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無人の浮遊大陸

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無人の浮遊大陸
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・挟撃の向こう側へ

 同刻、自らを囮にしているファニスへと、バルバロイが迫る。
 その横っ面へと水が絡め取り、動きを鈍らせた刹那、三叉の槍が腹腔へと突き刺さる。
「前ばかり見ていていいのかよ。俺はこっちだぜ! リーシュ騎士団の働き、感謝する、ファニス。ここから先は! 俺たちベイグラント騎士団も戦線に加わる!」
 雄々しく宣言した世良 潤也へと強気にアリーチェ・ビブリオテカリオが続く。スタンドガレオンで支援するのは【使徒AD】ミレイだ。
「身動きできないエルフを狩るなんて、ちょっと見過ごせないわね。さぁ、覚悟しなさい。今度はあんたたちが狩られる番よ!」
 星詩が紡がれ、その加護を受けたのは潤也だけではない。
 十文字 宵一リイム・クローバーも戦線に加わっていく。
「グランドウィッチ、サポートを頼んだ。戦場は閉所だ。常に戦局把握能力が求められるはず」
『了解いたしました。戦局把握能力の精度を向上、現在地の位置情報を常に更新しつつ、敵との位置取りを行います』
 宵一の操る「バウンティ・ナーガ」は【使徒AI】グランドウィッチのシステムサポートを得ながら飛翔し、スライサー型と対峙する。
「さて、どう出るか。相手は」
「ブラスイーグル」に搭乗したリイムは「王族のドリル」を装備し、先端に取り付けてから粘着性の弾丸を四方八方に照射し、スライサー型を戦地へと誘う。
「どれくらいこちらの目論み通りになるかは分かりませんが……」
 リイムに誘い込まれたスライサー型が肉薄するのを、大楯を用いて受け流しつつ、その技量は「スプリングディフェンス」の域に到達していた。
 スライサー型の力が分散され、完全に虚を突かれた相手へと碧色の刀身が回転切りを見舞っている。
 冷気を帯びた刃が肉を引き裂く。
 スライサー型の一体がリイムを切り裂こうとするも、その時には「イリュージョンブースト」が発動し、その距離を取っている。
「そして、そこが罠のど真ん中です」
 発動させたブービートラップがスライサー型を数体巻き込み、その動きを阻害する。
 間髪入れず、宵一の放った剣閃が敵を凍てつかせ、龍の爪を想起させる重たい一撃がスライサー型を一網打尽にしていた。
「敵は連携してエルフを狩っているらしい。ならば、スライサーかツインカノンのどちらかが不足すれば、大幅に効率は悪くなる。そうなった時には、敵もこっちに攻撃の矛先を向けるしかないだろう。――して、俺の目標はスライサー型、お前たちだ」
 包囲してくるスライサー型を宵一は回転斬りで葬っていく。「ねんがんのソード」の威力は折り紙つきだ。
 冷気を剣戟に乗せて瞬く間にスライサー型を凍結、そして切断して敵の数を減らす。
「囮になってくれているファニスの行動を、無駄にはできないからな……。俺たちもやるぞ、みんな! これ以上、お前らをリーシュ騎士団に向かわせないぜ!」
 軽快な動きと回り込んでの三叉槍による「三段突き」がバルバロイの表皮を貫く。
「アークの仲間にも、ユッピテルのエルフにも……これ以上、手出しさせるかよ!」
『その通り。回避はこちらで受け持ちます。どうか攻撃に専念を……!』
 【使徒AI】グランドウィッチが動きを補助し、潤也の「シャムシェール」の回避力を高める。
「みんな、何か近づいてくるわ。味方の騎士団じゃないし……たぶん、バルバロイね。何体いるのかしら、わらわらと……。あいつら、リーシュ騎士団に向かっているのかしら……。でも行かせないわ!」
 星詩が奏でられ、バルバロイの動きを鈍らせていく。
 その横合いから銃撃したのは土方 伊織であった。
「はわわ、古巣のマンスター騎士団の皆さんと同じ戦場で戦うことになっちゃったのですぅ。はぅぅ、怒ってないといいのですけれど……。と、とりあえず、です! ここは行かせません! ユッピテルの木と同化しちゃってるエルフさんたちを御守りするためにも、ここに攻め込んでくるバルバロイさんたちは殲滅しなくっちゃとのことなので、騎士団の戦術方針……世良さんの作戦に従いましょう。他の騎士団さんたち、特にリーシュ騎士団さんたちとの連携を重視ていかなくっては。……ただ、今回の戦場だとマンスター騎士団のところとは仲が悪くなっちゃってるので、その辺りで他の団員さんたちに迷惑をかけちゃいそうです……はぅぅ……」
