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Frag-Connect~LINE.2『展開』~

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Frag-Connect~LINE.2『展開』~
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■住民たちの不安を、ライブで和らげよう!(1)

「アシュトリィさんがサーシャさんから聞いた話だと……子どもたちは今の生活で少なからずストレスを受けている、そうですよね」
 数多彩 茉由良アシュトリィ・エィラスシードに尋ねれば、アシュトリィはええ、と頷いて口を開いた。
「子供も、その両親も今の生活は不十分に過ぎる。そう仰られていました」
 その言葉を聞いて茉由良が少し考え、口を開く。
「皆さんの外に出たい、閉じ込められている今から飛び出したい。その気持ちを借りてライブをしましょう。
 わたしもアイドルの一人として、皆さんにこんな世界があるんだ、というのを見せられたらいいと思いました」
「素敵ですわね。ではステージをお借りして、準備を始めましょう」
「ライブだね、オッケー! どんな感じのやるの?」
 ぱたぱた、と駆け寄ってきたベネディクティオ・アートマカラビンカ・ギーターに頷いて、茉由良が配役を説明する。
「テーマは『広い大地と、遊びまわる子ども』……二人にはその子どもたちを演じてもらえればと思います」
「はい、わかりましたわ」
「子ども……ううん、アイドルたるもの、どんな役だってこなしてみせるんだから」
 ベネディクティオとカラビンカが頷き、アシュトリィに続いてステージの準備を手伝い始めた――。

 そして、ステージの前に集まった住民たちの前にライブ衣装で現れた茉由良が、会場に漂う住民たちの『外に出たい』という欲望を形にする。気づけば住民たちは、ステージを見ていたはずがどこまでも続く広大な大地に立っていた。足元には光の花畑が出現し住民たちを慈愛で包むが、大多数の住民は初めて見るフラグランドの外の光景にここはどこかと戸惑うばかりであった。
「わたくしが皆様を導きましょう」
 アンサンブルに乗せて、アシュトリィが背中にオルガノレウムの眩い光の翼を生み出し羽ばたく。見慣れない光景が広がる中唯一生まれた見覚えのある光に、住民たちの視線が集まったところでアシュトリィは弓を引く構えを取り、矢を放つようにして光の翼を羽ばたかせてオルガノレウムを空中に放つ。そして上空から星が降り注ぐのを捉えると、今度は実際にオルガノレウムで生成した矢をその星目掛けて放ち、空にもいくつもの花を咲かせていった。
「そういやあ花見なんて、すっかり忘れてたなぁ。綺麗なもんだ」
 かつて地上で見られた光景を思い出した住民はようやく、今の光景に馴染みを得たようだった。
「さあみんな、外でめいっぱい遊ぼうよ!」
 ベネディクティオが子供やその両親にも一緒に遊ぶことを提案しながら、自身の足の動きに合わせて輝く足場をつたい跳ね飛び回る。その動きは特に子供たちには好評で、どうしたらそんな動きができるのだろうと目をキラキラとさせベネディクティオの周りに集まってきた。
「よしよし、思い切り遊びたいよね! それじゃ賑やかにいっちゃおう!」
 合図を送れば笛や太鼓の音色と共に獅子舞が現れ、ベネディクティオと子供たちの周囲を楽しそうに踊り回る。噛み付くような仕草には流石に驚きの表情を見せたものの、その行為が厄払い、嫌なものを取り去ってくれるのだとわかると積極的に噛みつかれにいくまでになった。
「見ている人にも、ライブの輝きが届くように!」
 一旦子供たちの相手を獅子舞に任せ、ベネディクティオは離れた場所で見学していた住民たちにもキレのあるパフォーマンスで光の波紋を放射する。その光に触れた住民たちは高揚感を覚え、自然と笑みをこぼすようになった。
 やがて賑やかな雰囲気から、今度は少し落ち着いた雰囲気へと変わる。もこもこのうさぎの姿をした星獣ベルラビットと楽しそうに戯れるカラビンカの澄んだ歌声が周囲に広がり、子供たちとその両親はその場に腰を下ろしてゆったりと身を委ね始めた。
「わたくし達のライブを見に来てくださった皆様に、心ばかりのプレゼントですわ」
 カラビンカが示した空の先に虹がかかり、そこから落ちてくる水滴が凍って雪の結晶となってふわり、ふわりと住民たちの元へと降りていく。子供が手を伸ばしてそれを手のひらに載せれば、雪の結晶は装飾品となって溶けずに収まった。
「わぁ、きれい! ありがとう!」
 多様なデザインが失われてしまったフラグランドでは、このように凝った意匠のものは物珍しく映った。複雑な模様が再現されたオーナメントを見つめる住民たちは、今日のライブをそうそう忘れることはないだろう。
「では、次にまたお会いできるのを楽しみにしていますわ」
 徐々に周囲の景色が戻っていき、住民たちは目の前のステージに佇む四名のアイドルを視認する。
「最後に一曲……皆さん、ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました」
 届けられる旋律へ、住民たちは惜しみない拍手を送った――。


