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Frag-Connect~LINE.2『展開』~

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Frag-Connect~LINE.2『展開』~
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■住民たちの不安を、ライブで和らげよう!(3)

 暁 紫音が目の前で湯気を立てる容器の中身をすくい、口に含む。しばらく考えた後に必要とする調味料を自らの手で調合し加え、少し煮立ててから再び口に含む。そうして何度か繰り返した後、紫音はようやく首を縦に振って熱の供給を止めた。
「よし、スープは完成だ。具材を用意するぞ」
 持ってきた食材から紫音がこれから用意する料理、あっさり系醤油ラーメンの具材を調理していく。海苔、味の染み込んだ半熟ゆで卵、メンマ、紅白かまぼこに薬味として刻みネギが次々と作り出されていく。これらと組み合わせる麺はスープがよく絡むちぢれ麺。
「梱包材を提供してくれた仲間には感謝しないとな。スープをこの容器に入れて、具材を詰めて……」
 スープと具材、麺がそれぞれ鮮度を保てるパックに一人分ずつ収められる。スープを再加熱するのに使えるオルガノレウムを通すことで熱を循環させられる装置を抱え、紫音は加工場を出てフィフスシティへ向かい、地下へと降りていく。
「皆、お疲れ様。よければ食事休憩にしないか? 皆に食べてもらいたくてラーメンという食べ物を作った。
 もしかしたら初めて見る食べ物が入っているかもしれないが、俺も好きな食べ物だ」
 声を聞いて集まってきた住民の前で、紫音はスープを加熱し一人用の器に移す。そこに麺を静かに入れて適度にほぐし、具材を順に載せていく。
「お好みでコショウをかけて召し上がってくれ」
「いいのか? じゃあ、ありがたくいただくぜ!」
 ふわり、と湯気を立てるラーメンの器を住民が受け取り、箸……は流石に使い慣れた住民がいなかったのでフォークで麺を絡め取り、口に含む。
「……うめぇ!!」
「あぁ、疲れた身体に染み渡るぜ……」
 口々に聞こえてくる声を聞き、紫音の顔にも笑顔が生まれた。
(いい表情だ、こちらまで元気にさせてくれる)
 ライブだけでなくこういったコミュニケーションでもふれあいを感じられることに、紫音は確かな感触を得たのだった。


「なんだいなんだい、街のリーダーが悩んでグジグジしちゃってさ。キミがそんなんじゃ住民だってどんよりだよ?
 ああ、辛気臭いったらない。ボクはそういうのがだいっきらいなんだよね」
 フィフスシティの地下に足を踏み入れたルーザー・ハートレスはそういったやむにやまれぬとはいえ漂う暗い雰囲気にため息を吐いて、それからキヒヒ、と笑って完成したばかりのステージを見つめる。
「仕方ない、ボクがとびっきりのライブでキミ達を前向きにさせてあげようじゃないか♪
 でもボクのライブはアメリアや他のアイドルみたいに優しくないよ? どんなに下を向いてたって引っ張り上げられるような強引なライブ、見せてあげるよ♪」
 上着を脱ぎ捨てライブ衣装を披露しつつステージに飛び上がったルーザーが、鈴の音を鳴らしつつ上品な雰囲気をまとって歌い始める。先程の自身の発言とは趣の異なるライブ展開だが、もちろん本人にとってこのスタイルは演技。

「……盛り上げていくよ♪」

 サビに入る前の印象的な一言を契機に、雰囲気をガラリと変えた爽快感を与える歌へと切り替えつつマイクから淀んだ気分を吹き飛ばすような風を吹かせる。最初は上品に音色を響かせていた鈴もやかましいくらいに鳴り響き、観客はステージの豹変ぶりに驚く者もいたものの、大多数は盛り上がりに合わせて拍手と歓声を大きくしていった。
「さあ、立ち上がって! いつまでも下を向いてるキミは、ボクが勝手に引っ張っちゃうから♪」
 地面に咲いた花が、打ち上げられたオルガノレウムに巻き上がってステージを満たす。そこに上空からオルガノレウムの星が降り注ぎ、その中でルーザーが観客に向かって手を差し出す。
「それっ!」
 アメリアならばそのままであったろうシーンで、ルーザーは手を握るようにしつつ、もし本当に握っていたらつんのめってしまうほどに引っ張りの仕草を入れる。
「キヒヒ……キミの十八番、マネさせてもらったよ? けど、キミのとはちょっと違うよね。
 同じような組み合わせでもやり方は人それぞれ……キミはキミらしく、信じた道を進みたまえ~。
 それが楽しそうなものなら……ボクも喜んで手を貸そうじゃないか♪」
 ルーザーの視線の先、驚いた表情を見せていたアメリアはわかりました、と頷きを返した。


 アイドルたちの助けもあって、朝日が昇ろうとする時間になり装甲車が完成の目を見た。運転席にアダプターである住民が乗り込み、起動してくれと願いを込めて火を入れる。静かな音を立ててエンジンが稼動し、組み立て台からゆっくりと動き始めた。
「やった、完成だ!」
「これで助けに行ける!」
 あちこちから喜びの声が上がるのを、【睡奏楽団】の者たちも安堵の表情を浮かべて見守っていた。
「完成おめでとうございます」
「ありがとうございます。皆さんの協力あってこそです」
 風華へ丁寧に頭を下げたアメリアの、上げた顔にもはや迷いは無い。これなら誰が見ても大丈夫だと思われるだろう。
「まずはよくやった、だが、作戦はここからが本番だ。実行部隊、準備を抜かるなよ!
 ダルトン、現場の指揮を任せる。無事にグラと仲間を連れ帰ってこいよ」
「はい!」
 ザインがダルトン・ストーンの肩を叩いて激励し、準備に向かうダルトンと実行部隊の背中を見つめる。
「アメリアさん。皆さんの出発をライブで見送らせてもらってもよろしいでしょうか。
 そして最後にアメリアさんに、車の名付けをお願いしたく思います」
「わかりました。何から何まで、本当にありがとうございます」