 とはいえ、沈んでばかりもいられない。
 ここはもう戦場なのだ。
「はわわ……AIさん! 現状の戦局を報告してください。情報を貰って最適な状況の時に側面から強襲できるように情報を皆さんと共有しなければ」
『お任せください。最善を尽くしましょう』
 【使徒AI】駆け出しアシスタントの補助を受けた黒い弾丸がツインカノン型へと殺到しツインカノン型の進路を遮っていた。
「お手伝いよろしくなのですよ遠距離攻撃が可能なツインカノン型を狙って落とせれば、近接戦を仕掛ける味方の援護になるので狙っていきたい所存です。……でも、すっごく固いですね。ラピッドシュートの威力強化で貫通するのです!」
 暴風のような銃撃網が弾け、ツインカノン型を撃墜していく。
 敵は大きく迂回路を取らねばならないのを、グラーフ・シュペーは目にして「歌姫の呼吸法」を実行する。
「グラーフさん! スタンドガレオンが使用できるとのことなので、マーチングバンドさん、護ってあげてください~」
「主戦場は……ユッピテルの樹上の枝ですわね。チェーンサークルの安全対策を致しますわ。この高度……落ちたら……あ、安全第一で」
 彼女は【使徒AD】マーチングバンドの操るスタンドガレオンの上に乗っていた。
 歌声が響き渡り、戦場に赴く者たちを鼓舞する。
「この星詩が、騎士団の栄光となりますよう!」
 奏でられるのは「英雄賛歌」――それは彼らの身体を自ずと軽くしていた。
「ブルームド・カンタービレ」を手繰り、グラーフはさらに歌い上げる。
 熱く速く勝利への星詩を。
 バルバロイの動きがさらに鈍化し、その群れへと挟撃を仕掛けるのは砂原 秋良デューン・ブレーカー、それにゲオルグ・グレイマンであった。
 ゲオルグの「エイヴォンMV」に同乗した秋良はバルバロイの群れを視界に入れて呟く。
「今回は敵の数も多い……。無理にならない程度に、できる範囲でやれることを、ですね。ここで少しでも多く倒せれば、その分他が楽になりますからね。助けを求めている人たちがいますし、それに手を伸ばさない理由もないですからね。世良さん案を取っていきましょう。リーシュ騎士団がバルバロイを引き付けているところを挟撃できるように、と言う形ですか。赴きましょう」
「ああ、その通り。助けを求めるやつがそこに居て、助けようとするやつがいる。その土台を作るのが俺の仕事ってことだ。さぁ、行くとしようか。……しかし敵が多いな。アーマー・コーティングもしておくとするか……そこまで役に立つか分からんが、あって損はないだろう。さて、ステージの役割をメインにこなしていくかね。安全第一、うちの歌姫の詩の邪魔は許さん。……ああ、デューンが詩を終えたあとのために、オファレルハーブティーとレンスターマフィンも用意しておかないとな」
「そんな……! そこまでしてただかなくっても……」
 遠慮するデューンに、ゲオルグは気安く応じる。
「なに、遠慮はするな、そのために用意したんだからな。詩を終えたとしても、最後まで見届けるために、できる限りのことはしておいてくれ。年寄りの我儘だとは分かっているが、聞いてくれると助かる」
「……感謝します。ゲオルグさん。そこまでしていただいているのなら! 私は精一杯、詩を届けるまでです! この戦場に!」
 うねるような動きで敵を撹乱しつつ、秋良は精神集中し、「星の降る場所」を展開していた。
 上方から小型隕石が降り注ぎ、それらは攻撃性能を帯びてバルバロイに突き刺さる。デューンはそれに合わせて「ハイスタンダードマイク」を構えて「宵闇風詩」を拡張させていた。
 空間が夜の闇に閉ざされ、バルバロイの視界を奪っていく。
「騎士団に勇気を! エルフに救いを! そして未来に希望を! 響かせるは星の詩! デューン・ブレーカー、行きます!」
「……いい詩を響かせるじゃないか。操縦は任せろ。一発だって当てさせやしない」
 ゲオルグの操縦する「エイヴォンMV」が敵の攻撃を巧みに避けていく。

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