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無人の浮遊大陸

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無人の浮遊大陸
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・戦域を駆ける者たち

「体組織を木質化して木に同化しても個体としての維持ができる性質、ヤドリギみたいな特性なのかな、木になるだけに気になるなぁ!」
 今も前線で戦闘するファニスに続いたのはトスタノ・クニベルティであった。
 彼は観察眼をエルフたちに振りつつ、忠言を飛ばす。
「樹上の集落を防衛する戦いだって? なるほど、それは蜘蛛人の血が騒ぐね? 騎士団の方々を支援するよ。後方かく乱でね! 承認をもらえるかな?」
「……好きに戦うといい」
「ありがとう! 宝玉探索も興味あるけれど、まずは今現在、搾取されつつある、樹上のエルフたちの防衛で好感度を稼げば、細胞組織の研究に協力してもらえたりしないかな? 仲間のために戦う姿を見せることで、エルフのおねーさんとお近づきになれたらうれしいよね!」
「……お前は王女からのコネクションもあるのだろう? それでここに居るのも聞いている」
「ああ、既にお耳に入っていたかな? まぁ単身の外法の者としては騎士団の方々を支援する後方かく乱で行くのが良いと思うんだよね! ファニス団長、再三だがそれで構わないかな?」
「やりやすい戦い方をしろ。骨までは拾えん」
「ではそのつもりで!」
 空を舞うスタンドガレオンに便乗して乗り合わせて「光学白衣」を起動させる。その隠蔽性能がトスタノをバルバロイの眼から掻い潜らせていた。「蜘蛛爪」と「スレッダー」を駆使して、樹上で騎士団と戦闘を行うバルバロイの後方へと至る。躍り上がった後、樹上展開するツインカノン型の背後をトスタノは取っていた。
 立体機動襲撃を相手は関知できない。
 遅れ様にツインカノン型が照準を合わせようとして、トスタノは叫んでいた。
「その砲撃はもう見切りました! なに、弾道学は軌道工学の一要素ですからねっ! 唸れ、ヴォルケンボクサー!」
 加速度を得つつ、一撃離脱戦法の打撃が咲き、バルバロイへとダメージを与えていく。
「ミュータント・アイサイト」を使用しての戦局把握。その視野が拡大化され、枝葉の向こうに隠れたバルバロイも看破する。
 爪とフックで一時として読ませない軌道を描きつつ、遮蔽物の向こうに居るバルバロイの背後を取り、一撃離脱戦法を咲かせる。
「エルフを狩るモノたち斃すべし、慈悲はない!」
 エルフへの意思を募らせるのはステフ・ゴールドも同じであった。
「秘薬ももちろん確保したいけれど……それよりもエルフのにーちゃん、ねーちゃんたちを助けないと! 因子も不安、星楽が使える誰かと照らし合わせて行動しているわけでもない。……でも、でもさぁ。できることは絶対にあるはずなんだぜ。黄金不屈の名に恥じない一撃を食らわせてやるんだぜ。ぜったいに……ぜったいに!」
 トスタノのダメージを与えたツインカノン型バルバロイに密かに接近し、トスタノの戦い振りを観察する。
「陽動主体で動いているみたいだな。あの人の獲り損ねたバルバロイなら、小さいオレの身体は視界に入りにくいかもしれない。……それはそれで複雑な気分なんだぜ。ともあれ、黄金らしからぬ地味な移動でツインカノン型の直下に移動すれば、後は……」
「ライトニングダッシャー」を起動させ稲光を帯びたチェーンソーはそのまま、ステフ自身でさえも輝かせる。
「たとえ倒せなくても……やり方ってものがあるんだぜ!」
 狙うは片手――そのまま武装を押し付けて全力のぶった切りを敵へと見舞う。大振りでありながら、威力は確約済みだ。
「黄・金・雷・撃! オレの黄金……しっかりと味わうんだぜ!」
 そのまま腹腔へと刃を奔らせ、バルバロイの動きを鈍らせていく。「ディスマンタリング」で鍛え上げたステフの筋肉が爆ぜ、ツインカノン型をそのまま持ち上げ、なんとひっくり返してみせる。
 雄叫びを上げて「エンチャント・ボマー」の効力が発動し、爆発が連鎖する。
 バルバロイを粉砕したステフは、呼気を整えつつ敵の数を視野に入れる。
「数を数えたら、一人、二、三匹くらいか。……どこまで戦えるか分からないけれど、気合いで頑張るんだぜ」
 少しでも動きが遮られた相手はこちらの標的だ。
 ステフは黄金を滾らせながら、バルバロイへと激しい応酬を浴びせていた。

* * *


 同刻、ゼピュロス・マンスターはヒット&アウェイでバルバロイを迎撃しつつ、嘆息をつく。
「……大方は片付いたな。だが、これが終わりでもあるまい。……しかしあの小娘……まさか生き延びるとは。悪運も強いものだ。それとも他の者たちが優秀であったか? いずれにせよ、群れは排除した。次の手を講じる必要がある」
 ゼピュロスの眼差しは、バルバロイを引き付け、その度に仲間の支援を受けるファニスへと注がれていた。
 ファニス狙いのバルバロイを、ライトニング騎士団の面々が補助し、次々に応戦する。
「ツバメさん、ヒュッツさん。的確に狙えば確実性が増します。新入りのアベルさんも行きますよ。出遅れないように」
 ビーシャが連携でバルバロイの残りを削っていく。
 それに負けじと、声を弾かせたのは遥だ。
「残存バルバロイは確実に減っているわ! 今さら騎士団ごとの命令系統ではなく、あえて全体に言わせてもらうけれど――押せている! 確実に殲滅していきましょう!」
 その言葉に応じるかのように、前面を押し出すライトニング騎士団へと邪魔立てするバルバロイを減らしていくのは、潤也たちベイグラント騎士団の面子だ。
「リーシュ騎士団は一人もやらせない! バルバロイ、お前らの相手は俺たち全員だ!」
 ベイグラント騎士団は挟撃戦法を基本戦術としつつ、バルバロイを能率的に排除していく。
 撃ち落とされたバルバロイの軍勢に、ファニスは呼吸を落ちつけつつ、戦場を俯瞰する。
「……これで、八割は迎撃できたか。……後は……」
 如何に群れの攻略が完了したとは言え、まだだ。
 ――まだ、終わっていないはず。
 それは、この場に集った者たちが皆、抱いている壮絶な戦場への感傷であった。


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