(『Frag-Connect』開催へ向けた明るい雰囲気は、とても歓迎すべきものだ。
 だからこそ皆には、グラちゃんが今も危険な状況であるというそれは事実であっても、悪い気持ちを抱えることなく目標に向かって進んでほしいって思うよ)
 ステージにまず立ったノーラがスポットライトを浴び、アメリアと住民たちに一礼する。そして頭上にオルガノレウムを放ち降り注ぐ星に向かって矢を当て、ステージを花で満たす。
「トルコキキョウの花言葉は『希望』。大丈夫、きっとこれからの未来は希望で満ち溢れている」
 演奏に合わせて光がキラキラと輝き、次いで照らされたあみかとむく、風華と在迦の歌声がステージから住民たちへ、これから危険な作戦へと向かう者たちへ届けられる。まずは心地よい風を吹かせてこれまで作業に従事してきた者たちを労う歌とし、テンポを変えてからは作戦に従事する者たちを応援する歌へと切り替える。
「行ってらっしゃい。僕たちはここで皆さんの帰りを、待っています」
 在迦によって生み出されたアーチに、風華のオルガノレウムが生み出す光の螺旋模様が絡まる。光だけで作るよりもより確かに存在する希望の虹にアイドルと住民のそれぞれが触れ、作戦の確かな成功を祈願する。

 君をおす風を背に 一歩一歩が道になる

 あみか、そしてむくが上空の星を住民に届けるように腕を上げてそっと降ろし、想いを受け取った住民はそれを胸に大事に抱えるようにする。音楽が収束しライブもまた終わりに向かおうとしているタイミングで、突如空に白、紫、黄色の花火が打ち上がった。
「最後に花火のプレゼント。サプライズになったかなぁ?」
 花火にオルガノレウムの星もまた、白、紫、黄色へと色変わりして住民たちの目を楽しませる。そしてステージに立ったアメリアの手によってそれらが住民たちの元へと届けられ、視線を受けたアメリアはゆっくりと、それでいて力強く言葉を発した。
「皆さんが作り上げた、私達を繋ぐ希望。『ウィッシュコネクト』」
 言葉とともに発されたオルガノレウムは装甲車へ届き、『ウィッシュコネクト』の名を受けた車体に七色の光が生じる。
「準備完了、いつでも出発できます!」
「よし、総員出発!」
 ザインの指示を受け、ダルトンを始めとする作戦メンバーが『ウィッシュコネクト』に乗り込み、地上へと続くエレベーターへと向かっていった――。


「準備に時間かかっちゃったけど、結果としてよかったのかな?
 はい、おかわりはいくらでもあるから、どんどん召し上がって」
 装甲車と作戦メンバーを送り出したアメリアとザイン、他住民たちは柳波 響の用意した鍋を囲んで一時の楽しみを得ていた。
「はい、アメリアさんもどーぞ。好き嫌いはある?」
「いえ、私は特には。ふふ、そういえばグラはかなりの偏食だったのを思い出しました」
 湯気を立てる器を受け取ったアメリアが、昔のことを思い出して微笑んだ。
「ね、やっぱり人間だからね、どうしたって好き嫌いって出ちゃうよね。
 その点鍋っていいよね、たとえ嫌いな物が入っていたとしても、好きな物と混ぜ合わせてちょっと工夫をつけるだけでまるで無いようにすることができちゃうから。作る方としては色々楽だよね」
「はい、本当にそう思います。グラに気付かれないように食べさせるのにあれこれ知恵を絞りました」
 今ではグラも大抵のものは食べられるようになっているが、それまではアメリアに隠れて嫌いな物を捨てようとしたり、隠そうとしたりしてそのたびに咎められていたことをアメリアは告白する。
「やるやる、やっぱりやるよね。そんな光景を見てきたアメリアさんなら、僕がこれから話すことも理解が早いと思うんだ」
 言って響は、フラグランドの有名ブランドが販売していたリップグロスをアメリアに渡しつつ口にする。
「好きな物にせよ嫌いな物にせよ、どちらか極端に目立っていればどうしても気になっちゃうし、必要以上に執着したり取り除こうとしたりする。人間もそうだしきっと、エグズーダーだってそうだと思う。
 だからさ、考えたのは例えば今渡した物とかで派手にデコった車を走らせれば、かなりエグズーダーの注意を引けるんじゃないかって。その間にアメリアさんと街の住民が乗った乗り物が行けば、安全にライブ会場までたどり着けるんじゃないかな」
 つまりはおとり作戦であり、しかし実際におとりを務める者に危険がつきまとう。
「おとりは俺たち、アイドルが務める。俺みたいな三流アイドルが言っても説得力に欠けるかもしれないけど、見ての通り俺以外はちゃんと粒ぞろいだから、ね?」
「そんな、響さんも立派なアイドルです。
 ……わかりました、もしその作戦が必要と判断した時は、頼りにさせてもらいますね」
「うん、任せてよ」
 響が拳を作ってアピールし、アメリアが微笑んで応えた。
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