 機能を回復し、かつ大幅なパワーアップを遂げた加工場を訪れたクロウ・クルーナッハの前には、今回調理予定の食材が並べられていた。
「この前は不足していた調味料が手に入った。これで味のバリエーションも思うがままだ」
 泰然とした表情の中にも少々の喜びを含ませつつ、早速クロウが手にしたのは鶏肉。適当な大きさに切り分け、醤油にニンニクを浸した液に漬け味を染み込ませる。この間に揚げる準備を進め、二つの異なる温度に熱された油を用意する。
「やはり唐揚げは、この方法で揚げるのが良い」
 オルガノレウムを循環させた調理器具でも同じような見た目と味のものは作れるが、作るからにはより美味しいものを食べてもらいたい思いを込め、衣に包まれた鶏肉を一つ目の油に沈める。パチパチ、と油の中で鶏肉が弾け、衣がきつね色にこんがり、と揚げられていく。
「……ふむ、頃合いか」
 油から引き上げ、身に付いた油を落とす。そこで終わらず、二つ目の油に短時間沈めて揚げることで時間が経ってもカリッとした食感をもたらす唐揚げとなるのだ。
「もちろんこのままでも美味しいが、マヨネーズに、甘酢あんかけ、さらにタルタルでチキン南蛮風と味を変えられるのが唐揚げの良いところだな」
 それらももちろん、用意済である。油が冷めるまでの間、クロウは別の調理器具が作り出すもう一つの料理――ポテトチップスの様子を見に行く。スライスされ揚げられたじゃがいものチップスが次々と出来上がっていた。
「定番のうすしおに、のり塩、コンソメ、ブラックペッパー、醤油。こうしてみると調味料は偉大だな」
 唐揚げとのセットで口がしょっぱくなってしまわないよう、調味料は後からかけられるようにパウダー状にして容器に収める。
「ほんのり甘いサツマイモチップスも完成だ。……よし、こんなものだろう」
 今ある料理は冷めても十分美味しいが、やはり出来たてアツアツが一番である。早急に振る舞うべく作業を進めるクロウの片隅に、ふと、先程ポテトチップスを作るのに使用した調理器具を持ち運ぶことができれば、長距離の移動中でも揚げ物などを提供できるな、との考えが浮かんだ。
(電源の確保さえできればいけるか……? 検討してみる価値はあるな)
 まずは料理の提供からだと思考を切り替え、クロウは作業を再開する――。


