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猛者の集う場所

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猛者の集う場所
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・繋がっていく猛者たち

「ミュータントがわざわざ人間を拉致とは、怪しいなぁオイ。情報じゃ、連中は生粋の略奪者で、こんな面倒なことはしないと思うんだが……」
「確かに……弱肉強食が信条のミュータントが市民を攫うなんて一体、何をたくらんでいるんだろう? 何を企んでいるのか知らないけれど、この魔法探偵シュルスが看破してみせるわ!」
 そう豪語したフレデリカ・レヴィと同行する柊 恭也は物陰に身を隠しつつ、情勢を探っていた。
「……先の通信でどうやら市民全員が一か所に集められているわけではないことと、地下牢は相当な数があることを確認した。人質救助も重要だが、問題なのは連中が何故拉致しているのかの解明だな。ここに来るまでを簡易マッピングしたが、ほとんど地下迷宮だ。セイヴァーズの助けなしで市民の完全避難は不可能だろう」
「それにしたって地下闘技場の管理は杜撰ですね……ここから導き出される答えは……撒き餌、ではないでしょうか?」
「撒き餌? 市民誘拐が餌だと?」
「本懐は私たちのような強者を招き入れること……そう仮定すればこの管理体制の甘さも頷けてきます」
「……セイヴァーズを狙う意味……ブレイブコンバーターか?」
「まさか! ブレイブコンバーターが狙いだとすれば私たちはまんまと……」
「ああ。飛んで火に入るって奴か。だが負ける気もあるまい。……ちょうどミュータントが一体居るな。俺が注意を惹き付けて倒す。その間に地下牢の扉を頼んだ」
「了解っ!」
 恭也は物陰から躍り出るなり、ミュータントの眼前で疾走し、加速度に入るなり形成された槍を大きく引き、直後にはその勢いのまま放っていた。
 発動した恭也のブレイブアタック「突撃槍」はその名の通り単純な技だが、その代わりに威力を確約する。
 ミュータントの腹腔を穿ち、一瞬にして無力化せしめた戦い振りにはフレデリカも驚嘆する。
「一撃必殺……すごいわね」
「なに、ミュータントとは言え脊椎をぶち抜けば死ぬだろう。単純な話だ。それよりもさっさと扉を開錠しよう」
 フレデリカが扉を解読し、開いた先に居たのは数名の市民であった。
 皆、恐れに慄いている様子であったがフレデリカは何とか不安を取り除こうとする。
「安心してください。助けに来ました」
 恭也はそこいらに山積している資料や物品を手にする。
「……もしブレイブコンバーターを目的とするのなら、何かがあるはず。俺達には意味不明でもしっかり調査すれば……」

「護衛を務めるよ! クローシールド!」
 ミュータントの攻撃から市民を守るのはロザンナ・神宮寺である。前衛を務める彼女に対して、後衛を務める佐伯 まおは砂礫の柱を生み出してミュータントの足止めを行っていた。
「私は皆様の後ろを守らせていただきますわ。ここは悪党の巣窟、さぁ、振り向かずに走ってくださいまし」
「全員、解放するから扉を開いたら迷わないでください! 開錠タイミングは合わせます! 本来ならば『働かずに暮らしたい! ニート探偵仁藤・クリスティ』への依頼料一億万円なのですが、闘技場を調査して出てきた金品が報酬で構いません」
 アーニャ・エルメルトが開錠するなり高らかに宣言する。それと共に彼女の持つランドセル型の基地局通信機へと吹き込んでもらう内容を、騎沙良 詩穂は伝える。
 ランドセル型基地局Iで一斉送信ができるのは装備者のみだからだ。
「外部からの救援が来たこのタイミングならば、ミュータントとは言え手が回り切らないはず。攫われて潜入して観れば市民を集めることこそが本命のようですね。闘技場がミュータントの闘技大会を行う場所なのは分かるとしても、内部構造までは分からない……。もしかしたら、ミュータントの本拠地として普段は使われているのかもしれないですけれど……その辺どうなのでしょう? ――狂介さん」
「ああ、こちらもまさか同じように攫われてきたセイヴァーズと合流できたのは僥倖だった。現状、無数のルートから地下闘技場を攻略しようとしているセイヴァーズ数名に対しての通信機能は拓けている。後は、足並みを揃えることだな」
 顎に手を添えて考え込む狂介に対して、詩穂は首肯する。
「内部からも見張りのミュータントを挟み撃ちできたのは大きいです。このまま挟撃作戦を続けつつ、確実な殲滅に移るために……地下闘技場の通路の走査を行える人員を確保すべきでしょう。真琴さん?」

