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Frag-Connect~LINE.5『跳躍』~

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Frag-Connect~LINE.5『跳躍』~
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■フィフスシティとその関連施設でのひととき(1)

 フィフスシティで稼働を続けている加工場に足を運び、新たな製品の開発に着手しようとしていたジェノ・サリスだったが、彼がちょうどフィフスシティに入ったところで彼を呼び止める者の姿があった。
「あぁ、ジェノさん! よかった、ここでお会いできて光栄です」
「ダリン氏。ええ、こちらこそ」
 マネロン・ダリンはフラグランドで流通する商品の受注発注等を担当している。フィフスシティ復興のタイミングでやって来た彼には一部の住民が金への執着を気にするなどしているものの、商流の才は確かであったため重用されていた。
「今日はジェノさんに折り入ってご相談がありまして。少々お時間よろしいでしょうか?」
 ジェノは思案し、マネロンに頷く。
「ありがとうございます。では、こちらへ――」

 マネロンに連れられて入った喫茶店の一角で、マネロンが手持ちの鞄からパウチと箱を取り出しジェノの前に置いた。
「これまでは主にフィフスシティ中心に流通させていただいていたレトルトカレーを、他の街にも流通させたいのです。
 そのために勝手ながらこちらで、商品名を決めさせていただきました」
 ジェノが視線を落とした先、パウチと箱には『5th Faith Carry』と描かれているのが見えた。フィフスシティから生まれた確かなものという意味を込めたのだと、マネロンが説明する。一度は滅んだとさえ噂された街の復興の証にもなると熱弁を振るうマネロンへ、ジェノは了承の頷きを返した。
「初回は3万で行きましょう。ワンスシティは特に巨大な街ですからこれだけ作っても、一、二ヶ月もあれば捌けると思いますよ!」
 マネロンの話に耳を傾けつつ、ジェノは最近試作品の完成した『お湯または水を注ぐだけで食べられるカレー』もフラグランド中に流通させられるかどうかの相談をもちかけた――。


「俺たちでここ一ヶ月の水の使用量をまとめたんです。どうぞ、秋良さん」
「わからない所があったらなんでも言ってください!」
 フィリップ・ポーソーン・ジョブの二名――彼らは街のために何ができるかを考えた結果、役所でいうところの水道局の事業や取り組みを手伝うようになっていた――から資料を受け取った砂原 秋良が目を通していく。
「丁寧な資料をありがとうございます。現状不便な点が見られないのは安心しましたが、使用量のグラフから今後、水の供給がより必要になるかもしれないですね」
 契約者は今後、フィフスシティを離れ他の街に向かう機会が多くなる。また人と物の流れが活発になれば、フィフスシティの人口が増加する可能性もあり、その時にライフラインである水の供給が滞るようなことがあっては、せっかくの流れが途絶えてしまいかねない。
「そのような場合でも必要な供給を確保できるよう、装置の点検とアップグレードをしておきましょう」
「わかりました。ぜひ俺たちにも、手伝わせてください!」
「街を守る力は正直自信が無いですが、水に関することなら勉強してきました!」
 身を乗り出して協力を志願する二人を、秋良は心から頼もしいと感じていた。彼らは最初は本当に何の力も持たない欠片だったが、自分らが手を貸したことで今では立派に光を放つピースになろうとしている。
「では、一緒に行きましょう」
 言ってくるりと背を向け歩き出す秋良の後ろを、いやっほぅ、と手を叩いて喜び合った二人が勇んで付いて行った。


 フィフスシティの中心に設置されたステージをぐるり、と囲む居住区と商業区、そして街を守る要としてそびえ立つ防壁を順に見て回った人見 三美へ、防護壁整備の責任者であるカインド・ムードと先日三美に住民用の装備の改良を提案したカイン・ヤングがやって来た。
「どうだい、今のフィフスシティは。もし人見さんから見て不安な点があったら言ってくれ、すぐに対処する」
「いいえ、私の想像以上に復興が進んでいて、正直驚きました。今作業が行われている箇所も滞りなく進められているようですし、安心しましたよ。あっ、カインドさんもカインさんも、その装備とてもお似合いですよ」
「ありがとね。三美ちゃんの手が良かったからデザイン張り切っちゃったよ。
 おっと、ちゃん付けなんて失礼だね、街の救世主だってのに」
「そんな、救世主だなんて。私は――他の皆さんもきっとそうだと思いますけど、できることを一生懸命やっただけですから。
 カインさん、その方が呼びやすいのでしたらちゃん付けでもいいですよ」
「そうかい? じゃあ、そうさせてもらうよ、三美ちゃん」
 三人の間に笑いが生まれたところで、さらに二人の人物が彼らの姿を認めて近づいてきた。
「人見さん、来ていたのですね。兄さん、彼女が」
 カルロ・ストーンが隣のダルトン・ストーンに説明を行い、理解を得たダルトンが被っていた帽子を取って三美に礼をする。
「カルロの兄、ダルトンです。救出作戦の時は弟の力になっていただき、ありがとうございました」
「えっと、はい。皆さんがケガすることなく無事に街に帰ることができて、本当に良かったです」
 同じく頭を下げた三美を見、ダルトンがカルロに耳打ちする。
「いい子じゃないか。お前の相手にピッタリだな」
「な、なんてことを言うんだ兄さん。俺なんかが釣り合うはずがないだろ」

