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無人の浮遊大陸

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無人の浮遊大陸
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・歌姫たちの饗宴


 その言葉に星詩を紡ぎ出したのはディア・アルマであった。

星の光を紡ぐ時、貴方は何を見るのだろう。滅びを告げる獣を縛るは、歪みて響く星の音色。
眠りなさい、眠りなさい。
滅びを告げし獣たち。破滅を告げし汝らに、神罰下るその日まで……

 発動した「金縛りの詩」で動きを鈍らせていたバルバロイたちがさらに緩慢になっていく。
 ビーシャ・ウォルコットと共に同乗するマリア・ストライフドルミーレ・アルボルが星詩を紡ぎ出す。
 星詩の加護を得たジェノ・サリスは「デュランダル」に搭乗し、その手に携えた銃に炸裂弾頭を装填し、罠にかかっているバルバロイ共々、一気に掃討していく。
「優先目標をツインカノン型に定め、スライサーへの援護はさせない。それに……敵の数に対して、味方は少ない。仕方ない場合はともかく、纏めて撃破ないしダメージを与えられる状況は、有効に活かして多数のバルバロイを殲滅しなければな」
「マギ・ダブルカリヴァ」を敵の一纏まりへとその銃口を向け、一射する。
 爆炎を上げながら墜ちていくバルバロイに、次、とすぐさま標的を変えて、戦場を駆け抜けていく。
『マスターが対応できない時に、自律防御を行うわ。安心して戦ってね、マスター』
「メルセデス、その手腕、期待している。さて、俺は次の標的を睨むとしよう。数が多いんだ、余裕はないと思っていたほうがいい」
 【使徒AI】メルセデスがその機動をサポートし、バルバロイの攻撃を防御する。
「リーシュ騎士団団長が、自身を囮にしてくれている。それを狙ってくるバルバロイを撃破することで撃破効率を最大限に。逃しはしない、一匹たりとも、な」
 拡散爆発の余剰衝撃波がバルバロイを嬲り、動きがさらに劣ったバルバロイへと、奇襲を仕掛けたのは安藤 ツバメであった。
「ツヴァイ・ハンダーエグザ」に搭乗し、「瞬間加速斬り」をメインに据え、クレイモアで叩き割っていく。
「アルテ。サポートお願い。ツインカノン型の隙を逃さない!」
 【使徒AI】アルテの補助を得て、戦域を駆け抜けるツバメに星詩の加護が宿る。ドルミーレの星詩がマリアの技量を底上げして、うまくカバーしているのである。
 ビーシャは「シュワルベWR」を駆ってツインカノン型の抑えに入っていた。
「こちらツインカノン型を抑えるのでそっちはお任せしますよ~。数で圧倒されている現状で指揮官まで失うなんて流れではあまり歓迎できませんからね! ……にしても、自分を囮に誘い出す、ですか。妙な親近感がありますが、それも立場がある人がやるとなれば話が変わってきます。やはり、護らねば……!」
 ツバメの斬撃の入ったツインカノン型へと強襲し、「スパイダーランチャー」をすかさず発射して動きを奪うビーシャは、無理な立ち回りはしない。
 あくまでも仕掛けるタイミングを逃さない戦い方だ。
「新入りのアベルさん。乗員の安全第一に操縦するとします。分かりましたね?」
『指示については了解した。周辺警戒は任せてもらおう。ただ、使徒はあなたたちの命を守ることを最優先にサポートするが、服従しているわけではないぞ
 【使徒AI】アベルへと言いつけたビーシャはヒュッツと共にツインカノン型を標的として挟撃する。
 冷気を帯びた刀剣を掲げ、ヒュッツの斬撃がバルバロイの装甲を脆くする。
「狙いを定めたら……後は屠るのみだ……。射撃や横からの攻撃で気を逸らされた相手には近づくが……もし反撃が来るようでもその動きは大きくなりがちだろう……」
 目論み通り、敵の反撃を緊急回避で掻い潜り、大きな隙を見据える。
 ビーシャの放つ「エンチャント・ボマー」の誘爆位置が弱点の証であった。
「……ここは装甲が薄い、と爆発で示してくれるようなのでな……。龍爪重撃、全力で叩きつける……。避けられないよう足止めの粘着弾まで使ってもらっている。外すわけにはいかないな……」
 その期を逃さず龍の爪で引き裂くかのような一閃が入り、バルバロイを砕いていく。
 それもこれも、ビーシャの足止めの粘着剤が功を奏している。
「……竜に跨り空を駆けた竜騎士が、異世界で龍の爪を振るうことになるとはな。……分からないものだ……。……再現性は高いぞ……? 遠慮せず食らっていけ!」
 動きの鈍くなった敵影にさらに重い一撃を叩き込む。
『現状、敵の数は健在。しかし今のペースでしたら、上手く削れそうでしょう。三時の方向より次の敵が来ます。警戒を、騎士団クラスで帯びるべきと進言します』
 そんなヒュッツの攻防を【使徒AI】アルテが情報収集に努めて補助し、最善の動きを模索する。
 ビーシャの「ジェットアンカー」がバルバロイに絡みつき、相手の装甲の脆い点を着実に狙って先のアンカーに爆発性能を持たせる。
 爆炎を上げながら落ちていくバルバロイを眼下にビーシャは忠言を行っていた。
「派手な一撃は当然こちらに注意が向きます。安全を確保できるように移動は小刻みに」
 木々の合間へとツインカノン型が砲撃するのに対し陰を利用して回避する春虎は、こちらを見失ったバルバロイに二刀流の剣術を投擲し、姿勢を崩した相手へと超加速し肉薄して三連斬撃を繰り出す。
「撃破に至らずとも、剣圧を与えることでスライサーの動きを止められる可能性もある……っと、砲撃か」
『ツインカノン型の砲撃照準、来ます。回避いたします』
 アルテの導きによって回避運動を取った春虎へとスライサー型が追撃するが、そのような生易しい攻撃を許すほどではない。
「呼応式加速装置」を発揮して近接のマニューバを高めさせて、その一撃を避けてみせる。
 姿勢を崩した相手へと遥の「スプラッシュハーレー」が頭上から射抜いていた。
「ナイスアシスト。……だが、まだ敵は多いな」
 呟いた春虎に、遥は、そうねと応じる。
 遥は静かに戦局を睨んでいた。
「ここからが正念場よ。まだまだ緊張を切らさないで」

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