■プロローグ■
「これでさようならだ、クリスチャン・ローゼンクロイツ」
「いいや、まだ終わりじゃないさ。
世界に変革が訪れ、人々が苦しみからの解放を望む時。
私は蘇るだろう」
サンジェルマンは死にゆくクリスチャン・ローゼンクロイツを見下ろした。
「感謝するよ、サンジェルマン。
私は肉体の檻から一足早く出る事ができる。
この星と一つになり、来たるべき時まで休むとしよう。
願わくば、次の私も、私であることを信じて……」
「死者は蘇らない。それはこの世界……いや、三千界の変えようのない摂理だ。
死という断絶がある以上、たとえ生き返っているように見えても、それは地続きではない別人なのだよ」
薔薇十字団の理念は、これから先も様々な形で受け継がれていくだろう。
それを止めようとは思わない。
自分はあくまで、歴史の傍観者だ。
世界の望まぬ歪みがあれば、然るべき者たちと手を組むことはあれど、それ以上のことはできない。
「最後に一つ。君はこの世界の真理を既に知っている。
世界を変えたいと思ったことはないのかい?」
遠い過去を思い出しながら、サンジェルマンは告げた。
「私は総てを知っている。
知っているからこそ、個人の力では変えられない……いいや、変えてはならないと分かってしまったのだよ」
■目次■
プロローグ・目次
【2】エンパイア・スクウェアを守る
仔山羊と踊れ
『薔薇と蜂蜜』の奮闘
ウィザードの誇りと意地
道を拓くために
エアロシップ・ボム
“黒い大樹”の終焉
“黒き女神”の目覚め
エスパーダ隊の死闘
在るべき姿へ
終局
【1】薔薇十字団を倒す
失われた太古の都
翠化――ウィリディタス 前
翠化――ウィリディタス 後
ニコルの今
アトランティスの残響
サンジェルマン救出作戦 前
サンジェルマン救出作戦 中
サンジェルマン救出作戦 後
空から星へ 前
空から星へ 後
エピローグ