 肩を叩いて反発するカルロとそれを笑うダルトンを、三美が首をかしげて見守っていた。
「そうだ、君たちにも伝えておきたいことがあったんだった。
 17時から街のステージで、砂原さんがライブをしてくれる。そこでアメリアとグラへ届ける言葉を募集するので、二人を労う言葉を出してくれると助かる」
「あら、いいわね。アメリアちゃんもグラちゃんも大変だと思うけど、頑張ってほしいわね」
「俺たちの言葉が二人の力になるってんなら、喜んで協力するぜ」
 カインとカインドがそれぞれ頷き、三美もはい、と首を縦に振った。


「マテリアルコアから放たれるエネルギーをオルガノレウムに変換する技術。
 ハルモニアをオルガノレウムに変換する技術。この二つは博士によって確立されている」

 永見 玲央伏見 光葉が中心となり建設が進められていたオルガノレウム研究施設が先日、完成した。街の一角に用意されていた設備よりも充実した設備に囲まれながら、永見 博人は自分が取り組もうとする研究の内容を改める。
「そして、このドローン。これは元々Dマテリアルだけど、オルガノレウムをエネルギーとして使用できるように改造されている」
 玲央から提供されたドローンは、フラグランドでアダプターが使用できるドローンである。この『オルガノレウムをエネルギーとして使用できるように』の部分がどうなっているのかを解析することで、残る技術である『オルガノレウムをハルモニア、またはマテリアルコアから放たれるエネルギーに変換する技術』を会得する手掛かりを得られるかも知れない。
「三つの変換技術が揃えば、外部からの妨害に対抗するセーフガードを構築できる。そしてオルガノレウムの本質に迫ることもできるし、『OCM.EX』の効率化も実現できるはずだ」
 早速取り組もうとした博人だったが、呼び出し端末に伏見 光葉の姿を認めて応答する。
『すまない、博人君。フィフスシティに俺と行ってほしい用があると先生からの申し出があった』
「お義父さんが? わかったよ、準備する。出入口で待っててもらえるかな?」
『了解した』
 光葉の顔が端末から消え、博人は自分の研究開発のフォローを担当してもらっているゲーミングメロディに「ここのことはよろしくね」と伝える。彼はボディーガードも兼任しているが、今回は光葉が一緒なので大丈夫だろうと判断してのことだった。

 研究施設の巡回を行っている道化の虎から、博人と光葉がフィフスシティへ向かったと報告を受けた玲央が頷き、モニターに既に映し出されていたドクタークルークへ向き直る。
「ドクタークルーク、貴方の希望通り二人をフィフスシティへ向かわせました」
『ありがとね。いやぁ、今日はライブがあるって聞いたんでね。
 博人クン、がんばり屋さんだけどこもってばかりじゃ健康に悪いよ? まだ若いんだし適度に羽を伸ばさせてあげないと』
「考えておきます。……それで、オルガノレウム研究についてですが」
 わずかに身を乗り出した玲央をドクタークルークがやんわりと制する。
『もう、ヒントがほしいだなんて直球だなぁ。それもドーウィン式交渉術とやらの賜物かい?
 いや、今でも十分キミたちには感謝しているよ?  キミたちがフラグランドで研究を進めてくれているからこそ、オルガノレウムで稼働するDマテリアルをリリースすることができたわけだし』
「はぐらかさないでいただきたい。ドクタークルーク、貴方にここの研究施設に来ていただくのが一番なのですぞ?」
『それは無理かなぁ。ボクもすっかり有名人になっちゃったし、聖歌庁のお偉方もボクを信頼して研究を任せてくれているからね。
 むやみにその資料や成果を共有するのはヤバいというか……そこは察してもらえると嬉しいかな』
 ドクタークルークはふぅ、と息を一つ吐くと、じゃあ一つだけ、と指を一本立てて前置きする。
『さっきリリースしたと説明した、オルガノレウムで稼働するDマテリアルだけど。博人クンならきっと解析を進めることで『オルガノレウム変換』を確立させられると思うよ。ただその技術はキミたちで持っていてほしいんだ。バレないようにね』
「……その意図を、教えていただくことはできますでしょうか」
 オルガノレウムをハルモニア、マテリアルコアエネルギーに変換する技術は、ドクタークルークも必要としているはずである。それをあえてフラグランドに留めることの意味を尋ねた玲央に、ドクタークルークはあくまでボクの個人的な見解だけど、と前置きして口を開いた。
『キミたちがボクと繋がっているってわかったら、キミたちが直接敵の対象になりかねないからね。
 ボクが狙われるならまだ対処もできるけど、キミたちが狙われたらボクたちじゃどうにもならないからさ』
 言い終えたドクタークルークがいつもの軽い口調で話を締めくくる。
『じゃあね、またいつか連絡するよ。今度はキミたちの顔も見られたら嬉しいな』


「今日はお集まりいただき、ありがとうございます。
 ……こうして紡ぎ、繋いでいくことが今の流れを生み、次の誰かに届いていくことを願って、一曲――」

 キーボードがオルガノレウムの光を放ち、触れた指がどこか望郷の念を思わせる音色を紡ぐ。
「頑張って行って来いよ、アメリア、グラ」
「頑張ってね。フィフスシティがアメリアちゃんとグラちゃんの帰ってくる街だからね」
 観客として秋良のライブに耳を傾けるカインドとカインを始め、街の住民はたくさんの『いってらっしゃい』そして『おかえり』の言葉を声援として届けたのだった――。
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