攻撃にシールドがついに砕かれると、長恭とネーベルから追撃の弾丸が降り注ぐ。モンシロ隊もそこに合流して、逃げ場を塞ぐように牽制を仕掛けると、立ち直った凛音も隕石を降らせた。
そして、ルキナが再び目くらましを仕掛けた瞬間を狙い、モリガンは剣を振るった。
それは異なる軌道を辿る連撃で。見慣れた技に対してドラグーンアーマー型は、シールドを足元に捨てると同時に構えた剣で防ぎ切ろうとするも、最後の一撃を耐えることができずに崩れ落ちるのだった。
同時に、セセリ隊の招来からは、ツインロングカノン型を撃破したという報告が来る。ドラグーンアーマー型が呼び寄せたというバルバロイも、間もなく対処し終わるとのことだった。