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方舟の行方7


 東京のビル群を縫うように進んでいた方舟は、その進路をアイドルとの攻防により大きな河川に向けていた。
 意思があるのか、それともないのか、流されるように進んだ方舟は、幾度かの大きな衝撃を受けた後、
 河川にかかるようにその動きを止めた。
 それでも方舟は落ちることなく、沈黙している。
 コーティングがら漏れだす水が、雨の様に河川に降り注いでいる。


「こんな冷たい雨の中にひとりぼっちで閉じこもって何もかも洗い流そうなんて間違っているのぜ!
 俺の真っ赤に燃える心の炎で全部蒸発させて引き摺りだして、今ここに生きている俺達の熱というものを教えてやるのぜ!」

 止まった方舟に駆けつけた天導寺 朱は、方舟を指差し叫んだ。
 天導寺 紅をガナシカリバーとシンクロさせて150%の力を得ると、天衣夢縫で方舟に向かって飛び立つ。
 目標は修復不可能となったコーティングの裂け目。剥がれ切っていないものの、あと一押しで舟まで刃が通りそうな箇所だ。
 
 動かぬ舟に照準を合わせるのは簡単だった。水龍も他のアイドルによって対処されており、周りにはいない。
 朱は全身全霊で方舟に向かっていく。
 
 ――が、彼らの前に一匹の水龍が現れた。
 アイドルにせん滅させられたはずだった水龍の出現に、朱は思わず急停止し距離を取る。
 ただ、よくよく見てみれば元居た龍たちよりも小さく見えた。
 
「朱、あそこ!」

 紅が指差した方向は、コーティングの切れ目、水が滴っている箇所だった。
 そこからひと際大きな雫がこぼれたと思うと、それは徐々に姿を龍に変えた。
 
「コーティングから龍が生まれてんのぜ!?」
「早くコーティングを剥がさないとまずいわ!」

 声をあげた紅と同時に、水龍が朱に向かって突撃してきた。
 朱は咄嗟にガナシカリバーでそれを受け、力に任せて水龍を突き飛ばす。
 弾かれた水龍は勢いを相殺するように回転すると、凍てつく波動を響かせた。
 朱はそれをパッションハーモニーの炎壁で打ち消すと、チェイスブルーミングで龍の視界を妨害する。
 まとわりつく花びらを振り払うようにじたばたと暴れる龍に対し、ディヴィニティヘイズで紅の幻影をぶつけると、
 急ごしらえの水龍のせいか、龍はあっけなくただの水になって川に落ちた。
 
「紅、このままいくのぜ!」
「了解よ!」

 朱はマテリアルドレッサーの炎をガナシカリバーに纏わせると、
 マキシマムファイアでその両手剣の幻影を先ほど生まれた二匹目の龍に集中砲火させた。
 ガナシカリバーの幻影は、その切っ先を小さな水龍に集約させると、龍と共に消滅する。
 
「次の龍が生まれる前にコーティングを剥がすのぜ!」

 朱はそのままの勢いで舟に接近すると、ヴァリアブルボードType-Gを方舟に向かって投げ、その上に着地する。
 勢いを殺さぬよう、コーティングの上をサーフィンの様に滑りながら、
 ハルモニアデリュージュで雷を纏う巨大なビームを剣型に展開。
 目標であったコーティングの裂け目にそれを突き立てると、ヴァリアブルボードの推進力に任せて一気にそれを切り裂いた。
 
 舟に突き刺さったビームブレードは、コーティングを突き抜けて舟本体にも黒い線を残す。
 ブレードから迸る稲妻はコーティング内を走り、一瞬舟を光らせたかと思うと、
 裂け目からシャボン玉が割れるように弾け、大量の水が河川に落ちた。
 
「わわっ!」

 ヴァリアルボードでその場から咄嗟に退避した朱だったが、河川から跳ねた水でずぶ濡れになってしまう。
 そこへ取って代わるように現れた白森 涼姫は、イグニスの炎を朱に向けて暖を取るよう促す。
 
「あとはお任せを」

 プルートのスタイルを纏った白森は、守るものがなくなった方舟からの精神影響を抑えながら、
 歪の華で集めたノイズを利用し、蹂躙するダークロードでそれに接近する。
 アレスの雷撃を纏いながら彼女の周りに浮遊する心眼刃は、獲物を狙うように妖しく動き、
 白森の主命によって、方舟の破壊にかかる。
 
「水が生命の始まりと言うのならば火とは文明の始まり。
 人の祖先が火を手に取ったからこそ、
 襲い来る猛獣や厳しい寒さから身を守り生存率を高めた。
 食物を調理し料理が生まれ成長を促した。
 鉱物を溶かして金属を造り様々な道具を生み出した」
 
