■ノアのうた
やがてライブの効力は消失し、周囲が夜の川に戻っていく。
ノアはいまだにひとり、川面に立っている。
「……いまさら合わせる顔がないって思ってるにゃ」
ノアの気持ちを感受したにあが、淋しそうにぽつりとつぶやく。
「しょうがないねぇ」
黒瀬 心美が前に出て、愛憎の檻を展開する。
「アタシたちはみんな、ノアとにあの為に行動した。
それぞれ手法は違えど、想いは同じはずだよ」
ノアの立つ川面と、アイドルたちのいる岸辺――両方ともが暖かな光に包まれた。
姉の意図に気づいた
黒瀬 心愛が、許容のクラリティクライマックスでノアを包む。
「本当によく頑張りましたね」
しみじみ言いながら、心愛はノアに手を差し伸べた。
「よし、次はボク!」
シャーロットが手をあげる。
ノアちゃん 人に褒めてもらうにはね
好きなことを本当に楽しそうにするのが一番なんだよ☆
あ、あとこれ、今のライブで作ったの。
フルールの妖精パイ。ボクの大好物! ボナペティ♪」
シャーロット・フルールがとびきりの笑顔でパイを差し出す。
「みんながノアちゃんを待ってるよ?
みんな元気に歌い合えば、楽しさはいつも無限大、なんだよ♪
ね? ウィルさん」
ウィリアム・ヘルツハフトと並んだ
虹村 歌音が、虹のように笑って手を差し伸べる。
「これからは、たくさん歌を楽しんでください!」
草薙 コロナは、夫の
草薙 大和と仲良く並んで、手を差し伸べる。
アレクス・エメロードは、ガナシカリバーをマイクに変身させて、ノアに持ち手を差し出した。
「ほら、貸してやるから、アイドルやろうぜ
なぁに、可愛い見た目してんだ。お前は売れるぜ、けけけ」
「さっきのお客さんたちの拍手、すごかったわね。
あなたには、誰かに褒めてもらえる機会がいっぱいあるってこと、忘れないで?」
弥久 風花は、諭すように凛々しく微笑み手を差し伸ばす。
「不安なら一緒に歌おうです! 大丈夫、僕達リトルフルールがついてるですよ☆」
奏梅 詩杏は
アイ・フローラの横、雨恋いの青い鳥をノアに向けて飛ばし、手を差し伸ばす。
ヴェル・アルブスは許容のクラリティクライマックスの光でノアを包む。
そこには、にあとノアが並んで歌う姿が写っている。
「にあとノアの二人になったんだもん。二人で楽しまないと」
その背後では
行坂 貫が『俺の言ったとおりだったろ?』という笑みを浮かべてノアを見ている。
「あなたはどんな“夢の光”をご覧になったのでしょうか」
都祥 かをりが手を差し伸べる横では、
合歓季 風華と
天草 在迦。今回もまたなにかを学んだ二人は、それを大事に胸にしまい、静かに微笑み手を差し伸べている。
「これから沢山の人に怒られる。だがそれは君への優しさだ。ノア、そんな彼らに何を返したい」
アーヴェント・ゾネンウンターガングがまっすぐノアを見て手を差し伸べる。
アウロラ・メタモルフォーゼスは、ひそひそとノアに伝える。
「怒られた後でも、またちゃんと撫でてもらえる”魔法の言葉”を教えてやろう――
『ごめんなさい』だ。いや別に我がごめんなさいを言いなれてるとか、そういう話ではないのだぞ?」
“フライフォーゲル”の
西村 由梨と
西村 瑠莉、そして
ニル・アドミラリは、川面に近づいた
西村 亜鳥を見守っている。
「貴方が悲しい想いのまま終わるなんて、させたくはありません。だって友達ですから」
亜鳥はいっしょうけんめい、ノアに手を伸ばす。
アイリス・フェリオと
レジェヴァロニーエ・レクラムが見守る中、“PairHeroins”の
優・コーデュロイと
ルージュ・コーデュロイは笑顔でノアに手をのばす。
「今度こそ、一緒に輪に入ろう?」
バベルの塔では届かなかった手は、いよいよ届くことになる。
「ノアさん……私たちアイドルを、どうか信じてみてください」
空花 凛菜は胸に手をあて、こころの底からそう言うと、隣りに立つ
邑垣 舞花と一緒に、やわらかく優しい手を差し出した。
「さあ、ここからですよ。世界を彩りにいきましょう」
アイドル達の舞台を整えるために、ノアにアイドル達の想いを響かせるために――そのいっしんで一人尽力した
砂原 秋良もまた、手を差し伸べた。
「みんな……」
暖かい愛憎の檻の中、アイドルたちの声はよりしみじみとノアに響いている。
夜風が川面を撫で、緑地の草木がざわめいた。
東の空は、そろそろ朝の気配をはらんでいる。
それはもう夜風ではなく、ただの風かもしれない。
「ノアさん」
飛鷹 シンと連れ立って、
示翠 風が川辺に立った。
「『歌う事で、世界が変わって見えるかもしれません』
私の言葉の意味、ちょっとはわかってもらえましたか?」
「うん……ぼくは歌を聞くことで世界が変わって見えたから、歌ったりしたらもう――想像がつかないや」
「ふふ。じゃあなおさら歌いましょう?
大丈夫、誰にでも歌う権利はあるんです」
「ぼくのような悪い子でも?」
その言葉にあえて肯定も否定もせず、ただ微笑みながら、風が手を伸ばす。
ノアは目を潤めると、ぎゅっとその手を掴んだ。
そして風に手を引かれ、ノアは暗い川面からアイドルたちが立つ灯りのもとへ渡る。
「みんな、ごめんなさい。それからその……ありがとう」
岸辺に、大きな拍手が起こる。
ノアはどこか上の空で、川辺のあちこちを見回し、夢中で誰かの姿をさがしている。
「バス=テト様。どうかノアさんに言葉をかけてあげてください」
まるで身を隠すように暗がりにいたバス=テトに、
アイ・フローラがお願いをする。
「おぬしは先程の――」
「うちらからも、おたのもうします」
“フライフォーゲル”の
西村 由梨と
西村 瑠莉もまた、それが気にかかっており丁重に頭をさげたる。
そしてバス=テトが、明るい場所に歩み出る。
「ノア……清き人の子ノアよ」
珍しく複雑な声と顔で。
「あるじ様!」
なにはなくとも一目散で、ノアはバス=テトのもとへ駆け寄った。