「――承ったよ。俺は基地局を活かし、【グレートエスケープ】のセイヴァーズとの通信の安定化をはかるとしよう。みんな、聞こえている? こちらマスクド・ブラック。マップに関して言えば、【グレートエスケープ】のセイヴァーズとの情報の統合で確定したい。脱出ルートの最善手の確保もあるし……分かっている範囲のことを」
剣持 真琴の通信に【グレートエスケープ】のセイヴァーズから返答が返ってくる。
「……うん、うん……。今のところ、脱出ルートはいくつか拓けているみたいだ。数名のセイヴァーズからの返答を確認! アーニャさんたちに最善手を与えたい。もっと情報を……っと、ミュータントの見張りか……。一気に行こう。オオガミ!」
「了解した。人々をこれ以上危険な場所にはおけない! 行こう、マスター! Start our mission!」
 RF・201が散弾銃を掃射しミュータントの出鼻を挫くのと同時にダーツが投擲される。
 着弾の瞬間、ダーツが爆発しミュータントの動きを鈍らせていた。
 その隙をついて直下に潜り込んだRF・201がゼロ距離の散弾銃で敵を制圧する。
「……ここは落ち着いたようだ。ロックされた扉の開錠を」
 開くと市民たちは恐れを宿らせていたが、真琴は最小限度の声を張る。
「皆さん、セイヴァーズが助けに来ました。落ち着いて、一列になってこちらの指示に従ってください。皆さんの安全は保障します」
 その言葉に素直に従う市民も居たが、やはり半信半疑は否めないらしい。
「……時間がかかりそうだが、その分他のセイヴァーズの連絡も受け取れる。今は、少しでも情報が欲しい。……マップを張ってくれたセイヴァーズが居るみたいだ。柊さん、恩に着ます。搬入口への最短ルートは……これで行けそうだ。こちらマスクド・ブラック! レッドペンシルさん、サヤカさん、お願いします!」