 別の場所ではジェノ・サリスが、調味料不足により量産体制を整えることができなかったレトルトカレーの量産に着手する。
「十分な量のスパイスが手に入った。これで街の住民に健康食品としての側面もあるカレーをふんだんに提供できる」
 百にも千にも達するスパイスをふんだんに使用した料理は、それを食した者の体調を整える効果がある。これまで食べられるものをとりあえず食べるしかなかったフィフスシティの住民にとって、カレーはただ美味しいだけの料理ではなく健康を促進してくれるのだ。
「……ふむ、御託はこの程度にして、早速調理を始めよう」
 装置に十を超えるスパイスと食材を入れ、オルガノレウムを循環させる。限りある食材の持ち味を無駄にしない調理方法にて作業を進めていき、ベースをそれぞれ肉、魚、野菜とした数種類のカレーを作ると、自ら修復した装置の端に注ぎ入れる。加熱され殺菌された後に風味を保つに適した温度に調整されたカレーがパウチに封入され、密封されて反対側の端から出てきた。
「よし、これでいつでも美味しい本格カレーが楽しめる」
 出来映えに満足しつつも、ジェノは製造ラインに問題が無いか、見直しを念入りに行う。カレーを作りパウチに詰めるラインそのものに問題はなく、強いて言えば製造したパウチを長距離の持ち運びにも耐えうるよう梱包する装置、箱詰めする装置があれば自己完結させることができるだろう。
「俺のブランドを作るのもまあ……悪くないか。まずは知名度を高める必要があるな」
 そこで思い出したのは、アメリアが計画している『Frag-Connect』。料理は、歌や曲を聴きながら食べるとより美味しく感じられる。
「ライブ会場での飲食スペース設置を考案してみるよう、アドバイスをしようか」
 そんなことを考えつつ、ジェノはパウチを回収して街の住民に振る舞う準備を進める――。


 住民と完成させたステージに、邑垣 舞花が巨大ディスプレイを設置する。この後ステージでライブ予定の空花 凛菜とアメリアをベストなアングルから映し出せるよう、配置を慎重に決定する。
(アメリアさんは皆さんと作製したこのステージを西の地まで運んでの『Frag-Connect』開催を検討していましたね。
 実現の可能性を考慮して思い悩まれていましたが……)
 舞花としては、アメリアが計画を実行するのも、あえて計画を思いとどまるのも、どちらも正解とは言い難いと考えていた。それよりもアメリアの決心次第であるとも考えていた。
(凛菜さんはアイドルの力を信じて、計画を実行する方向で頼ってもらいたいと思っているようです。ライブでの共演でアメリアさんの背中を押して差し上げたいとも)
 『スペリオール』№2の心身を癒やし、活力を与えさせるベルガモットの香りをステージ全体に広げていく。ライブの準備が整ったところで凛菜がアメリアを連れてやって来た。
「あっ、いい香り……舞花お姉様、ライブ準備ありがとうございます。
 アメリアさん、一緒にステージに上がることができて、とても嬉しいです! よろしくお願いします」
「はい、よろしくお願いします。素敵な香り……いいライブができそうです」
 ライブが行われるのを察して、住民たちが集まってきた。住民たちにも活力を与える香りが伝わり、開始前からかなりの賑やかさを生んでいた。
「私もお二人をサポートさせていただきます。では……ライブスタート!」
 舞花の声と共に、自立浮遊するキーボードが出現する。場所によっては力が働かず据え付ける必要がある芸器だが、ここはオルガノレウムの力が循環しており、十全の機能を発揮させられることができた。
(流石、優れたステージですね。このステージで行う『Frag-Connect』はさぞ、素晴らしいものになるでしょう)
 実現することを密かに願いつつ、凛菜の持ち歌である『チャレンジ☆スピリット!』の伴奏を担う。光が弾けるように音が弾けるステージの中、凛菜とアメリアの歌が届けられる。
(アメリアさん。私の歌、どうですか?
 私の歌でアメリアさんが前に進む勇気をもらえたら、嬉しいです)
 凛菜の持ち歌『チャレンジ☆スピリット』は、未知の世界に臆せず、むしろワクワクする心でチャレンジ精神を発揮して臨む姿を歌った元気ソング。新しいことにチャレンジしようとしているアメリアがこの歌で一歩を踏み出すことができたらいい、そんな願いを込めて歌を紡ぐ。凛菜の歌に呼応して周囲にキラキラとした光が生まれた。光は凛菜の動きに呼応して観客席にも広がり、観客は手を伸ばして光を受け取る仕草を見せる。
「最後は……やっぱりこれですよね」
 凛菜がアメリアへ振り向いて頷けば、アメリアも頷いて返す。二人の周囲に生まれた光は上空へと飛び、天井のOCMが光を増幅して無数の星を降らせ、上げた手を降ろす仕草によってそれらを観客席へ届けた。
 ライブが終わり、観客に丁寧にお辞儀する凛菜はアメリアが前を向いて、一歩を踏み出すのを見た――。
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