 物言わぬ方舟に心眼刃による維新の乱撃の刃が積み重なっていく。
 舟を傷つけるたびブレイクアップサルテーションのオーロラが輝き、まるで舟が燃えているかのように見えた。
 それは生命の始まりである水を、文明の象徴である炎が蹂躙していくかの如く。
 
 それでも舟は、その炎に抵抗するかのように墜落はしない。
 水を含んだ細かな破片が攻撃のたびに散るが、舟の破壊にはなかなか至らなかった。
 
 そこへ奥 莉緒と共に結笹 紗菜が参戦する。
 結笹は方舟のかかる川の河川敷にできた公園にやってくると、コーティングの剥がれた舟を見る。
 
「大きい……けど、他のアイドルがここまでやってくれたんだ。
 それに、莉緒。来てくれてありがとう……! また一緒にがんばろう」
 
 覚悟を決めた表情の結笹に、莉緒がこくんと頷く。
 結笹はフェンス伝いに公園の街灯に上ると、そこから方舟に向けてジャンプした。
 聖夜を征くで数秒間浮かび上がったその間に、テュフォンの騒乱による乱気流を発生させ、大きく飛び上がる。
 風の後押しで加速し、方舟を見下ろせる位置に飛び上がった結笹は、やや顔を赤らめながら食神降臨を展開した。
 
「大きいのは恥ずかしいけど……莉緒の前なら私の全てを曝け出せるの……!」

 途端、結笹のサイズが巨大化し、彼女の装備:聖夜を征くのポケットから顔をのぞかせた莉緒と共に
 その自重に従って方舟の上に落下していった。
 携えたガナシカリバーは身体のサイズに対して小さいままではあるが、
 結笹はその柄を引っ張りレーザーブレードに展開する。
 そして建物を破壊できるほどの力をもってして、大殺陣回しで方舟に斬りかかった。
 
 ガナシカリバーは舟を両断するように剣筋を光らせる。
 食神降臨の強大な力で振り抜かれた剣は、いまや何の盾も持たない舟を叩き折るように一閃を放った。
 
 バキバキと轟音を轟かせながら舟が崩れていく。
 いくつもの破片が河川に落ち、水柱のように飛沫をあげる。
 
「あと一押しですね」

 白森は崩壊しゆく舟から距離を取ると、ダークロードの足場を駆け、ぐんぐんと加速していった。
 
「やがて増えた人々は協力し暖を囲んで料理を食べて英気を養いながら様々な道具を使いこなし
 荒れ狂う川も切り立った山々も広大な海原も灼熱の砂漠も極寒の氷の大地も挑み乗り越えて来た!
 
 故に我『≪芸能人≫救世の烈火』の名の下に、我が炎を持って皆を守り大いなる脅威にいざ挑まん!!」
 
 加速しながら力を溜めた白森は、維新の乱撃による特大の一撃を方舟に放った。
 炎と雷は交錯し、結笹の放った一閃をこじ開けるようにぶつかっていく。
 そしてそれは火花をあげて爆発し、一瞬付近が真白く光ると、遅れて爆発音が辺り一帯に響いた。
 
 一閃の後、巨大化を解除しその場を離脱した結笹は、
 その装備と乱気流をクッション代わりに河川敷へ避難したが、それでも白森の攻撃による爆風に曝され地面に転がった。
 
「っ……。り、莉緒、大丈夫?
 怖かったよね。ごめんね、巻き込んじゃって……」
「ううん。大丈夫。紗菜が守ってくれたから……」
 
 細かい傷を負いながらも、結笹は咄嗟に抱き包んだ莉緒を慮った。
 結笹のおかげで無傷だった莉緒は、結笹に微笑みかけると、その傷を癒していく。
 
「ありがとう……莉緒のおかげで私、なんとかできたよ」
「えへへ。って、わわ! 舟が落ちてくるよ! ここに居たら川の水が溢れて危ない!」

 二人が顔を見合わせて笑ったのも束の間、莉緒は落下しゆく舟を見て叫ぶ。
 アイドルたちの猛攻に、ついにその形を崩した舟だったが、
 その瓦礫はスローモーションのようにゆっくりと、しかし確実に落ちてくる。
 
 結笹と莉緒がその場から避難すると、瓦礫が落水した衝撃で
 津波の様に川の水が河川敷に溢れた。
 
「ようやく墜ちた……が、果たして」

 白森はノイズの足場で宙に立ちながら、方舟の行方を見定めている。
 
 
「みんな酷いよ。ぼくの舟、壊れちゃった」

 完全に崩壊、墜落した方舟は河川の中に沈んでいった。
 そしてそこから、川の上を歩くように方舟の主――ノアが現れたのだった。




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