* * *


「――状況を理解したわ。こちら外部班、これより戦闘を開始します」
 闘技場を俯瞰できる場所より剣堂 愛菜は大声を張り上げていた。
「耳を傾けて聞くがいいヴィランたち。あたしの名前は採点戦士レッドペンシル! そしてこちらに居るのがロイヤルキャスター、サヤカだ! このロディニアに光を取り戻せとの使命により、お前たちを添削する!」
 ミュータントの注目と攻撃を一身に引き受け、一瞬でボロボロになった愛菜の背より水流の奇跡が巻き起こり、それはまるでそれそのものが巨大なる眼球のようにミュータントを睥睨する。
「水流の奇跡よ、あらゆる敵を飲み込め。ハイドロボールエクスプロード!」
 紡ぎ上げたサヤカ・ムーンアイルのブレイブアタック「ハイドロボールエクスプロード」が炸裂し、巨大なる流水の球がミュータントへと叩き込まれる。
 衝突と同時に破裂し、先程のお返しとばかりに集っていたミュータントたちを根こそぎ戦闘不能へと追い込んでいく。続いてマジカルキャノンの砲撃が咲き、さらに続けざまに次々と出現するミュータントたちを薙ぎ払っていくのは魔力弾を誇るパステルマシンガンの銃撃であった。
「相手が倒れるまでこちらは手を緩めたりはしません。私たちが引き付けることで救われる人が居るはずだから……負けられません!」
「そういうこと。――さぁ、誰があたしを止められる?」
 愛菜のブレイブアタック「カウンティング・ポジション」の風圧が舞い、その身が軽やかに躍り上がってミュータントへと斬撃を繰り出す。
「手加減なしだ。力一杯暴れてやろう!」
 ミュータントが気圧されたように退いていく只中を、セカンドスピナーのいななき声が引き裂いていく。
 搭乗する神楽坂 茅波鬼嶋 焔はミュータントの目を引きつつ、壁面を走りアクロバティックに戦場を抜けていく。
「さぁ、こちらにどれだけ注意を向けてくれるかしらね」
「私の名前はクレマシオン! ミュータントたち、誘拐……」
 宣言の途中でミュータントの攻撃が割って入る。
「やっぱり途中で撃ってきたの。まぁ途中まででも目立てば目的達成なの!」
「そういうこと! 私たちは陽動だからね。フォーリンエンジェルレディからも通信も繋がっているし、良好! せいぜい、ここでミュータントを引き付ける!」
 焔が炎でミュータントをかく乱していく。セカンドスピナーはミュータントの集団へと割って入り、その連携を解いていく。
「ここで、戦力は削がせてもらう……!」
 時を同じくして、燈音 春奈篠宮 千咲、そしてテレサ・ファルシエレイン・クリスティは地下闘技場へと乗り込んでいた。
「暴動をカモフラージュして誘拐とか、手の込んだ真似をしてくれるわね……。でも場所が分かっているのなら後は乗り込むまでよ」
「大勢の市民を誘拐して一体何のつもりで……? 何にしても許せる所業じゃないのは確かだわ」
 ミュータントを通路の先に発見し、春奈は引力で自信を飛ばして加速度を得ていた。
 その勢いを殺さず刀を下段より振るい上げミュータントを両断する。
「千咲! 他に音は拾える?」
「……ミュータントはかなり焦っているみたい……。外の囮が効いているのかも。この扉の向こうの市民は……恐怖があるみたいね」
 扉を開錠し市民へと説明する。
「みんな! セイヴァーズが助けに来たからもう安心! さぁ、落ち着いて避難を!」
 テレサとレインに護衛を任せつつ、千咲は地下牢の中にあった地図を発見する。
「これは……見取り図ね。剣持さんに送っておこう」
「こちらは脱出を完遂できそうね。了、そっちはどう?」
「――大丈夫。こちらもうまく機能しています。ラミィ君、それにニゲル、救助に向かいますよ」
 そう通信越しに返答したのは燈音 了であった。ベニト・アリエースモリオン・グラディウスも同行し、地下闘技場を駆け抜ける。
「誘拐の上幽閉なんて許せません。皆さんと協力して必ず助け出しましょう」
「全員に共有された見取り図通りなら、この先に扉が……」
 その時、見張りのミュータントと遭遇する。
 その刹那には了は自身を戦闘形態へと染め上げていた。
「俺が出るぜ。速攻で仕留めねぇとまずいからな」
 素早く敵に接近したかと思うと、その手にあるククリナイフが急所を狙った的確な一撃を編み出し、ミュータントをよろけさせる。
 よろよろとする敵の眼前で了は掌に銀の斧を出現させ、渾身の力を込め、必殺の一撃を放っていた。ブレイブアタック「虎斧破」である。
 倒れ伏したミュータントを足蹴に、扉を顎でしゃくった了にモリオンは扉を解読し開錠してみせる。
「助けに参りました。怪我をした方が居れば優先しますので遠慮なさらぬよう」
 モリオンは眠っている市民を目覚めの草の作用で起こし、軽傷などを問わずに回復してく。
「よし、これである程度は頭数が揃った。脱出をはかろう」
 三人は市民を護衛しつつ脱出経路を駆けていく。


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