■プロローグ■
「あーあ、俺も行きたかったなぁ……」
監獄小世界アルカトラズを脱獄し、セレクターの一員となった
ペイルライダーは、アジトの留守を預かっていた。
残っているのは彼一人ではない。
天使のような姿をしているが、得体の知れない――おそらく生物ですらない謎の存在、
ギャラルホルン。
ギャラルホルンは興味深げに、RWOへの不正アクセスを行う少女を眺めている。
『九鬼一族。前のシモンといい、キミたちの狙いは何なのか。
本来、世界を滅ぼす僕らとは相容れないはずだけど』
「利害の一致、って言ってなかったかな。同じ方向を向いている限りは仲良くできる。
ククリちゃんに限らず、俺らの関係ってそんなものじゃない? サヤ氏の受け入りだけどさ」
『そうかもね。まぁ、ボクとしては君たちがこの三千界を滅茶苦茶にしてくれることを期待しているんだけど。
ボクは滅びを望む人たちの意思に呼ばれて、こっちに来たわけだからね』
ペイルライダーは合流してすぐ、試しにギャラルホルンをアポカリプスの槍で貫いてみたが、一切の手応えはなかった。
この天使もどきに、実体はない。会話はできているが、口から出る言葉も彼自身のものではないのだろう。
ギャラルホルンは三千界を滅ぼし得る力を持つ者の前に現れ、煽る。
そしてこの三千界が滅びたら、また別の時空に飛び立つのだろう。
『ペイルライダー、キミからは何かを壊したいという強い衝動を感じるけど、憎しみのような負の感情は感じられない。
サヤの誘いに乗った理由は何だい?』
ギャラルホルンの問いに、ペイルライダーは目を開いて笑った。
「昔、地元を守って英雄なんて呼ばれたけど、物足りなくてさ。
色んな連中の恨みと憎しみを買えば、俺を殺そうと躍起になってくれる人も増える。
捕まっちゃったけど、楽しかったなぁ……。
世界を滅ぼす側にいれば、それを止めようとする人たちが次々とやってくるでしょ?
俺と渡り合えるだけの強敵だって、きっといる。
要するに楽しそうだから、ってのが理由だよ」
『そのために、何の関係もない人を平気で手にかけられるのかい?』
ペイルライダーは首を傾げた。
「何を言ってるんだい? 無関係な人や世界なんだから、心を痛める必要ないんじゃないか」
■目次■
プロローグ・目次
【1】火の海、負の海
【1】絶望の祓い手
【1】絶望の祓い手2
【1】赤のフラウス
【1】青の広がり
【2】戦争のような戦場
【2】妖魔と界霊の軍勢
【3】タガの外れた戦域を駆ける
【3】暴動の只中を征く
【3】鎮圧の戦士たち――VS界霊インカネーター1
【3】闇の連鎖を断て――VS界霊インカネーター2
【3】闇の眷属の蠢動
【3】敵意を撃ち抜いた先に
【3】戦局の終焉へ
エピローグ