クリエイティブRPG

猛者の集う場所

リアクション公開中!

 0

猛者の集う場所
リアクション
First Prev  1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11  Next Last


・交錯する思惑と

「……まるで逃げてくださいとでも言わんばかりの拘束と見張りの監禁体制……連中は何を考えている?」
草薙 大和は杜撰なミュータントの動きに疑問符を浮かべる。それを草薙 コロナが返答していた。
「でも手足を拘束されなかったのは幸いです! 皆さんを地下牢から脱出させるべく全力を尽くすですよ!」
「……だな。気になることはあるが不幸中の幸いと見ておこう。最優先は市民の脱出経路の確保……。ミュータントの動きを見る限り、倒せないことはないだろうが、余計な戦闘で市民を巻き添えにするのは避けたい。ここは慎重に行かなければ読み負けるだろう」
「どうにかして、みんなを助け出すことを念頭にして脱出ルートから算出していかないと駄目そうですね」
「ああ、僕たちは簡単に出られてもみんながそうじゃないと意味がない。ミュータントは蹴散らしていく。……行こうか、コロナ」
「はいです!」
 地下牢を飛び出すなり、見張りのミュータントの懐へと潜り込む。
 すかさず放たれたのは大和のブレイブアタック「投風剣・キンシ」の鋭い急所への一撃であった。
 敵の弱点を的確に狙い澄ました刃は吸い込まれるようにしてその個所を貫く。
 よろめいたミュータントへとコロナのブレイブアタック「炎斬剣・ホノムスビ」が炸裂していた。
 下段より噴き上がった灼熱を湛えた剣筋がミュータントの身体の中心軸を狙って炭化させる。
 音もなく見張りを蹴散らし、二人は搬入口を目差していた。
「外からのセイヴァーズとすぐにでも合流して、市民を安全に脱出させる。……できれば隠密のうちに」
「ですね。戦闘はできれば避けたいですし」
 駆け出した二人は地下牢の迷宮を進んでいた。

「……まずはミュータントと他の勢力の繋がりの調査だ。こうも立て続けに誘拐事件が起これば横の繋がりも勘繰るし」
 そう呟いた谷村 春香は共に潜入する谷村 ハルキ秋光 紫に目線を確かめ合っていた。
 潜入自体にさほど難易度は高くはないものの、その胸には懸念事項がある。
「ローランドの輝神、オータス神を信仰する者として、洗脳紛いのことをして信者を増やすギルティアスのやり口は許せないのよね……。今回の調査でギルティアスの情報が手に入るとは限らないけれど、ミュータントの内情を知るのも大切なことだもの。セルリアン、クリムゾン。調査はわたしに任せて。ミュータントとの会敵時には……」
「ああ、ラベンダー、指示を頼む。進行方向のかじ取りは任せたよ」
 駆け抜けていく三人の歩調は慎重だが、それでもミュータントの数は少ないわけでもないようだ。
 道を折れたところで他のミュータントと見張りを交代したらしい相手へと、ハルキは歩み出る。
 こちらを発見したミュータントが斧で殴りかかって来るがそれをクローシールドで受け流す。
「セルリアン!」
「ああ、まずは一体……!」
 春香は斬撃を浴びせ、ミュータントを後退させる。しかし、踏みとどまった敵に春香は、なら、と魔法の力で光の剣を形成させる。春香のブレイブアタック「ルミナリーソード・R‐2」が眩い輝きと共に打ち下ろされていた。
「セルリアン、証拠写真を撮っておいて。ミュータントが何か隠し持っているかもしれない」
「うん……。それにしても、今のミュータントの感じ、力任せに暴れているって風じゃなかった……何か別の……?」
「分からない……、けれど今は重要なんだってことだけは、ハッキリしているよね」
 ハルキの声に春香は写真を撮り終えて紫へと首肯する。
「……他のセイヴァーズも、そろそろ潜入してくる頃合いかな」

 ――敵との無用な戦闘の損耗は避けなくては。
 そう誓っていた暁月 弥恵チャリオットレディと共に通路の陰から地下牢の様子を窺っていた。
「……見張りのミュータントが一体。それほどに厳重な装備でもない様子ですね……。アイラ、何とかできそうですか?」
「――はい。こちらはつつがなく」
 ミュータントの死角に潜り込んでいたアイラ・デーニッツはブレイブアタック「翡翠の慧眼」を発動させる。
 その翡翠の瞳が敵をアナライズし、瞬時にミュータントの弱点部位を探り当てていた。
 正確無比な一撃によってミュータントがよろめいたその隙をついて弥恵は接近していた。
 踊るように相手の反撃をいなし、光を纏う蹴りがミュータントの顔面に炸裂する。弥恵のブレイブアタック「シャイニングドライブ」は完遂され、華やかさに彩られた一撃によってミュータントはふらついていた。
「……とどめです!」
 自慢の美脚を披露して叩き込もうとするが、ミュータントは別方向へと逃げおおせようとする。
 その退路を塞いだのはエクレール・エトワールであった。
 番えた魔力の矢がミュータントに突き刺さり、相手は仰向けに倒れる。
「危なかったー、です」
「逃げようったって、そう道は多くないはずです。この地下牢は、ひとまず……」
「はい。開錠いたします」
 アイラが暗証番号を入力し、市民の閉じ込められていた地下牢を開く。
 不安と恐怖に慄いた市民へと務めて明るく弥恵は声にしていた。
「大丈夫ですよ、天爛乙女の私がいるのです。安心してください」
 凛々しさを湛えた弥恵の言葉に励まされる市民たちであったがその視線は自分の翻ったスカートに向いていた。
 察知して弥恵はスカートを覆い隠す。どうやら先ほどの戦闘で捲れ上がっていたらしい。
「……って、きゃあっ! またハプニング……。もう、ぅぅ……」
 しかしそのハプニングのお陰か、市民の表情から翳りは減っていた。
「……わ、笑ってくれるなら別にいいですけれど、恥ずかしいですよ……」
 赤面しつつも弥恵は咳払いして佇まいを正す。
「ひ、ひとまず脱出を図りましょう。他のセイヴァーズも間もなく合流してくれるはずです。一人でも多く、この地下牢から解き放たなくては」
「幸いにしてこの人数ならば逃がすのは可能です」
「こんなところに居たら不安になっちゃう。美味しいものも美味しくなくなっちゃうから……。みんなを早く助けて、心を癒したいです。あっ、怪我をしている人が居たら、言ってください。癒すことはできますので」
 一人の少年が力なく歩み寄ってくる。
 それほどの重傷ではないようであったが、心の傷のほうが問題だ。
 エクレールはブレイブアタック「リフレッシュウォーター」を使用していた。
「これを。飲むと少しは元気が出ますよ」
 少年の甘い、と言う評にエクレールは微笑む。
「よかった。少しでも味が分かるのなら」
「長居は無用です。できることならすぐにでも」
 アイラの分析に弥恵は首肯して市民を率いていた。
「では、向かいましょう。離れないように気をつけて」
 駆け出した弥恵たちへと増援のミュータントたちが駆けつけていた。
「早速? ……じゃあせいぜい、囮を任せられましょうか」
 弥恵は飛翔し、ミュータントの頭上を飛び回る。その中から脱出する一団へと注意を向けたミュータントにエクレールはマジックカノンを両手で構えていた。
「こっちに――来ないで――!」
 強烈な音が巻き起こり、砲弾がミュータントを吹き飛ばす。
 アイラは投剣で敵の追撃を遅れさせつつ、市民へと声にする。
「急いでください。できるだけ迅速に」


First Prev  1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11  Next Last